異世界王女と使用人、毒舌令嬢を連れて日本に転移する。ただ、よく分からないので動画投稿やライブ配信で生活したいと思います。

蜂鳥タイト

第1話 異世界王女と使用人、毒舌令嬢を連れて現代の日本に転移する。


 チャット欄


:おいおい!やばすぎるだろ


:タンカー引っ張られてて草


:え?タンカーって綱引きで人間に負けるもんなのか?


:おもろwww


:なんやねんこの使用人? メイド?


:↑王女の使用人兼護衛人だぞ


:使用人1人>巨大タンカー全速前進


:王女もやばい


:なんで王女が素手で鉄球潰せるんだよ


:火花散ってて草


:令嬢は?


:大きめの漁船担いで海に浮かせてる


:人力進水式は草なんよ


;???


:許可得て撮影してるとはいええぐいって


:異世界人のパワーやばすぎな







 

 ある夜。

 私は王女と一緒に森の中を走っている。


「はぁ……はぁ……ディア王女様! 早くお逃げ下さい!」


 私は、左を走っている王女の背中を押しながら叫ぶ。


「いやよ! フィナリア! あなた私の使用人でしょ!? なら一緒に逃げるわよ」


 王女は意地でも私と一緒に逃げたいのか、片腕を掴みにかかってくる。

 王女の服は、金色のドレスを着ていて、頭には銀色の冠を付けている。

 そのせいで、冠が腕に当たりかなり痛い。


「ダメです! あなただけでもお逃げ下さい!」


 私は何とか先行かせようとするも、なかなか先に走ってくれない。

 後ろから大きな声が少しづつ近付いてきている。

 どういう状況かと言うと、今私たちは魔族に襲われて逃げているのだ。

 魔族とはこの世界における敵であり、他種族を滅ぼそうとするもの。


 私の名前はフィナリア・アスリーン。

 スラム国王女であるディア王女を守り、世話をするという、使用人兼護衛的立場にある。

 服は、水色の服に縦2本線入っていて、肩には白色の丸い綿を首から肩につけている。

 下は、白色のズボンに長いスカートを履いている。


 今回の1件は、魔族の反乱により、魔族領に近かった私たちの国に、総勢100万という魔族の軍勢が襲い掛かってきたのだ。

 そんな人数の魔族を討伐できる冒険者は、この国にはいない。

 そのために、私たちでは対処が出来ず、今逃げている状態である。

 住民達には、ディア王女様が、先に広い隣国へと、全員避難させていた。

 そのことは、すでに隣国の仲の良い王女様と、住民たちにも説明をして了承を得ている。

 今、この小さな国には私と、スメラ嬢と、ディア王女だけが残っている状態だ。


「何をしてるの! 本当に使えないゴミ王女!」


 隣から女の子の声が聞こえた。

 彼女はスメラ・ラビール。

 普段毒舌な令嬢で、よく王女様に口を出したりしている。

 服装は、紫色の服で紫のズボンを履いており、左手には紫色の杖で、今魔族と交戦している。


「しつこい魔族たちね! これでも食らってなさい! 【爆轟神攻砲カタストロフィインパクト】!」


 スメラ嬢が走りながら振り返り、立ち止まると、杖を前に突きさした。

 すると、上空に超巨大な魔法陣が生まれたかと思えば、青白い色の丸い球体が現れそのまま落ちてくる。

 その大きさは、下からでは全体を見ることもできないほどの巨大なもの。

 これはスメラ嬢だけが使うことができる最強の魔法技の一つ。

 あり得ないほどの魔力を集中させ上空から打ち付けるといった無差別攻撃だ。

 なので、国民がいない今だからこそ使える技である。

 この攻撃では、世界全体の魔力を大幅に減少させるため、近くなればなるほど魔法を使えなくなり、この大きさともなれば全世界で魔力の枯渇が起き始めるだろう。

 そうして、私たちは再び走り始めた。

 急がないと巻き込まれてしまう。

 しばらく走ると、後ろでは、地面に攻撃が届いたのか、ものすごい轟音とともに、空が青と白色に光り輝く。

 誰にも止めることのできない、島1つを消し去るこの魔法。

 ちなみに魔王と勇者にも、スメラ嬢が使う魔法だけは防げないと言うほどである。

 後ろを見てみると、今まで走っていた地面、城すべてが無くなり、ただ巨大な穴が開いているだけだった。 


「ゴミって何ですか!? あなた! この私……王女に対して失礼よ!!」


 ディア王女が今にもスメラ嬢に掴みかかろうとしているので、私は慌てて止める。

 てっきり城のことで怒るのかと思っていたが、まぁ、スメラ嬢の強さは知っている。

 あとはもう仕方なしだと思ったのか、それ以外で怒ったのだろう……

 何がともあれこのまま喧嘩をしたらまずい!


「喧嘩している場合ではありませんよ! ディア王女様! スメラ嬢様! まだ追手は来ています! 今は逃げてください!」


 私の言葉で2人の喧嘩は収まった。

 2人の喧嘩は日常茶飯事なのだが、このような緊急事態の時まで喧嘩はやめてほしい。

 ただ、私は王女使用人という立場なので何とかして、この2人を助けないといけない。

 まあ、使用人じゃなくても助けるつもりではいたのだが、ディア王女様もスメラ嬢もまだまだ子供なので1人にはさせておけない。

 そうして走っていると、前からも魔族集団が現れる。


「ディア王女様! スメラ嬢様! 止まりなさい!」


 私は慌てて叫びディア王女の手を掴み引き留める。

 スメラ嬢はすぐに止まれたが、ディア王女はすぐに止まれず、私が掴んだのでそのまま転んでしまった。 


「いきなり何するのよ!!」


 ディア王女は立ちながら、私を睨みつけて叫んでくる。


「これもすべて王女の責任ですわよ」


 スメラ嬢は睨んだ鋭い目で魔族を睨みつけている。


「何で私なのよ!」


 ディア王女はスメラ嬢を睨みつけ叫ぶ。

 うん、私もなぜディア王女の責任なのかはわからない。


「2人共、どうやら囲まれてしまったようですね」


 私の冷静な言葉に2人は息をのむ。

 1人の魔族が歩いてくる。

 ここは賭けに出るしかない。


「2人共こっちへ!」


 私はディア王女様とスメラ嬢の手を握ると全速力で駆けだした。

 魔族もしぶとく魔法を連発し、私たちを捕まえようとしてくる。

 しかし、私たちが走る先には大きな崖がある。


「行きますよ! ディア王女様! スメラ嬢様!」


 私は2人を連れて、おもむろに崖から飛び降りた。

 魔族軍も後から追ってくるが、私たちには届か ず、そのまま落ちていく。


「頭おかしいんじゃないの!!?」


 スメラ嬢が私の腕をつかみながら泣き叫んでいる。


「いやああああ!!!」


 ディア王女の叫びで、崖から落ちている私たちの周りに、白い光が降り注がれる。

 これは……

 恐らく転移魔法。

 しかし、意識がもうろうとしているので、うまく考えられない。

 どうやらこの光は2人の周りにも降っているらしい。

 そうして私たちは意識を失ってしまった。

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