【04】快刀ディクショナリー(ノエルアリ) 読みながら感想


【04】快刀ディクショナリー(ノエルアリ)

https://kakuyomu.jp/works/1177354054885210666


本日は十月七日。これで四人目。

だんだん遅れが出ております、「じっくり感想企画」。

無理目と思いつつも、十月内の完走を目指しております。

休日にでも巻き返しを図りたいので、応援お願いします。ひいひい。

 

──さて、四人目の参加者はノエルアリさん。

「ノエル アリ」さんかどうかはわかりませんが、名前同様、参加作品も一風変わったジャンルです。


「四字熟語が擬人化した辞書の世界」で繰り広げられる、探偵バディの物語。

まあ最近は何でもかんでも擬人化される傾向ですが、四字熟語は寡聞にして知りません。


そんなノエルアリさんの参加時コメントはこちら。


────────────────


ノエルアリと申します。イベントに参加させて頂きました。長編になるので、第1話のみだと思いますが、宜しくお願いします。


応募作品

「快刀ディクショナリー」


特に意見が聞きたい部分

「四字熟語が擬人化した辞書の世界で起こる事件を、【快刀乱麻】と【四面楚歌】の二語句の探偵が解決するミステリー作品です。好き嫌いがはっきり別れる作品だと思いますが、所見でとっつきにくいかどうか知りたいです」


具体的なアドバイスが欲しいか

「作品をより分かりやすくするためにも、アドバイスが頂けましたら有難いです」


学生かどうか

「社会人です」


ボロくそでも構いません。少しでも作品を面白いものにするためにも、改善点など頂けましたら嬉しいです。宜しくお願いします!


────────────────


その意気やよし!

私は四字熟語は好きですし、ミステリーもバトルも大好きです。能力系は十年くらい専門でやってたので(小説じゃないけど)、スペシャリストを名乗れるくらいです。

擬人化だけはよくわかりませんが、うまくやれば魅力的だろうことは予想できます。つまり個人的に好みの方向性ということです。


アドバイスも、マニアック向けジャンルは自信ないですが、「わかりやすくしてくれ」なら得意な方です。そちらもお役に立てるはず。


さて、期待通りに楽しめるや、否や。

「じっくり感想」、始めさせていただきます。



⬜️読みながら感想

二読後の感想を、読みながら書きます。


>世界は〈言葉〉と〈意味〉で成り立っていて、この辞書界では〈語句〉と呼ばれる〈言葉〉が人格を持ち、その〈意味〉を守りながら生きている。辞書にある〈語句〉が築き上げる世界では、広がる【空】が【快晴】にも【曇天】にもなって、【太陽】や【月】が時を動かし、【森】や【海】や【動物】などの、あらゆる万物が息づいている。


二読目ですが、それでも理解に至りません。

分解して追ってみましょうか。


>世界は〈言葉〉と〈意味〉で成り立っていて、この辞書界では〈語句〉と呼ばれる〈言葉〉が人格を持ち、その〈意味〉を守りながら生きている。


この時点でまず「〈語句〉と呼ばれる言葉」の範囲がわかりません。全ての言葉が〈語句〉扱いなのか特別な一部なのか。「生きている」とは本来の生命という意味なのか広義の形容詞なのか。解釈が定まりません。


二読後は〈語句〉=擬人化した【四字熟語】だと仮定しましたが、これが正解かどうかもいまいち自信がない。それ以外も〈語句〉扱いかもなので。


>辞書にある〈語句〉が築き上げる世界では、広がる【空】が【快晴】にも【曇天】にもなって、【太陽】や【月】が時を動かし、【森】や【海】や【動物】などの、あらゆる万物が息づいている。


多くの例が並んだ時点で、一読目は「ああ、全ての言葉が〈語句〉として生きている世界なんだな」と解釈。

「〈語句〉が築き上げる」は、「構成する」くらいのニュアンスで読みました。


二読目は〈語句〉が【四字熟語】だと想定して読みましたが、つまり神のようにこの世界を創造した?と読めて「確かに文字を奪ったりしてたから【四字熟語】は創造主的な立ち位置? でも普通に人間ぽかったけど」と思いました。


