第4話 銀色鳥と英雄2



 魔獣すらも、その異常な光景を察知してか、その場で静かに睨みつけている。

 その異常な存在は、再生した身体を触り、首を回す。


「さて、俺の名前はジェイクと理解してるし、記憶も良好で身体の以上もなくボロボロの服以外は完全復活してるな。手の平の番号は……」


 数分前まで死んでた男とは思えない気楽さで、準備運動を始めたジェイクは数秒目を閉じて最後の確認をした。


「ナンバー47」


 警戒するケラトプス二体に向けて右手拳を突き出し。

 その動作の後に風が、上向きに吹き荒れ始めた。

 ジェイクは、蒼い魔力を風に加えてケラトプスのいる場所に風の渦を発生させた。

 風の渦に囲まれた後、風に魔力を更に加え上昇気流で空気を空高く巻き上げた。成層圏せいそうけん付近まで運ばれた空気は冷却し、水分を凝結し小さな氷になり結合してひょうへと成長する。

 そして周りの空気を冷やし重くし地表に向かって高速に落下して発生する強力な下降気流かこうきりゅう――ジェイクは右手拳を開き叫ぶ。


「ダウンバースト!!」


 爆音のような音と共に音速の風圧がケラトプスを襲い、辺り一面を竜巻トルネードに匹敵する最大風速が一気に襲い木々が薙ぎ払われた。


「「うわぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁ」」


 風が吹き荒れた時に悪い予感が頭を過った中年男性は、子供たちを抱きしめて身体を丸めて地面に這い蹲った。次の瞬間『ボッ』と破裂音に似た音と共に爆風と木々の枝や水や砂利などが荒れ狂いながら飛んで来ていた。

 ぶつかる寸前で風の渦が現れ、それが三人を守る壁のように全てを弾き飛ばす光景がそこにはあった。

 子供たちは興奮を抑えられないのか、絶叫している。中年男性の方は目を見開き口を力強く閉じて伏せていた。

 ジェイクが手を横に振ると、風が穏やかになり目の前の竜巻は徐々に消え失せていく。

 上空の雲も消え、真夜中だと言うのに月の光が眩しく感じられた。


「視界良好! さて、力の使い方の確認がてら……本気を出しすぎてしまったかな」

 川と森林があった場所は地形が少し変わってしまったようで小さなクレーターができていた。その中心部には風の風圧で押し潰されたケラトプスの残骸と魔石が転がっていた。


 魔獣は、コアと言うエネルギーの塊を身体に宿しており、そのコアがダメージを受けて砕けると機能を停止し、砕けたコアは魔石となる。

 魔力を宿した部位以外は、大気中の魔力となり霧散していくので、今回は爪と角と牙、それと魔石だけになっていた。


「今回のは使い勝手はよさそうだが、質力の調整に難ありかな~」

 引き笑いしながら、これからどうしようかと呆けていると、後ろから少し引き気味であるが駆け寄って来る中年男性がいた。


「今の風はあんたが……って! 大丈夫なのか! くの字で腸とか色々と見えちゃいけない物が出てたけど!」


 男性が奇妙な眼差しでジェイクを見て来るので、傷口があった場所を見せ無傷であることを証明した。

 そんな、やり取りをしていたら、二人の子供がジェイクの足元まで勢いよく走って来た。


「お兄さん凄い! あんな魔獣を倒しちゃうなんて!」

「兄ちゃんさっきの痛くないの? もう傷無いみたいだけど?」


 少女と少年が興奮気味に同時に話しかけて来る。


「「それに、かっこよかった‼」」


 子供たちのテンションが上がり、ジェイクの足を引っ張ったり、走り回るなど落ち着きがない。


「元気が、いいのはいいが……もう少し怖がったりするもんじゃないのかね……」


 子供たちの頭に手を置いて撫でながら、中年男性の方に顔を向けた。


「結局、何が原因であんなのに追われてたんだ? しかも、こんな時間にさ?」


 まだ、夜明けまでは時間がある。月明かり頼りで話してるのも落ち着かないので、一度落ち着いて話せそうな場所を作り直すことにした。

 魔獣との戦闘で使った風の威力が凄かったせいで、荷物などが吹き飛ばされていたが、ジェイクは風を吹かせて自分の持ち物を搔き集めた。

 その後に風で魔力探知できるようなので、この辺りに魔獣がいないか確認し、安全が確保されてから、中年男性に焚き火を起こして貰い。

 ある程度、落ち着いて話しのできる環境を作り、彼らの事情を聞くことにした。



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