第12話 はじめての飲食店(2)


動画を公開する1日前のこと。


ようやく調べ終えた私は、いつも通り下見に向かう事にした。

まぁ、今回は3人で行くので下見はほぼ必要無いのだけど、一応念の為だ。


「それでは行ってきますね!」

「はーい気をつけてねー!」

「私も行くわ!」

「あんたは明日いくでしょバカ王女」

「また私の事……ふぅー!怒ると疲れるわ!」

「じゃあみさきさん、2人をよろしくお願いします」

「もちろん!」


ということで私は手を振りながら、外に出た。


季節的には冬で、風も少し冷たく感じる。

私達が来た時は、まだそこまで寒くはなかった。


「うーむ……あっちに帰る手段も無いですし……どうしましょう……」


そんなことを考えていると、信号にひっかかった。

前には1人女の子が立っている。

身長的には私と同じくらいだろうか。

女の子同士なので、別に距離を開ける必要が無い。

何やらソワソワしているようで、青になった瞬間歩いていった。


「!危ない!」

「え?キャッ!」


私が慌てて手を掴み引き戻す。

すると今まで歩いていた所を、ちょうど車が猛烈な速度で走っていった。


「ありがとうございます……助かりました」

「いえいえ、こういう仕事してますから。周りの気配りは慣れています」

「……そうなんですね」

「顔が赤いですよ?大丈夫ですか?」

「だ、大丈夫です!あ、ありがとうございました!」

「感謝なんて必要ありません。私が助けたいから、助けただけですからね」

「かっこいい……」

「ありがとうございます。それでは私は用事があるので失礼します」

「はい!ありがとうございました!またいつか!」


私は右手を横に振った。

これがさようならの挨拶らしい。


「またいつか、か、会えたらいいですね」


私はその女性とお別れしたのだった。



そして今。

夜亜きらりの配信にて。


「って言うことがあったんだー!!凄いかっこいいよねー!!私好き!!」


:完全に堕ちてて草


:その助けた人イケメンすぎやろ!


:助けた人がVライバー世界1位の夜亜きらりって知ったら……


:↑KOTORIM世界一位な?


:カッコかわいい系かぁ……


:そういえば、最近デビューした新人もそんな感じだったな1人


:あ~あの使用人か……Vではなかったけどな


「ちょっと~?他ライバーの名前だすのはマナー違反だよ~?だけど気になる!!」


:気になるんかよwww


:今ちょうど配信……生配信してるやんけ!!


:マッ!?だけど俺はここを見る!


「うーむ、どうせならみんなで見に行こうか!早く教えて頂戴!」


:ノリノリで草


:まぁ、いいかな【スレム国】ってグループ名なんだけど


「【スレム国】っと……あったわ。これね」


『えー皆様ごきげんよう。』


「ぎゃわああああ!!この人だわあああ!!」


:なんだなんだ!!?


:耳いてぇええ!


:反応が猛列なファンで草


:キャラ崩壊しまくっているのですがそれは……


というわけでキャラ崩壊した夜亜きらりでした。



一方そんなことはつゆ知らず私は、普通に自分の流している動画に見入っていた。

ちょうど、店に入って注文をしている場面。

カウンターと呼ばれる席らしく、調理する場面を、見られるらしい。

おすしとは……ここまでのサービスを受けられるとは……


「これいただけるかしら?」

「では私はこれを……」

「すみません、ディア王女にはマグロを、スメラ嬢にはサーモンをお願いできますか?私もマグロでお願いします」

「あいよ!」


前に立っている人が料理を始める。

どうやら魚をさばいているようだ。

私も魚をさばく経験はあったが、ここまで上手には出来ない自信がある。


チャット


:マグロ!いいねぇ!


:サーモンも格別だぞ!


:ウニもいいんだけどなあ……


:分かるウニも最高


:なんでもうまいだろう!


:確かに!


【夜亜きらり✔】:今日知った!ここのお寿司私も好き!今度一緒に行こうね!


:!!!???


:は????


:きらりーー!!!


:バケモン来てて草


:猛烈にやってきて、お誘いして帰っていくの台風やんけwww


:てかきらりも配信してるやん


【猫鎌ヒカリ✔】:きらりじゃーん。だが甘かったな!私は最初の動画から見ているのだ!


:!!!!!?????


:一人語彙力飛んでて草


:カラミア学園出身Vライバー2人来てて草


:しかもヒカリは初期からかよwww


私は何が何だか分からないが、何やら2人がやばいということだけ分かった。とりあえず調べることにしよう……


チャット


スメラ国:使用人フィナリアで、す。お2人、のチャンネル、調べても、いいですか?


【夜亜きらり✔】:全然いいよー!


【猫鎌ヒカリ✔】:いいにゃーん!


私は2人のチャンネルを軽く開いた。

するとそこには……


「と……登録者10万人超……夜亜きらりさん……登録者8万5千人超……猫鎌ヒカリさん……」


明か別次元だと思う。

私たちですら、まだ100人も登録者がいないのだ。


チャット


スメラ国:す、すごいです!!


:これは本心だろうな


:てか動画の王女も美味しそうに食べてるなあ



結局その動画は、2人の衝撃で、あまり見れなかったが、結果的には、ディア王女がマグロ10貫、スメラ嬢がサーモン12貫、私はマグロとサーモンを5貫ずつ食べたのだった。

このお寿司という食べ物は私たちにとって最高のひと時をくれたに違いない。そう思う。

そのくらい美味しくて、ディア王女は発狂。スメラ嬢は無言。私は目を丸くするといった、反応になった。



「めちゃくちゃ美味しかったわ!皆今すぐにでも食べに来なさい!この私が保証するわ!」

「ごちそうさまでした」

「ディア王女様普段褒めないのに珍しいですね」

「だっておいしかったもの!」

「そうですか、それは良かったですね。それではこの動画はこれで終わらせていただきます。私たちの反応が良ければ、ぜひとも登録、高評価よろしくお願いします」


ここで動画が終わった。


最後にはもうコメントが見えないくらいの速度で、コメントが流れていたのだった。

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