【21】水滸拾遺伝~飛燕の脚 青龍の眼~(天蒸籠) 読みながら感想
【21】水滸拾遺伝~飛燕の脚 青龍の眼~(天蒸籠)
https://kakuyomu.jp/works/16818023212935889527
ここ二日は感想休暇。というか強制的にブレーカーが落ちました。
まあこんな時もあります。水木しげるは「寝たい時は寝ろ」と言ってましたし。
おかげで感想書きたい欲がもりもり
ポジティブに捉えつつ、ギアを上げていこうと思います。
さて、二十一人目の参加者は、天蒸籠さん。
作品は「水滸拾遺伝~飛燕の脚 青龍の眼~」です。
タイトルからわかる通り、中国の歴史小説ですね。武侠小説なのかな?
天蒸籠さんの参加時コメントはこちら。
────────────────
はじめまして。細々と中華ファンタジーを
書いている天蒸籠と申します。
厚かましくも企画に参加させてください。
作品名 水滸拾遺伝~飛燕の脚 青龍の眼~
https://kakuyomu.jp/works/16818023212935889527
ご意見を聞きたいところ
①リアルな中華史にファンタジーを混ぜ込んだ作品ですが、中華史に興味関心のない方が読んだらどんな感じになるのか、
というあたりがお聞きしたいです。
(企画主様が中華史にお詳しいかどうかはわかりませんが)
②そもそも「水滸伝」やら「陰陽五行」やら「道教仙術」やら、
かなりニッチでマニアックな内容なのは自覚していますが、
「ついていけない度」はどの程度なのか知りたいです。
辛辣なご意見でも泣きませんので忌憚のないところを
どうぞよろしくお願いします。
────────────────
ふむふむ。
色んなジャンルが集まる当企画ですが、中華ものは何気に初めてですね。
ぶっちゃけ梶野は中華史はまるで知りません。日本史ですら覚束ないのにw
なので歴史背景とかはド素人もいいとこだと思ってもらえれば。せいぜい中学生くらいの知識です。
中国発の小説もさして読んでいないのですが、子供の頃に西遊記にハマって(ドラマがリアル世代だったので)、図書館で原書を借りて読みふけっていました。妖怪とか法術なんかは大好きなので、親和性があったんですね。思えば格闘技や武器が好きになったのも、ここが原点という気がします。
他に読んだと言えば北方謙三の「水滸伝」。これは後輩に借りて一気読みしました。まあ続編は読めてないのですが、わかりやすかった記憶。登場人物がが多すぎて三国志を断念するくらい頭が悪いので、私w
そんな感じで、私の中華小説へのイメージは「詳しくはないが好き」くらいです。西遊記はそのうち再読したいと思ってました。武器格闘の祖みたいなものですしアレ。
その程度の読者ではありますが、まあ素人が読めばどう感じるというサンプルにはなるかと。物語の方向的には好きな部類だし。カンフー映画みたいで。
まあ難しいことはあまり考えず、読んでいきたいと思います。
それでは「じっくり感想」、開始です。
⬜️読みながら感想
二読後の感想を、読みながら書きます。(3話まで)
>第一部 第一章 薊州顕星観~二仙山(一)
これは壮大な物語になりそうな予感。
>中国は北宋、北東部薊州けいしゅうの山道。
>第八代皇帝、徽宗きそうの御代みよ。宣和せんわ五年のことであった。
うむ、「昔の中国」くらいしか。「宋銭」ってあったよな、くらいの知識。
場所もどこかまるでわかりません。中国旅行したことあるんだけどなあ。まあ気にせず、次つぎ。
>年の頃なら二十代前半、長い髪を団子にして頭頂でまとめ、灰色の袍うわぎに同色の褲子ずぼんと黒の帯という、地味だがこざっぱりした服装に、斜めがけの行嚢こうのう。黒い天鵞絨ビロードの半長靴で足拵えをしている。
綺麗にまとまった描写ですが、
>背は五尺三寸(160センチ弱)と、さほど大柄ではないが、引き締まった体つき。色白の肌の胸元から、鍛えられた筋肉の上に極彩色の牡丹の彫り物がちらり顔を覗かせる。
ここまでくると長く感じます。
五尺三寸は「160センチ」でよいかと。「弱」だと160センチ未満ということになるので。
「さほど大柄ではない」も変です。160はむしろ小柄な部類でしょう。
>細く整えられた眉の下に切れ長の目、深い瞳の色が意志の強さをうかがわせると同時に何とも言えぬ色気の漂う、まさに眉目秀麗びもくしゅうれいな美丈夫。
>かといって取っつきづらさは微塵もなく、初対面でも気安く声をかけたくなるような親しみやすさが口元に浮かぶ。
>一言で言えば、気の置けぬ小粋な色男、なのである。
さらにここまでいくと、明らかにやり過ぎ。
私ならここは服装と背格好程度にとどめ、残りは会話シーンに配分します。その方が先が読めないですし。
「気の置けぬ」とか「小粋」とかは、地の文の説明より会話や行動で示す方が説得力が出ます。
>「顕星観けんせいかん」と読める、苔むして蔦の絡まった石柱がある。
これは道教の寺共通の名称なんですかね。それとも固有名称? まあどちらでもいいんですが。
>登って御堂でひと休みしようと思いつき
一休みするのに、長い階段を登ろうとするのは疑問。「斜面の上に続く」って、相当登らないといけないイメージですが。「谷間の道」ってあったし。
これが「一夜の宿を求めて」とかなら、あえて登る必要も感じるんですが。
>(はて、俺以外にこんな古道観に入って何をしようと?)
