第3話 ここは私たちの知らない世界でした


 しばらく私たちは道を歩いていると、目の前に、たくさんの人がいるところを見つけた。

なにやらとても視線を感じる気がする。


「おいみろよ!あの3人!コスプレイヤーか??」

「こんな時間まで、コスプレガチ勢は恐ろしいなぁ」


私たちの方を見て、ぼそぼそ言っている。

何を言っているのか分からないが、怒ってこないということは、大したことはないのだろう。


「ちょっと!あなた達!私たちに何の用!?」

「げっ!聞かれてた」

「私は王女なのよ!何か文句があるなら堂々と言いなさい!!」


さらにざわめき度が増していく。

それはそうだろう、こんなところで王女だと叫んだら、野蛮な人たちに捕らわれかねない。

と言うか、なんでバラしてしまうのだろうか。


「ねぇ、ねぇ、ちょっといいかな?」

「なんですの?あなたは?気安く私に話しかけないでちょうだい!」

「私は、金銅美崎こんどうみさきといいます。女子高校生です」

「こんどーみさき??じょし??何か良く分かりませんが、こんどーさんが私たちに何か?」


私が王女を庇い、代わりに質問する。

聞きなれない名前なので、分からない。


「ひとまず話を聞かせてほしいなあって」

「別に話すことなんてなにもないわ!」

「ディア!うるさい」

「スメラもうるさいですわよ!王女に対して!無礼よ!」

「そう!その王女のことで話があるんやけど!あなたたちはコスプレイヤー?」

「だから何ですの!そのコスプレなんとかっていうのは!全く知りませんわ!」

「コスプレイヤーというのは、キャラクターの衣装を着る人の事なんだけど」

「きゃらくたー?私は私ですわよ!!」

「つまり本当の王女ってことですか?」

「さっきからそう言ってるわよ!まさかあなたは、私を拘束するつもり!?」

「全然ちゃうから!大丈夫だから!私は怪しくないから!」


どうやら、このこんどーという人に悪意はないらしい。

純粋に、私たちが何者なのか聞きたいらしい。

という事で、ここからは接客が主な仕事である、私がしないといけない。


「じゃあ王女ってどっかの国の?」

「私が代わりに言います。ディア王女様は、スラム国の王女様でいらっしゃいます」

「えっと……あなたはこの子の姉さん?」

「……」


途端にディア王女の目が、絶望の目に変わる。

ディア王女は昔、家族を魔族に殺されている。

どうやら姉という言葉で思い出してしまったらしい。


「いいえ、私はディア王女の使用人フィナリアと申します。ディア王女の家族は……不慮の事故により今はいません」


この世界に魔族が居るのかは分からないが、居ないと言う可能性もある。

こう言うしかないだろう。

ディア王女が震えだしているのを、私はゆっくり背中をさする。


「なるほど、それは失礼なことを聞いたね。なるほどスレム国、聞いたことない国名……ではそちらの方は?」

「勝手についてきた、毒舌令嬢よ」

「ディアに毒舌って言われたくないわね、年上だしディアに関してはわがままな子供の分際じゃない。

まぁ、一応、あなた怪しくなさそうだし名乗っておくわ。スメラよ。呼び方はなんでもいいわ」

「スメラさんね、まぁこれで一応は大丈夫だけど……このまま3人で生活できそうですか?無理ならば、とりあえずお金が出来るまで、私が3人の面倒を見ます。一応ここの国は安全ですが、いざということがあるし。私のお金ならば大丈夫!あと1人暮らしの1軒家なので安心してください。私たちしかいませんから」

「そういう人ほど怪しいわよ」

「それは分かってるよ、でもスメラさん。お金なら私が全部負担するし、困ってる人はついつい放っておけないから」


私達は、全て放り出して逃げていたので、お金は1銅貨も持っていない。

ここで生活をするには、今のままだと不可能に近い。

ここは甘えるしかないと私は思う。


「分かりました。これからよろしくお願いいたします」

「ちょっとフィメリア!?まずは王女の許可を取ってからでしょ!何勝手に決めてるのよ!」

「ディアと同じほど脳筋でしたか??」

「2人とも、ちゃんと聞いてください。私たちにはお金がありません。ここで、離れ離れになってしまうと、飢え死にするだけです。それでもいいなら」

「それはいやよ!」

「でしたら諦めてください。王女様。私たちには、これしか生きる方法はないのですから」


ディア王女とスメラ嬢は、長い長い沈黙の後、薄々頷いた。

これにて、飢え死にすることはなくなったので、ひとまず安心する。

私たちは、とりあえずこんどーに付いていくことにしたのだった。

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