第4話 動画配信者


 しばらく歩いていると、こんどーが立ち止まる。

周りには大きな建物が並んでいる。

木じゃない素材で、できているものもあるらしい。

私たちの国ではありえない作りをしている。


「ここが私の家だよ!」

「これが家?」

「どう見ても家じゃない。ディア、世間知らなすぎじゃない?」

「うっさいわよスメラ!!あたしをバカにしないで!!この脳筋魔法バカ女!」

「どんなことだって言えばいいわ、どうせあんたはチビで、わがままで、バカなんだから、ずっと吠えていなさい」

「ディア王女様、スメラ嬢様、こんどー様の前ですよ」

「「全部こいつが悪いし!!」」


2人には本当に、大変な思いばかりしているような気がする。

まぁ2人をまとめるのが私の使命ではあるのだけれど。


「全然大丈夫よ!それと私の事は普通にみさきでいいよ!」

「分かったわみさき!」

「ディア王女、相手の名を呼ぶときは、さんを付けないといけませんよ。ここはあなたの国ではないのですから」

「いやよ!呼びにくいじゃない!ここに関しては、あの悪嬢のスメラと同意見よ!」

「は?私、他の人にはちゃんと、さん付けてるし。君のようなお子ちゃまと一緒にされると困るし」

「この、悪嬢のくせに生意気よ!」

「ディア王女様……残念ながら今回は、スメラ嬢の方が正しいです」

「まぁまぁ、とりあえずどうぞどうぞ~中に入って」

「失礼します」


ということで、私たちは中に入っていく。

中は思っていたよりも広くて、びっくりする。


「本当に広い家ですね……」

「なによ私の所の方が大きいじゃない」

「わがまま自慢娘は黙っていなさいよ」

「誰がわがまま自慢娘よ!!」

「そんなことより、あなたたちお金が欲しいんだよね?」


急にみさきが真剣な声で話しかけてくるので、私は慌てて頷く。

この世界のお金をまだ手にしたことがない。


「はい、このせか……この国の硬貨を分かっていません」

「ここではジャーン!これがお金となります」


ということでみさきが、大きさや色の違う硬貨や紙を出す。

これがお金なのか?金貨はないのだろうか。

とも考えてしまうが、私たちの国とは違うため、そんなことは言えるはずもない。

一応、このお金というものは、紙に行くほど高価になっていくらしい。


「ん~そうだねぇ……3人とも!動画配信に興味ない?うまくいけばお金稼げれるようになるとおもうよ!」

「動画配信?なんですかそれは」

「新しい魔法の名前かしら!?」

「この世界には魔法はないでしょ、バカ王女」

「適当に行っただけじゃない!」

「とりあえずみてください!それでわかると思います!」


みさきから、何やら四角い小さな物を渡された。

何だろうか?一応色んな絵が無数に描いてあるのだが。


「それの青色でKって書いている。アプリ押してみて」

「K?どれですか?」

「これこれ!名前は【KOTORIM】でコトリムって読むんだよね」

「これがそのどーがなんちゃらって?」

「ディア王女様。もしかして興味ありますか?」

「何をするのか分からないけど、興味あるわ!」

「まるで子供以下ですわね」

「それは通称動画配信アプリと呼ばれててね。ビデオ式生配信、テレビ式生配信したり、動画を撮ってその動画を乗せたりできるアプリだよ。世界的にも有名なんだよ?試しにしてみるから皆はこの部屋で開いてて待っててほしいかな。始まったら、上から通知来るから押してね。あとこっちの部屋には来ないでね」


みさきが別の部屋に入っていく。

何が何だか全く分かっていないので、言われるがまま通知というものを、待つことにした。

しばらくして上から何かが降りてくる。

そこには【おちゃ漬けさんの雑談配信が始まりました】

とだけ書かれていた。


「これはなんですの?」

「これが通知なのだと思います。とりあえず押してみますね」

「爆発するとかない?」


私は恐る恐る通知に触れると、そのまま画面が切り替わり、目の前にみさきが現れた。

いったいどうなっているのだろう?

一瞬で、この中にワープしたとでも言うのだろうか。

ただ隣の部屋から、声が聞こえるのが特に不思議。


『みなさんらっしゃっせーらっしゃっせー湯呑みの擬人化おちゃ漬けと申します~』


「凄いですね……本当にみさきさんが画面の向こうにいます」

「しかもなんかめっちゃ横に文字が流れてる!」

「読めないですわ」



コメント


:きたー!!


おちゃ漬け『ありがと~!きたよー』


:おひさー!ロケットドーン!


お茶漬け 『いやロケットー!じゃないから!湯呑みだから!そこは飛ばさないでもろて』


:じゃあ……おちゃにハンマー!


お茶漬け『割れちゃうから!そっとね!そっと!』


:名無しさんがハートを1000個送りました


お茶漬け 『あ~ハートありがとう~!そのハート大事にするね!』


「なんかすごく、盛り上がってるように思います」

「面白そう!私もやってみたい!」

「ディア王女だと盛り上がらないでしょう。考えたらわかります」

「うるさいわね!」

「ディア王女、スメラ嬢、そんな大声出したら、みさきさんに聞こえてしまいますよ」


私たちはみさきの配信が終わるまで、この部屋で、文字とのやり取りをひたすら見ることにしたのだった。

配信が終わると、みさきが隣の部屋から戻ってくる。


「ふあ~楽しかった!」

「お疲れさまです、みさきさん。はいどうぞ」

「ありがとー!」

「ところでおちゃ漬けって何なの?」

「そんなのも知らないのはバカですか?あっ、バカ王女でしたね」

「スメラも知らないでしょう!!」

「お茶をご飯の上にかけて、食べるものでしょう?庶民の家だと普通に食べられてますわよ?高貴な身分の方は、庶民の食事など気にしないでしょうが」

「まぁまぁ!喧嘩しないでもろてー!とりあえず今日はこれでひとまず休みましょ!夜ご飯は私が作ってあげる」

「みさきさん、本当にありがとうございます」

「全然いいよー!フィナリアだっけ?フィナリアさんも休んでー|」


私たちは、夜ご飯を食べ、もうそのまま寝ることにする。

魔族に襲われ、知らない国に迷い込んでしまった私たちだが、ここに来てよかったとは思う。

あのまま行くと、恐らく私たちは生きていなかったのだから。

私は2人が寝たことを確認すると、ゆっくりみさきの部屋に行く。


「今日はゆっくり寝ないとダメだよ?」

「もちろんわかっていますが……みさきさんに教えてもらいたいことがあるのです。みさきさんが良ければですが」

「私は、全然いいけど2時間だけなら」

「お願いします」


私はディア王女とスメラ嬢を支えていかなければならない。

文字すらも読めない使用人など、いないも同然。

私は隠れてみさきと一緒に、2時間程、勉強会をすることに決めたのだった。

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