「道観」が道教の寺のことみたいですね。
>不思議なことに若者はかなりの早さで登っていったにもかかわらず、足音一つ聞こえなかった。
現象はともかく、書き方が平坦すぎ。
私なら、
[かなりの早さにもかかわらず、足音の一つもない。]
とリズム優先で「不思議」要素は省きますかね。
>周りを囲む高さ一丈(約3m)の壁は所々崩れている。
「壁」より「土塀」の方がわかりやすいかと。
材質にも触れられるので。
>背に白と黒で太極図の描かれた、濃紺の膝まである長い袖無しの羽織を着ている。羽織の下には白地の道服に、黒の袖口と裾に金糸で刺繍のある上下。足は濃緑の半長靴を履いている。そしてひときわ目を引く、羽織の太極図の上に斜めがけされた三尺ほどの長剣。
ここも描写がくどいです。服と背中の図柄、剣くらいで十分。
それより「腰まである長髪」の髪型の方が気になります。
結わず背中に流しているなら、刀を抜くのに邪魔なはずですから。
>(あんな長剣を、あの小さい子が抜けるのかね?)
普通に考えたら無理でしょうね。
腰ならいざ知らず。
>弓に矢をつがえた男
他はともかく、こいつの行動は一体。
相手は目の前にいて囲んでるんですよね?
弓の出番なくないです? 威嚇にしてもどうなのか。
>「おおっと、そうはいかねぇ、中にゃあ俺たちのお宝が置いてある。行かせねえよ」
あれ、休憩に立ち寄っただけかと思ったら、宝物庫代わりにしてるんですね。じゃあなんで魔物と鉢合わせしてないんだ?
>知らぬ者のねえお
「おあにいさんたち」、梶野のツボでしたw
自分で言うところがポイント高い。
>「気の毒に、これを聞いちまった以上お嬢ちゃんもう無事にゃあ帰れねぇぞ。見りゃあガキだしガリガリで胸はつるぺただけど、どっかの好き者もんには高く売れるだろうぜ、へへっ」
コピペしたくなるテンプレ雑魚台詞。
>「まぁ、何だか目の色が変だけどよ。面つらぁ悪くねえしな、何なら売っぱらう前に俺たちが味見してやろうか。ふひひっ」
「悪くねえしな」は「ねえし」の方が。
オッドアイは、逆に珍品として高く売れそうな気も。
>聞いて若者は小さく舌打ちした。大体の事情と、この袁五兄弟らが押し込み強盗やらひと攫さらいやら、救いようのないろくでなしであることが分かったのだ。
後半の長説明は「大体の事情」に含めてよいかと。
しかし、少女の言った「魔物」について、若者含む全員がスルーしてるのは奇妙です。信じないにせよ、何かしらリアクションはあって然るべきだと思いますが。
>道士の少女を助けることに決め、飛び出そうとした瞬間、少女がこちらを向いた。
>(!)
> 少女の顔を見た若者は一瞬動きを止めた。
安易な表現。せっかくの文章が安くなります。
[道士の少女を助けることに決め、飛び出そうとした若者だったが、その足が不意に止まった。少女がこちらを向いたのだ。]
>道士の少女を助けることに決め
うん? この少女、道士なんですか? 服装から判断?
