[雑話]漫画家さんに感想を送った話



 お久し振りです。今回も雑話です。

 次は「茉莉禍」の反省会を書くつもりでしたが、思いがけず面白いネタが拾えたので、予定変更してお届けします。


 皆さんは、ファンレターって書いたことありますか?

 私は一度もありません。

 長く漫画を読んでいますし、感動したりハマったりした作品は五万とありますが、不思議とその気持ちを送り付ける、ということはありませんでした。


 これは私の性格、趣味も関係してる気がします。

 私は作品は好きでも、作者にはさして興味を持たないタイプなんです。

 アニメも制作会社や声優をまるで覚えません。見て面白いものを追い続ける、という感じです。映画もパンフ買いません。あ、ゲームは会社で選んでるかも。


 なんというか、物語が好きすぎて、制作側の話すらノイズに感じるんですよね。

 なので私にとって、好きな漫画の感想とは、同じ漫画好きの友人に語るだけのものでした。主にお勧めする時のプレゼンとして。感想ブログとかもやったことないですし。


 そんな私ですが、先日生まれて初めて、漫画家さんにファンレターを書きました。

 漫画の名前は「缶コーヒーの女神」。作者は根岸岳春先生。


 缶コーヒーを飲むと現れる女神が、「癒し」のために活躍するお話です。コメディタッチですが内容はバラエティに富み、様々な人間模様を女神たちが解決していくオムニバス形式。ムトウ(無糖)は辛辣、モカは甘え上手など、コーヒーに合わせたキャラも立っています。


 格別に絵が上手いとかではないのですが、どの話も意外性がありながら着地が上手く、読後感が良い。何よりハズレ回がほぼない。

 物書きのはしくれとして「これはスゴイ」と舌を巻いて以来、ずっと追いかけてきましたが、この作品、なんと三巻で完結になったのです。


 あっさり終わってしまった推し作品を前に、かつてなく「感想を書きたい」という気持ちが湧き上がりました。

 思えば、カクヨムでは死ぬほど感想を書いてる私です。小説に書いて漫画に書かない道理もない。なんせ読んでるのは圧倒的に漫画なんですから。


 何より、この漫画は大ヒット作品とかではありません。ここまで入れ込んでるファンは私だけかもしれない。そう思うと、是が非でも感想を伝えねば!という使命感さえありました。まあ、まったくの思い込みなんですがw


 前述の通り、私は作者のパーソナリティに興味を持たない人間です。 

 ただ、根岸先生のアカウントは、たまたまX(旧ツイッター)で見かけたのでフォローしてました。交流はほぼゼロでしたが。

 手紙でファンレターを出すのは手間ですが、ダイレクトメールで送るならカクヨムと大差ありません。ビバSNS。ビバネット時代。この距離の近さも決断に至った理由です。


 感想を書くとは決めたものの、悩みは他にもありました。

 雑話の常連さんには周知の話ですが、梶野は本音の感想しか書けません。

 これはプロが相手でも同じですし、三巻分のオムニバスともなれば全てベタ褒めできるわけもなく。やはり低調な回もあるもので。

 しかしプロに送るファンレターに、そんなこと書いていいものなのか?

 カクヨムならお互い修行中の書き手として、正直感想を書く意味があると私は信じていますが、今回はプロの漫画家さん相手です。「嫌なら送るな」という話では? 

 正直、書き出すのにかなり時間かかりました。応援で書く感想に、マイナス部分の言及とか必要か?とか。素人意見を笑われないか?とか。


 うだうだと悩んだ末、結局、梶野は考えるのを止めました。

 感想形式を一話ごと140字くらいと決め、その中で感じたことを率直に書く。失礼のない程度に、でも正直に。要するにいつも通り。

 文字数制限したのは、数こなさなければならないのと、指摘を深掘りしすぎないため。それでも書き上げるのに半日くらいかかりましたが。


 全27話を網羅した長文感想を書き上げ、ダイレクトメールで送信した時は緊張しました。粘着ファンみたいに思われるのが嫌で「返信は結構です」とは添えたものの、心臓はバクバクでした。失礼なこと書いてなかったかな-とか。なんせ筆が乗ると、どんどんオブラートが薄くなるのが梶野なので。


 果たしてその翌日──根岸先生から返信がありました! 

 これがびっくりするほど長文、丁寧なお返事で、率直に感動しました。

 内容的には感謝とともに、「編集者も熱烈なファンレターに喜んでいた」「違和感のあった指摘が編集者と同じ」なんてお言葉も。編集の方にまで読んでいただけたのはくすぐったい反面、的外れな指摘でなかったことに胸を撫でおろしました。「さすが創作をされている方」とか持ち上げられて、ちょっと得意になったりw


 他にも物語の創作裏話を教えていただいたり(例の如く、感想に展開予想とか書いた)、プロの創作現場の空気がほんの少し味わえるような、素敵な内容でした。「絶賛しかないレビューほど信用できないものはない」というお言葉にも感服しました。やはりそうですよね!


 さらにはお礼のイラストまで。ちゃんと「梶野カメムシ」の名前入り。

 えっ、漫画家さんってこんなサービスいいの?と思いました。

 思い切ってファンレターを書いて、本当によかったです。

 次回作ももちろん応援します。今から楽しみにしております。


 今回、「気持ちを伝えるのは大事」だと、改めて思いました。

 多少恥ずかしくても、面倒でも、伝えた方がすっきりするはず。

 その結果がどうあれ、何かしら得るところがある気がします。

 それに思いがけず、嬉しいこともありますからね。今回のように。


 アイドルでも歌手でも作家でも構いません。

 皆さんも好きな相手がいるなら、ファンレターを出すべきです。今の時代、敷居はかなり下がってますよ。

 

 

※缶コーヒーの女神(根岸岳春) 一話試し読み

https://viewer.heros-web.com/episode/3269754496342400180

※いただいたイラスト

https://cdn-static.kakuyomu.jp/image/H2Jmoq1G


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