第29話 大型トラック・大型バス・大型トレーラーで24時間生活(中編) ⑥


 現在。所持金、フィナリア7000円・ディア王女9000円・スメラ嬢7800円。


場面はフィナリアに写る。

フィナリアは何やら公園を歩いている。


『そういえば1人で歩いたことないです。皆さん1人の時ってどうしてますか?あとで見返すので教えてほしいです。すみません人前なので、こんなささやき声でしか話せませんが……』


:その、上から覗き込むように首を曲げて、困り顔しながら、囁き声で質問するのやめてくれ、ギャップと可愛さで〇亡する人出てくる。


:ぐはッ!?


:バタ……


:↑2人やられてるぞ~!!


:とんでもない爆弾投げてきやがったな!フィナリア!だが好きだ!


:カメラワーク俺たちが見上げてるように撮ってるのは悪意ある!最高だ!


:なんだかんだ動画というものを1番分かってて草


『とりあえずお金を使いきってください。とは言われてないので、この辺りを散歩しますか』


ということで、フィナリアはゆっくりと散歩を始めるのだった。

しばらく歩いていると、何やら、乗り物の周りに人だかりができていた。


『すみません。何かありましたか?あ、失礼ですが動画良いですか?』

『あんた配信者かい?いや~この溝に車のタイヤがはまっちまってねぇ……』

『分かりました。外せばいいのですね?』

『外すって……お嬢さんこれ何キロあるのか分かってるのかえ?』

『すみません、これ持っててくれませんか?』


フィナリアはゆっくりと車を見渡す。

そしてそのまま前にしゃがむと、そのまま前側を上に持ち上げていく。


『お嬢さんあんた何もんだね!?』

『は??』

『……』

『ポカ――ン』


:は??


:え???


:そんな簡単に車って持ち上げられるのか?


:しかもこれ白ナンバーだよな?モザイクしてるが車種的に軽じゃないよな?


:パワーえげつなすぎだろ!!


:アスレチックから、なんかフィナリアだけパワーおかしいと思ってたけど……


:そして何で余裕顔なんだよ……


『後ろもすればいいですよね?よいしょ』


フィナリアは車の前輪を溝から出す。

後ろも同様、持ち上げて車を救出する。

無事に終わった時には、観客全員が白目をむいて立ち尽くしていたのだった。


『あ、その……ありがとうございます……重くなかったですか……?』

『いえ、大丈夫でしたよ?これくらいの大きさならば全然問題ないです』

『……一応ミニバンなんですけど……』

『そんなことよりです。自力で動きますか?』

『え?あ、いえ、パンクしてるので無理そうですね……』

『ではまだ時間ありますので、私が後ろから押していきます。早く乗ってください。修理できる場所に向かいましょう』

『……………』

『もうツッコミは諦めるぞ』


そうして観客にカメラのお礼を言ってカメラを受け取る。


『あ、それと紐ありますか?なるべく太いやつで』

『一応牽引用のロープなら……』

『それで構いません。では後ろに取り付けてから押します』


フィナリアはロープを結ぶ場所を教えてもらい、ミニバンの後部に取り付ける。


『それでは押すので、操縦はお願いします』


フィナリアが後ろからミニバン押していく。


:人力キャリアカー


:バケモンすぎ


:え?どういう状況?


:↑溝にはまって故障したミニバンを、自力で持ち上げ救出からの、人力で修理場所に向かってる。


:人間?


:本人たち曰く、異世界人とのことです


:こりゃ納得だわ……


:使用人ってことはメイドだろ?異世界のメイドって全員こんなパワーあるのか?


:護衛兼ねてるならワンチャン……


そうして押し始めて20分が経過する。

フィナリアの目線には、頑張れー!と車の中から、応援してくれている子供2人が見えた。

もちろん動画ではモザイクである。

そうしてカットが入り。

車は山の頂上付近で停車していた。

その理由はと言うと……


『ここから結構、急な下り坂ですね』

『さすがに危ないです……』

『修理屋までどのくらいの距離ですか?』

『ここ降りて、すぐくらいですけど……』

『では行きましょう。』

『ですが、今降りるのは辞めといた方が……ブレーキも壊れてます』

『問題ありません。この紐があります。さ、乗ってください、操縦だけはして下さい』


皆が車に乗り込んだことを確認したフィナリアがまた車を押す。

そして、坂に入った車は、そのままゆっくり速度を上げていく。

ガシャーン!と音が鳴り、車が途中で止まった。

フィナリアが後ろで紐を支えている。


『このままおります』


フィナリアが引っ張りながら歩いて坂道を降りていく。

まるでペットの散歩である。


:??????


:自動車の散歩?


:↑初めて聞いた


:てかこの坂道でミニバン支えられるか?普通


:フィナリアは普通ではない。だから支えられてる


:フィナリアなら、200リットルドラム缶満杯でも持ち上げられるぞ


:ミニバンを余裕で持ち上げた時点で余裕なんだよな


『なんか視線がすごいですね』


気が付いたら、後ろに車が大量に並んでいる。

何が起こっているのだろうか??


:そりゃ坂道を、人力!でミニバン引っ張ってたらこうなる……


:情報量えぐいって


:パワーイズパワー!!


:握力気になるわ


:今のところ、コントローラーを握りつぶす程度


:60キロくらい?


:↑絶対もっとあるだろ


:リンゴ潰してほしいな


:雑談生放送でリクエストしたらやってくれそう


:若干楽しみ


そうして早送りになり、どんどん坂を下っていく。

そうしてついに、ミニバンは修理屋に到着した。

ミニバンに乗っていた人たちからはすごく感謝され、周りからは拍手、修理屋からは、目を丸くされていたフィナリアなのであった。

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