読者には多分わからないので要説明かと。
>緊張のせいか歯を食いしばっているが、きりっと引き締まった顔立ちで、背丈や体格と相まって十歳くらいに見える、美しい少女だった。
いまいちこなれない感じ。
「引き締まった顔」が「背丈や体格と相まって十歳くらいに見える」理由がわかりません。むしろ子供らしからぬ表情では?
私なら、
[緊張のせいか歯を食いしばっているが、きりっと引き締まった美しい顔立ちの少女だった。険相を除けば、背丈や体格は十歳くらいに見える。]
>そしてその勝ち気そうに光る目は、右が黒曜石のように輝く黒、左は泉のごとくに透き通った青の、いわゆる異色眼オッドアイだったのだ。
「緊張のせいか歯を食いしばっている」が「勝ち気そう」と結びつきません。
相手を呑んでかかってるとかならわかるんですが。
>左は泉のごとくに透き通った青の
私なら[左は淵のごとく深い蒼の]にしますかねえ。
>古道観の前庭は、通路に石畳が敷かれ、その間には玉砂利が散らしてある。
この描写は事前にあった方が「ご都合感」が薄れます。
>周りを囲んだ男たちは、じりじりと少女との間を詰めてきた。間隔が二丈半(7メートル強)ほどに迫った瞬間、少女の両袖が翻ひるがえった。
接近して7メートルて。
「取り囲む」とあったので、5メートル以内かと思ってました。
それだけ離れてると会話もしづらいですし。
あと、玉石を拾った時点で次に何をしてくるかわかろうものです。
仮にも戦い慣れた盗賊が、警戒もせず接近してくるのは現実味がありません。
たとえ女子供だろうと、目の前で石を拾われたら一度は警戒するのが普通。その上で飛礫が決まった方が、少女の技の冴えもより強調されるはず。
>次々にその場に踞った。
「うずくまった」。要ルビ。
>悶絶している様子から、骨が砕けているようだ。
容赦なしか。
>飛礫とは、要は石つぶてである。石を投擲とうてきして相手に当てることだが
説明が二重になっています。「石つぶて」を使うのであれば、
[飛礫とは石つぶて、つまり石を投げることだが]
で十分。
>少女の飛礫の早さ
どちらか迷いますが、ここは「速さ」の気が。
>(むう、没羽翦ぼつうせんの兄貴ほどの威力はないが、凄い使い手だ)
> 若者は、飛礫の名手だったかつての仲間の綽名あだなを思い出していた。没羽翦ぼつうせんとは、「羽の無い矢」という意味である。それほどの威力を誇っていたのだ。
少女の評価に合せて、若者の正体のヒントと豆知識を添えるのはいい演出。
私は覚えてませんが、知ってる人はニヤリと出来そう。
>若者が感嘆している間に、少女は呻いている男たちの囲みを抜けて、頭目らしき大男に向き直った。
大男も輪の一人かと思ったら違うんですか。
7メートルの輪をわざわざ抜けてさらに頭目の前まで行くと、二人の距離は何メートルなんでしょう。相当離れてたことになりますが。
私なら輪の一人にして、四人全員を片付けて向き直る、くらいにしますかね。山寺とは思えない広さになってしまうので。
>「よくもあたしの眼を馬鹿にしたわね! おまけにつるぺたって! 今は手で済ませたけど、次は顔面にお見舞いするよ!」
台詞は安いですが、キャラはわかりやすくていいかな。
しかし何故頭目に言うのか。馬鹿にしたのは雑魚でしょう。
手に当てた直後に言うべき台詞のはず。
>「嬢ちゃんよ、ちいとばかしやり過ぎたな」
>「何よ、あんたたちがあたしを攫うとか脅してくるから悪いんじゃない!」
ここら辺、少女の考えがいまいち伝わりません。
少女はお堂の魔物を倒しに来たのであって、邪魔だから去れと賊に言い、襲ってきたので返り討ちにした。ここまではわかります。
でも、自分から頭目に向かっていく理由はよくわかりません。全滅させたいわけでもなし。
これが、頭目がお堂の前にいるなら接近する理由になりますが、頭目が立っているのは若者のいる門の方向ですし。私ならお堂の階段に腰かけてたとかにします。
>バラバラに切り刻んで鍋にして食ってやらあ!
