第48話 【月間スラム国コラボ、4本目 フィナリア×ノア・エリナ―】コラボで生配信をしました。 ⑤


『瓦全部割れたにゃ!』

『これはすごいら~立てて支えていたコンクリートブロックも割れてるら~』


 ヒカリと花林が割れている瓦をのぞき込んでいる。


『変えは? あるにゃ? おっけーにゃ!』


 ヒカリがカメラの方を見ている。

 ちなみにカメラが置いてある所には、スタッフがかなりいるのだ。



:威力えぐすぎやろ


:コンクリート破壊ってアニメかよwww


:え?破壊できる用のコンクリートじゃなくて?


:最後の変な音はコンクリート割った音かwww


:あ~あ~ある意味この世界の常識が通用しねえよこの人……



『ふぅ……』


 私は両手を下ろし深呼吸した。

 多少拳がズレたものの無事全部割ることができたらしい。

 まぁ……土台部分まで破壊したみたいだけど。

 新しい土台のコンクリート?というものが準備され、再び瓦が積まれた。



『ちょっとアクシデントありましたが、今回はさらに上げて20枚にゃ! ここからさらに難易度上がるにゃよ!』

『見るだけでかなり高いら~』


 確かに前回の10枚に比べたらかなり高さが変わっている。

 より難易度が上がっていることは間違いないだろう。



『それじゃあ今回もノアさんからどうぞにゃ~』

『頑張ってくださいら~』


 ヒカリと花林は両手を振り応援してくれている。

 私はノアさんをじっくり見つめている。

 殴り方を見るだけでも結構勉強になるのだ。



:たっか


:20枚って結構多いな


:1番多くて23枚だっけ?


:日本だとそのくらいな気がする


:ノアさんならいけそう


:フィナリアも余裕で行きそうなんよなあ……



『では行きますね。すぅ……セイッ!!』


ガシャーン!! ガラガラガラ!!


 溜めに溜めたノアさんの一撃は、そのまま瓦の中心を直撃し、割りながら地面まで到達した。

 散乱した瓦は。綺麗に割れている。



:めっちゃきれいに割れて草


:さすがやな


:ノアも運動神経なかなかえぐいよな


:わかるわぁ……


:カラミア学園の中だと3位だっけ


:問題児来るぞ……



『それじゃあ次はフィナリアさんにゃ!』

『異次元のパワーですからね、頑張ってほしいら~』


 私の出番が来た。

 私は目を閉じる。

 一撃で割る、そう心に決めて。



『では行きます。1、2、はぁ!』


ガシャーン!! ガラガラガラ!! ドン!


 見事、私の拳は瓦の中心を当てたのだが、勢いが強すぎたのか、上段の瓦が吹き飛び周りに散乱する。

 そしてそのまま、拳は地面まで突き刺しているような形で停止する。

 床にクッション置いていたのが不幸中の幸いだったと思う。



:勢いえぐいってwww


:音エグ


:タオル越しに瓦吹き飛ばす奴があるかwww


ディア王女:さすがだわ!! フィナリア!!


スメラ嬢:やりすぎです


:きちゃー!!


:おい2人、今まで何してたんやwww


:おもろwww


:クッションなければ床割れとるぞ



『……えっと~言わずもがな全部割れてるにゃ!』

『あら~一瞬この会場揺れたら~』


 勢いが強すぎたのか、拳が地面に付いた瞬間、衝撃により建物自体が揺れたらしい。

 スタッフの皆さんも慌てている。


『すみません……やりすぎました』

『あはは~、これは私の負けですね、これはメイドの称号はフィナリアに差し上げます』


 ノアさんが笑顔で歩いてくる。

 本当にこれで決着ついてもいいのだろうか?


『ですが……』

『私はもともと勝てるとは思っていませんでした。

ただ単純にあなたと勝負をしたかったんです。

とても面白かったです。

けど!掃除対決は勝ちましたからね!?』


 ノアさんが笑顔で手を差し伸べてくる。

 特に断る理由もなかったので、私は笑顔で握り返した。



:確かに!


:パワーでは負けても早さでは勝ててる!


:全部めっちゃいい勝負だったわ


:両方メイドとして最高!


:最後めっちゃ感動したわ



『とりあえず今回の勝負は2対1でフィナリアさんの勝利にゃー!!』

『とてもいい試合だったらよ~』


 周りから拍手が沸き起こる。

 私とノアさんは手を繋ぎ、両手を広げお辞儀をした。

 2人のメイド・使用人対決はこれでにより終了となる。


『それじゃあ、今回の生配信はこれで終わりにゃー! みんな楽しんでくれたら高評価とフォローお願いするにゃー!!』



:絶対する!!


:もはや神回で草


:いやあ、こんなにおもろい生配信なんかあったか??


:まるでテレビのエンタメを見ているみたいだwww


:↑それな!!



 私はそんなコメント欄を眺めていると、前の紙に【配信終わりました】

 という文字が見える。


「いやあ~お疲れ様ですにゃ」

「ちょっと、コーラ飲みすぎたからお手洗い!!」


 花林が走っていく。

 見る限り結構飲んでいたのでそれもそうだろう……


「気を付けるデース」

「お疲れさまでした皆さん」


 私は1人ずつ頭を下げる。

 生配信や動画配信に慣れてきたとはいえ、まだまだ難しいところもある。


「お疲れさまでした。ノアさん」

「お疲れさまです~時間もまだありますし、今回の対決についていろいろと話しませんか?」


 ノアさんが首を曲げながら聞いてくる。

 特に断る理由もないので、私は笑顔で頷く。

 そうしてしばらくの時間、私とノアさんは今回について楽しく語り合うのであった。

 

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