【21】月光〜ベートーヴェンの、最後の演奏会(春野カスミ) 読みながら感想
【21】月光〜ベートーヴェンの、最後の演奏会(春野カスミ)
https://kakuyomu.jp/works/16817330663214070578
二十一回目は、「月光〜ベートーヴェンの、最後の演奏会」。
春野カスミさんの作品です。
……はい、前回と同じ作者の方ですw
再登場となった経緯ですが、軽く説明しますとですね。
前回の感想を受けた春野さんは、翌日には、改訂でなく同じ設定から完全新作を書き上げられ、改めて感想を求めて来られました。
いや、たいした情熱です。若さってすごい。
熱意には熱意で応えるのが梶野のモットーです。
感想を引き受けるのはもちろん、新作の方も「じっくり感想企画」に参加してはどうかと打診しました。
かくして「じっくり感想」初の二連続参加が実現した次第です。
本来は一人一作品が原則で、さすがにそこは曲げられません。
今回のみ特殊ケースだと思ってください。後続もいませんし。
春野さんのアンケート回答はこちら。
梶野様、ありがとうございます!
例外で感想を書いてもらえるということで、性懲りもなくやって参りました〜💦
連絡に時間が空いてしまいすみません! 今学校が終わったもので…(>人<;)
改めまして、今回お願いしたい作品はこちらになります。
「月光〜ベートーヴェンの、最後の演奏会」
https://kakuyomu.jp/works/16817330663214070578
・特に評価して欲しいところ
前回と同じく、推敲できる箇所はないか、教えてほしいです。あと、前作を踏まえて矛盾点が解決されているかどうか、知りたいです!
・アドバイス
こちらも前回同様、アドバイスありの例示なしでお願いします。
・転載
今回もぜひ、よろしくお願いします🙇
タイトルについては、前作と区別するためにサブタイトルをつけましたが、これはもう一回精査するつもりでいます。一応、今回のタイトルの評価もお願いします。
以上の内容で参加させてください。
今回は本当に、また感想を書いていただけるなんて嬉しいです。よろしくお願いします🙇
前回はかなり矛盾に突っ込みましたからね。
どれだけ解消されてるかは当然チェックしたいところ。
他は例示なしのアドバイスあり。了解です。
締め切りがあるということで、こちらも飛ばして行きましょうか。
じっくり感想、開始します。
⬜️読みながら感想
二読後の感想を、読みながら書きます。
>第1話
楽章単位は止めたんですかね。
確かにこちらでは、この方が合ってるかも。
>彼は死んだ。突然死んだ。理由はまるで分からなかった。
なかなかインパクトのある出だしでいいかと。
>彼のお母さんは、色のない目で私を見つめていた。ひどく、静かな怒りだった。
いい表現。葬式の親族ってこんな感じですよね。
>私は逃げるように、小走りでその場を後にした。雨は静かに、私を責めた。ただ、責め立てた。
表現はいいですが、「私は」が被っているので、何とかしたいところ。
>黒き平滑。
ここは凝りすぎて意味がわかりません。
>ああ、虚しくてたまらない。彼は死んだ。突然死んだ。理由はまるで分からなかった。
虚しいと思えるのは真実を知った後で、この段階では彼女には悲しみと驚きが先に立っている気がします。
「理由がわからない」というのは「胸にチクリと刺さった」という場面と矛盾に思います。思い当たる何かがあったから、胸に来たわけで。
確信はないが思い当たることはある。もう理由がわからないわけではない。それぐらいのニュアンスを表現してみては。
>……そうしているうちに、いつのまに夜が来た。
この一文は不要です。
次から夢のシーンなので、夜になったことに気づかないほうが自然ですし、彼女の気持ちの乱れの表現にも繋がります。
>第2話
>ピアノソナタ第14番嬰ハ短調 作品27-2 『幻想曲風ソナタ』、通称“月光”の第1楽章。楽聖ベートーヴェンが作曲した、様式破りのソナタ。私と彼の、勝負曲。
説明が過不足なくなりましたね。
>夜の月の歪な光
いいセンスの言葉選びだと思います。
>死んだはずの彼と話しているこの状況が、私には全く気にならなかった。
相手の死を隠さないことでストレートに本題に入れる分、重みは減ってますね。ここはバーターなので判断は作者次第ですが、私は評価します。重みは他でも補えますし。
