【17】神様のいる世界(Elノ) 読みながら感想


【17】神様のいる世界(Elノ)

https://kakuyomu.jp/works/16817330661293144485



さて、第十七回はElノさんの作品、「神様のいる世界」です。

ざっくり拝見した感じ、ライトファンタジーという感じ。

なろう系というほどテンプレではないかな?

その方が私はアドバイスしやすいですかね。テンプレ知らないので。


ただ、題材がちょっと壮大。

なんせ「神とは」ですからね。それも宗教メインの。

うーん、考えただけで手に余りそうなテーマですが、まあ私なりに解釈してやっていきましょうか。

Elノさんのアンケート回答はこちらです。



初めまして 勢いで書いた部分があったので是非感想を頂きたいなと思ったので参加させていただきました。


・特に意見が欲しい部分

 後半での問答の部分です。具体的に何処かは読んだらわかると思います。


・「梶野ならこう書く」アドバイスは必要か否か。

 是非頂きたいです


すみません。お願いしたいことを追加で書かせていただきます。

今回拙作はカクヨム甲子園の短編部門に応募しているのですが、元々5000字ほどの短編を圧縮しまくって3994字に収めているので、読み取りずらい部分と消しちゃっていい部分を指摘して下さると助かります。

失礼いたしました。



──ふむふむ。

Elノさんは高校生とのことで、そこら辺は配慮しましょう。

その上で、話(問答)の整合性と無駄な部分の指摘、ですかね。

毎回やってることですので、こっちは心配いらないかな。

文字数を削る意識があるなら、冗長さは気にされてるでしょうし。


それでは、読みながら感想、始めます。



⬜️読みながら感想

二読後の感想を、読みながら書きます。


>短編

サブタイトルが「とりあえずつけといた」って感じです。

読者が確実に読むところなので、ここも作品の一部。

タイトル同様、考えて書いた方がよいです。

無難なところなら、タイトルと同じにしておきましょう。


>位は枢機卿。上から二番目に偉い事になるが、

説明があるのはいいですね。


>──笑えねえか

「。」が抜けています。

この前に空行がかなり入りますが、入れ過ぎです。

場面転換でもないただの強調なので、私なら二行だけにします。


>「状況は聞いてますね?伝令によると村の周りを多数の魔物が囲んでいる様です。一刻も早く救助が必要な状況です」

>「了解です!」

>「今日は馬の調子もいいですしかなり早く着けるんじゃないですか?」

>「そうしたら後はフェルネン枢機卿の独断場ですね!」

>「魔物なんてどんなに強いのがどれだけ居ようともフェルネン様には敵わないでしょう」


進行中の戦いと独白が交互にくる構成はいいと思います。

ただ、回想に合わせて数を稼いだせいか、村に向かうまでの描写が冗長。

村に行くまでの話とか強行突破とかいりません。

例えばここで必要な情報は、「村を魔物が囲んでいる」「一刻も早い救助が必要」「フェルネン枢機卿がいる」だけです。馬とか独壇場とかは要りません。独壇場なのはバトル時に回せばいいので。


>何でそう言うかって?そりゃあ身をもって不幸を体験してるからだ。


最初に思ったのは、不幸な過去から「神はいない」と思ってる男が、何故神職についたり枢機卿でいるのか、という疑問ですね。普通は遠ざかる気がしますが。


>ソースは俺。

なろう系ぽいネット常套句ですが、ここでしか使われていないので違和感しかありません。

物語全体をそういう口調で通すのでなければ、「俺の結論だ。」など通常の表現にすべきです。


>何でも俺の生まれが近かったが、同時にその年は一部地域で酷い不作だったから早急に食料を運ぶ必要があり、結果として産婆を同行させたらしい。


暗号レベルの悪文。「結果として」が意味不明です。

「その年は酷い不作で、早急に食糧を運ぶ必要があった。

 身重の母親も仕事を休めず、産婆を同行させ、旅先で俺を産んだらしい」


>だが俺は思わずして、その名をもう一度被ることになる。


「思わずして」が聞き慣れず調べてみましたが、ネットでは用例が出てきません。

間違いとは断言できませんが、ポピュラーな言い回しではなさそうなので、意味的に大差がない「期せずして」か「望まずして」の方が確実かと。


>「フェルネン様!2時の方向に中級魔物3匹、接近してきます!」

>「ユリスとダリアで対応してください。残りは無視して突っ切ります。今は時間が勝負です」


フェルネン=主人公が答えていると読めますが、独白と並行して書くと、こう考えながら指示を出してるように見えます。まあ内心に悩みを抱えつつ、冷静に戦局に応じてるとも取れるので悪いわけではないのですが、「悩んでいる」と感じ取れる部分を味方の台詞中に含むのも演出的にありかなと。


