第56話 新たな仲間


「本当なんですか? その話は」

「私が嘘をつくとでもー?? もし嘘なら私までわざわざ私の大得意な魔法を使えない世界に来ないよーだ!! 服も魔族の時のままだしー!」


 

 くっ……確かに一理ある。

 ということはやはり本当なのだろう。

 うーん……よし、ここは覚悟を決めよう


「はぁ……わかりました。アミフォリアあなたを信用します。ついてきてください」

「やった!」

「言っておきますけど、みさきさんは私たちの命の恩人なので、手を出したらその時は……どうなるかわかりますよね?」


 私は思わず声が低くなる。

 元々は敵同士、そこは変わりないのだ。

 ということで、魔王アミフォリアを連れてみさきさんの家に帰っていくのだった。

 そうして帰宅後、アミフォリアが玄関を入った途端……


「ディア王女! 下がりなさい!」

「どうして魔王がここにいるのよ!!」

「えぇ?? 何がどうなってるの?」


 スメラ嬢が廊下で杖を突きだし、ディア王女は隠れながら叫び、みさきさんはこの状況に困惑な表情をしている。

 まぁ、もちろんこうなりますよね。

 正直分かっていた反応である。


「安心してください。ディア王女、スメラ嬢、今は味方です」

「そーだぞー! 今の私は味方だぞー!」

「可愛いやん! この子どこで拾ってきたの? 見た目的に7才?」


 何も知らないみさきさんは、連れてきたアミフォリアに興味津々である。


「むむ? 私が7才? なわけないじゃん! そう! この私こそ! 長年生きた最強の魔王アミフォリアだぞー! 年齢は549才! ってこらー! 放せ―!!」


 みさきさんがアミフォリアの腰を持ち、頬をすりすりしていた。

 アミフォリアは必死に抜け出そうともがいている。

 

「めっちゃ可愛い! 何々!? 君たちの仲間? だったら大歓迎や! まってな! 可愛い服あるねん!  お着換えするでー!!」

「はなせー! ちょっと助けて―!! お前人間にしては力強いぞー!! 私は魔王だぞ!! 聞いてるのか―!!」


 【魔王】アミフォリアはみさきさんに担がれ、みさきさんの部屋に入っていった。


「……あれがあの魔王なの?」

「そのはずです」

「前に比べたら全然違うわ」


 私たちはとりあえずリビングに集まった。

 未だにみさきさんと、アミフォリアは来ない。

 ガチャッ……


「いやー! 超かわいくなったわ!!」


 そうしていい笑顔で入ってくるみさきさんと……誰?


「だれですか?」

「だれって何!? 私! 魔王!」

「可愛いわ!!!」


 ディア王女が抱き着いている。

 そう、アミフォリアの服は前の黒色の服とは違い、苺の絵がたくさん描いているドレス風な服になっていた。


「こら! 離れろー!! 私はかわいくない! かっこいい魔王なんだぞー!!」

「服が変わるだけでこんなに印象変わるのね」


 スメラ嬢は冷静に分析している。

 

「でしょー! たまたま間違えて買ってな! 捨てる予定やったんやけどこれからこの服着てなー! どうや! かわいいやろ! 苺の絵が描いてある子供用の着物やで!」

「私からもお願いするわよ!」


 ディア王女がアミフォリアに抱き着いて頬をすりすりしている。

 いや、身長にしてみたらディア王女の方が少し高い程度なので、あまり変わらないのだが……


「あー! わかったから! 可愛いのは認めるから!  はーなーれーろー!!」


 こうして新たに魔王アミフォリアが、一緒に生活することになるのだった。

 

 そして次の日。


「それではアミフォリア撮影しますよ」

「うん! かっこよくして!!」


 私は、撮影用のカメラを準備する。

 その理由は、昨日ディア王女とスメラ嬢合わせた三人で話し合った結果、スラム国に新たな仲間に加わるということになったのだ。

 そして、その次の動画で、視聴者の皆さんに私たちの現状と未来予想を話す。

 昨日、ミレーさんからこの世界に来た理由を聞かれたばっかりだったので、ちょうど良いタイミングなのだ。

 ということで、アミフォリアの自己紹介動画を撮影したのだった。



 【スラム国の新たな仲間】



:楽しみすぎる!


:まさかの仲間!?


:誰が来るんだ……


:異世界からの仲間?


:↑それは知らん



真っ暗な画面に着物を着た少女が現れる。



『もうこれはできてるの? フィナリア』

『はい、始めてください』


 私の声が入る。

 このカメラの後ろに私がいるので声が入ってしまうのだ。

 ちなみに私の後ろにはディア王女と、スメラ嬢がいる。



:かわいいいいい!!


:まさかのロ〇キャラじゃねえか!!


:あ~好きだわ


:可愛すぎて天使


:天族でも連れてきたのか?_



『はーっはっはっは!! この私こそ! 最強であり最悪と呼ばれる魔族の長! 魔王アミフォリアだぞーーー!! どうだぁ! かっこいいだろー!!』」


 画面に映っているアミフォリアは両手を脇腹に添えながら高らかに話している。

 本人はチャット欄にかっこいいを求めているようだが……



:!!!???


:魔王かよ!!


:魔王可愛すぎるだろ!!!


:陸海空をロ〇にして苺の着物を着せた感じ


:あなたはかっこいいではなく可愛いです


【スラム国✔】:可愛い言うな―!! かっこいいって言えー!!!


:かわええ!!


:なんだこの可愛い生命体は



 実際には全く別の反応が巻き起こっていた。

 そうして私が後ろから現れ、そっとアミフォリアに耳打ちし、またカメラの後ろに戻った。


『それでは今のセリフをこのポーズでお願いしてみてもいいですか? ポーズのタイミングはあなたの好きなように』

『やってみる』



:なんだなんだ?


:フィナリアって結構Sな部分もあるからなあ……


:これはとんでもないことになるような……



 アミフォリアは、両手を握り、顔の前まで持ってくる。

 そして……



『にゃあ~』


 アミフォリアが首を曲げ若干照れたように猫のものまねをする。



:ああああ!!!


:かわえええ!!!


:猫のものまねは反則!!


:あ、俺しんだわ



『可愛いわ!!』


 そして画面ではディア王女がアミフォリアに抱き着いた。


『ちょっと! やーめーろー!! って可愛い言うなー!! 離れろー!! すりすりするなぁー!!』



:尊い……


:生まれてきてよかった。もう悔いはない



 そうして、スラム国新メンバー発表動画は終わるのであった。

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