【16】Vitamin,(箱女) 読みながら感想
【16】Vitamin,(箱女)
https://kakuyomu.jp/works/16817330658137844300
参加者十五人で落ち着いてたので、今回は打ち止めかと思いましたが、滑り込みで新規の方が現れました。
十六回目は箱女さんの作品、「Vitamin,」です。
ジャンルは恋愛、百合、年の差。
ううむ、これで三件目の百合ものです。
私もちょっと興味が出てきました。
この企画終わったら一度書いてみましょうかね、ガールズラブ。
アンケート回答はこんな感じ。
初めまして、箱女と申します。
ぜひ感想をいただきたいと思い、参加しようと思いました。
・特に意見が欲しい部分。
全体の雰囲気がラストの余韻までつながっているか。
また余韻そのものに意味は見いだせるか。
・「梶野ならこう書く」アドバイスは必要か否か。
目につくような箇所があればもらえると幸いです。
どうぞよろしくお願いいたします。
ふむふむ。
ラストと余韻の感想が気になってるご様子。
ラストは締めくくり、コースメニューのデザートですからね。
ここの出来で満足度が決まるといってもいいので、気になるのは当然かと。
私もラストというゴールが決まらないと書き出せないタイプです。「書くに足る」という自信が、ラストを決めないと見えて来ないんですよね。獲物が見つからないと走り出せない、チーターみたいなタイプなんだと思います。
さてさて、今回はどんな物語でしょうか。
じっくり感想、始めます。
⬜️読みながら感想
二読後の感想を、読みながら書きます。
>第1話
サブタイトル放棄はいただけません。
雰囲気を演出するのに、なかなか使える部分です。
最大限センスを生かした副題が欲しいところ。
>火曜日の深夜0時。私はビルとアパートの間の細い路地裏を目指す。
時間、場所、目的を簡潔に伝えてて、いい出だしです。
ビルと路地裏で、舞台がある程度以上は都会なんだろうなと読めるのも好感触。
>そこは一人で通るためとしか思えない道で、向こうから人が歩いてきたらお互いにイヤな思いをするだろう。
ちょっとくどいですね。
私なら「そこは本当に狭い道で、~」。
>いつでも私が行くときには私だけしかいなかった。でも考えてみれば当たり前のことだ。
この文章はまるまる不要です。
抜いても意味が通じます。くどくなるだけです。
>路地の中ほどで上を見上げると明かりのついた部屋がある。
ビルの部屋かアパートなのか、ちょっとわかりづらい。
まあアパートだと思いますが。
アパートのイメージは人によってかなり違うので、描写が欲しいところです。古い建物とか、生活臭とか。
>誰が真夜中にあんな道を通りたがるだろう。
何故、主人公がこの路地を通ったのか、知りたいところです。
>落下防止の手すりに寄っかかった女の人がいる。
暗く細い路地に面した窓に出る理由って、喫煙くらいしか思いつかないんですが、違いますかね?
だとすると、下にいる少女は大丈夫なのか。
>いつも似たような、とはいっても私がここに来るのは四回目だ、あいさつを気分良さそうにかけてくれる。
「、」より「──」で繋ぐ方が適切。
>平均的な女性よりも低めな彼女の声
「少し低め」で十分です。
>見上げるとお姉さんのシルエットだけが浮かび上がる。
違和感。
「窓際に見えるお姉さんの姿はシルエットだけだ。」
>部屋の明かりで肌と着ているものの縁が照らされている。
とくに服装などの情報もないので、この文も不要。
「逆光」「ライン」で説明は終わっています。
>光が当たらないせいで顔は見えないけれど、どんな口のかたちをして笑っているのか想像がつく。
お姉さんの語りが少なすぎて、まだキャラが見えていない段階なので、主人公の想像に共感できません。イメージが細かすぎます。
本当にそう見えてるならともかく、この手の描写は、会話がある程度進み、お姉さんの人物が見えてからの方が飲み込みやすいはずです。
>笑っている口だけが残るのはチェシャ猫のイメージだ。
話の内容だけ見ると、マッドハッターの方が近い感じ。
>私は何のためのものなのかもわからないビルに背中を預けて、二階に顔を向ける。
直前に「見上げる」とあるので内容が被っています。
この主人公には、後に「何かを見上げると眩暈がする」的な設定が出てきますが、これは大丈夫なんでしょうか?
