第50話 【月間カラミア学園コラボ、5本目】異世界について教えます②


 教卓の後ろには私がまず初めに立ち、スメラ嬢とディア王女は私の右に椅子を持ってきて座ってもらった。


「それでは皆さんに資料をお渡しします。視聴者の皆さんには画面に資料が出るようにしてもらっています」


 と私は資料を教卓の上に置く。

 その資料のタイトルには【誰でもわかる異世界勉強!】と書いていた。

 実際この世界も私たちにとって異世界に当てはまるのだが、基本は変わらないらしい。

 むしろ、魔力とか存在しないので私たちの世界よりも断然にわかりやすいだろう。 


「それではまず、1枚目を開いてください」


 先に私が1枚開く。

 その後6人がそれぞれ開いたことを確認する。

 そこには①と大きくお題が書いてあった。

 ちなみに資料は1枚紙を裏に重ねている作りなので、上向きに折り返したら次が見れる。

 という作りにしている。

 

「まずこの①【私たちの世界と今いる世界の違い】について話そうと思いますが、その前に、皆さんはどのような違いがあると思いますか? 良ければ、この配信を見ている皆さんも一緒に考えてみてください」


 私は6人をそれぞれ見ると、3人手が上がったのが見えた。

 どうやらこれで私が指名するらしい。

 とりあえずややこしいので、正面から見て左端から行こうと思う。


「それでは、左端から行きます。陸海空さん」

「はい!」


 陸海空が元気な声で立ち上がる。


「魔法が使える!」


 正解である。

 

「詳しく説明しますが正解です、では次は猫鎌ヒカリさんどうぞ」

「にゃーん!」


 陸海空さんが座り

 猫鎌ヒカリさんが立ち上がる。


「建物が古かったり馬車とかがある!」


 まぁそれはそうである。

 ただそれは異世界独自……? なのかはわからない。


 「何とも言えない答えですね……馬車は一応この世界にも存在しています」

「難しいにゃあ~!」


 猫鎌ヒカリさんが首をかしげながら座る。

 

「次はえっと、ミレーさん」

「はい~私結構、異世界小説とかよく読むのですよ~? 大きな違いと言えばステータスが決まってたりしますよね? それじゃないですか?」


 確かに、私も読んだことはある。 

 転生してなんちゃらが多かった。

 後は追放とか婚約破棄も、確かに私の世界では、たまに聞いていた話ではある。


「確かに私も読んだことあります。アニメでもそうですよね、ここも後で説明しますがこれに関しては違いますね。ではコメントを見て説明に移ります」

「え~! 残念」


 ミレーさんがしょんぼりした顔をしながら椅子に座った。

 一応3人言い終わったのでコメントを確認する。


:違うんか!?


:前にステータス見れたら世界が滅ぶなんとかって、スラム国チャンネルで言ってた気がするな


:あ~なるほど


:種族が多いとか??


:言語も多い!



 等々たくさんのコメントが寄せられていた。

 ちょっと説明が長くなりそうなのだが、まぁ生配信ということで良いだろう。


「まずそうですね、大まかな違いといえば! 陸海空さんが言った魔法が使えます」

「ほら! 言ったとおりでしょ!? 私もよく異世界アニメを見てるんだよねー!」


 ただしここからが肝心である。


「私も異世界アニメを見ていますが、少しアニメの世界とも若干違うところがあるんですよ?」



:気になる!!


:なんだろう?


:はやくー!



「それは世界に魔力があるということ。これはまぁ同じですが。次、個人個人はという点が違います」

「よくわからないにゃー」


 確かに説明にすると難しい。

 アニメだと大体魔力量は個人差があったりする。

 私が見た中での話になるが……


「私たちが住んでいた世界での魔法は、空気中の魔力を使って放つものとなります。そのために異世界人、私の世界に住む人たちは、魔力吸放器まりょくきゅうほうき魔力膜まりょくまくというものが存在します。簡単にそれぞれ説明すると、魔力吸放器というのは、空気中の魔力を取り込み、凝縮させ放出する臓器です。心臓のすぐ後ろにあります」

「へえ~! てことはその魔力吸放器? ってやつが魔力量? になるの?」


 空さんが興味津々にのぞき込んでくる。

 少し違う。

 

「少し違いますね。魔力は体内に溜めこむことができません。魔力吸放器というのはあくまでも、魔力を吸収し凝縮させて放出する臓器です。いわゆる自転車の空気入れみたいなやつです」