>その中でも、人型として形成された【四字熟語】の活動が、この世界を動かす原動力となっている。


ここはわかります。ただ「原動力」に具体性がないので、【四字熟語】神説を否定できません。


つまり二読してさえ疑問は消えず、説明の足りない文章です。ただでさえ常識外の世界観なので、飾った文章で気取っている余裕はありません。わかりやすさ最優先で、伝えることに集中すべきです。


>見た目は20代前半の赤髪の青年で、瞳の色は金。丈の長い白コートを羽織り、首元には赤色のマフラーを巻いている。


ここらへんはド派手で、いかにも【快刀乱麻】なイメージ。


>【四面楚歌】はランマより若く、青髪で瞳の色は銀。スーツのベストにチェックのズボンを履き、きっちり紺色のネクタイを結んでいる。


こちらはあまり【四面楚歌】という感じがしませんね。育ちの良さ的なイメージだとは思うんですが、被害者感が薄いというか……私なら眼鏡キャラにします。


「スーツのベスト」と書くと語呂が悪いので、私なら「スーツベスト」か「ジレ」と書きます。というかまず「白ワイシャツにベスト」と書きますか。シャツの色の方が印象強い気が。


>いや、彼らも個別で依頼を受けてたりしますからね。


それは事務所としてどうなのかw


「まあ、〈言葉〉あっての俺らだしな」


前の台詞とのつながりがわかりません。

後の説明もないですし。


>ランマが自分の手首に目を向けた。そこには赤色のリストリングがはめられていて、彼の脈拍数と共にランプが点滅している。


この生体反応リングは激しく違和感。

【四字熟語】は人間ではないのに、生体反応とは?

ここはそれこそ〈意味〉とかを活かしたオリジナルのシステムにすべきでは。


あとこんな営業監視みたいなシステムを、破天荒なランマが導入する気がしません。本人が一番嫌がりそう。


>彼らがモニターに目を向けている最中、突然事務所のチャイムが鳴った。


文章が硬め、重め。

[二人がモニターを見ていると]


「お! ようやく【起】やがったな~」


この世界独特の言い回しか何かかと思ったら、「起承転結」と絡めたネタだったんですね。

うーん、あまり評価しません。メタネタだからキャラが反応できませんし。主人公が【起承転結】だったらまだしもですが。


>「そんなに嬉しそうにしないでください」

別に注意されることではないです。客が来たんですから。


>そこには、全身真っ黒の存在が立っていた。それは頭や手足が生え、人の形をしてはいるものの、顔のパーツはない。


この書き方だと、人型の影というより手足と頭のあるクリーチャーなイメージです。


>「ああ。他にも〈意味〉はあるが、大方お前が説明した通りの〈語句〉だ。


これを見てると、【四字熟語】以外も〈語句〉扱いされてますね。ふむ?



>「オイ、もうちっとばっかし、ハキハキ喋ってくんねーか?」とランマが苛立つ。


短気すぎてイメージダウン。


>「あっ……、すみま、せん……。もう、すこし、ペースを上げて、しゃべり、ます……!」

> その声は成人女性で、「あのっ……あのっ……」と、もやっとした手が焦ったように動いた。


ソカは女性だと気づいてましたが、これは声からですよね? ランマが気付かなかったのが謎です。


それともここから女性の声になったということですか?

だとしたら何故ソカは女性だとわかったんでしょう?


>「ちょっと待ってください! 【影】はあらゆる万物に存在するものですよ? 光あるところに必ず【影】は出来る。その万物の中から、貴方の本体を探せと仰るんですか!?」


この疑問の前に「【四字熟語】以外が何故人の形をとっているのか」を知りたいところです。基本的な世界観の理解に影響しますし、二人が何も驚かず対応しているなら「珍しいことではない」と推測されるので。


>「分かった。今回の依頼、俺が受けてやるよ」


引き受ける前に、もう少し依頼人に話を聞いてください。「記憶がない」とか、まず聞き出すものです。安易に否定したり肯定したり、探偵にあるまじき考えの浅さです。

せめてソカだけでも「詳細を聞かせてください」と切り出す展開にすべきかと。


>「ああ。だが、一つだけ条件がある。報酬についてだ。今回の依頼で、お前さんの納得のいく答えが出た暁にゃ、お前さんが持つ〈意味〉の一つを頂くぜ? それでも良いってんなら、今回の依頼について、契約を結ぼうぜ?」