>「月光と聞いて夜の月を思い浮かべるのは当然だよ。この旋律に、夜の月を明確に表す音は存在しない。もっとも月光というのは通称で、詩人ルートヴィヒ・レルシュタープが「スイスのルツェルン湖の月夜の波に揺らぐ小舟のよう」と形容したことばに由来しているという説が濃厚だけど」
「」内の台詞は『』にするのが原則ですが、まあこれはそこまで厳密なルールでもないのでいいかな。
月光の由来を入れたのは好判断。
書き方次第では「解釈は人それぞれ」の枕にもできそうですね。
>彼とは、小学生以来の仲だ。
彼との過去語りが追加されましたね。
うん、やはりこうでないと。
>そんな楽譜の解釈(読み方)があるのか
ここのルビは「よみかた」とひらがなの方が自然かと。
>……そう。それなら、付き合ってあげるよ。君と私の2人きり、おそらく最初で最後の音楽の授業に。
前作の改善流用ですが、ここは削るべきです。
彼女の性格にそぐわない上、すでに死んでいることが明言されているので、傍点で匂わせる意味がなくなっています。
>第3話
>近づけない。彼の演奏にはどう足掻いても、近づけない。
ここは言葉を重ねるより変えたほうが綺麗に思います。
>だから、というのはどうかと思うけど、私には「正しいピアノの弾き方」が分からなかった。正しい月光が、分からなかった。
悪くない理由付けです。
>父が勝手に参加を申し込んだコンクールで
これが可能かどうかはわかりかねますが、読者の疑問に先回りしておく感覚は大事です。この感覚を全体に張り巡らせましょう。
>彼が賞をとった直後、私は彼に言った
ここはもっさり感。
「彼」を二度使わない工夫を。
>「……ピアノの泣き声か。いい表現だ。その通りかもしれない。ねえ、また君に会えるかな」
二人の語り口が現在と変わらず、子供に見えないことに違和感があります。彼はともかく彼女の方は、子供らしい台詞にした方がらしくなるはず。
>「ベートーヴェンは、想っているのに結ばれない女性であるジュリエッタにこの曲を送った。叶わない想い。僕の月光も、だいたいはそんな感じだよ」
模範というか教科書的な回答は、むしろこっちだと思います。史実からの推測ですし。
彼ならではの解釈は「絶望」なので、ここは前後を入れ替えたほうが筋が通ります。
>第4話
>結果は散々だったけど。彼はコンクールに出るたびに入賞を繰り返した。
「私の結果は」と主語を入れて、彼と対比させたほうがわかりやすいです。
>きっと、ベートーヴェンに寄り添ったピアノだからなのだと思う。
うーん。彼のスタイルは絶望というオリジナルで、そこに彼女は惹かれていたはずです。「寄り添った」という表現には若干の違和感を感じます。ベートーヴェンや世の音楽家の理解が絶望という話なら別ですが。
ここは「自分(彼女)に比べて」という意味合いを強めてみては。
>月光だけではない。モーツァルトのアイネクライネ・ナハトムジークも、ショパンの子犬のワルツも、彼の手によって弾かれるピアノは、まるで当時の作曲者たちが現代に甦ったようだと評判だった。
月光以外に触れるのはいいと思います。前作で気にはなってた部分なので。
ただこうなると、彼の特徴が「絶望の解釈」なのか、「再現の巧みさ」なのかでわかりづらくはなりますね。月光だけが独特なのか、絶望という解釈が巧みな再現と評価されてるのか、はたまた完成度が高いのか、そのあたりの解説はあった方が理解しやすいかも。
>当然、審査員は私の演奏を快く思わなかっただろう。だけど私は、自分が一番信じられるその可能性を、無視できなかった。だから自分の演奏に、その感情をぶつけた。
自然な展開でいいかと。
>父が勧めたのは、動画投稿サイトだった。
なるほど、こういう展開で来ましたか。
今風ですしありそうな話です。とてもいい追加要素だと思います。
>そして彼からも、反応をもらった。
この展開も微笑ましくてよいです。
こういう譜石あればこそ、悲劇が光るというものです。
>そしてそのコンクールが終わった日の、満月の夜。
「コンクールが終わって」が前文と被っています。
>そしてそのコンクールが終わった日の、満月の夜。彼が、自宅のレッスンルームにて、首を吊って死んでいるのが発見された。
もう少し雰囲気が欲しいところ。
満月の夜に死ぬのはいいとして、発見は翌朝にする方がリアルかと。「月が沈む」ことが彼の死の暗喩にもなりますし。
>雨音が葉を揺らすような音だった。
表現は巧みですが、ここは「声」の方が。
>分かった気がしたよ
分かったのは今なので、「分かった気がするよ」ですね。
