第8話 銀色鳥と英雄6
「それでは、昼食も済ませたので私たちが住んでる村までジェイクさんを案内しますよ」
「兄ちゃん! 夜も一緒に飯食べようぜ」
「お兄さん村についたら風の魔法もっと見せて」
「今日は、村に着いたら宿屋でゆっくりさせてくれ」
「「え~~~~」」
「ベッドでぐっすり眠りたいんだよ。それと、風の力は魔法ではない……午前中の作業で疲労が凄いから明日な」
「とにかく、村に行きましょう! それにジェイクがよければ、家に泊まってくれても構わないぞ」
会話をしつつ、準備を済ませた親子三人それぞれのリュックが膨らんでいた。
最初に会ったときは双子のリュックは、ぺしゃんこだったのに今では満タンである。
ライクに至っては更に物が増え、はち切れそうになっていた。
ゆっくり歩いていくだけだろうし、大丈夫であろう。
「俺の魔法こと、ナンバーは複雑な代物でな……信じられないだろうが、一度死ぬと言う条件を充たすと魔法とも摩力とも言えない力がランダムに使えるようになるんだ」
ジェイクたちは山を下山し、村に続く林道を進んでいる。その道中で双子たちにはまだ話していない能力の説明をしてあげていた。
楽しそうに、話しを聞いてくれる双子に気分をよくしたジェイクの口は止まらなかった。
「さっきも言ったが、能力発動するには一度死なないといけないんだが……魔力を吸って自分自身を再構成する魔法と記憶の保存が発動すると、その他に追加で今まで知らないはずの能力の記憶が混ぜられてるんだ」
「記憶に混ぜられるって、どう言うことなの?」
「ええ~とな、復活したときに死ぬ瞬間の映像と共に、新たに得た能力の使い方が……フラッシュバックして記憶の一部であるように感じるんだ。それが、魔法と摩力のどちらでもない神の力だと俺の記憶が教えてくれる」
「それって、魔法の能力は身体を戻して記憶だけ継続させる力で、新たに使える能力が魔法ではないし摩力でもないと言うわけなの?」
「そう言うこと! しかも、追加能力は三日だけだし……その合間は魔法が使えないから、死んだらアウトでゲームセットだとよ」
「その期間は、摩具も使えないんだよね~」
「だな。だから、この能力を知ってる知人からは、
「それでも、お兄さんかっこよかったよ!」
「戦ってるとき凄かったもんね。倒れた瞬間、血だらけだったのに蒼く光ったら、すぐに立ち上がったのはビックリしたけど!」
「怖がるんじゃなく、驚くだけでいてくれるのは助かるな。最初から二人の印象がよかったのが俺にとっての救いだ」
その後も、昨夜に双子が寝てる間、ライクと話していた会話を少し語ってあげていたら森を抜ける。
ここから先は、小麦畑が一面に広がっていた。
それを見た双子は、先ほどまでジェイクの話しに夢中だったのが嘘のように走りだした。
「見て見て! これがわたしたちの村の目印なの!」
「凄く綺麗でしょ! 兄ちゃんも父ちゃんも速く速く!」
双子のはしゃぐ姿を見ながら、やっと一息できそうだと思うジェイクであった。
小麦畑の道を抜けて小川が流れる橋を渡るとウィンの村と書かれた看板が立っており、遠くの方に大きな風車が五台見えた。ここが、ライクたちの住んでる村なのであろう。
村の出入口の門の周りは壁で覆われていてライクが、警備兵に挨拶しジェイクも軽く会釈をして門を潜る。
日が落ちる前に、無事村まで辿りつけてよかったと思うジェイクだった。
村の中央広場まで歩き、そこから宿屋まで案内してもらいライクたちとは別れることにした。
「やっぱり、家に泊まりに来なよ!」
「そうだよ! まだまだ聞きたいことあるの!」
「今日は勘弁してくれ……」
今まで、基本一人で行動するのが日常のジェイクからしたら子供といるのは、新鮮で楽しいが疲労も大きかったらしく一人でゆっくり休みたいと顔が項垂れていた。
「二人とも、ジェイクを困らせるのはやめなさい」
「明日、顔出しに行くからさ」
「「絶対! 約束だからね!」」
双子に駄々をこねられたが、明日家の方に伺うことを約束して、なんとか許してもらえた。
どの道、買出しに行くので、ライクの店には嫌でも顔を出す。
ウィンの村で一番大きな摩具店こと『ボックス商会』はライクの店なのだから。そのおかげで村の住人たちにも顔が利くらしい。
「さて、やっと静かになったか」
村には一軒しか宿屋は無いが、その宿屋には豪華な風呂などが完備されているとライクに聞き気分が上がりつつ、受付で名前と年齢を記入した。
受付のおばさんが年齢を見て少し困っていたが、身分を証明できる物を提示したら、あっさりと部屋を案内してくれた。
宿代を払い部屋の鍵を受け取ったジェイクは、とりあえず一週間分の寝床を確保した満足感に酔いしれ、ベットに倒れ込んだ。
横になり右腕の手の平を覗くと47と刻まれた傷跡があった。
これは、能力が使える証で三日は消えることが無い。
傷跡がある限り、風の力は使えるが……この力がある限りは本当の死に繋がるので慎重に行動したいものだ。
考え事をしていたら、段々と睡魔が訪れ深い眠りに落ちて行った。
……誰か……誰か返事を……返事をしてくれ、本当に誰も生存者はいないのか……
彼は目を閉じ煙が蔓延する中、大きな声で叫び、その度に煙を吸い咽る。
全てが煙と灰に包まれた世界は、さながら猛吹雪の中に取り残されたかの用に見える。
次第に視界が晴れたが、瞳に映る世界は黒と灰色に満ちた光景であった。
そこには、かつて建物や人であったであろう存在が黒塗りに刻まれていた。
青年の故郷であった場所は、完全に時間が停止していた。
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