第7話 動画の下見

 私達は無事、自己紹介動画を出したので、早速私は、ディア王女様とスメラ嬢様の動画を考える。

 この世界には魔法が無いため、魔法によるパフォーマンスが出来ない。

 とはいえ、全世界が見れるとなると特別なものじゃないといけない。

 私は、自己紹介動画のコメントと言うものを、じっくりと眺めている。

 するとそこに、私の目を光らせるコメントがあった。

 それは……


 :ディア王女とスメラ嬢の『はじめてのお買い物』やって欲しい!


 :↑だったら料理も追加だろ。


 というコメントだった。

 確かに料理と食材調達は、使用人である私の仕事。

 しかし、それはあくまでも、ディア王女が私に命令したことで、発生した仕事でもある。

 ここはディア王女の国では無いので、王女に買い物をさせることが可能になるという事。


「確かにいい経験になりそうですね」


 みさきさんに伝えると、ノリノリでOKが出たので実行しようと思う。

 私は明日、朝早く下見をするために、すぐベッドに入るのだった。

 一応ディア王女とスメラ嬢とは、とりあえず別部屋にしてもらった。

 そうじゃないと、目覚まし時計という道具?が2人を起こす可能性があるらしい。


 チリリリ!


「うーん……もう朝ですか……これは素晴らしいですね……起きやすいです」


 私は教えてもらったように、時計の上を押した。

 すると、さっきまで鳴っていた音が消え、静かになる。

 私は、支度をしてキッチンに歩いていく。

 既にみさきさんは起きていた。


「おはようございます。みさきさん」


 みさきさんはどうやら朝ごはんを作っているところらしい。


「あっおはよう!ところで次の企画何にするか決まった?」


 一応決まってはいる。

 それは……料理。

 おつかいに関しても検討はしたのだが、あの二人のおつかいは……私としては避けたい。

 不安でしかない。


「それが、まだ決まらなくて。初めてなので簡単な料理にしたいのですが」


 みさきさんはすこし考え、はっと思いついたかのように、人差し指を立てる。


「だったら焼き飯とか卵焼きかな〜」


 焼き飯とやらは知らないが、卵焼きは知っている。

 そういえば、私も初めての時は卵焼きで練習した。

 懐かしい。


「まぁ結局、卵は必要だから、2人に買ってきてってお願い出来る? 卵が丁度なくて、お金は渡すから」


 ならばちょうどいいか……

 料理はなしにして、おつかいをメインに。


「わかりました、では、先に下見してきます」

「道わかる?」

「はい、昨日、地図見て調べさせてもらいました」


 そう本来は、料理の予定にするはずだったのだが、これもメイドとしての本能なのだろう。

 一応、おつかいになる可能性も考慮して調べておいたのだ。


「気をつけてね! ここからスーパーまで結構遠いから」


 みさきさんが玄関まで見送ってくれる。

 朝ごはん食べてないが、まぁいいでしょう。


「はい。ありがとうございます」


 という事で、2人のことはみさきさんに任せ、私は家を出ていった。

 昨日も思ったのだが、ここは結構な田舎らしく、周りには田んぼや畑が並んでいる。

 結構な距離があると、みさきさんは言っていたが、まぁ、歩いていけない距離ではなさそうだ。


 その後、私は地図に書いてある道をひたすら歩いて、無事スーパーセンター? にたどり着くことが出来た。

 時間にして片道約45分程度だろう。

 まぁ、余裕である。


「どうだった? フィナリアさん」


 帰ってくると、みさきさんが玄関まで歩いてきてくれた。


「はい、楽しかったです。あまり歩いたことの無い道なので、足が痛くなりましたが」


 そう、私たちは基本土でできた道しか歩いたことがない。

 なのでこのような固い地面を歩くのは、慣れていないのだ。


「そっかぁーあの2人だけで行けそう?」

「行けるとは思いますが、心配です。なので、後ろから私が着いて行こうと思ってます」


 あの2人からしたら片道45分の歩きは余裕だろうが、ここは異世界。

 もしもということがある。


「それがいいかもね!じゃあ明日よろしくね!」

「かしこまりましたみさきさん」


 次の日。


「じゃあみんな並んで並んで〜左からフィナリアさん! ディアさん! スメラさんね! 私はカメラの後ろにいるから、私のことは居ないものだと思ってね」


 私たちは、部屋の真ん中に集まっている。

 これから新たな撮影が始まる。


「了解しました」


 私はゆっくりと頭を下げる。


「わかったわ!」


 ディア王女もやる気満々らしい。


「わかりました」


 スメラ嬢も声的にワクワクしてる気がする。

 何せ私達【スラム国】の初企画動画、楽しみじゃないわけがない。


「よし!カメラ調子よし!配置よし!マイクよし!行きます!3!2!1!」


 みさきさんがカメラのボタンを押す。

 カチッと音が鳴った。


『スラム国〜ファイ!』

『『『おー!』』』


 3人が右手を上げて挨拶する。

 単純に挨拶無しで始めても良かったのだが、それは、自分でも物足りないと思ったので、ディア王女様とスメラ嬢と相談した結果。

 誰か1人がコールして3人で叫ぶという挨拶を、私は昨日提案した。

 初めということで、今回のコールは私である。


『えー、それでは早速。ディア王女様。スメラ嬢本日は私が企画を考えてまいりました』


 私は2人の前に手を挙げて立った。

 これだけでもものすごく緊張している。

 使用人なので、表情に出ないように特訓してたのが不幸中の幸いだろうか。


「へぇ〜!フィナリアが考えたのね!なら楽しみだわ!」 


 ディア王女にそう言われ嬉しさがこみあげてくる。


「別に誰が考えでも同じでしょ」


 スメラ嬢はいつも通りため息を付きながら呟いている。


「うるっさいわね!毎回毎回!」

「事実だし」


 そろそろ止めないといけない。

 ということで私は早速企画名を発表することにした。


『とりあえず発表します! 私達1本目の企画は……【ディア王女とスメラ嬢! はじめてのお買い物に挑戦する! 】です』


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