むしろ、ここは上を見ることなく会話だけ続けた方がらしい気がするんですが。設定的にも、二人の距離感を考えても。どのみち顔は見えないんですし。
>視界の上のほうには夜空が入らないこともないけれど、そんなものはどうでもいい。大事なのは私とお姉さんだけが許されているこの空間と時間だ。
言いたいことはわかりますが、もっさり感が先に立ちます。
>「いま体育バスケです。よくわかんなくてつまんない」
>「あれボール大きいと思わない?」
>「大きいです。手すごい痛い……」
受け答えはまともなんですね、お姉さん。
トンデモ回答の方がらしいんじゃ。
>私たちは言葉だけをやり取りしているうちに、それもほんの短いあいだに暗黙のルールを作り上げていた。どうでもいいことだけを話すこと。
ふうむ。
そういう楽しみがあるのは一定理解しますが、それを特別に思う理由はまるでわかりません。「どうでもいい話」なら誰とでもできるんでは?
>お姉さんは悪い意味で話を聞かせるのが上手かった。嘘を嘘と思わせずに話を進めることができたし、いたずらに話を大きくしては途中でやめたりした。
ここら辺の魅力はわかるんですが、「どうでもいい話」と「ほら話」は全然違うジャンルだと思います。
なので、受け答えが普通なのを不思議に思ったわけです。
ここは単純に「お姉さんのほら話が好き」だけに絞った方がわかりやすいかと。主人公は聞き手に徹する感じで。
>朝はいつも一方的にやってきて、そのくせ自分の機嫌を気にしない。
「自分」の主体がわかりません。朝?主人公?
>雲が出ている程度ならまだいいけど、知らん顔をして雨を降らせているのを見ると腹立たしくなってくる。人間はまだ傘や合羽以上の雨具を発明してはいない。
からの
>見上げた空は晴れてはいるけれど
と繋げるのは、意味不明です。
普通は雨の朝なのだろうと想像します。
>学校というものは思っていた以上にずっと難しい集団生活を強いられる。
この書き方だと、入学したてのように読めます。
せめて「高校」にすべきかと。
主人公が中学生か高校生か、それすらわかりませんが。
>四限目の終わりのチャイムが鳴って、一気に教室が解放感に満ちた声でいっぱいになった。
もっさり。
「四限目の終わりのチャイムが鳴って、解放感に満ちた声が教室に溢れた。」
>どのみちみんなが食べることに意識を向ける。
不要な一文です。
>「いけないね、二個は太るね。私は代わりに受け止める覚悟できてるけど?」
「私は」はない方が歯切れいいはず。
>「おかずよこせって言ってるのに人柱ぶるのは面の皮厚すぎない?」
クスッとするいい台詞です。
私なら「人柱ぶるの、面の皮厚すぎない?」にします。
>「ひーは?」
>「今日は食堂だって。あいかわらず人気物件なことで」
人気というのは、友人がと言うことですよね? 食堂でなく。
「ひー」という人物は以後出てきませんが、なかなか独特の存在感があります。この話が学校の友人主題だったら、手放しでほめられるところですが……後述。
>最高記録はまるまる一週間も離れていたこともある。
ここら辺は男にはない感覚ですねえ。
>そしてその気楽さを私たちはかけがえのないものとして抱きしめている。
捻り過ぎて、違和感が先に立っています。
「共有している」くらいで十分だと。
>窓際の席の私は空を望むとほとんど邪魔するものがない。
何が言いたいのかよくわかりません。
「空がよく見える」のを伝えるなら、教室が何階なのかを書いた方が適切かと。
>窓の外は変わりなく晴れているようだった。
今見ているのに、「ようだった」は変です。
>私は脳の構造がちょっと変わっているのか、それとも首あたりの血管になにかを抱えているのか、
言わんとするところはわかるんですが、上手くない例え。
むしろ「精神的か肉体的か」の例の方がわかりやすいかと。
>遠くのものを見上げようとすると立ち眩みのような現象に襲われる。
ああ、遠くのものに限定されるなら、お姉さんには無関係なのかな。
ここ「遠いもの」と「見上げる」どっちに重点がかかってるんでしょう。
工夫次第でテーマの一助にできそうな気がします。後述。
>いまの流行りやためになるものを教えてくれるテレビよりも、お姉さんとの何にもならない話を私は優先したい。
最近のテレビ、むしろ何にもならない話ばっかですけどねw
まさに「くだらなくて野放図で、本人が楽しそう」な番組。
>けれどこの子は内緒と言われたら、仕方ないか、で済ませてしまえる器の持ち主だ。大人びている。学校でいちばんいい女かもしれない。
内緒って言われて食い下がる人種と友達になれる気がしません。
大人びてるとは思いませんが、まあ、これが原因でこじれるような関係も女性的にはあることを考えれば、わからなくもない。
>いつもみたいに重要度に波のある話をして、そうしてお昼休みの終わりを知らせるチャイムを待つ。
ホラ話を抜きにすれば、お姉さんとの関係と大差ない気がします。
>知らないはずのノスタルジーという感情に出会える気がする。
意味がわかりません。文章が適当過ぎます。
>昼休みまでは気にならなかった雲が夕焼けの邪魔をしているせいで今日はそんな気分にはなれないけれど。
仮定をもとに話をされて、肩透かしをくらうパターンが多いですね。
>短期間に集中して楽しみを味わうとすぐに飽きが来てしまうということ。
それで飽きてしまうなら、そういう関係でいい気もしますけどねえ。
完全に興味がなくなるとかでなければ。
>私が火曜日にだけあの路地裏に行くのもそういう理由だ。
「何故、火曜日限定なのか」の理由になっていません。
曜日にこだわる必要ないのでは?
>もしかしたら毎日だって飽きないかもしれないと思うこともあるけれど、きっとそれが願望混じりのものだと知ってしまっているからダメ。
悪文。
「もしかしたら毎日だって飽きないかもしれないけれど、そうじゃない時がこわい。」
>だから私は一週間を生きることができる。火曜日のために。
とくに火曜日に依存する状態に感じません。
友人にも恵まれていますし。
>乳化したような日。
全然意味が伝わりません。
空模様という意味なら、「乳化したような空」と書くべきです。
>ぱた、ぱた、と小さく窓を叩く音が聞こえたと思ったら、
なんで窓?と思いましたが、バス通学だからですか。
ここは「バスの窓」と書いた方が親切。
>雨脚なんて言葉があるけれど、それにならって言うならものすごい駆け足だった。
悪くない表現。
>天気が悪い日に特有の、あの時間と外の暗さの不一致感が漂っていた。
感じはわかりますが、この描写をするなら雨の前にすべきです。
あと「空を見上げにくい」主人公なのに、やたら空の描写が出てくる違和感が気になります。
>自分の部屋の明かりが白いぶん、空の暗さが際立って孤独な感じがあった。
ここも「家の前まで来た」という説明が事前に欲しいところ。
>言葉にするのはすごく難しい。心の、日常ではしまっているところ。もしかしたら人によっては人生で一度も使わないかもしれないところへの刺激。
正直、ここは伝わってきませんね。
「そうなんだ」と思うくらいで、共感できません。
お姉さんとの会話場面をもっと増やし、読者が自然と共感してしまうような展開作りをすべきです。主人公にわからないものを読者にわかってもらおうとするからには、他で埋めるしかありません。
>色の変わらない夕方が過ぎて夜が深まる。
悪くない表現。
>そんな空白をおとなしく宿題をやったり適当に遊んで埋めることにした。いつものことといえばいつものことだ。火曜日以外とも変わらない。
内容的に不要。
せめて「いつもの日常をこなしながら、雨を気にしていた」というふうに書けば、意味も出てくるんですが。
>パチパチに決めていく
服のこだわりに「パチパチ」って言うもんですかね?