中国感のある脅し文句w
>「投げてみなよ、そんな小石当てられても、顔以外なら屁でもねえ」
普通ならそうですが、指先を狙える精密さと骨を砕く威力があったらどうかなあ……? 他の男だって体格はごつかったわけで。
>「いいぜ、使ってみなよ、本当にそれが打てるならな」
暗器をわざわざ見せて使う意味がないのですが、本気で使う意思がないのなら、納得いく行動ですね。となると殺す気はないし殺せない、ということになりますが。
あと、石は「打つ」と言いますが、ナイフは「打つ」とは言わないので、ここは「投げられるならな」が正解のはず。
>「そうかもな。だが俺が言ってるのはそういうこっちゃねえ。嬢ちゃんに人が殺せるのか、ってことよ」
飛刀で大男が殺せるのかちょっと疑問ですが、まあ達人だしそこはスルー。
>あの建物に置いてあるお宝ってのも、昨日近くの村の屋敷に押し込んで、八人くれえ叩っ殺していだだいてきたものよ。
「いただいて」。
ん? 昨日奪ってきたものなんですね。
だとするとなおさら、魔物に襲われなかった理由が謎ですが……
>「できるわよ! いざとなったらあんたの頭に打ち込んでやるわ!」
普通に考えたら、言うように顔や急所狙いになりますが、そこは守られてますしねえ。
>「こ、これは……」
> 少女は顔色を失い、飛刀ひとうを構えたまま後ずさりを始めた。
急所以外に撃ち込んで戦闘不能にすればいいのでは。
同じシチュを私が作るなら、そうですねえ。
「そんなちっぽけな刀や石で俺が止められるものか。
殺す気で投げるなら話は別だが、その覚悟はあるか」
的な詰め方をしますかね。実際、大柄で飛び道具は通じにくそうだし。
>大男が大喝した瞬間、少女が雑草に足を取られて尻餅をついた。
足元は玉砂利なのでは?
ここら辺も「手入れされていない」「草ぼうぼう」とか事前に描写がないと、唐突過ぎてご都合主義に見えます。
>次の瞬間、若者は門の影から飛び出し、今にも殴りかかろうとする大男の前に立ちはだかった。
大男は門に背中を向けた位置のはずなので、わざわざ前に回らなくても、背後から攻撃すればよかったのでは?
>第一章 薊州顕星観~二仙山(二)
>大男は、玉砂利の上を音もなく走り寄ってきた若者に驚き、後方に跳びすさった。
ううん?
位置関係どうなってます?
>(いったいどっから現れやがった、何にしてもこいつの軽功けいこう(身軽で素早い功夫カンフー)は油断ならねえ)
早い早い。判断が早すぎます。
奇襲かけられて瞬時にそこまで頭が回るキャラには思えません。
対峙し、警戒を強めながら思い至るくらいが順当かと。
>拱手きょうしゅ(片手の拳をもう片手で包むように行う挨拶)し
こういう細かな説明入るのはありがたい。
>「たまたま聞こえちまったんですが、この子は魔物退治に来ただけで、別にあなた方袁ご兄弟ともめたいわけじゃなかった。それなのにいきなり攫うだの手籠めにするだの、売り飛ばすだの言ったあなた方にも、非があるんじゃござんせんか?」
やっと魔物発言が拾われましたが、この世界だと普通にいたりするんですかね?
それならこの反応の薄さもわかりますが。
言ったというか、実際に行動に移して反撃されたので、喧嘩両成敗で収めるのは無理があります。「非がある」なんて、最初から明らかですし。
口から出まかせでも「男たちは軽い脅しのつもりだったろうが、少女が真に受けて反撃してしまった。馬鹿な子供だが許してやってくれないか」みたいな方向に話を持って行った方が理屈が通るかと。
>大男に向けて赤ん目べぇをしている。
「あかんべえ」ってこんな漢字なんですか!