「心臓の魔力バージョンってことかにゃ?」


 ヒカリさんは本当に話が速い。

 まさしくその通りである。


「ヒカリさんその通りです、ただ心臓と違うところが、魔力吸放器は筋肉と同じ成長します。使えば使うほど吸収量と凝縮力、そして凝縮速度が大きくなり、放出量も大きくなります。ここから先はあとでスメラ嬢から詳しく教えてもらいます」



:なるほどな


:めっちゃ勉強になる。需要ないが


:↑小説書く気に役に立つ


:魔力吸放器は初耳だわ。確かに自分が持っている設定より、体外から取り込む方がそれっぽいな……


:小説設定の強さとかバグってるもんな……




「小説の設定が悪いとは言いません。別の世界で小説のような設定の世界がないとも限りませんから。実際私たちはこの世界のことを知りませんでした。なので確実にもう1つは別の世界があると今は考えています。今はあくまでも【私たちが住んでいた世界】の話ですので……」



:りょうかい!


:実際ここに2つの世界はあるってことはもう確定っぽいしな……


:ほええ……



 ここに関しては経験しないと分からないと思う。

 私も経験をしたからこそ言える話である。


「さて次は魔力膜の話ですね。魔力膜は基本的に魔力吸放器から皮膚を通して放たれた魔力の膜です。この魔力膜は全身の皮膚の上に層としてあります。ちなみに目視はできませんが、魔力なので魔力探知には引っかかります」



:なるほどな


:でもその膜が強さと何が関係あるんだ?


:↑言ってただろ?フィナリアのいた世界とアニメはまた違う世界だって。


:魔力膜=強さにはならないってわけか……?



 一応コメントも見ながら話している。

 ちなみになぜコメントが見えているのかというと、教卓の横にスマホが置いてあり、それを見るとコメントが読めるのだ。


「では魔力膜について説明いたします。魔力膜というのは、使です。例えば火属性魔法を使った場合、自分もやけどする恐れがあります。なので魔力膜で魔法を常に防御しているのです。魔力吸放器により凝縮された魔力の50%を魔力膜に、残りの50%を体外に魔法として放出という流れになります。だから自分の魔法で自分が倒れないようにしているのです。あとは他人の攻撃も自身の魔法と同程度の攻撃であれば全属性なんでも防げます」

「はい! フィナリアさん!」


 1人が手を挙げた。


「はい! 夜亜きらりさん!」


 私が指名すると、きらりがその場に立つ。


「じゃあ魔力吸放器が強い? 人はその分魔法と魔力膜が強くなるということ?」


 合っているが足らないところもある。


「はい、その通りです。ただし、他にもあります。先ほども説明しましたが、魔力吸放器が強くなると魔力の吸収量と凝縮力、そして凝縮速度が上がります。つまり魔法の威力が高くなり、凝縮速度が上がるので、速く打てるようになります。後は勝手に魔力膜が固くなります。成長するためには魔法をひたすら打って強制的に動かすことが大事です。ちなみにアニメだと【魔力切れ】という言葉がありますが、私たちの世界では、魔力吸放器の疲れ【魔力酔い】という言葉に変わります。2日は吐き気に見舞われるかと、ちなみに魔力ポーションを飲むと、魔力吸放器に魔力を体の内部から入れるので、即時に回復しますね」



:バカほど有益な情報で草


:わっかりやす!


:なるほど!!


:確かに、アニメ見てるときそこの疑問あったわ!


:てことは本来の魔力量? の半分しか出せないってことか


:↑多分吸収量=魔力量だと思う?


:アニメだと個人差で魔力量決まってること多いが、フィナリアの世界だと魔力吸放器に左右されるから全員魔法撃ちまくったらバケモンになる可能性あるのか……


:何それ、魔力防御鉄壁になるやんけ


:魔法がもはやいらなくね? レベルだろ


:世界だけ滅ぶやつだ……



 前に座っている6人も、話さないがおお~といった表情で私を見ている。

 とりあえず魔力吸放器と魔力膜の説明はこんな感じだろう。


「ひとまず異世界人特有の魔力吸放器と魔力膜の説明はこれで終わりです。次は異世界の種族についてお話しますね」


 私は資料とは別の資料を取り出す。

 これは説明する私用に作ったメモみたいなものである。

 ということで私は再び6人の方を向くのだった。

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