第3話 銀色鳥と英雄1
集落を出てから四日目の夜を迎えたジェイクは、叫び声で目をさました。
なれた野宿ライフで、次の朝日を迎えられると思っていたのにとんだ災難だ。
腰を落とし、握った短剣を木々が生い茂っている方に向け、近づいて来る何かに備える。
すると、茂みを抜け出て来たのは、まだ幼い少女と少年の二人と中年男性が一人、そして二~三分ほど遅れて『ドンドスドンドン』と地鳴りのような歩く音と共に、二体の魔獣……ケラトプスが現れた。
ケラトプスとは、遥か昔に存在した古代生物に似た姿をしている魔獣で、化石と爬虫類の動物が大気中に存在する魔力を浴びて複合進化し誕生すると言われている魔獣である。
体長六メートルぐらいと言う、約二階建ての家程の巨体だ。
非常に大きな頭を持ち、その頭に生えている長い角と牙は魔力が宿っており、相当な硬さとパワーを誇る。
角や牙程ではないが皮膚も岩のように硬く、更に手足の爪も同じく魔力が宿っているため硬い。
ケラトプスが通った後は全てが薙ぎ倒され、道になると言われている希少種だ。
弱点と言うか欠点は、走るスピードだけは遅い。
「「たーーすーーけてーー‼」」
先頭を走ってた二人の子供が同時に叫ぶ。
「そこの人も早く逃げろ!」
中年男性も叫びながらスピードを上げて子供達を左右に抱え、ジェイクの後ろにある川を横断して反対側に逃げようと走り去る姿を見送り、ジェイクは口を開き叫ぶ。
「後で、事情説明しろよな!」
中年男性は、川に足を踏み入れて振り返りジェイクに返事を返そうとしたが、その瞬間に木を薙ぎ倒し、向かってくる魔獣の姿を見た。
「これは、奥の手を使うのが正解だろうけど……まずは、本気で挑んでみるか……今回も頼むぜ神様!」
ジェイクは短剣を地面に置き、足元にあるバッグから異なる液体の入った薬瓶を二つ取り出す。
二つの液体を一気に飲み干し、薬瓶を二体の魔獣に
普通の人間では考えられない速さで魔獣に近づき、魔獣の目に投擲された薬瓶により一瞬動きが止まった隙をつき、短剣に魔力を流し付与されている摩具の力を発動させ魔獣の足首を斬りつけ、傷を与えつつ暗闇の中を走り回る。
「なんなんだ、あの男は……あんな短剣で二体のケラトプスを
摩具の短剣だとしても普通は、硬いケラトプスノの皮膚に傷を負わせるのは不可能な行為なのに、それを難なくこなしているジェイクは以上である。
「ケラトプスの前足や後足の蹴りをギリギリで避けながら、少しずつ皮膚を削いでいる。動きも力強さも人間技では考えられないが、摩具を使っているから摩力持ちではないだろうし何者なんだ」
「「暗くて何をしてるかよくわからないけど、音だけ聞くと凄そうだね」」
中年男性と二人の子供が話しているように、二体のケラトプスが地団駄を踏むたび重たく鈍い音が辺り一面に響き渡る。
そんな中心で、短剣一つで立ち向かってるジェイクは、斬り裂くつもりで斬り込んでるのに皮膚が硬すぎるせいで、切り傷程度しか与えられていない。
「硬すぎる……これじゃ、ブーストポーションのタイムリミット切れが先に来そうだ。やっぱ、神頼みしかないか……」
ジェイクが戦闘に入る前に飲んだ液体の効力は凄まじいが、代償もでかいので使用を抑えていたが、時と場合を考えたら使うざる負えなかった。
しかも、激しい動きを多くすればするほど代償を払うタイムリミットが近くなる。
それでも、止まるわけにはいかない……ジェイクは前蹴りを身体を大きく捻って横に避け、そのままもう一体の後ろ蹴りを体制を低くして避けながらケラトプスの懐に潜り込み前足に向かって走りながら短剣で斬りつけた。
このままでは
「そろそろ引くなり痛がるなりしてくれないかな! うらあああああああ!!」
ケラトプスの攻撃に合わせて、最後の力を振り絞り顔面に短剣を突き刺した。
だが、刺したのと同時にもう一体のケラトプスによる角での薙ぎ払いをまともに食らい後方に吹き飛ばされ身体がくの字に曲がり地面に叩きつけられた。
叩きつけられた瞬間、色々なものが飛び散った。
ジェイクは、脇腹から血液と中身が漏れてるのがわかった。
「ブーストポーションのおかげで脳のリミッター外れて痛みの感覚無くてよかった……とは、思いたくなかったな。丁度タイムリミットだったし……いいか、脳出血もしてきたし心臓も止まりそうだしナイスタイミングか……」
短剣で顔面負傷した方のケラトプスが、心臓が止まり命の灯が消えたジェイクを食すために近づいたとき、ジェイクの身体が大気中の魔力を吸い始めて蒼く光る。
その蒼い光に触れたケラトプスは、ジェイクに弾かれるように後方に吹き飛ばされた。
光がジェイクの身体に消えていった瞬間、心臓の止まった身体が動き出し、そこら中に飛び散った身体の部位が戻っていき砕けた骨もボロボロだった皮膚も再生していった。
僅か数秒足らずの出来事だが、ジェイク自身だけ時が急速に巻き戻っているような光景だった。
その姿を遠くから見ていた中年男性は「バケモノだ」と小さく声を漏らしていた。
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