>「フェルネン様!2時の方向に中級魔物3匹、接近してきます!」


教会と言うより軍隊みたいな会話ですね。

まあそういう世界観なら、それはそれでアリかと。


>今は時間が勝負です」

時間「との」勝負です」


>当時の俺が5歳。行商の旅で山道を通っている時だった。大規模な落石があった。


この短さで文を分ける必要はないです。

「俺が5歳の時、行商の旅で山道を通過中に、大規模な落石にあった。」


>直径1~3m級の巨大な岩が

サイズはいりません。「巨大な岩」で十分。


>だが俺は、二つの巨大な岩の間に挟まり、その上からさらに大きな岩が蓋をすることで潰されずに済んだ。


蓋まで説明する必要はないでしょう。

およそ何故助かったかは通じます。

「だが俺は、二つの大岩の間に挟まり、潰されずに済んだ。」


「巨大な岩」は二度出てるので変えています。


>半日経ち、後続の商人達の通報でやって来た教会の聖職者達に救助された俺はまたもや「奇跡の子」と呼ばれることになった。


「救助された俺は、」で読点が欲しいところ。

やや冗長なので商人の情報は削ってもいいかも。


>──ハッハッハ、奇跡だなんてよォ、人様の気持ちも知らないで……


これは今の心境か、当時少年だった頃の気持かどっちでしょう?

というか、この事件の時点で「神はいない」と思う方が自然な気も。


>「日が暮れてきましたね」

>「ここら辺は山に囲まれていますからね。分かっていた事です」

>「どうされますか?闇の中での行軍は少々の危険を伴いますが──」

>「無論、強行突破でしょう」


大した内容ではないので丸ごと削っていいかと。

とにかく状況描写を挟んでおきたい作者の都合が読み取れます。

どうせ挟むなら、もっと緊迫感の維持を考えるべきです。


>その後の俺は神聖帝国の帝都にある教会の孤児院に預けられた。

>最初は馴染めなかったが、孤児院の皆は優しく、俺にも積極的に絡んできてくれたから一年経つころには皆に交じって遊べるようになっていた。


これだけなら不要なエピソードです。

最初から師匠のいる孤児院に入っても問題は何もないので。


>嘗ては枢機卿カーディナルも務めたという孤児院の院長。聖人君子で、助けを求める人には見返り無しでそれに応じる、まるで神様みたいな人だった。


聖職者の誉め言葉に「聖人君子」は微妙な気がします。

というか「まるで神様」と後であるので、「聖人君子」は不要かと。


>この人は当時反抗期で尖りだしていた俺に嫌な顔一つせず聖光術の師匠になってくれた。


「聖光術」の説明が皆無なのが気になります。

テンプレ通りだとしたら、いわゆる僧侶の奇跡とか神聖魔法ですよねこれ。

定番だと神への信仰を元に神から与えられる能力なわけで、現時点でガンガン聖光術を使ってる主人公が「神はいない」とか言ってるのは意味不明に思えます。聖光術こそ神がいる証拠じゃないですか。


そうではなく、テンプレ以外の設定があるなら、その説明をあらかじめしておく必要がある。というかこの話では必須だと思います。後述。


>「よく見て下さい。分かりにくいですが、右端の二体は上級です。右半分は私で対応します。残り半分を貴方達で対応してください」


さっきはクロックポジションだったのに、いきなり大雑把になりました。


>師匠の下で鍛錬し、終わったら皆と遊ぶ。

孤児院で最優先されるのは雑務や家事で、その後に勉学や鍛錬でしょうね。年上になればなおのことです。


>いつも通り師匠と魔の森へ出かけていた俺は、上級の魔物に出くわした。


RPGのエンカウントみたいな安さがあります。

上級の強そうなイメージが一気に下がるので、レア感が欲しいところ。


>熊ほどの大きさの黒い体の半分が口で、パックリ開いた口からは白くて尖った牙が姿をのぞかせている。足は短い割に太く、手が無い代わりに細くて長い触手が鞭のようにしなっている。


魔物の外見をちゃんと描写しているのは個人的には好感を持ちますが、今作だとここだけで、他は「中級」「上級」 しか使われていないので違和感があります。


回想の独白という点を見ても、ここは詳細を説明するより事件をざっくり描くべき部分なので、描写は「上級魔物」に絞った方が、逆にすっきりすると思います。

私も普段なら、「手抜きせず描写しろ」派なんですが、これは短編ですしスピード感を出す意味でも、こだわるべき部分ではないかな、と。


>初手で俺の使える内の最速の聖光術をぶっ放し、それに続けて目くらまし、拘束技を放った。それらがきちんと機能していることを確認した俺は、止めと言わんばかりに扱える最高位の聖光術を放った。


この程度の描写なら、ない方がすっきりします。

「最高位の聖光術をありったけ打ち込んだ」で十分です。


> ──勝った!

