第9話 銀色鳥と英雄7



 日差しが差し込み、むず痒いまなこを開く。

 次の日の朝になっていたジェイクは、ベットの上で気怠そうに大きく伸びをして、ぼーっと天井を眺める。

 久しぶりに他人に能力を明かしたせいか、忌々しい夢を見てしまった。

 あの頃のジェイクは、今とは別の目的を果たすためなら、全てを犠牲にしてでも構わないと思っていた。 

 今では痛々しい思想……若気の至りだと感じてしまう。

 あの頃の自分に、今の自堕落な姿を見せてやりたい。


「ある程度の自由を勝ち取った、人間として……風呂に行こう!」


 ジェイクは昨夜入れなかった風呂に入り、その後部屋に戻って今日やるべきことを考えつつ椅子に座って水分補給をしていたが……だらだらしてても時間の無駄だと、宿屋から出て村の中を探索がてら見て回ることにした。


 宿屋から村の中心部に向かって歩くと中央広場に出る。そこから、昨日見かけた工房や露店がある方に足を進めた。

 少し進むと、午前中から賑わってる露店が並ぶ道に出た。

 そこを歩きながら、脳内に村のショップマッピングを開始した。

 衣類や生活道具、様々な摩具と屋台の食べ物など、目に入った店を一軒一軒確認していたら昼過ぎになってしまった。

 粗方、店を覗いて見たが、朝食がてらに買った牛串や貝串以外これと言って、めぼしい物は見つからなかった。 

 それから、食い歩きをしながら進むこと四時間ぐらいで、おおよそ村を一周できた。


 日が暮れ始めたが、ジェイクは人通りの多い中央広場に戻り、昨日別れる前に約束していたライクの家に向かうことにした。

 南側に歩いていくと、村の中で一番大きな商店が見えてきた。屋根の看板には『ボックス商会』と書かれていて、ライクの言ってた店で間違いない。

 入口に進むと、頑丈そうな鉄のドアが自動的に開いて店の中に入れた。

 ジェイクは、自動ドアに驚きつつ入店すると、棚に品出しをしているライクの姿が確認できた。


「どうも! 来ましたよ~」

「ジェイク! いらっしゃいませ!」


 ライクと挨拶をしてたら奥の方で『ドタドタ』と足音が聞こえてきた。


「村をざっと一周したら予想以上に時間押しちゃって……気づいたら日が暮れ始めてたから焦って来ました……」

「いえいえ! お互い時間の指定はしてませんでしたし、いつでも訪ねに来ていただければ」

「兄ちゃん来たのか!」

「おう! 約束通り遊びに来たぜ、ケリー!」

「遅いよ! 昼から父ちゃんと店番しながら待ってたんだぜ! 早く昨日の魔法の続き見せてくれよ」

「すまんすまん。ケリーの父ちゃんに例の物貰ったら遊んでやるからもう少し待ってな……それと魔法じゃない」


 ケリーをなだめながら、ライクからお礼の品を貰う。


「これが、当店自慢の衣類一式です」

「衣類は、毎回戻らないから助かるぜ!」


 昨日ダメにしてしまった衣類一式頂いた。

 ボックス商会は、摩具店だが日用品から食料品なども販売しているディスカウントストアの様だ。

 ライクから、他にも便利な摩具や旅に必須な日用雑貨の話しを振られて、のめり込んでいるとケリーが詰まらなそうにジェイクの顔を凝視してくるのを感じた。

 このままだと、長話になりそうなので話しを打ち切り、ケリーと約束したジェイクの力を見せることにした。


「そういえば、ミリーの姿が見えないが?」

「ミリーなら露店に届け物の配達をしてもらっています。摩具を使ってるので、そろそろ戻ってくると思うのですがね」

「そしたら、ミリーには悪いが、ご希望だった力を先にお見せしよう!」

「やった! 早く見たいから裏庭行こう!」


 ジェイクはケリーに引っ張られながら裏口に案内された。


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