知りませんでした。何となく「べぇ」は舌のイメージあったので。
ただ、この話は中華ファンタジーなので、日本語の「赤ん目」よりも中国語である「
鬼脸」にルビを振った方がらしい気はします。勉強にはなりましたけど。
>「ふざけやがって、やい、小乙とか言ったな。俺ぁ袁大朗えんだいろうってえ、ここいらじゃちいと知られた男だ。ガキの頃から五人揃って、強請ゆすり集たかりりかっぱらい、押し込み火付け強盗人殺しと、やりたい放題やってきたんだ。てめえみてえなチビの若僧が何言おうったって聞く耳なんぞ持たねえ。そのガキと一緒に切り刻んで、一斤いっきん(約600㌘)いくらで肉屋に売ってやるから覚悟しやがれ!」
絵に描いたような脳筋で、瞬時に小乙の実力を見抜いた眼力と矛盾して見えます。
せめて「腕に覚えがあるようだが」くらいは言ってほしいところ。
>「頼むぜ兄貴、そんなチビ相手にもならねえだろうがよ」
>「やい色男、カッコつけてできたが、おめえ死ぬぜ」
>「おいガキ、助かったとか思ってんじゃねえぞ、そいつのあとはおめえだ。俺たちのお仕置きはキツいぜえ、へ、へへ」
>「やい、兄貴はでかいだけじゃねえぞ、少林拳の使い手なんだぜ」
こちらも絵に描いたような雑魚仕草ですが、ちょっと重い。
あと、指の骨を折られた連中の台詞にはちょっと思えません。
これだけ元気なら加勢できそうです。
>足を揃えて両手を持ち上げ、「昂頭独立こうとうどくりつ」の「開門式」を行った。
ここは説明だけではイメージできなかったので、もう少し描写が欲しいところ。
「昂頭独立」も調べてみましたが、出て来ないし。
>同派であることを示せば、争いが避けられるかもしれない、と考えたのだ。
この考えはわかるのですが、「同門の面汚し」的な気持ちにはならないんですかね。
ここら辺、中国と日本では違うのかもしれませんが。
>「虎田の皿」は、「盧」の字を分解した一種の隠語である。
こういう豆知識はよいですね。
>滑るような
嫌いじゃないルビ。
>左、右と、次々に音をたてて拳が小乙の顔面、胴体を襲う。
ここは音について具体的に書いた方が効果的。
たとえば「風を切って」「唸りをあげて」。
>小乙が軽く後ろに跳ぶと、大朗の蹴りは空を切った。かと思うとその足がそのまま下に降り、同時に右足が入れ替わって前に出る。そのままの勢いで大朗はさらに距離をつめ、右拳で上段がんめんを、左拳で中段みぞおちを同時に狙い、猛烈な勢いの剛拳を繰り出した。大朗の得意技「排山倒海はいざんとうかい」である。
ここの説明はわかりやすくてよいですね。
およそ動きがわかりますし。
>「死んだ!」
>見ていた少女は目をつぶった。
ひどいw
>小乙は大朗の両拳を「双推手そうすいしゅ」で外側にはじき出し、そのまま「蛇纏手じゃてんしゅ」を使って軽く曲げた掌で手首を押さえ込んでいた。
ここは全然伝わってきません。二つの技の説明があるべきでしょう。
あと大男の渾身の大技を、小兵の小乙があっさり弾いているのも疑問です。
>大朗は素早く拳を引きつけ、そのまま右手の掌底を顎に、左の掌底を胴体に突き出すとともに、右足を伸ばし小乙の金的こかんに蹴りをとばした。
> 三カ所を同時に攻める技であるが、その瞬間小乙は身を屈め、下から大朗の蹴ってきた踵かかとを跳ね上げ、そのまま片足立ちになった左足を丸く刈り込むように「後掃腿こうそうたい」で払ったのだ。
ここも三つの点が疑問。
1.金的蹴りをしゃがんでから跳ね上げるのは流石に無理感。
ローキックを腕でブロックするようなもので、非現実的。
2.「排山倒海」の流れで繰り出しているので、大男の態勢は前傾のはず。
30センチの身長差で、後ろの足まで蹴りが届くのか。
3,体勢から、足を刈られれば前のめりに倒れるはず。
ただ、2については「後掃腿」を動画で調べると、体を一回転させて蹴っているので、これは届いてもいい気がします。
1の解決案としては、蹴りを跳ね上げるのではなく、地面に顔がつくほど低く屈むことで金的蹴りを潜り抜け、地面スレスレで「後掃腿」を放てばよいのでは、と。低い体勢からの攻撃は中国拳法ではままありますから。
3.については、落下時の描写を変え、男の隙に乗じて背後を取るとかすれば、捕縛の流れに戻れるかと。
「後掃腿」については、有名な技ではありますが、これも説明が欲しいところ。
バトルの流れを止めるようなら、動きが止まった後で技名を出してもいいんですし。
私は武術好きなので知っていたり調べたりしますが、そうでない読者の方が多いはず。
>これは「擒拿術きんなじゅつ」と呼ばれる武術の一種で、
擒拿術は「武術」というより「技術」「技法」かと。
独立した体系ではないので。
>諦めてここから立ち去っちゃぁくれねぇかい?
