第14回 挑戦は半歩だけ


 体調不良でサボりがちでしたが、そろそろ復活。

 お久し振りです、小説雑話。

 予告では「茉莉花」の反省会でしたが、ひとまずは筆慣らし。

 お題はこれです。「挑戦は半歩だけ」。


 小説を書く上で、野心は大事です。

 かつてない小説を書きたい。オリジナルを見せつけたい。

 アイデアであれスタイルであれ、何かしら自分を出すのが創作です。

 承認欲求まで言わずとも、自分を誰かに認めて欲しいのは当然。

 梶野も同じです。むしろ人一倍、その傾向があります。


 ある程度小説を書いてる人には、わかってもらえると思いますが。

 書き慣れてくると、凡作では満足できません。

 世界で自分しか書けない作品を、自分だけが見つけたアイデアを。

 読者が目を見張るような表現を、斬新さを、新発明を、追及しがちです。


 それ自体は悪いことではありません。挑戦こそ創作の醍醐味ですから。

 ですが、これが過ぎると、大暴投な作品が誕生します。

 未来に飛躍するはずの一歩が、崖の先だったみたいな。

 ある程度小説を書いてる人には、わかってもらえると思いますw


 理由は様々ですが、原因は単純です。

 新機軸の輝きに目を奪われ、読み手のことを忘れた時に失敗するんです。

 スピードに酔いしれ、アクセルを踏みすぎて起こす事故と同じです。

 同乗する読者にすれば、たまったものじゃありません。


 言うまでもなく、梶野も何度かやらかしています。

 野心作のはずが理解不能と言われたり、てんで読まれなかったり。

 その経験から学んだのが、これです。「挑戦は半歩だけ」。

 未知の領域に挑戦する時は、大きく一歩を踏み出さない。

 半歩で留めておくのがコツだな、と。


 暗闇を手探りで歩く時、誰でも歩幅を小さくします。

 何か踏んだり、穴があっても、残った足で踏ん張るためにです。

 これと同じで、自分のよく知る安全圏に片足は残しておく。

 失敗しても大コケしないよう、備えを怠ってはいけません。

 読者のことを意識する、安全運転の心得が「半歩だけ」なんです。


 例えば、かつてないアイデアを複数盛り込んだプロットとか。初挑戦のジャンルでオリジナリティを意識した作品とか。

 こういうパターンが要注意。盛りすぎる傾向があります。

 新アイデアは絞った方が手堅いですし、初挑戦なら無理しないほうが無難です。

 天才作家なら大丈夫でしょうが、そんな人は滅多にいませんからね。

 

 「半歩だけ」じゃ、挑戦とは呼べない。

 そんな突っ込みもあるでしょう。物足りないと感じるのもわかります。

 ですが、私はこう考えています。

 「半歩」先の作品からもう半歩進めば、それは「一歩」になると。 

 ゆっくりでも進歩は起こります。焦る必要はないのです。

 皆さんも冒険の際は読者を忘れず、「半歩」を心掛けてください。


 ……と、ここで終わればカッコイイんですが。

 梶野も最近、盛大にやらかしています。

 「茉莉禍」というホラーで、思いっきり酷評を集めまして。

 大元の原因は「半歩」を忘れたことかと、今さら反省する次第です。

 ちょっとチャレンジが過ぎてしまったのかも。


 そういうことで、次回は拙作「茉莉禍」の反省会です。

 「じっくり感想企画」で斬りまくった梶野が、斬られまくる回です。

 「感想の読み方」の実践編としたいところですが、どうなるやら。

 今度は間を置かず更新予定です。お楽しみに。

 

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