第7話 銀色鳥と英雄5


 

 双子が起きたことで会話を終了させ、朝の準備をし始める。

 ライクは、テントの方に向かい自分の荷物から食材と調理用の摩具を取り出し始めた。

 それを見ているジェイクも目の前の光景よりも、まずは食事の準備が必要だなと思った。


「おはよう。今日も元気によろしくな」

「「うん」」


 川の水で顔を洗ってる双子に声をかけつつジェイクも顔を洗い、ライクの横に行き食事の手伝いを始める。


「そういえば、ジェイクは旅をしている目的はあるのかい? 神様に力を頂いたことといい」

「それがさ、俺の目的事態はもうすんでるんだよ。ただ、神様との約束があってね」


 板の上に野菜や肉を乗せライクとジェイクは分担しながら、手と口を動かす。


「神様との約束とは、興味深いね……どんな約束か聞いてもいいかい?」


 ジェイクが野菜を切りながら淡々と答える。


「この力を使い切るまで生き延びて欲しいんだってさ……それもなるべく長く生き続けて欲しいと言われたから、そう簡単に死なないように旅してるわけ。だけど、使い切るのも約束に入ってるので、合計100回死んでくれって言われてるんだぜ! まいっちまうよ」

「100回……その回数は意味があるのかな?」


 ライクが皿に炒り卵とベーコンとパンを乗っけて朝食プレートを作りながら話しを進めた。


「うん! さっきライクに割り込まれたときに話そうとしてた続きなんだけど」

「すまない。興奮してしまって邪魔してたな」

「まあ、それはよしとして……俺の力全体の正式名が、100って言ってさ。心臓をかき回されたときに神様から100個の力が内蔵されてる疑似心臓を埋め込まれててさ!」

「さっきの心臓の話し続きがあったのか!」

「おかげさまで、こうして生き延びれてるんだけど……あの日、神様に会わなければ俺はもうとっくに死んでいた」

「やはり、何かしらの事情があって疑似心臓を貰い受けたんだな……」


 ライクが手を止めて真剣に、ジェイクの方を見て来るので懐かしい記憶の断片が頭を過った。


(神様との出会いも、最初はこんな感じだったな)


「事件に巻き込まれてさ、そんときに大怪我した俺のことを助けるために特別な、疑似心臓を埋め込んでくれたんだ……暖かなぬくもりに包まれて、目を開けたら傷が全部塞がっててさ、しかも俺の目的を果たせるかも知れない力を貰って、泣きながら感謝したら……神様は悲しい顔をして俺を見下ろしていた」


 ジェイクは、空を見上げて心臓に手を当てて続きを口にする。


「君は100回死んだら、本当の死が待ってるから頑張りなさい、決して無駄な死を向かえないようにと言われ今に至る。正直もう47回死んでるから本当の死がどんなもんかわからないんだけどね……」

「ジェイク……更っと言う発言ではないな、特に本当の死がどうかなど……」


 話す予定が、なかった話題を話してしまい少し休憩しつつ食事の準備を完成させ、双子が戻ってきて騒がしい朝食が幕を上げた。

 

「「いただきます!」」


 元気よく挨拶してから、勢いよくパンに被りつき炒り卵などを掻き込む双子を見ながら、ジェイクも食事に手をつける。

 ライクも水の入ったカップを人数分持ってきてから、腰を下ろしベーコンを食べ始める。


「「外で食べるの美味しい! おかわり!」」

「さようですか……」


 朝は小食のジェイクからしたら、起きてすぐに食べられる若さが眩しく感じた。


「ベーコンとパンは、もう少しあるから待っててね」


 ライクが、まだパンに手をつける前に、おかわりの要求をされて取りに行く。

 おかわりを要求した双子は、楽しそうに喋ったり、ジェイクに昨日の会話の続きを聞いたり質問したりと騒がしい朝食が、もう少し続いた。

 朝食を終えてから、ジェイクたちは夜中の戦闘でえぐれた地面に魔石と植物の種を埋めるため。少しでも自然の状態に戻そうと各々おのおの行動に移した。

 まず、ライクが持って来ている荷物の中には様々な摩具が収納されていたので、その中から求めていた摩具を発見したジェイクは、その摩具を双子のミリーとケリーに使ってもらい絶賛穴埋めを進めている。

 今のジェイクでは摩具を使えないので双子に手伝ってもらうしかなかった。

 双子も楽しそうに、如雨露じょうろ型の摩具を使っている。

 この摩具は、如雨露に水を入れ土に水を撒く……ここまでは普通だが、その効力が意味不明すぎる。

 水をかけて泥になった土が盛り上がって地層が一段階浮上してくると言う。

 意味不明な感覚に陥る摩具だった。


「こんな摩具誰が好んで使うんだよ」

「お兄さんだね」

「兄ちゃんがよろこんでる!」

「うん。そうだね……」


 なにも言い返せない自分が、悲しく感じるジェイクであった。

 最初に風の力で魔石以外のケラトプスから出た角などの素材をライクの方に搔き集めて渡し、魔石だけをクレーターのようにえぐれた場所に放置し、風の力を使い双子を空に浮かせてホバリング移動させながら、水を撒いてもらっている。


「土や水を一定量増やす摩具とは聞いてたけど、予想と違い過ぎてなんだかな」


 それでも、ピンポイントで役立つ摩具があったおかげで、予想以上に早く作業が進んだ。

 完全とは言わないが、魔石が土に埋まる。

 ある程度凸凹デコボコまでに地形を戻すことに成功した。

 次に双子は自らのリュックから、スコップ型の摩具を取り出し、凸凹な土に種を埋め始めた。


「兄ちゃんいっぱいまいたよ!」

「わたしの方もたくさんやったわ!」

「ケリーもミリーもありがとうな。二人のおかげで午前中だけで後始末ができた」


 ジェイクが、安心してこの山ともおさらばできると考えてる最中もライクの方は、もくもくと素材鑑定と加工作業に追われていた。


「あれは、時間がかかりそうだな……」


 加工が雑だと商品として売るときに値が落ちてしまうので、真剣に集中して取り組んでいる。そんなライクの作業が終わるまで、双子と遊ぶジェイクだった。

 数時間遊んでいると、種を埋めた場所から芽が出始めた。

 魔石の力が急成長させる肥料代わりになり、すくすくと育ち始めている。

 その光景を見届けつつ、結局バンクの加工は昼近くまでかかってしまった。


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