ここから続く師匠の死まで、全部冗長です。

ここまで過去語りは巻きで語って来たのですから、ここも可能な限り簡略して書くべきところ。


感動の場面なので詳細まで書いてしまったのだと思いますが、むしろ逆効果。過去の悲劇は淡々と書いた方が胸を抉るものです。

特にいきなり台詞や擬音が入るとかもっての外。必要なのは師匠の遺言だけで、それさえも最後に一言、抑えめに書いた方が悲劇が強調されます。そこまで表現を抑え、一度も台詞を使わないことが、最後の遺言を輝かせるんです。


>「凄い!」

>「あれがフェルネン枢機卿のお力」

>「初めて見るが、あれが最年少で枢機卿に至った方か……凄まじいな」


強さは伝わりますが、ドラマティックでは全くないですね。

ただ強いというだけです。


>その頃から神の存在を疑っていた俺

むしろここの説明こそ必要でしょう。

師匠は何を教えていたんですか?

というかこの時点で「神はいない」と確信した人間が、何故に枢機卿になった(なれた)んです?


> ──神様はいない

無駄に行を開けすぎです。

効果より読みづらさが先に立ちます。

あとこの期に及んで「様」をつける意味が分かりません。



>神様はいないのに、救われたと勘違いする偶然ばかり起こる


ここから続く詩みたいなのが、勢いで書いた部分ですかね?

徹夜ハイで書いたポエムみたいな青臭さがあります。

悪いことは言わないので、冷静な気持ちで書き直すべきです。

段差をつける演出もマイナス効果です。


別に内容的に言いたいことはわかるので、それを伝わるように平易に、抑えて書くだけで十分です。その方がどう考えても効果的。

普段の私なら、この詩が出た時点で読むのをやめてるところです。


私が書くなら、そうですねえ。


「奇跡は偶然。だから神はいない。

 救済は一握り。だから神はいない。

 教会は偶像。だから神はいない。」


くらいにしますね。これでも若干ポエムですが。


>◆◇◆◇◆

あれ。戦闘シーン、あれで終わり?


>霊峰の頂上に建てられた静謐な空間。

こんなとこまで報告に来るとか、何日かかるんだって感じです。

現実感が皆無なので、もうちょっと行きやすい場所にすべきでは。

聖女が出てくる場所として必須でもないですし。


服も髪も肌も目も白いこの美しい少女は教会で聖女と呼ばれる、ちょっと特殊な立場にいる少女だ。


>彼女を見ると俺と彼女は違う種族なんじゃないかと思うぐらいに圧倒される。彼女はこの建物と同系色なのに、その強い存在感で輪郭を明確にしている。かといって、さっきみたいに気配を完璧に殺して知らない内に近づかれていることもある。


何故、聖女だけ描写が細かいのかわかりません。

さして必要な情報もないので、二行もあれば雰囲気を出せるはず。

ここまでを見れば、描写なしでもいいくらいです。


> ──不思議な少女だ

ダッシュ(──)の後でも句点(。)は必要ですよ。


>「お聞きしました。昨日は大変なご活躍だったそうですね」


昨日???


>私の働きなど聖女様のそれに比べたら

「私の働きなど聖女様に比べたら」


>「謙遜しなくても宜しいのですよ?村を囲っていた狂乱状態の魔物を20匹以上討伐した上怪我人も全員治癒したそうではありませんか。立派な活躍です」


ここら辺の説明も、聞いても「ふーん」くらいの内容なので割愛していいです。大した内容じゃありません。

私なら「謙遜しなくても宜しいのですよ?」で済ませます。


>本当にどうして知ってんのか気になる。俺はたった今教皇様に報告したばっかなのに、もうそれ以上の詳細をその口から語っている。


「知っている」被りを避けたせいでしょうが、「もうそれ以上の~」以降の文章がまともに繋がっていません。


「本当にどうして知ってんのか気になる。俺はたった今教皇様に報告したばっかなのに。」で十分。


>「私にも伝手はあるのですよ」

> 聞いても無いのに答えてくれた。


不要な説明。

かえって聖女のイメージを損ないます。


>相変わらずの満面の笑み。だが今なら分かる。これは額面通り受け取ってはいけない笑みだ。


なんで異端審問みたいになってるんですかね。

聖女が何者で、どういう立場で、「神はいない」と思ってるとバレたらどうなるのか、全然説明がないので、展開についていけません。


>でも彼女の質問にはきちんと考えなければいけないという様な、不思議な義務感が俺に湧き上がった。


わけがわかりません。

とりあえず、聖女がまるで油断ならない相手というイメージだけ感じられます。


>「神様とは、何だと思いますか?」


別に言ってることはそう間違っていないですが、主人公の疑問に完全に答えてるとは思えません。ここは後述。


それより、聖女に無用な怪しいイメージを与えていることの方が問題ですね。笑顔とか口ぶりを見れば、主人公のみならず読者でも眉に唾をつけたくなります。作者自ら問答の説得力を落としにかかっているようなものです。それこそ典型的な聖女キャラの方が、少なくとも説得力のマイナスにはなっていないはずです。


>「それが”教会”という組織ですから」


締めとしては悪くない台詞ですが、交互に組んだ構成は完全に死んでいて勿体ない。途中のバトルとか何だったんだ、という気分です。

このテーマをより突き詰めるなら、村の討伐を全カットすべきですが、私はエンタメ派なので両獲り案を考えました。後述。


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