「立ち去っちゃあ」
>小乙(しょういつ)は大郎の太い首の後ろの「気兪穴きゆけつ」の経穴を、じわじわと親指で押し込みながら尋ねた。膝でも同時に背骨の「命門穴めいもんけつ」の急所を押さえつけている。
「命門穴」は調べたら出てくるんですが、「気兪穴」は出てきません。
いやまあ、フィクションでも別にいいんですけどね。
> 小乙の親指が五分ごぶ(1.5㎝)ほど首にめり込んだかと思うと、
ここまで行くとちょっとうるさい感じ。別に単位を書く必要もない場面だし。
>「ぐわぁ痛てぇイテェ! わかった! 諦めて出てく! 出てくから放してくれぇ!」
想像以上に雑魚かったですが、まあ序盤の敵ですしね。
>小乙が振り返ると、さっきまで座り込んでいた男が腹を押さえて悶絶し、胃液を吐き散らしている。
いくら達人でも、飛礫で胃液吐かせるのは無理かと。
悶絶で十分では。
>その足下に矢をつがえたままの弓が落ちている。
こちらも無理がありすぎ。
>どうやらこの男がこっそり後ろから小乙を射ようとしたのに気づいた少女が、玉砂利を土手っ腹に打ち込んだらしい。
怪我はどうなってるんです?
弓とか、一番手先が必要な武器だと思いますが。
まだしも武器を左手で投げようとした、とかの方が説得力があります。
>「他の奴らも、妙な動きをしたら同じめに遭わすよ! 」
「遭わせる」を使うなら、「同じ目」でいいのでは。
>少女が、「どうだ」と言わんばかりに、掴んでいる玉砂利を男たちに見せながら睨みつける。
「睨みつけた」の方が、締めくくりに合うかと。
>第一章 薊州顕星観~二仙山(三)
>なんと呼びかけたらよいか戸惑いながら、小乙しょういつは声をかけた。
行頭一マス開け忘れ。
>「えぇぇ? こいつらって押し込み強盗やって八人も殺したばっかりの悪党なんでしょお? 放したらまた悪いことするんじゃないのぉ?殺しちゃったらぁ?」
殺す覚悟がなかったからピンチになってた気がしますが。
まあ勝ったことで調子乗ってるのかも。
>まぁ悪党っちゃぁ
ここも「あ」ですね。
>(こいつら絶対この場だけ取り繕えばいいと思ってやがるな)
> と見たが、捕まえて役人を呼ぶのも面倒だし。そもそも役人を呼ぶと、こっちも脛に傷がないわけじゃなし。かと言って五人全員殺すほど、直接害を受けたわけでもなし。その押し込みにあって殺された八人の村人は気の毒だが、どこの誰だかもわからないし……などと思いを巡らし、結局は
キャラとしておかしいわけではないのですが、好感度は下がりましたね。
私なら「縛って放置して、里に出たら村人に教える」とかにします。財宝あると知れば喜んで行くでしょうし、役人も連れていくはず。
>「しょうがないわね、わたしも寝覚めが悪くなるのも嫌だし、そもそも若いうちに人を殺すと仙術が濁るからやめとけって師父しふに言われてるし。今回は見逃してあげる。有難く思いなさいよね!」
こちらも同様に好感度ダウン。
「仙術が濁る」は面白い理由ですが、こちらは役人を避ける理由もないですから。
どういう倫理観なのか、ちょっと理解に苦しむ点はあります。
>「わ、わかった。廟の中に俺たちの荷物が置いてあるんだ。取ってくるから待ってくれ」
奪ったものとか魔物の話はスルー?