ここらへん、とんとん拍子で話が進んでますが、〈意味〉が自由にやりとりできるものなのか、何も説明がないまま進行しています。


・これはどんな〈語句〉でもやれることなのか。

・ランマなど一部の〈語句〉だけ可能なのか。

・人の〈意味〉は他に与えたり使ったりできるのか。

・〈意味〉を失うと、具体的にどうなるのか。


ここら辺は可能な限り説明しておかないと、後の話の前提条件がわからなくなります。


>「【影】さん、本当に良いんですか? 〈意味〉を一つ失うということは、貴方の持つ存在価値を一つ、手離すということなんですよ?」


〈意味〉をなくすとどうなるか具体例がないので、深刻さがいまいち伝わりません。


>【四面楚歌】が生まれた理由は、決して喜ばしいものではない。


あ、そういう知識はあるんですね。

中国の歴史背景=現実世界とか、どういう認識で見てるなんでしょうこの世界では。


>慌ててランマがソファと床を拭いた。

ランマが拭くんですか!?

俺さまキャラだからソカに拭かせるかと思った。


>ソカは心に痞えるものを感じたまま

「つかえる」。

難読ですね。開くか、せめてルビを。


>「しっかし、【影】の本体か~。お前さん、気が付いたらそんな姿だったって言ってたな。んじゃ、人型の〈語句〉が、お前さんの本体っつーことだよな。この世界で人型を形成してんのは、主に【四字熟語】の〈語句〉だ。お前さんの形や声からして、女形の〈語句〉だろうが、一つ一つ当たっていくしかねーな、こりゃ」


むしろ最初の段階でこの推理を出すべき。

影の輪郭や声が女性であることは、見ればすぐわかるはずですし、それを見逃してたら探偵失格です。

そのうえで「全ての【四字熟語】から本体を探すなんて」と繋げたらいいのです。


>この世界で人型を形成してんのは、主に【四字熟語】の〈語句〉だ。


設定をシンプルに伝えたいなら「人なのは【四字熟語】だけだ」とすべきです。どうしても出したい時は例外扱いすれば済みます。


>その『熟合度じゅくごうど』はそれぞれ違う。語と語を強く結びつけている『熟合度』が高ければ高い程、その〈言葉〉の持つ〈意味〉は大きくなる。


「熟合度」はシャレですかね?

長々と語られてますが、「語と語を結びつけている」のが何かわからないので、まったくちんぷんかんぷんです。これなら「著名度」「使用頻度」とかの方がよほど納得感あります。


>『熟合度』が高い【四面楚歌】。当然、その持つ〈意味〉も大きく


当然これも、何故高いかわかりませんし、他と比べる基準になりません。


>「誤解を招くような言い方しないでください! 俺らではなく、貴方だけの借金取りですよ!」


これ、ソカだけ逃げたらどうなるんでしょうね。


>キョーハイと呼ばれた大男、【狂悖暴戻きょうはいぼうれい】の後ろから、弟である【暴戻恣睢ぼうれいしき】がソカの腕を握った。


おお、見たこともない四字熟語。

ただそれだけに、どうにも印象に残りません。

まあ雑魚だからそれでいいという考え方もありますが。


あと、【暴戻恣睢ぼうれいしき】は【暴戻ぼうれい恣睢しき】と分けてルビを振った方が綺麗。


手の甲に、金色に光る【快】【刀】【乱】【麻】の〈語句〉が腕から流れ落ちてくる。その手の先に、麻の葉模様の鞘に納められた刀が現れた。


ここの演出はいいと思います。

ただ、鞘付きで出てくるのが意味わかりません。

「麻の葉模様」も調べないとわからないレベルの言葉なので、あえてここで使う必要があるのかとは感じます。


>「さて、【承ショー】タイムの始まりだぜ?」


「【照】タイム」の方がいいんではと思いましたが、ここは起承転結に絡めてたわけですね。


ううーん。でもやはり、私はイマイチ乗れません。

このネタをもし私が使うなら、地の文でやると思います。それなら「キャラが意味不明なことを言う」という違和感が減じるので。


>刀を抜いたランマに、「全員でやっちまえ!」とキョーハイが威勢を放った。【喧】や【騒】の文字を持つ〈語句〉達が血気に逸ってランマに襲い掛かるも、華麗に敵をなぎ倒していくランマ。ソカは【影】を守りながら、雑魚相手に拳で勝負する。そうしてあっという間に味方が一掃され、キョーハイは窮地に立たされた。


