第1話 異世界王女と使用人、毒舌令嬢を連れて現代の日本に転移する。


 ある夜。

私は王女と一緒に森を走っていた。


「はぁ……はぁ……ディア王女様!早くお逃げ下さい!」

「いやよ!フィナリア!あなた私の使用人でしょ!?なら一緒に逃げるわよ!!」

「ダメです!あなただけでもお逃げ下さい!」


そんな会話をしていると奥から声が聞こえてくる。

そう……今私たちは魔族に襲われているのだ。

魔族とはこの世界における敵存在である。

私の名前はフィナリア・アスリーン。

スレム国王女であるディア王女を守り、世話をするという、使用人兼護衛的立場にある。

今回の1件は魔族の反乱により、一番魔族領に近かった私たちの国に、総勢100万という魔族の軍勢か襲い掛かってきたのだ。

そんな人数の魔族を討伐できる冒険者はいない。

さらに小さな国であったため、私たちでは対処が出来ず。

今逃げている状態なのだ。

もちろん住民には先に広い国へと、移してはいた。


「何をしていますの!?本当に使えないゴミ王女と使用人ですわね!」


隣から女の子が、魔法を打ち出して応戦している。

この女の子はスメラ・ラビール。

普段毒舌な令嬢で、良く王女様に口を出したりしている。


「ゴミって何ですか!?あなた!この私……王女に対して失礼よ!!」

「喧嘩している場合ではありませんよ!ディア王女様!スメラ嬢様!今は逃げるのに徹してください!」


何とか、私の言葉で2人の喧嘩は収まる。

このような緊急事態の時まで喧嘩は、私個人的にはちょっとやめてほしいと思う。

ただ私は使用人なので何とかしてこの2人を助けないといけない。

まあ、使用人じゃなくても助けるつもりではいたのだが、正直、王女様も嬢様もまだまだ子供なので1人にはさせておけない。

そうして走っていると前からも集団が現れる。


「ディア王女様!スメラ嬢様!止まりなさい!」

「なんなのよあれ!!」

「これもすべて王女の責任ですわよ」

「何で私なのよ!」

「2人共、どうやら囲まれてしまったようですね」


1人の魔族が歩いてくる。

ここは賭けに出るしかない。


「2人共こっちへ!」


私はディア王女様とスメラ嬢の手を握ると全速力で駆けだした。

魔族もしぶとく魔法を連発し私たちを捕まえようとしてくる。

目の前には。


「行きますよ!ディア王女様!スメラ嬢様!」


私は2人を連れておもむろに崖から飛び降りた。

魔族軍も後から追ってくるが、私たちには届かずそのまま落ちていく。


「頭おかしいですわよ!!」

「いやああああ!!!」


ディア王女の叫びで、崖から落ちている私たちの周りに、白い光が降り注がれる。

これは……恐らく転移魔法。

しかし、意識がもうろうとしているので、うまく考えられない。

どうやらこの光は2人の周りにも降っているらしい。

そうして私たちは意識を失ってしまった。

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