第6話 自己紹介動画
私達は投稿した自己紹介動画を見る事にする。
本来1日経たずに動画あげるのは、なかなか難しいらしい。
今回は簡単な編集と撮り直しがなかったために、1日で上げることができたのだ。
『皆様ごきげんよう! この私、スメラですわ! 好きなことは遊ぶことですわ! ちょっとフィナリア! これちゃんと撮れてますの!?』
画面に映し出されたのは、まぎれもないディア王女だった。
ディア王女は、不安がっているのか画面に指をさしている。
『はい、ちゃんと撮れていますよ』
後ろから私の声が聞こえた。
この時私と、みさきさんとスメラ嬢はカメラの後ろに待機している。
『早くしなさいよバカ王女』
『うるさいわね! 待ってなさいよ!』
再び画面外からのスメラ嬢の声と、それに反論するディア王女。
相変わらずすごい喧嘩である……
そんなことより、私達が、この小さな画面の中にいることが、不思議である。
これがカメラという道具……
『そして! 私の嫌いなこちょ……私の嫌いなこと! はめんどくさい事ですわ! はい! 終わり! 以上ですわ!』
ディア王女は最後怒涛の紹介で終わった。
画面が真っ暗になったタイミングで、私は画面を押す。
昨日教えてもらったのだが、画面を1回押すことで映像が止まるらしい。
「こうしてみても、なんというか……ディア王女でしたね」
私の感想は、やはりディア王女はディア王女だった。
という感想に尽きる。
「はぁ……こんなのと一緒にしないといけませんの?」
スメラ嬢は頭を抱えている。
「早く次見るわよ! フィナリア!」
「かしこまりました」
私は再び再生ボタンを押した。
そうして現れたのはスメラ嬢で、見たところ、結構緊張しているようだ。
撮っているときは、私自身も緊張していたので気づかなかった。
「皆様ごきげんよう。私第1級伯爵スメラと申します。
好きな事は静かに生活すること、嫌いなことは騒がしいことです。よろしくお願いします」
そこでまた真っ暗になった。
なんというか結構、普通の自己紹介である。
「なんかつまらないわ!」
ディア王女が腕を組んでいる。
1番本気なのは私ではなくディア王女なんじゃないだろうか……?
「バカ王女と違って、私は目立ちたくないの。目立ちたいなら勝手にどうぞ」
まぁ、スメラ嬢は昔から目立つのが苦手で、ずっとパーティーでも目立たない後方支援の魔法使いをしていた。
言いたいことはわかるのだが……
「何回も何回もバカ王女って……」
「はいはい、ギャーギャー言う前に、まだフィナリアが残ってるわ。黙りなさい」
「誰のせいよ!スメラ!」
今回はうまいことスメラ嬢が軌道を戻してくれたので、何とかなった。
スメラ嬢もディア王女も、度合いはわきまえている方だとは思う。
だから、どれだけ言い争いしようとも一応は止められている……はず。
「とりあえず行きますよ」
いよいよ私の番が回ってきた。
私もつまらないと言えばつまらないと思う。
というか私は、王女の使用人なので、それくらいしかアピールポイントがない。
「皆様。私は、ディア王女とスメラ嬢の使用人をしています。フィナリアと申します。基本的には2人の仲介役やお世話係をしています。 私の好きな物は……基本ありません。強いて言えば、ディア王女とスメラ嬢です。嫌いと言いますか……大変なことは、2人の喧嘩の仲裁です。よろしくお願いいたします」
私は直立不動で、ただ口を動かしているという名間か怖い映像になっていたようにも思う……
そしてその後、画面に何か文字が浮かび上がった。
【次回より! スラム国アカウントにて3人の動画が公開されます! 皆様よければ、この動画の高評価、アカウントのフォローよろしくお願いいたします!】
という文字が流れ動画が終わった。
「はっきり言ったわねフィナリア!」
ディア王女が私の顔を見てくる。
まぁ……本音をつい言ってしまった。
「えっと……まぁ、喧嘩は別にかまいませんが、ここは昔の世界じゃありません。少し抑えてもいいと思います」
私の言葉にスメラ嬢とディア王女は、若干不貞腐れた顔をする。
何がともあれ、これで私たちの自己紹介動画が終わった。
思ったよりも早く終わったのが、意外だった。
まぁ、自己紹介をしただけなので、そういうものなのだろう。
撮影をしているときは体感1時間ほどに感じたのだが……
「早速なにか来てますわよ!」
ディア王女が画面の下に何かを見つけた。
そこにはたくさんの文章が書かれている。
「本当。でも読めないし」
スメラ嬢は文字を読めない。
もちろんディア王女もだけど。
「これはコメントだと思いますよディア王女。スメラ嬢。みさきさんが言ってました。ここで動画の感想を言ってくれるみたいです。私が読みますね」
と私はゆっくり上から読み上げていく。
私は昨日勉強をしたので何とか読める。
コメント欄
:めっちゃおもろくて草。特にディア王女とスメラ嬢のキャラが濃すぎてwww
:流石にキャラ作りすぎ。おもんない
:ディア王女とスメラ嬢の使用人……フィナリアって強いの?
:使用人以外の2人料理出来なそうwww
:↑そもそも買い物すらできない説www
:3人が着てる服ってどこのやつ? 見た事ないんだけど。あとディア王女の冠? もしかして本物?
:↑そんなわけ無いだろ。業者に頼んで作ってもらったんでねーの?
:期待の新人! どんなグループになるのか楽しみ!すごくおもしろそうだったので、スラム国アカウントフォローしました!このまま見続けます!
というコメントが寄せられていた。
まだ公開して間も無いのだが……
さすがみさきさんのアカウントの力である。
「ちょっと!料理出来なそうってなによ!した事ないけどできますわよ!私は王女ですのよ!」
したことないけどできるというのは違うと思うしますが……ディア王女。
と言いたくなったが何とかこらえた。
「王女だからこそ出来ないんでしょ。馬鹿じゃないの?」
私の言いたいことを、スメラ嬢はすぐに言ってしまった。
「でも! 面白いとも言われているので、良かったのでは無いですか?」
喧嘩になる可能性があったので慌てて話を逸らす。
「その通り!」
ドアを開けてみさきさんが現れる。
毎回急にドアを開けてくるので、びっくりするのだ。
「始めで、こんなにコメントついてるなら充分! これから頑張って! 批判的なコメントは基本無視でいいから! これから自分たちのアカウントで投稿することになるけど、いいスタートになると思う!目標、収益化いこう!」
みさきさんもどうやら嬉しそうだったので、今回の動画は大成功らしい。
「分かりました。ありがとうございました」
私はみさきさんに頭を下げ、ディア王女とスメラ嬢を見る。
2人は動画をひたすら確認していて、止まる気配がない。
自分含め2人とも動画配信という物に、すっかりハマってしまった。
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