>「危ねぇところだったな。確かにお嬢ちゃんの飛礫ひれきは大した腕前だが、子供のうちからあんまり無茶するもんじゃないぜ?」
改心する気ゼロとわかってる盗賊たちから目を放して、漫談に入るのはどうなのという感じ。大男なんか無傷ですし。
>「お、おぅ、そうかい (…… 祝四娘しゅくしじょう ……はて? )」
わかりませんが、何かの伏線ですかね。
>祝融しゅくゆうとは、後漢の時代の戦乱を描いた「三国志」に出てくる、南蛮国の王「孟獲もうかく」の妻で、飛刀ひとうを使う女豪傑の名である。
こういう綽名の付け方はらしくていいですね。
>ますますむくれる四娘は、ふくれっつらで腕組みをし、ぷいっと小乙に背を向けてしまった。
ここでむくれる理由がわかりません。
女豪傑だから? でも強さをアピールしてましたよね。
>「ははは、すまんすまん。でも祝融しゅくゆう夫人は美人だったらしいから、小融もきっと将来美人になるんじゃないか?」
> とおだてると、四娘は少し機嫌を直したらしい。
>「……そ、そんなの当たり前じゃない。なにをいってんのよ今さら」
>と、また小鼻をふくらませて薄い胸をはる。
> 小乙は
>(歳の割には賢いようだが、案外チョロいな)
> と、そっと胸をなで下ろした。
ここはもたつきが激しいので、台詞と思考のみでよいくらいです。
私ならこんな感じ。
[「ははは、すまんすまん。でも祝融夫人は美人だったらしいから、小融も将来有望じゃないか?」
「……そ、そんなの当たり前じゃない」
(歳の割には賢いようだが、案外チョロいな)]
>小乙ちびすけなんてどうせ偽名でしょ?」
なるほど、そういう意味が。
>「うあぁなんだこの黒いのはぁ! 」「助けてくれぇアニキぃ! 」「ダメだ矢がすり抜ける! 」「虎二、ぶった切れぇ! 」「やってるうがっぉおべごれ……」「野郎、よくも虎二を食いやがったな!くたばれこのぼごごばぐゔっぅう!」
陳腐すぎるので、まるまる削除すべき。
>四娘は血相を変え、廟の階段の下まで駆け寄った。
あれ、わかってスルーしてるのかと思ってました。
>だが四娘はおびえる様子もなく、妙に落ち着いている。
血相を変えてたのでは?
>背中の剣の柄を掴み、ひっこ抜いて空中に投げ出した。
伏線ぽかったのに普通に抜けましたが、何故?
>ところが、小乙は剣を見て驚いた。
「ところが」の使い方がおかしいです。ここは、
[しかし小乙が驚いたのは、柄ではなく刃の方だった。]
>双剣の刀身は金属ではなく木でできていたからである。
そういや映画の「霊幻道士」とかでも木剣でした。
>「これは魔物まもの専用の武器なの。人を切ることはできないけど、魔物や妖物ようぶつを祓うことができる剣なんだ、まぁ見ててよ」「おい! 危ねぇぞ!」
ここの台詞を繋げる理由がわかりません。改行ミス?
>「……居るのは全部で三匹。さっきのやつらはみんな食われちゃったたみたい。自業自得だけどさ」
いや、自業自得では全然ないでしょう。
「廟の中は危ない」と四娘が止めてたのを振り切ったならそうですが。
>先程までのあどけない表情はく消え
「く」は不要。
あどけない表情なんかありましたっけ。
>腕や脚、骨の残骸が見えるだけで、他には何も見えない。
ここは雑に書かず、一点を迫真に描いた方が恐怖を煽れます。
>「俺には何も見えないんだが、やっぱり魔物まものがいるのか?」
先にまず「この世界で魔物はどういう認識なのか」「小乙はどう考えているのか」を知りたいところ。
>「悲しいけどこれ『浄眼じょうがん』なのよね」
ギャグでないとしたら、なんで悲しいのかわかりません。
>「うん、この『浄眼じょうがん』のせいで、昼間でも夜でも、鬼でも魔物でも、別に見たくもないのにはっきり見えちゃうのよね……ねぇ、さっきの奴も言ってたけど、この眼って、やっぱり変? 気味が悪い?」
そんなこと話してる場合か。
>四娘は小乙の目を正面からのぞきこみ
身長差的に「のぞきこむ」のは無理のはず。
「見上げ」にした方が。
>でも気にしなければ、ちょっと強がりで小生意気で、年の割にチビだけど、おもしろくて可愛い女の子だ。
うーん。いまいち共感できません。
可愛さより得体の知れなさの方が先に立つ感じ。
>「ここだと日の光が届くから、奴ら出てこないけど、中に入ったら襲ってくると思うから、気をつけてよ」
ますます盗賊たちが襲われなかった理由がわからない。
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