004.はじめての魔法
「それじゃ本格的に会議をする前にテーブルと椅子が欲しいな」
話をするのに立ったままというのもあれだし、それを抜きにしても文化的な生活を送るなら机と椅子くらいは用意しておきたい。
「それでしたら、主様がお作りになるのがよろしいかと」
「そんなこともできるんだ」
「はい。ダンジョンの変形は基礎ですので、物質を生成するのではなく有るものを変形させれば魔力の節約にもなりますわ。一先ずは床からお作りになるのがよろしいかと」
「なるほどなー」
イメージは地面一体型の家具を生やす感じかな。
そのまま念じてみると、床から一本足のテーブルと、その脇に向かい合った椅子が生えてくる。
「思ったよりも簡単だった」
「イメージはある程度魔導書を通して補正が行われますので」
なにそれ凄い。スマホカメラのAI補正みたいじゃん。
「そんじゃ一先ずはこれで。ルビィはそっちに座って」
「わたくしは主様の後ろに控えさせていただきますわ」
「それじゃ話ずらいでしょ。ほら文句言わない」
俺が全部決めてルビィに指示するスタイルならそれでもいいかもしれないけど、正直俺はそこまで賢くはないので元からルビィの知恵を借りる気満々である。
ということで俺とルビィは椅子に腰を下ろす。向かい合って座ると谷間が目の前にあってすごいエッチだなんて思ってはいない。
「そいや、人が入ってきたってことは入り口が外につながってるってことかな?」
あっちに立ったまま並んでるスケルトン3人衆の元の姿は人間なわけだけど、またああいうのが来られたらそれはとても困る。
「おそらく主様の仰る通りかと」
「それを塞ぐことってできる?」
「主様がお望みでしたら」
「んじゃ入口まで行こうか」
「それには及びませんわ。主様にはダンジョンマスターの技能としてダンジョン内では遠視をすることが可能になっているはずです。まずは目を閉じて、感覚を広げてみてくださいませ」
「んー、ほんとだ」
目を閉じてイメージすると、自分の斜め上から俯瞰するように今居る部屋の中を見ることができる。
「そのまま入口まで見ていただいて、テーブルと椅子を作った時のように入口を閉ざしてくださいますか?」
「わかった」
部屋から視点を動かして、そのまま侵入者が通ってきたであろう通路をしばらく行くと、そのまま外の景色が見えた。
夜だし外には出れないから詳しくはわからないけど、まばらに生える木々の向こうには開けた空間が見えたので平原とかが広がってるかもしれない。
もしかしたら近くに街道とかが見つけられるかも。
なんて思いもしたけれど、とりあえず今は壁を作って入り口を閉じておく。
テーブルに置いた魔導書に手を添えて念じると、粘土のように変形した壁がそのまま入り口を覆った。
「若干の慣れを要しますが、目を開けたまま瞬時に目的の場所を確認することも可能になりますわ」
「へー、それじゃあ後で練習しとこ」
「それがよろしいかと」
というかこの能力を使えばルビィの着替えとかも覗けるんじゃ? いや、やらんけどさ。
「もしかして、そもそもルビィは着替えとかする必要ない感じ?」
「そうですわね。先ほど使った浄化の魔法を使えば体や服を清める必要もありませんわ」
「マジかよ……」
「主様がお望みでしたら別の格好にも着替えますが」
「うん、そうだね。余裕ができたら新しい服も買いに行こう」
いや別に着替えを覗きたいわけじゃなく、美人だから色んな格好が似合いそうだなと思っただけなんだけど。
よく考えたらこの考えもわりとキモいな? うん、自重しよう。
ちなみにその浄化魔法は俺も使えるそうなので、風呂に入る手間から永久に解放された。
やったぁ。
それはそれとして温泉とか作りたいなーとかとも思ったけどまた先の話ね。
「そういえばこの魔導書ってオレが使える魔法とかが載ってる感じ?」
「そうですわね。主様は空間魔術、結界術、死霊術、召喚術、錬金術、錬成術など様々な魔法をお使いできますので、その詳細が記されていますわ」
「なるほど、だからこんなに分厚いのね」
大きさは片手で持っても困らないくらいのサイズだけど、厚さはティッシュ箱くらいある。まさしくダンジョンの取扱説明書って感じだ。
「主にできることはダンジョンの生成、モンスターの召喚、罠の生成と配置、財宝の錬成などですわね。本の内容はわたくしが全て記憶しておりますのでなにかありましたら聞いてくださいませ」
うわぁ、ルビィ優秀。
試しにパラ見してみると召喚できる魔物の一覧と必要な魔力なんかが書かれていて見てて割と楽しいけどどっちにしろ後回しだな。
「なお主様が魔法をご利用の際には必ずしも触る必要はありませんが、魔導書が補助の役割をなさいますので近くにあった方が安定いたしますわ」
「了解」
ということで、魔導書はなるべく身近に置いておくことにした。
これ奪われるフラグ立った? 立ってない?
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