第11話 はじめての飲食店(1)

【はじめての飲食店】


 動画開始1分前


 チャット


:今回ライブ動画形式やんけ!!


:前回のコメントしっかり読んでてワロタ。


:このまま動画をライブ形式でずっと投稿してほしい。コメント書くとネタバレされる。


:↑それはコメント見なかったらええやで。


:待機俺らしかいないんだがwww


:いきなりのライブ形式だもんな。俺らが速すぎるだけだろ。


:は!? ライブ形式は聞いてない!! あっぶねえ!


:まぁ恐らく、動画だとは思うで。


フィナリア:フィナリアです。今回、から、みなさんと、動画を一緒に見たいです。よろしく、お願いします。


:良く言った!


:ちゃんと日本語の勉強してる!あとは句読点の位置さえわかれば……


:句読点云々はまだ無理だろ……



 そうしていよいよ10秒前のカウントダウンが始まった。

 私も、この状態で動画を見るのは初めてなので、なかなか緊張する。

 コメントも止まっていない。


「スラム国ーーファイ!」

「「「おー!!!」」」


 チャット


:オーー!


:ウオオオオ!!


:キエエエエ!!


:1人奇声発してるやんけwww


:草


:今日の挨拶はスメラ嬢スタートか


 動画の画面に移る。


「今回は皆で飲食店に行きたいと思います」


 そう今回は飲食店動画なのだ。

 まぁ……私は内容すべて知っているのだけれども。


「楽しみだわ! どんな肉料理があるのかしら!!」


 ディア王女が楽しみそうに叫んでいる。

 結構マイクから離れてはいるが、かなりの声量なのか音にヒビが入っていた。

 編集したのは私なので、気が付いていたが治す方法がわからなかったので、そのままにしておいた。


「さすがに肉料理は贅沢し過ぎでしょバカ王女」


 スメラ嬢が腰に両手を回しながら話す。


「はあ!? スメラ! 私にいちゃもん付ける気!?」


 チャット

:喧嘩キタ―――!!


:いつも通りwww


:でもおもろいんよな、素で喧嘩してるっぽいし。見てて不快にならん。


:これ素なん?


:絶対素やろうな。


:喧嘩する人募集中!


:お前の場合暴力喧嘩だろ。


:いやいやカットしろよwww


:はぁ〜? ディア王女様とスメラ嬢様の喧嘩を拝むことが出来るんだぞ〜? 最高やろ!


:完全に虜にされててワロタ。



「はい! 喧嘩はそこまでですよ! 今回向かう場所はなんと……【田倉亭たぐらてい】です!」


 私は片手を右に振りながら話した。

 この動作に深い意図はない。


「たぐら? なんですの? 詳しく教えなさい!フィナリア!」

「そういう名前でしょ?」


 ディア王女の問いに、スメラ嬢が代わりに答えてくれた。


「はい! 主に寿司という食べ物を、食べられるところです」


 チャット


:田倉亭まじか!! OK出たんか!?


:全然知らねぇんだが


:田倉亭知らないマジ?めっちゃ美味いよ。


:けどあそこ高いんよなぁ……マグロ1貫で1万程するし。


:いや高すぎやろwwwぼったくりじゃねぇかwww


:回らない寿司屋なら安い方だぞ。他だと高くて4万はする。


 動画に戻る。


「ここです」

「なにここボロボロじゃない! ちょっと! フィナリア!」

「これは……」

「はい、合ってますよ。築150年続いてる店だそうです」


 正直調べておいて助かったと思う。

 まぁ……日本語はまだ勉強中なので、昨日は読むのに苦労したのだけど。

 この世界では、言語は同じなのに書き方が違うので困惑するのだ。


「とりあえず入りましょう」


 私は店の方に手を伸ばした。


「分かったわ!」

「うるさい」

「なんで……!」


 テロップ【長くなりそうなのでカット】


チャット


:草の言葉以外思いつかんwww


:カット使えるようになったの!?


:フィナリアの成長速度やばwww



 一方その頃、とあるライバーが生放送を始めた……



『こんキラ~☆カラミア学園3年、夜空からやってきた女神! バーチャルライバーの夜亜よあきらりだよー!』


 夜亜きらり、それは青いドレスに、背中には白い大きな羽を持っている女神である。

 この日本という国を守っている大女神であり、皆とかかわりたいために、動画を始めたらしい。

 ちなみに声高めの可愛い声をしている。


 チャット


:待ってました!!


:キター!!


:神降臨!!!!


「神降臨だなんて、そんなに言われたら、照れるなぁ……おかえし!」


:来るぞ! 皆構えろ!


:ラジャ!


:('◇')ゞ


:おうよ!


:かかってこいや!


「ねぇ~そこの人~、ほらもっとこっちにいらっしゃい。ふふふっ……大丈夫よ~ほら力を抜いてぇ、だめよ前を向いて。ほらもっと。恥ずかしがらなくていいのよ~? ちゅっ! えへへ~~さっきの・お・か・え・し・♡」


 まるで耳の横でささやかれているような声になる。 

 ASMRだ。


:アァァァァ!!


:ギャアアアア!!


:俺は死んでもいいぞおお!!


:わりい。俺死んだ。


:それにしても今日やけに機嫌良いね?


「あっ! 気付いてくれた!? そう! 実は、昨日超格好いい女の人が私を助けてくれたのよ!!」


 きらりが両手を広げている。


:女神が救出されたの?


:さっきとテンションの差が激しくて好き


:どっちが本性なんだか……


:ああ!? どっちも本性だろう! いただきます。


:俺の女神を食うな。


:お前のじゃねえよwwww俺のだわ


:お前のでもねぇよ


:ここの一致団結好き


 そんな会話がここに流れているのだった。

 そして、その出来事は昨日に遡る。

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