>「君はどうして、首を吊ってしまったの?」
ちょっと生っぽい言い回しで嫌な感じです。
「死んでしまったの?」くらいで十分かと。
>「ねえ、それじゃあ君は、私にとってのベートーヴェン、なの?」
この二人に例えると、解釈が恋愛感情の意味に寄りそうな気もしますが、まあ彼の補足があるからいいですかね。両方の意味とも読めますし。
>——……あるいは、あのピアノを弾く彼だからこそ、その感情を黒く染めてしまったのかもしれない。彼のピアノは、ベートーヴェンをリスペクトする重苦しい絶望の音色だから。その救いようのない音を奏でる彼だからこそ、私のピアノは彼にとって毒でしかなかった。
この内容は、彼女でなく彼の口から端的に出した方がいいと思います。後述。
>希望が強く光り輝くほど、その絶望の影は濃くなる
これも三人称ならありですが、一人称だと他人目線に見え、かえって彼女のショックを弱めてしまいます。台詞のやりとりだけで十分これが伝わるよう工夫してみてください。
>「嬉しくない!!」
>私は涙ながらに叫んだ。
そう、これくらい人間らしい方が共感できます。
>「ねえ……何で死んじゃったの……」
ここから繋ぐのは、前よりよくなってますね。
台詞も自然ですし。
>「…… 死は、みんなが言うほど悪いことかな? 私はそうは思わない。食べたり、寝たり。死はその延長線上にある。死こそ、生命の営みだと思う。生きているから死ぬ。死とは、生の象徴だ。後ろめたいことなんか、何もない。でもね、死にはひとつ、弱点がある。それは、生きている人と、もう二度と触れ合えないってこと」
ここははっきりと駄目出しします。
長すぎるし、彼女の言葉になっていません。
「触れ合えない」より先に、「ピアノが弾けない(聞けない)」ことに触れませんかね、彼女なら。
意味合いはそのままに、傷心の彼女がこの場で言えるだろう言葉に訳してみてください。こんな演説めいた内容ではないはずです。
>「君は、私のベートーヴェンだよ」
耳障りのいい台詞ですが、意味は不明です。
この返しは、自分をジュリエッタになぞらえての返答ですよね?
恋愛的な意味なら「袖にする相手」ということになりますし、音楽的な意味だと理屈が通りません。
ジュリエッタ視点抜きにしても、彼女はベートーヴェンをリスペクトしないスタイルですし。
最初に聞き返した時とは意味合いが違ってくるので、特に伝えたいテーマがあるなら、補足を加えてもいいかも。でなければ省くべきです。
ちなみに「私もベートーヴェンだったよ」ならアリですよ。
それなら意味が通じるので。
>「君の月光が、希望の音が輝いた。それに伴って僕の音は、どこまでも深く、沈んでいく。いつしか、分からなくなったよ。自分が今まで、どんな月光を弾いていたのか。情けないだろ? 嗤ってくれ」
ここで彼の死因が出ていますが、ちょっと抽象的すぎてよくわかりません。自分の演奏を見失っていたら、彼女にはわかりそうなものですし。ちょっとここは後述。
>……やっぱり、彼のピアノを叩き壊したのは、私だ。
最後の場面と重ねるための表現だと思いますが、「叩き壊す」は全く場面に合ってません。
というかピアノの破壊自体が彼女のラストに向いていないと思います。ここも後述。
>「私……君のピアノを殺したんだ」
死んだ彼の方に悲壮感がないので、ちょっとちぐはぐですが、まあ自責の念が見せたものと思えば納得できます。
>第6話
>目が覚めた。ひどい夢だ。
全体的に前作より重さに欠ける感じがありますが、夢オチという部分が原因の一つですね。どうしても現実に起きたことに対してインパクトが減ってしまうので。
>電気をつけていない薄暗い部屋で私は、その月光をたいへん恨めしく思った。
何故恨めしく思うのかわかりません。
>ああ、もういっそ、塗り替えてしまおうか。私の音、彼の号哭に。
今作では「号哭」は出てきてないはずです。
>だってもう、弾けないのだから。彼が死んでから、ピアノの弾き方を見失ってしまったのだから。
ここら辺の心情は共感。それくらいには衝撃でしょうね。
>もういいじゃないか。彼のピアノと、眠ってしまってもいいじゃない。
ここら辺もわからないでもないです。
>「今からいくね。待っててね」
この後のピアノ破壊と自殺宣言は、あらゆる意味で納得いきません。悪い意味で前作に引き摺られていると思いました。後述。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます