第3話 ここは私たちの知らない世界でした


 しばらく私たちは道を歩いていると、たくさんの人がいる場所まで来た。

 しかし、私たち3人が目立ちすぎているのか、周りからの視線が私たちに集まっている。

 周りが明るいので、私たちはよく目立つのだ。


「おいみろよ! あの3人! コスプレイヤーか??」

「こんな暑い時間にあんなごつい服装、コスプレガチ勢は恐ろしいなぁ」


 近くにいた2人組が、私達の方を向いて何かを話している。

何を話しているのか分からないが、怒ってこないということは、大したことはないのだろう。


「ちょっと! あなた達! 私たちに何の用!?」


 王女が先に2人組に向かって叫んだ。


「げっ! 聞かれてた」


 2人組は慌てて逃げようとするが、王女は止まらない。


「私は王女なのよ! 何か文句があるなら堂々と言いなさい!!」


 この言葉にざわめき度が増していく。

 それはそう、こんなところで王女だと叫んだら、野蛮な人たちに捕らわれかねない。

 と言うか、なんでバラしてしまうのだろうか。

 しばらくして、奥から3人ほど歩いてくる。


「すみません。警察の者ですが、こちらでコスプレイヤーの方が暴言を吐いていると通報がありました」


 けいさつ……聞いたことのない言葉。

 ただ、服装を見る限り,ただの一般人とは違うらしい。


「なんですの? あなたは? 気安く私に話しかけないでちょうだい!」


 王女は、新たに来たけいさつ3人に対しても同じ態度で接している。

 仮にこの3人が、この国の兵士的立場であるならば、止めたほうがいい。


「警察のものです」


 そのけいさつがわからない。

 いったいどうしたらいいのだろうか?


「ちょっとそこの方! 私たちを助けなさい!」


 ディア王女がおもむろに、隣を歩いている女の子に叫びかける。

 呼びかけられた女の子はまるで、悪魔でも見るような形相で私たちを見ていた。


「え、えっと……」


 予想通り、かなり困惑しているようだ。

 とりあえず私から何とか交渉してみる。

 けいさつの方には少し時間をもらった。


「すみません、私は……フィナリアといいます。えっと、この場所に初めて来まして、今お金もない状態なのです。このままだと、私達生きていけません。どうか助けてほしいです」


 私はとりあえず、わかりやすく説明することにした。

 王女云々は後回しでも大丈夫だろう。


「は、はぁ……?」


 何を言っているのかわかっていない様子で、女の子は首をかしげている。

 見た目だと私と同年代だろうか?


「えっと、と……とりあえず私は、金銅美崎こんどうみさきと言うけど。つまり、住むところがなくなってお金もないから助けてほしいと?」


 その通り!

 私は首を縦に振る。


「悪い人じゃないなら、別にいいけど……今大騒ぎしてたって……」

 

 とある2人組が私たちに対して何か言っていたので、ディア王女はそれに対していったことを伝える。


「悪い人たちじゃなさそう……? うーん」


 こんどうみさきという人はずっと悩んでいる。


「ちょっとまだなの!?」


 しびれを切らしたのかディア王女が歩いてくる。

 相手もいきなり3人を助けるのは無理があるだろう。


 「ディア王女様、少し待っていてください」


 私は王女を再びスメラ嬢の近くまで押す。


「すみません。こんどうみさきさん。話の途中で」


 私は頭を手で書きながら、こんどうみさきに向かって歩いていく。


「うーん……3人……貯金は沢山あるし、お金を稼いでもらったら……」


 何やらぶつぶつ呟いている。


「こんどうみさきさん?」

「え? あぁ! えっと! 助けてくれってことだよね!? うん! 私は良いよ!」


 こんどうみさきさんは急に笑顔になった。

 私は、お願いした側なのだが、未だに理解が追い付いていない。


「本当にいいのですか?」


 こんどうみさきさんはゆっくり頷いた。


「ありがとうございます!」


 私は、後ろを振り向くと、ディア王女とスメラ嬢に交渉成功のサインを送る。

 おそらくこんどうみさきさんも、私もすでに吹っ切れている状態だろう。


「すみません警察のものですが、あなたがこの方たちを保護するということでいいですか?」


 けいさつという3人組が、こんどうみさきさんに話しかける。


「はい、大丈夫です」


 こんどうみさきさんは、頭を下げると、けいさつさんはどこかへ歩いて行った。


「とりあえず、大丈夫だった? ここだとちょっと目立つから私の家に案内するね、そんな警戒しなくても大丈夫だよ」


 こんどうみさきさんは、笑顔で両手を振っている。

 ディア王女とスメラ嬢は、長い長い沈黙の後、薄々頷いた。

 これにて、飢え死にすることはなくなったので、ひとまず安心する。

 私たちはこんどうみさきさんと一緒に歩いていくのだった。


 

「ここだよ」


 しばらく歩いていると、こんどうみさきさんが指をさす。

 こんどうみさきさんの家は、お城とまではいかないが、かなり大きい。


「こんどうみさきさんの家大きいですね」

「みさきでいいよー、これから一緒に住むんだし気楽に呼んでよ」


 みさきさんは私の質問に笑顔で答えてくれる。

 本当に素敵な方なんだなって思う。

 ディア王女とスメラ嬢は、ただ黙って私とみさきさんの後をついてくるだけだった。

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