第10話 銀色鳥と英雄8

 


 ケリーが「すごいすごい」と褒めてくれるので、おだてられて色々戦いには約に立たない力の使い方を色々見せてしまった。


 日も沈みかけてきた頃に、ミリーが配達から帰ってきた。


「ただいま! おばちゃんからクッキー貰った!」


 ミリーが元気よく声を上げながら、キックボードの様な摩具に乗って走って来る姿が、裏庭から見えた。

 途中で、ジェイクに気が付きライクのとこに行くのを止め裏庭に来る。


「あーー! ジェイクいる!」

「ミリー、配達お疲れさん!」

「うん。えらいでしょ!!」

「姉ちゃん! 姉ちゃん! ジェイクの竜巻ゴーランド面白いんだよ!」

「なにそれ!?」

「空中に浮きながら裏庭回るだけだけどな……」


 ジェイクの風の力で、ケリーの足元に旋風<せんぷう>を起こし、そのまま空中に持ち上げて浮遊させながら、庭をぐるぐる回る遊びが、気に入ったらしく何度もお願いさせられていた。


「私も、それやりたい! お願いジェイク私も!」

「わかった。わかった。完全に日が暮れるまで付き合ってやるからよ!」


 一通りミリーにも、能力を使った遊びを見せた。二人が楽しそうなのでサービスし過ぎた気もするジェイクであった。

 ミリーにも竜巻ゴーランドをしてあげたところで、裏庭のドアからライクが来た。


「もうそろそろ、夕飯になりますので、ジェイクも一緒にどうですか? 子供たちも喜ぶと思いますので」


(まじで! 夕飯代が浮くのはありがたいし……歓迎されてるならお言葉に甘えよう)


「何から何まで申し訳ない……何か手伝えることあったら言ってくれ」

「そしたら……準備できるまで子供たちのめんどうをもう少し見といてください」

「了解!」

「助かります。それでは、お願いしますね」


 ジェイクたちも家の中に戻り、双子の部屋で絵本を読んだりして過ごしてから四人で食事を囲った。

 食事を頂いてから、機嫌よくボックス商会を出たジェイクは鼻歌交じりでよそ見して歩いていたため、宿屋の入り口で二人組の男とぶつかりそうになり、軽く会釈した。

 自分の部屋に着いたジェイクは、今日も充実した一日を過ごせたことに感謝し、ひと時の幸せを噛み締めた。

 それに、双子の持ってた絵本の内用から銀色鳥についても新たな情報が知れた。

 ……だが、次の日あんな事件が起きるとは……思いもしなかった。




 次の日も、ジェイクはボックス商会に訪れた。

 今日はケリーが、一人で店番をしていたので挨拶がてら、ライクたちが何処に行ったかを聞いた。


「また、姉ちゃん配達に行ってるんだけど、帰りが遅いから父ちゃんが、迎えに行っちゃったの。だから、店は僕が守ってるだ!」

「偉いな! ケリー!」


 頭をなでながら、ケリーと喋っていたところ、ライクが大慌てで戻ってきた。


「お邪魔してるぜ! そんなに急いでどうしたんだライク? てか、ミリーと一緒じゃなかったのか?」


 ジェイクはいつも通りに挨拶したつもりだが、その言葉を聞いてライクは、息を荒くしながら口を開く。


「そうだ、ミリー! ミリーは、帰ってきてないか?」


 ジェイクは、ケリーと目を合わせて答える。


「俺とケリーだけだな。また配達に行ったんだろ?」

「そうなんだが! ミリーが何処にもいないんだ!!」

「ミリーが何処にもいない!? 何処か心当たりはないのか?」


 ジェイクも驚き、前のめりに聞いてしまう。


「行きそうな場所は、巡ったけど見た人がいない……荷物を届けた露店には、もう二時間前に来たみたいなんだが……露店の人が言うには、ドアの前に荷物だけ届けられていて、ミリーの姿は見ていないらしい……しかも、あの子が手伝い中に家に戻らず何処か行くこと自体が考えられない……」


 落ち着かない様子で、ライクが喋る姿を見てジェイクは考える。


「なるほど……もう一度その露店に行きましょう。そこに何か手掛かりか見落としがあるかも知れない」


(とにかく現場を見てから、探した方がいいだろう)


「ケリーは、また店番頼むよ! ミリーが戻って来たら広場に知らせに来てね!」

「わかった!」


 それから、ジェイクとライクはミリーが向かった露店までの道のりを進み、露店の店主の話を聞いたがライクの言った発言と同じで、荷物は届けられていたが、今日はミリーを見かけてない。

 そのまま、行きそうな場所を探したが、そこにミリーを見たものは誰もいなかった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る