あー、これはファッションバトルですね。

詳しくは総評にて。


>【極悪非道】組の教訓じゃなかったっけ~?」

【極悪非道】は人間化してないんですね。


>シキが【影】の顔部分にナイフを向けた。

シキって誰?ってなりました。カタカナだとイメージ違いすぎて……w


>無傷のまま返して欲しけりゃ、さっさと金返しやがれ!」

いや、無い袖は振れないんじゃあ?


>「借金返済に彼女は関係ないだろう、【狂悖暴戻】! 卑怯な真似してないで、堂々とランマさんだけに取り立てたらどうなんだ!」


そこはあっさり影を人質に取られた自分のことを猛省してもらいたい。


>「ああ嫌だねぇ、これだから故事上がりは。てめえ、自分がどうして生まれたのか忘れちまったのか? 〈四面に囲む漢軍が楚の国の歌をうたうのを聞いた項羽が、楚の兵が漢に降伏したと思い、絶望した〉ところからきてんだろ? 敵に囲まれ、孤立無援状態になった項羽は、最後どうなったんだ?」


雑魚の割に超詳しいですね、こいつ。

まあ辞書の世界だからかもしれませんが。


「故事上がり」の意味するところ(悪口?)がよくわかりません。

普通の故事由来の熟語が多数のような……


>その時の状況がフラッシュバックし、ぐっとソカが奥歯を噛み締めた。


フラッシュバックするってことは、記憶にあるんですか? 

なんか設定すごいややこしいことになりそうですが。


>「人の不運から発生した〈語句〉のくせに、人助けなんてやってんじゃねえよ。まあ、こいつぁ、人なんかじゃねえけど」


不運由来がコンプレックスという説明もあまり共感できません。

まあ私は【四字熟語】ではないので、当然ではありますが。

「お前の不運がコイツらを巻き込んだ」的な責め方の方が、自責の念に駆られそうで、私には理解しやすいです。


>その顔に笑みを浮かべるランマが、瞬時に真顔になって首元のマフラーを緩めた。

「だから俺の依頼人に手ぇ出すんじゃねーよ」


緩めたマフラーは伏線ぽいですが、まあ現時点ではわからず。

キメた場面のはずなんですが、あまり心に響かないのは道理が通っていないからでしょうか。ていうか主役でなければ最悪の借主ですね、この人。


>「いや【影】さん、謝らなければならないのはこちらの方ですよ。すべてはこの男の不始末のせいですから。それから、貴方を守れなかった僕のせいでもあります」


まったくその通り。

ソカが突っ込んでるだけ、まだマシ。


>「え? わたしは、【影】、ですから、顔なんて、ない、ですよ?」


字義通りに考えればこの言葉通りなので、なぜ顔が浮かんだのか説明が欲しいところ。


>摩天楼「飛燕城ひえんじょう」

この世界、オリジナルの名前とかあるんですね。熟語で統一されてるのかと思ってました。オリジナル……ですよね?(一応調べた)


>むき出しになっている配線を【鼠】がかじり、その【鼠】をドブから出てきた【猫】が追い回す。


ここら辺の描写が象徴的ですが、全てが〈語句〉なら配線も鼠も違いはないはずです。でも鼠は【鼠】や【猫】は【】で括られ、それ以外は違う。そこに意味はあるのか?と気になります。作者の中にどんな設定やルールがあってこの描写なのか、どうにも見えてこないんです。


>「よお、オウショウ。久しぶりだな。相変わらず廃材の城で、王様気取りか?」


王様気取りなら部下や取り巻きがいそうなものですが、誰もいない不思議。


>そして、その新しい〈語句〉を生み出すために必要とされるのが、一文字一文字の単語だ。さて、ここで問題だ。その単語を調達するためには、どうすればいいか。この辞書界に存在する単語だけじゃ、到底足りねーわな」


飛燕城の説明はよいとして、こちらは疑問だらけです。


〈語句〉が〈語句〉を生み出せるのも不思議ですが(現実の【四字熟語】を踏襲して?オリジナルで?)、辞書界=辞書に存在する単語では足りないとは一体……【四字熟語】由来の単語でないと作れないとかならまだわかりますが。


>「簡単だよ、ランマ。この世界に無数に存在する【四字熟語】から、その単語を奪えばいいんだよ。


んな馬鹿な。

辞書の中で、四字熟語より他の単語のほうが多いことは、どう考えても明らかです。


>「文字売買……?」

「文字売買」はいいセンス。高評価。


>「誰かと思ったら君、ここでバラされた【四字熟語】じゃないか。


わざわざ教えてくれるオウショウ、いいやつなんじゃ……?


>【扇】も【衣】も【香】も、みーんな美しい文字なのにね。


なんでや、【影】もかっこええやろ!(中2)


>「ふふ。一度バラされた【四字熟語】は、元には戻らないよ? さぁてランマ、君は自分の依頼人を救えるのかな?」


ここはハイライトですね。

オウショウの言う通りだとすれば、どうやって【四字熟語】に戻すのか。いい盛り上がり。


>怒りが込み上がり、腸が煮えくり返っている。それはランマも同じであった。


ここはあまり乗れません。

というのも、【影】が単語を失うに至る理由が書かれていないので。自分で売りに来たかもしれないし。

もう一つは、オウショウが自分の手でバラしたかどうか、この書き方だとわからないので。飛燕城の部下の誰かがやった話とも読めてしまいます。


怒りをぶつけさせるなら、はっきりとオウショウが犯人であり、【影】は疑いなく被害者であるという具体的な説明が必要です。


>「ああ。もう【転てん】牌だぜ? あと一つで上がりのところまで来てんだ。って、貴婦人は麻雀なんかしねーか」


ちょっと強引ですが、「あと少し」という表現としてはベターですかね。


>思わず顔を顰めたオウショウに

「しかめた」はルビが欲しいところ。


>「わたしは、自分が何者なのか、それが知りたかった。【扇影衣香】、それが本当のわたし。【影】とする、わたしの本体よ――」


この台詞に象徴される、【影】の解決について。

作者の意図と同じかはわかりませんが、私の解釈は、

「【扇影衣香】ではなく、その【影】として生きることを選ぶ」

ということかなと。


これ自体は悪くない解決策の一つだと思います。

ただ、その後のランマの台詞や、変化具合はいまいち納得できません。私の解釈とズレているからです。ここは総評にて触れます。


あ、先に一つだけ。

第一話という世界観を読者に教えるべき回に、イレギュラーな現象の話を持ってくるのは悪手だと思います。実際私は、この世界のルールが全くわからなくなってしまいました。


>「君たちもこうなりたくないだろう? ほら、城を守るネコが来る前に、とっとと帰りなよ。彼らは、狙った獲物は城の外にまで追いかけていく性分だからね」


台詞だと【猫】じゃないんですね。

この【猫】を出した意味も、よくわかりません。

衛兵とか番人なら、ランマたちが何故スルーされたのか謎ですし。

こんな【猫】がいたら、【鼠】なんてすぐいなくなりそうですが。


>「けっ、まあ、今回は見逃してやるよ。ただし、次にまた依頼でてめーに会うことがあったら、タダじゃすまさねーからな?」


なんか因縁があるようですが、興味より置いてけぼり感の方が強いです。


> 三人の〈語句〉が帰っていく。その後ろ姿を、光が差し込む玉座からじっと眺めるオウショウ。その口元が、小さく笑った。

>「――あの、本当に、ありがとう、ございました」


ここは行間を大きく取るべきです。

会話が繋がってるように見えるので、一瞬オウショウに礼を言ってるのかと思いました。


>「んだよ~、ソカ。もしかして、エイに惚れちまったのか~?」


エイ? ああ、影(エイ)か。

ずっとカゲだと思ってましたが、熟語的にエイですよねそりゃ。


>「これは夕焼けに照らされているだけで!


