第2話 ここはいったいどこですか?


 「うーん……」


私はゆっくり目を開ける。

どうやら魔族からは逃げられたようで、追ってくる気配はなかった。

隣にはディア王女とスメラ嬢が倒れている。


「ディア王女様!スメラ嬢様!起きてください!」

「何よ!せっかくいい夢見てたのに!起こさないでよ!」

「うるさいわ!ディア!」

「何よ!貴族の身分で王女の私に偉そうね!!」

「2人共!喧嘩はやめてください!!」


この2人は、どこでも喧嘩しているイメージがある。

私が城内を掃除しているときにも、女王様から、喧嘩していると報告を受けたもので。


「ところでフィナリア!魔族はどうなったのよ!?」

「とりあえずは巻いたようですが……ここは一体どこでしょうか?」

「あれは転移魔法ですわよ?別の所に飛んだのではないの?どこかのゴミ王女のせいですわ」

「スメラ嬢もそのくらいにして下さい。今はここがどこかの方が大事です。森を抜けるまで歩きましょう」

「はぁ……それもそうですわね」

「分かったわ!フィナリアの意見に従ってあげる!わたくしは寛大な王女なのよ!」


ということで私たちは、森を抜けるために歩き出すことにした。

そこで1つ気になったことがある。

どうやらディア王女も気が付いたようで。


「ねぇ!この道って何よ!私たちの土の道と違って固いじゃない!フィナリア!」

「私も見たことありませんね……石?の塊のようにも思えますが……」

「ねぇ、ここ魔法使えないのだけど?」

「あら~?スメラあなたついに魔法使えなくなったの~?残念ですわね~」

「王女だからって生意気ですわ!!」

「待ってくださいディア王女様!スメラ嬢様!確かに、魔力や精霊の力も何も感じませんね」


私は周りを見る。

すごく不気味だった。

魔法が使えないということは、何も武器がないということに等しい。


「あら?何か明かりが見えるわ!フィナリア!見てきなさい!」

「分かりました。お嬢様」

「ちょっとはあんたも見てきたらどうなのよ」

「あたしは王女だからいいのよ!すべては使用人であるフィナリアの仕事なのよ!」

「ディア王女様、どうやらこの先は道を抜けるみたいです。ですが」

「何よ?はやく言いなさいよ」

「着いてきてくださいませ」


ということで私は2人を連れて歩いていく。

しばらく歩いていると、何やら大きな広間に着いた。


「なんなの?これは?なにかいっぱいあるけど」

「馬鹿ね!魔力封印装置に決まってるじゃないの!こんな広場に置くものと言ったらそれしかないですわ!だから魔法が使えないのよ!さすが王女の私!勘がさえてるわね!」

「ここに書いてありますね。えっと……なんて読むのでしょうか?これがもしも魔力封印装置ならば、何かしら結界が貼ってあるはずでは?」

「あら?フィナリアでも読めないの?じゃあ、早く破壊しちゃいましょう!」

「はぁ、ディア王女さぁ何かおかしいと思わないの?もしも壊して爆発したらどう責任取るつもり?」

「スメラ嬢の言う通りですね、とりあえず、これは放置で、私たちは移動しましょうか」


私は何か引っかかりを覚えている。

ここは、一体何なのだろうか。


「あら?見なさい!隣が明るいですわよ!」

「危ない!!ディア王女様!!」


私は走っていったディア王女を慌てて引っ張る。

とてつもない音とともに、目の前に巨大な物体が通り過ぎて奥で止まる。


「おい!危ないだろ!信号ちゃんと見ろ!」


とその巨大な何かから、人の顔が見える。

しばらくするとそのまま進んで行った。

かなり、危なかった。下手したらディア王女様が、あのまま飛ばされている所だったのだ。

そうしたら私は、もう死ぬしかなくなってしまう。


「ちょっと何やってるのよバカ王女!!」

「あれは一体何なんですのよ!!!」

「落ち着いてください!ほら!どんどん通り過ぎていきますから、乗り物だと思います」

「あんな速い乗り物なんて聞いたことないわ!!」

「勝手に飛び出すからでしょ、バカ王女」

「バカって何よ!!王女権限で罰するわよ!」

「はぁ……とりあえず落ち着いてください!私が状況を整理しますから!」


歩いたことの無い道、そしてみたことの無い広場に建てられた建造物、そしてみたことの無い乗り物。

よくよく見たらそこら辺に建てられている建物も、私たちの国とは全く違う建てられ方をしている。

しかも魔力はない。

となると。


「ディア王女様、スメラ嬢様」

「何よ、早く言いなさいよ!フィナリア」

「うるさいわ、バカ王女」

「私が考えるには、この世界は恐らく、私たちが住んでいた世界とは、違う世界の可能性があります」

「ふふっ、フィナリアはいったい何を言っているのよ。王女を前に、冗談はほどほどにしなさい!」

「ディア王女様。気づきませんか?先ほどの装置からかなり離れているのに、魔力は一切ありません。

そして、見たことの無い道、見たことの無い巨大な乗り物、明らか私たちの世界では存在していない物ばかりです。私一応、全ての国を制覇してますので、分かります」

「つまり異世界ということね……バカ王女が余計なことをしたから」


本当に王女のせいなのだろうか?

もしや誰かが、私たちを安全なところに連れて行ってくれたのだろうか。


「もしもこの世界が、私達のいた世界と違うのであれば、この世界のルールに従うしかありません」

「そんなの絶対イヤ!私は王女なのよ!?縛られるのなんてごめんだわ!」

「あんたの国は、今どこにあるっていうのよ、少し考えなさいバカ王女」

「とりあえず……人を探すしかないようですね。言語は通じるようなので、話が出来る人を探しましょう」

「なに?私たちの支配下に置くの?」

「絶対違うでしょ、少しは黙ってなさい」

「むぐ!ちょっとスメラ!何するのよ!」

「2人共!はやく行きますよ!」


私は喧嘩する2人を何とか抑える。

とりあえず、人の多そうな所へと歩いていくことにした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る