【17】神様のいる世界(Elノ) 総評


【17】神様のいる世界(Elノ)

https://kakuyomu.jp/works/16817330661293144485



⬜️全体の感想

・タイトルについて

うーん。平凡。明日には忘れていそう。

テーマに一本筋が通っていれば、他に案も思いつきそうなんですが、現時点では……やはりまず内容の改善からですね。


・文章について

高校生ならこんなもんかな? という感じ。

表現力はまだまだですが、褒められる部分はあります。


モンスターの描写など、テンプレに頼らず考えて書こうとしてる点は、私は評価します。固有名詞頼りでは類似作に埋もれます。

まあ今回はそれを推しませんでしたが、長編を書く際にはその姿勢を大事にしてください。モンスターに限らず、ファンタジーは創造と想像が最重要です。


あと、村の討伐場面と回想を交互に入れ込む構成は褒められます。

台詞のみにして一目してわかりやすくしてある点も高評価。

モンスター描写が無理なので「中級」とかなんだろうなと推察します。

ただ、あの攻勢を生かし切るなら、最後まで貫くべきでした。

主人公の懊悩とバトルの現場。双方が接近し、最後に統一されて終わる展開の方が、百倍燃えるし面白いはずです。ここは私案として後述します。


反対に、直すべき部分は、まず無駄に行数のある空白部分。

大きく取れば感動できると思っているなら大間違いです。

「!」の文字を100個に増やせば、100倍興奮しますか?

しませんよね。見づらいし、頭悪く見えるだけです。


過剰な空白も同じです。適切な空行で十分。

むしろ普段から抑えておいて、ここぞという時だけ使えば、二行の空白でも十分にインパクトを与えられます。


後は、文章の全体バランスですね。

過去語りや聖女の場面だけ、無駄に描写が多かったり、長編のようにやりとりするのは、バランスを欠いていますし、不自然です。

あえてそれをする必要性があればいざ知らず、聖女の外見描写や表情なんて物語にまったく寄与しません。今回は阻害してるくらいです。

台詞だけで聖女の個性を伝えるくらいの気持ちで書きましょう。


師匠の場面も同じです。いきなり師匠がしゃべり始めて、むしろ冷めてしまったくらいです。独白なのに台詞が普通にある時点でおかしいですから。主人公が全部自分の声で再現してると思えば、おかしさに気付くはずです。あそこも最小限に抑えた方がバランスよく、かつ効果的に悲劇を伝えられたはずです。


・内容について


一番の問題は、「テーマが重すぎる」でしょうね。

宗教、神、教会。素人が手を出すべきテーマでは本来ありません。


これが宗教抜きの個人的な視点であれば、ありなんです。神の」捉え方なんて千差万別だし、それぞれが出した答えに一定の意味があれば、読者は納得しますから。


ですが宗教と教会を絡めると、話は果てしなくややこしくなります。

まず教会の設定、神の設定が必要ですよね。

ライトファンタジーで適当に書いていますが、仮にも教会と聖職者の話で、そこ抜きに神談義とかシャリ抜きで寿司を握るような暴挙です。私なら絶対に避けます。踏み込みすぎです。


例えば、テンプレ的なファタジーの僧侶だと、だいたいキリスト教的な設定ですが、一方でファンタジーなので、神の声を聞いたり力の加護を承けたり、何なら神を呼び出したりする世界観もあり得るわけで。


そこの説明がないまま、「神はいない」とか聖職者が言い出したらわけがわからないし、聖女の説明も「それよりこの世界の宗教設定を教えてくれ」ってなります。


代表的な問題が、「聖光術」と「聖女」ですね。

テンプレに従えば、「どちらも神への信仰あってこそ」存在が許されるものと設定されがちです。聖女なんて神に選ばれた女だったり、神の声を伝えたりするイメージですし。


この設定通りなら、主人公の「神はいない」という問いは「聖光術や聖女がいるなら、いるだろ」で一蹴されてしまいます。現実の宗教と違って、聖光術や聖女は確実に存在してるんですから、当然神もいるだろって話です。クーラーつけながら電気の存在を疑う人間はいません。


なので、このストーリーを成立させるには、最低限、

・神を見たものはいない。

・聖光術も聖女も、じつは神や信仰とは関係ない。


この二つは、独白などで説明しておく必要があります。


ちなみに、現実のガチ宗教だと、この程度の疑問は全部想定済みで問答が用意されてますよ。「神の試練」とか。伊達に歴史あるわけじゃないんです。


>主人公の悩みについて

主人公が「神はいない」と断じるのは師匠の死後ですが、そもそもまず両親が死んだ時点で疑うものではないか、という疑問が一つ。

そして「神はいない」と信じた15歳から何年後かは知りませんが、特に問題もなくそのまま枢機卿になってるのは何故?という疑問がります。


とくに後者はまず、信仰がおろそかになりそうなのに、トップ2になってる点が謎過ぎます。聖光術がスゴイ!だけでなれるもんじゃないですよ枢機卿。会社で言えば副社長なんですから。レジ打ちが早いだけじゃ店長になれないようなもんです。


仮にそこら辺は成長してたりごまかせたにせよ、本人のモチベーション的に普通はならないでしょう。教会を離れる方が普通の選択だと思いますし、何年前からうだうだ考えてるのって感じです。聖女の突っ込みも「今更かよ」ってもんでしょう。