先に城を出た時刻や情景の描写が欲しいところ。


>夕暮れの花畑の前で、

これです。これが先に来るべき。


>「俺らが契約を交わしたのは、【影】という〈語句〉とだ。だから、その報酬は【影】から頂く。


……あれえ? 私の認識と決定的に違う台詞ですね。

私の解釈の方が間違ってるのか?


>「だから、お前さんからその〈意味〉を頂くぜ?」


この報酬の取り方は文句なしです。


>「おう! そっちの方が断然お前さんらしい生き方だぜ。知っているか、エイ。【影】は古語では、〈光〉という逆の〈意味〉を持つんだ。光と影は表裏一体だ。光差す所にゃ必ず影ができる。その光も影も、両方お前さんなんだぜ。だからそんなに美しい姿なんだよ、お前さんは」


それは知らなかったので、知識的には「なるほど!」なんですが。

ただ、「扇影衣香」の意味合いからすると、どう考えても光は意味しないので、ちょっとこの場面でもってくるのは強引な気がします。それに古語の解釈まで含めるとなると、他のケースでも適用しないといけなくなるので、設定的に地獄を見そうな気がします。


豆知識としてはすごく面白いので、この話以外で使うなら高評価だったと思います。私もどっかで使ってみたい。


>「おーい、最後の【結けつ】部分なんだぜ~? 助手ならもう少しお膳立てしろよな~? ソカ」


別の漢字に当て換えるのあきらめましたねw


>「【起承転結】揃ったんだから、もうアンタは満足でしょうが。……それよりも今回の件、しっかりと統監本部に通報しておきますから。貴方のような【四字熟語】が、これ以上文字売買の被害に遭わない為にも、『飛燕城』のような無法地帯が一日でも早く解体されるよう、統監本部に協力するのも、我々探偵の仕事ですから」


話す相手がランマからエイに変わってるので、台詞を分けるべき。

統監本部が何なのかわかりませんが、探偵の仕事にはちょっと思えないような……宮仕えでもなし。


>「ま、お嬢様だからこそ、知られたくない過去もあるわな」

>「今回の件は誰にも口外しねーよ。そもそも、探偵に依頼してくる時点で、その依頼内容については、口外厳禁だからな。お前さんもどこかで、自分の本体が良からぬ事件に巻き込まれていると感じてたんじゃねーのか? だから統監本部じゃなく、ウチに来たんだろ?」


ここら辺の説明もよくわかりません。

エイの反応的に「エイにも表に出せない、後ろめたい部分があった」と読めます。私は例えば「何らかの事情があり、エイの意思で文字売買をした」なら、統監本部(警察みたいなもの?)に言えないのも納得ですが、「自分の本体が良からぬ事件に巻き込まれている」なら、統監本部に言えない理由になりません。


それとも統監本部は、警察とか公的機関とは全く違う組織なのか。

説明はまったくないので、「何だかよくわからん」と結論せざるをえません。


>だから、自分の過去に影なんか落とすなよ?


言ってることはカッコいいんですが、エイに過去の記憶はなしでしょ。

生まれた理由を思い出しただけのはずですが。

いや……記憶戻ってないですよね?


>色々辛いことも経験しましたが、これからは前向きに生きていけそうな気がします」


少し前のこの台詞。

ここの色々辛いことって、文字を奪われたり影にされたことだと思ってましたが、記憶が戻ってるって意味なんです? もしそうなら、何故?


>「本当にこれが正しいことなんでしょうか?」

> どこか気が咎めるソカが、徐に訊ねた。

>「この世界にゃ、【正義】も【悪】もある。だが、行き過ぎた【正義】は、正さなけりゃならねーだろ?」

>「それが、この世界を作り出した男の思想を受け継いだ、俺ら『五体語ごたいご』の使命だろ?」


ここら辺は次回以降の伏線と思われますので、評価対象外とします。


> 諭すような言葉に、ソカは隣に立つランマの顔を見上げることはなかった。ただじっと、「明正辞書」の明正という〈言葉〉を見つめるだけだった。


察するにソカは〈意味〉を取ったことを悪と捉えているようですが、〈意味〉を失う重要性の説明がここまでないので、どう受け止めるべきかよくわかりません。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る