第20話 ゲーム生配信(フィナリア編)①


 2回目の生配信が終わり、リビングでくつろいでいると、何やらガサガサという音が聞こえる。


「あ! フィナリアさん! ちょっとこれ持って!」

「あれ? みさきさんどうしたのですか? ……ってなんですかその荷物……」


 私は玄関前に積まれている大きな段ボールを見る。


「ふふふ……3人分のパソコンとゲーム機がついに届いたんよ!」

「おお~! 本当ですか!」


 そう、パソコンとゲーム機は約一週間ほど前に、みさきさんと相談して注文してくれたのだ。


「これでいつでも配信できるで! 部屋は、とりあえず4部屋あるから、どの3部屋使っていいから個別に配信してもろて」


 つまり、3つの部屋に運び入れたらいいということか……


「了解です。まとめて運びますね」

「うええ!?」


 私は驚いているみさきさんをよそに、パソコンとゲーム機の入った段ボールを9個重ねて持った。

 案外軽くて驚いた。

 みさきさんは1個持つのに結構苦戦していたが……


「ほんまにとんでもないバカ力……」


 まぁ、その様子を見ていた、みさきさんからはすごく驚かれたのだが。

 さて、舞台は整った。

 後は、本番まで待つだけである。

 

 

 そうして2日後。生配信当日。


「今日からは個別ね! 皆は内容決まったのかしら? 私は、決まったわ!」

「どうせディア王女の事だから、とんでもない物だろうけど」

「違うわよ! 【AMEK】よ! 3人共闘らいいし楽しそうだわ!」


 何とも偶然。

 私も実は【AMEK】を配信しようとしていたのだ。


「私も【AMEK】のゲーム配信」


 どうやらスメラ嬢も同じゲームらしい。

 つまり……


「全員同じゲーム配信なんですね」

「それじゃあ皆行ってらっしゃーい!」


 みさきさんが手を振り私達を見送った。

 いよいよここから本当のゲーム開始である。


『スラム国ーファイ! オー!!』



:オーー―!!


:きぇええ!!


:生配信来ちゃー!!


:何するん??



「はい、皆様、え~……ちょっと緊張しますね」


 1人で配信するのは初めてなので、ものすごく緊張しているのが私でもわかる。

 いつもならば、私1人で戦いとかできていたのだが。



:緊張してる?


:珍しい!!


:まぁ、そりゃあ緊張もするわな


:ディアも配信し始めたぞ


:3人同時個別生配信!!?


:追いつかんてwww


:今、俺は2画面で見てるぜ! 2人の声は跳ね返りすぎてどっか行っちゃってる


:おいwwwやめろそのネタwww


:大反響してんじゃねえかwww


:??? なになに??


:↑某アイドルグループの、大〇智VS中〇正弘〇で検索したらわかる



『え~今日はお待ちかねのゲーム生配信でございます。今回プレイするゲームは……【AMEK】です。分からないことだらけですので、アドバイス等よろしくお願いいたします』



:おおおおお!!!


:AMEKきちゃーーー!!


:ヒカリ――!!キャリーしてあげてくれー!!


【猫鎌ヒカリ✔】:にゃにゃーん!まずはチュートリアル終わらせるにゃー!!


:ディア王女もスメラ嬢も同じAMEKか


:スラム国もAMEK配信者大会出れるってことか??


:さすがに初心者にはきつくない?


:行けるのは行ける。猫鎌ヒカリがパテに入れば


:ヒカリって大会には出ていなかったっけ?


:出てないよ



「画面見えますか?」


 私はチャットの方を見る。



:みえるよー!!右下に!


:↑フィナリアの顔じゃねえか!


:うむ、映像も大丈夫



「それでは見ていきましょうか」


 私は軽く、このゲームのオープニングを見る。

 どうやら何か飛び武器? や拳などを使い相手を倒していくゲームらしい。

 さらに、それぞれキャラに能力が割り振られていて、敵の居場所が分かったり、敵の足を遅くしたり、チクチクと攻撃を当てることが出来るとのこと。


『ふむふむなるほど、左スティックで移動……右スティックで視点移動……なるほどなるほど……いろいろできるのですね! これは面白そうです』



:PAD勢か


:↑まぁいいんじゃない?初めてならお金もないだろうし


:まぁ確かにな

 

「PAD勢って言うのですね! 勉強になります」



 ちゃんとコメントを読むのも忘れない。

 まぁ、読んでいるというか流れているコメントに、返答しているだけなのだが。


【猫鎌ヒカリ✔】:にゃにゃーん!! チューとリアル終わったら、ひとまず試合に行ってみたらいいにゃー


:あ、一応ボイスチャットは切っておいた方が良いですよ!!



『ボイスチャット? なんですかそれは……』



 また知らない単語が飛び出してきて困惑する。

 やはりこのゲームは難しい。



:設定……歯車……円形の周りに突起が付いているやつの所の下らへんにあると思う



「円形の周りの突起……これですか?」



:それそれ!!


:本当に何も知らないのか……


:スラム国の初期設定忘れんなよ? 異世界人だぞ。知らなくて当然だ。


「これ……ですかね? あぁ。ありました。ありがとうございます」


 ということで、私は早速設定を終え広場に戻る。

 広場には、3人が待機できる空間になっており、真ん中には今私が使っているキャラが表示されている。


『これってどれでいけばいいのですか? 【フリーマッチ】【ランキングマッチ】【パーティーマッチ】がありますが』


:初めはフリーでおっけ


【猫鎌ヒカリ✔】:フリーでいいにゃー!!



「分かりました。ではフリーマッチで行ってみます」


 私は、そのまま出撃ボタンを押した。

 しばらく待っていると、何やら、ガチャン! と音が鳴り画面が変わる。

 どうやら、ここで再びキャラを選択できるらしい。



「ひとまずこのキャラで行きます」



:レインハートかな?


:それは、アビリティで回復キャラだね、そして必殺で救援物資が落とせるキャラ。


:初心者には使いやすい


:さぁ……どうなるかな! 初試合


:ファイト―!!


:みんなースナイプはするなよー!!


:ちなみに、始まった時の左下にいるキャラたちは味方やで!!


 そんなコメントが絶え間なく流れているのだった。

 確かに私1人で入ったのに、5人も増えているのはおかしいと思ったが、どうやら味方とは勝手にマッチングされたらしい。

 ということでいよいよ始まりのカウントダウンが始まる。

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