私なら、ここら辺の解決案として、

・両親が死んだ時点で「神はいない」と思い、やさぐれた。

・だが師匠の慈愛と教えを受け、信じる気になった。

・弟子として急成長し、最年少で枢機卿になった。(師匠まだ生きてる)

・魔物が孤児院のある村を襲い、子供を守って師匠が死ぬ。

・助けられた子供が聞いた遺言は主人公あてに「神はいる」。

・打ちのめされた主人公はその言葉が認められず、「神はいない」になる。


──という感じの過去にします。

師匠が死んだのはごく最近にすれば、途中の問題は解決するので。

そして続きの筋書きはこんな感じ。


・村を襲う魔物討伐にでる場面では、主人公不在の情報が出る。

・「神はいない」ことに絶望した主人公は、教会から姿を消した。

・独白はあてどなく魔の森を歩きながら。

・一方、魔物討伐組は戦力不足で苦戦。聖女の助けを待つ。

・聖女、主人公の前に突如現れる。最後の会話。

・魔物討伐組、絶体絶命。

・聖女の説得に応じた主人公が魔物討伐組の前に現れる。

 師匠を超える聖光術の一撃で魔物を吹っ飛ばし、反撃を開始する。

・終わり。


──という感じにすると、


・両面構成が最後に一つになり、綺麗に終わる。

・聖女の説得の結果が、主人公の行動で証明され、すっきりする。

・ラストが燃える。


などの利点が考えられます。


もちろんこの通りに変える必要はないですが、部分的に採用してもよし、参考にしてもよし、もっといい案を考えるもよし。叩き台として好きに使ってください。


聖女の説得場面の是非と改善案については、後述します。



・アドバイス回答について


>・特に意見が欲しい部分

> 後半での問答の部分です。具体的に何処かは読んだらわかると思います。


聖女との会話ですね。

ここは消化不良に感じました。


主人公が「神はいない」と断じた理由は、育て親の孤児院長が魔物に殺されたからです。

自身の不甲斐なさも一因だったかもしれません。

わかりやすく言えば「神に仕える者の善良な行いすら、神は救わない」ことで、突き詰めれば超常的な救いがなかったことへの恨みです。

これ自体はわかりやすく、それなりに納得のいく話です。(枢機卿が言う点には疑問を覚えますが)


対して聖女の論は、簡潔に言えば「人の善性こそ神である」ですね。

「ブッダ」(漫画)に、「人の中にこそ神はある」という悟りを得る場面があります。まあこちらは仏教ですが、論そのものが悪いとは思いません。


ただ、「超常的な神の救いがなかった」から「神はいない」と考えるものに対して、「人の中に神はいますよ」と言われても説得力があるかな?と思います。スイングはいいけど打球はファールな感じ。


「人の中の神」では全てを救えないのは、孤児院長の死が証明しています。人間の力は限られるからこそ、超常的な存在にすがるわけですから。アンサーとしては不完全なんです。


私なら、ここの問答はこんな感じにします。


・まず「神を見たものはいない」世界を前提にする。

・聖光術は、素質があるものを教会が育てているだけで、神の与えた奇跡や加護ではない。

・聖女も同様で、特殊な力を持った女性を探し、教会に帰依させ聖女の名を与えているだけ。

・さまざまな奇跡も聖人も、神の存在を完全証明するものではない。

・枢機卿の主人公は、そういった知られざる教会の裏側も知っており、神の存在に懐疑的だったところに、孤児院長の死が重なり、「神はいない」と結論する。


で、聖女の言葉。


「神の姿を見たものは誰もいない。その意味で神はいないのかもしれない。

 それでも神を求める声は止まず、苦難を訴える者は教会に押し寄せる。

 姿なき神に代わって、限られた力を束ねて民を救い、「神はいる」と信じてもらう」

「それが”教会”という組織ですから」


ポイントは三つ。

一つはまず正面から主人公の問いに答えること。

その上で方向を変えた代案の提示と、「教会の意味」の強調。

元の聖女の理屈「神は人の善」だと、教会である必要ないですからね。ボランティア集団でもいいって話になります。

例え虚像でも信仰のシンボルとして、神なり仏なりは必要で求められている。現実でもこれは同じで、そういう視点は大事です。


>すみません。お願いしたいことを追加で書かせていただきます。

今回拙作はカクヨム甲子園の短編部門に応募しているのですが、元々5000字ほどの短編を圧縮しまくって3994字に収めているので、読み取りずらい部分と消しちゃっていい部分を指摘して下さると助かります。


これは「読みながら感想」でしておきました。

短編として考えると、長編のように書いてる師匠と聖女の場面はゴリゴリ削れますね。その方がまとまりがよくなると、私は思います。



⬜️総評

・文章は並。構成は攻めていて面白い。

・テーマは挑戦しすぎ。細部の穴が多すぎ。

・穴を塞ぎ切れば、結構面白くなりそう。


正直、最初は「なんじゃこりゃ」と思ったんですが、改善案など考えるうちに、案外こういうのもアリかも、という気になりました。

とはいえ宗教と神は鬼門です。私でも避けて通ります。

よほど調べまくって自信がつくまでは、手を出すべきではありません。キャラ個人のレベルに留めておくのが吉です。


とはいえ、ありきたりの作品を書かず、随所に挑戦が感じられる点は評価しておきましょうか。

粗削りではありますが、若者らしいよい作品だと思います。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る