【03】カラーメモリー『Re・MAKECOLAR』(たぬきち) 総評



【03】カラーメモリー『Re・MAKECOLAR』(たぬきち)

https://kakuyomu.jp/works/16818023214210006556



⬜️全体の感想


・タイトルについて


>カラーメモリー『Re・MAKECOLAR』


正直、読んだところまで(5話)を見る限り、タイトルは看板倒れです。


物語的にも色彩へのこだわりが感じられませんし、登場人物の何名かに色の名前がついているくらいです。せめて戦隊ものよろしく、全員が色関係の名前だとかのこだわりが見えれば、また違うんですが。


まあタイトルに関しては、後から回収される可能性はありますが、雰囲気的にも横文字はちょっとそぐわないような……なんとなくですが。


・あらすじについて


>アナタは何色が好き?わたしは赤色!わたしと同じ色だから!!


サブタイトルも、ながら感想で書きましたが多少疑問。

アカリが赤を好きという話、ここだけですし。


>とある町に住む少女、色野灯(いろのあかり)とその周りで巻き起こる様々な人達との日々を少しの魔法で彩る、人と人との繋がりを描く、ちょっとフシギなほのぼの日常魔法コメディ。


あらすじ自体はすっきりまとまっていていいと思います。ここは内容に偽りないし。

このあらすじは後から読みましたが、確かに「魔法コメデイ」と先に知ってたら、「魔導学園」なんかの受け止め方も違ったかもしれません。

……いや、やっぱり「魔法学校」がいいかな。



・文章について


児童向けということを差し引いても、まだまだですね。


目立った問題点は長文の悪文。描写をとにかく一つにまとめようとして、読みやすさを損なうパターンが目立ちました。文を分け、すっきり読める形に文章を整えましょう。読者のイメージする順番を考えて並べるのがコツです。


もう一つの問題は、漢字を気にする意識が低いこと。

この小説の対象年齢は不明ですが、大方小学生くらいと思われます。どの漢字が許されどの漢字を開くべきなのか、私も厳密な基準は知りませんが、少なくとも「喋る」なんてのが許されないことくらいはわかります。漢字には全てルビを、難読なら開く程度のチェックはしましょう。


子供に向けて書くからには、読めない漢字や難しい言い回しは極力避け、言葉の端々まで吟味すべきです。


本来児童向けの文章というのは、並の小説より高度なスキルを求められるものです。子供が読める範囲に語彙は制限され、その枠内で子供でもわかるように表現し、かつ面白いことを求められるのですから。


普通の小説を書ける実力のある書き手が、自ら縛りをかけて書くものだと考えてください。けして「児童向けなんて誰でも書ける」ものではないのです。


今作については、指摘した問題点はあるものの「気軽に読めてノーストレス」という基本は抑えており、及第点ではあります。対象年齢が極端に違っていなければ、この路線でいいかと思います。



・内容について


>キャラについて

全体的にわかりやすい性格付けがされており、ギャグやユーモアも随所に盛られていて好感を持ちました。アカリ、マル、シーニのトリオの毎回のやりとりも楽しかったです。シアンやスミレも一風変わった個性で、一色ずつ色が増えていくようなワクワク感がありました。


半面、ネーミングについてはかなり謎です。タイトルからして、全員色に絡んだネーミングかと思いきや、アカリは赤としてマルやシーニ、クー、リュイは色関係とは思えず首をひねりました。


例えば、アカリ=光と捉えて好きな色を白または全てとして、赤はマルに譲る。

他はカラーに近いところから命名する、とかで統一してはどうでしょう。日本語の色の名前は、辞書が何冊もあるほど豊富なので、選び放題かと。

ここらへんは世界観やテーマにも通じるところなので、かなり気になりました。


>ストーリー

なんてことのない魔法日常ものですが、クッキーやスコーンのように気軽に楽しめる内容でした。ちょっとした事件にアカリたちが騒ぎ、魔法を使い、解決する……みたいな話が続くと予想されますが、それでいいと思います。


もちろんプロを目指すとかなれば、まだまだ底上げが必要でしょうが、ネットで読んで楽しめるラインはクリアしています。10000字をわりとオーバーしたとこまで私が読めたのがその証拠です。もちろん読みやすさもありますが、先を読みたいと思わせる、求心力を切らさないストリーテリングは褒められます。


問題点を指摘するなら、一番は「魔法卵」ですね。

あれは大ポカです。世界的に普遍的に存在するようなのに説明がほぼなく、それでいて後から「知ってるよね!」という顔で出まくるのですから。

魔法卵の設定自体は斬新で面白そうです。可視化されたマナという感じ。でもやはり「魔法泡」の方が私はイメージに合いますかね。


あとはまあ、リュカの魔法とか細々とはありますが、全体に響くような問題点はなかったかと。


欲を言えば、タイトルにある「色」にこだわった部分がもっと欲しいですね。

それは色鮮やかな情景でもいいですし、色にまつわる物語でも構いません。例えば途中で出てきた隣村の大型農園なんかは、まるで描写ありませんでしたが、さまざまな色の果実が実っているとか、描き方次第で色を連想させる場面が作れたはずです。


昔読んだ「くれよん王国」のシリーズは、ふんだんに色を盛り込んだ世界観で、今でも場面ごとカラーで脳内再現されます。子供の夢想に色を与えるような、そんな世界作りも色のテーマと言えるのではないでしょうか。



・アドバイス回答について


>序盤の読みにくさを自覚しております。 なので、序盤でどのように引き込めるかのアドバイスを頂けてと思います。 


ながら感想で指摘しましたが、森への出入りの部分は不明瞭で引っかかりました。ここはスッキリできるよう、アカリの前後の記憶や実際の帰り道などを説明すべきです。


アカリの独り言関係も不自然で作為が漂います。その後は気にならなかったので、まだ描き慣れなかった頃の名残では。読み直して手を入れてはどうでしょう。


卵を受け取る展開は、やや冗長ですが、序盤としてはそんなもんかなあとも。改善するならよりカラフルな雰囲気(夕焼けを背景にするとか)とか、いきなりアホ会話全開でいくとかをオススメします。


>それと、私の文章の癖で会話シーンなども多くなってしまっています。 拘って書いているのは当然なのですが、恐らく、「この会話いらないでしょ」と思われると思うのでそこの部分もアドバイスが欲しいです。 


一話目の独り言だけ直してください。

あとは手を入れる必要をさして感じません。地味だけどちゃんと面白いですよ。自信を持って構いません。


あ、でも今どきのラノベやネットネタで遊びすぎると雰囲気が変わりそうなので、ほどほどにw


>大人も読める子供向けとは


これは質問ではないですが、私の思うところを書いておきます。


大人も読める童話(とは限りませんが)の条件は色々ありますが、だいたいこんな感じではないかと。


・大人が読むと別の切り口、楽しみ方がある

・子供時代を懐かしめる印象的な場面や物語

・大人子供関係ない、普遍的な面白さを含む


私は幾つになっても、ドリトル先生の危機に空が黒くなるほどの大群で現れるクロオウムの場面でワクワクします。


文章うんぬんより印象に残るテーマや場面作り。自分の中の子供を大事にすることが、双方が楽しめる物語作りには一番大事な気がしますね。



⬜️総評

・タイトルに反して色のこだわりが薄い

・キャラの会話や空気感は好み

・「大人が読める」を目指すなら、もう一歩


改善点は多々ありますが、なかなか面白く読めました。ちょっとした時間にくすりと笑える、そんな作品だと思います。


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