第6話 銀色鳥と英雄4



「私の経営しているボックス商会は、衣類も置いているので注文通りの品を用意しときますよ!」

「それは助かる! 服は戻らないから調達する資金が意外に痛くてさ、まじ助かるよ」


 そんな話しをしながら、ライクが持っていた魔力を注げば暖かいお湯が生まれるポット型摩具を使いコーヒーをごちそうになりながら会話をしていると、夜が明けだした。

 因みに途中で、子供組は眠くなり安全確保した場所にテントを張っていたので、寝に行った。

 大人組はと言うと、色々と情報交換をしつつ徹夜で夜を明かすはめになった。


「さて。村まで近いなら、日も昇って来たから、そろそろ村に向かいたいが……この破壊してしまった地形どうするかね~」


 頭を掻きながら、今まで現実逃避をしていた現状をどうするか考え込む。

 日が昇ったことにより綺麗なクレーターがくっきり視界に入る。


「このまま放置も考え物ですし、なにより素材……」


 ライクは、メガネの真ん中を指で上げて魔力を摩具に流した。

 日が昇る前にジェイクが聞いた話しだが、あのメガネも摩具で遠くを見通せる暗視ゴーグルに変わる代物らしい。


「摩具に加工できそうな爪や角などは、売れるので持っていきたいですね。魔石の方は……この大きさの魔石は加工に向いてないので、ここに埋めて行くのが最適かと」


 ライクが楽しそうに物色し始めた。


「金になる部位だけ持ち帰ることは了承するとして、魔石はなんで埋めるんだ?」

「魔石は土に埋めると、埋めた周辺の土に魔力が微量ながら流れ込んで、周辺の植物が育ちやすくなるんですよ」

「なるほどね! それで、証拠隠滅しょうこいんめつできる可能性が生まれるのか!」

「ははは……言葉は悪いですが、その通りです。なので、少しでも元の自然な状況に近づければいいなと」

「そしたら、植物の種なら風で巻き上げて集められるから、それを拾って埋めればいいとして、問題はこのクレーターを埋める土をどうするかだな」

「土や水を一定量増やす摩具なども所有しているので、完全に埋めるまではいかなくても土を増やし種を埋めるぐらいは確保できるかと。それと種の件は心配なく。子供たちがドングリとモミジの種を拾ってましたので」


 ジェイクは、まだ寝ている子供たちのテントを見ながら納得した。

 それよりも聞きたいことが、ライクにはあるらしい。


「風の魔法って便利なんですね。私も魔力を生身で使える使に憧れはあったので羨ましいです」

「なんで、この力が魔法だと思うんだ? あんなの伝説上の話しだろ?」

「それは……貴方の不思議な蘇りを見てしまったのが確信に近いですね。一度死んだ人間が簡単に蘇る摩力も摩具も存在しないのですから、むしろ存在してはいけない禁忌として語られている能力なのですからね」


「ライク。魔法使いその者が最もに近い存在ってのも知ってるか?」


 魔法使いと呼ばれる存在が、禁忌に最も近いとされているのは、魔法を使うにはシードと言う特殊な細胞を産まれつき身体に宿した存在でなければならない。

 シードが、大気中の魔力と身体を繋げるパイプとなり魔力を物質化させる言語を用いて力を行使できる。

 魔法は摩力より強く燃費がいい万能に近い力だと言われている。

 まさしく神の化身なのではないかとも昔から語られていた。

 だからこそ、神しか使えない力を振るえる人間は忌み子いみことして神への冒涜と言われ、異端扱いの差別の対象であり禁忌に近いと言われている。


「もちろん。禁忌と言われているのは知っています。何度も七つの異形で読みましたもの」


 魔法使いを禁忌として取り上げた書物のなかでも有名なのが、全生命体の禁忌とされている能力について書かれている書物である。

 この書物に記されている能力は、神でも使用を禁止されていると語られており、その禁忌の能力を使える者は、先祖返りと呼ぶ。

 だが、この書物は今ではそんなに信用できる物では、なくなってしまった。


「七つの異形に書かれている能力が存在したのかすら、確証がなく千年過ぎた戯言とも言われているけどな」


 巷では今でも神々の伝説として、様々な物語で使われている御伽話の書物とも言われている。


「それ以外の書物でも、だいたい魔法使いに関わると、ろくなことがないとされてるから……ある意味、禁忌だわな」

「宗教上の理由や物語で度々、魔法使いは理不尽な扱いを受けて禁忌だ、気味が悪いとされてますからね」


 話しを聞ききながら、ジェイクの両手から風を起こし川の方に放出した。


「まさしく! 魔力を操れてる証拠の風! それに書物で書かれている禁忌の蘇生!」

「確かに、禁忌と言われる能力に蘇生があるけど、俺のは少し違うんだよな~」

「どう違うのですか? 現に、この通り蘇ってるではないですか! 書物に乗ってる魔法使いその者だ!」

「……俺は魔法使いではなく、力を譲り受けた一般人だよ」


 ライクが途中で興奮しすぎて自分が、助けてくれた恩人に失礼なことを言ってることに気が付き静かにジェイクが喋ってくれるのを待った。

 そんなジェイクは空を見ながら、少し険しい顔をしてどう説明していけばいいかを悩んでいた。

 少し、沈黙が続いた後にジェイが口を開く。


「俺のは蘇生ではなく、身体の再構成さいこうせいと記憶の保存なんだよな。そのせいで、もう二十五年前から先に進めないんだ……初めて死んだ時の時間に巻き戻されるって言った方が正しいのかもしれないけど」

「時間の巻き戻し? それがあの奇妙な蘇生の仕方だったのですね」

「ああ。正確には時間ではないのだが……俺は一度死んだら記憶だけ引き継いで、初めて死んだ時のの姿に再構成される魔法を持っている。そんで、再構成された後に、神の力が一つ付与されるんだ!」

「ちょっと待ってください……再構成が魔法で? 神の力?」


 ライクの頭が、こんがらがってきたのか疑問形が増えた。


「順番に説明していくから、まずは落ち着こう」


 ジェイクは、残っていたコーヒーを一気に飲み干し説明した。


「再構成だが、これはナンバーって言う名前の魔法で、これが発動する条件がさっきも言ったが、一度死ぬのがトリガーとなり発動する魔法だ」

「それで、蒼く発光しながら魔力を吸収していたようにみえたんですね……」

「ああ……この力を発動させると、再構成に必要な大気中の魔力を分解し、破損して散らばった部分を魔力に乗せて回収し、身体の修復を行う。修復が完了したら、さっき言った神の力が三日間限定で使えるようになるんだ。しかも頭の中に直接力の記憶が植えつけられる感じで、気持ち悪くて仕方ない」


 信じられない話しだが、真剣な顔で語るジェイクの言葉をライクは黙って聞くことにした。


「んで、この力が使える三日間は再構成が発動しないらしい。もうジェイクとして蘇ることはないらしいとだけが教えてくれたけどね。しかも、この三日間は摩具も使えないし死ぬ前まで伸ばした髪や鍛えた筋力も二十二歳の頃に戻されちゃうしさ、そして」

「待ってくれ! 神様は存在するのか!?」


 さすがにライクも『神様』と言う言葉が出てきたので話しに割り込んでしまった。


「いるとも! 自称だけどね……それでも、神様から譲ってもらった力が本物だったから、俺は信じる……こんな話し信じて貰えないかも知れないけどさ」

「いや、え、神様から譲ってもらった力!? 本当に! そんなことが!」


 内容のせいなのか、もしくは一晩中起きていたせいか、ライクのテンションが更に上がった。


「なんと言うか、俺の力全てが譲ってもらったものになるのかな? ほぼ無理やり心臓に手を突っ込まれてかき回されたら魔法が発動したんで、無理やり押し付けられたとも言えるけど……」

「神様に心臓かき回されて魔法押し付けられたと言うのかい!?」

「そうそう! 言葉にすると俺も信じられなくなるけれど、真実だから!」

「いや。信じるよ……目の前で、あんな凄い力を見てしまってはジェイクが嘘を言ってるとは思えないしね!」


 ライクが楽しそうなので、一旦話を飛ばして気にしていた風の力について話すジェイクだった。


「この風の力が気になってたみたいだけど、風の力は魔法とは別に再構築した後に、ランダムで毎回一つ付与してくれる力の一つなんだが、魔法とも摩力とも言えない代物だから俺は神の力と呼ばしてもらっている」

「まさか、魔法よりも珍しく書物にも書かれていない能力がこの世にまだあるなんて……素晴らしい!」


 ライクが空を見ながら呟いた。そして、ふと新たな疑問が浮かんだ。


「ジェイクは……本当の年齢は何歳になるんだ?」

「うん? 俺が力をもらってから丁度……二十五年だから実年齢は四十七歳になるな」

「私より年上か! ジェイクさんと呼んだ方がいいかな?」

「いや、そこに関しては気にしないでくれ! この流れも慣れっこだしな。普通にジェイクって呼んでくれていいよ、俺もライクって呼ぶからさ」


 ジェイクが笑いながら答えると、ミリーとケリーがテントから出てきた。


「「おはよう~」」


 どうやら、ゆっくりし過ぎたようで二人が起きてしまった。


「おはよう。ミリー、ケリー顔を洗ってきたら食事にしよう。そしたら、二人にも手伝ってもらうことがあるから今日もよろしくね」

「「はーい」」

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