「バチバチ」とか「ガチガチ」ならわかるんですが。それとも若者言葉?
>ドアのカギを閉めて傘を開く。
この娘の親は何してるのか、気になります。
ここら辺の描写で家の背景が伺える方が、主人公に厚みを与える気がします。
>いつもの火曜日深夜0時と変わりなく、二階のあの部屋には明かりがついていて、その光がいつものように転落防止の手すりにしなだれかかるお姉さんの体のラインを縁取っている。
冗長。とくに「転落防止」が顕著です。
それより雨の降り具合や、どこ視点の描写なのかの説明が欲しいところ。
この書き出しだと、もう窓の下に来たようにも読めます。
>路地の向こうの街の明かりが水たまりに反射して、いつもより視界が騒がしかった。
路地の向こうということは、見える範囲はごくごく限られますよね?
騒がしいイメージは皆無なんですが。
>どう頑張っても平らになれないいびつなアスファルト
面白い比喩ですが、アスファルトには微妙。
敷かれたばかりのアスファルトは平らで、「どう頑張っても平らになれない」わけじゃありません。私なら「手入れされず、すっかり捻くれて育ったアスファルト」とか。
>狭い路地だと避けようのないものができてしまうのだ。
ビルの谷間の路地には雨が降り込まないので、水溜まりはできにくいものです。
まあこの場合、片方はアパートですし時間も経ってますがw
>傘は注文でもつけたみたいに
微妙にわかりづらいです。
「傘はあつらえたように」
>「まさかとは思ったけど、今日は雨なのに」
「、」は「。」の方が。
ホラ話以外は至って普通ですよね、この人。
>だからお姉さんもある程度の期待を抱えているんだろう。
「だからお姉さんもある程度は期待していたんだろう。」
>そう思うと自然と口角が上がってしまった。
表現が固いです。
「口角が上がる」はまず口語で使わないので、一人称だと違和感が先に立ちます。
>単純だとは思うけど、それでいい状況はたしかにあると私は知っている。
回りくどい言い回し。
「単純だとは思うけど、それでいい時もある。今がそうだ。」
>傘の角度が上を向いてしまったせいで、鼻先と脚に雨粒が落ちるようになった。
意味は伝わりますが、非直感的。
「傘を上に向けたせいで、顔に雨粒が落ちてくる。」
>「いやまあ私も楽しいけど、もし風邪でもひかせたらそれは寝覚めが悪いというか」
これだけ普通の感覚の持ち主が、何故毎週深夜に人気のない路地を訪れる女の子を注意しないのか謎に思えます。雨どころの問題じゃないのでは?
>私がそう言うとすこし悩むような間を置いてから、まあいいか、とお姉さんは雨を降らせる空を仰いで呟いた。
お姉さんは、濡れるの気にならないんで?
相当降ってるようですが。
>どうでもいい話をして、下らないと言って笑ったり、ただ聞いたりするのだ。
えっ、下らないとか言うんです?
ホラ話も楽しむのだから、御法度だと思ってたんですが。
うーん、ここに来て二人の関係性が見えなくなってきました。
>いつもの文字で表すことのできない笑い
笑いは文字で表せそうな。ここは気持ちとか想いとか。
>ゆっくりと思い出すようにぽつぽつと語るそのやり方は、安心できる声質との相乗効果で説得力をちょっとだけ増していた。そもそもがほとんど説得力ゼロからのスタートなのだからそれでも大したものだと思う。聞きたいと思わせるのは力に類するものだと私は思う。
説明的すぎるし、冗長です。
「ゆっくりと思い出すようにぽつぽつと語る口調は、落ち着いた声質と相まって説得力を増していく。説得力ゼロからのスタートなのに。もはや力に類するものだと私には思えた。」
>「だよねえ、ちょっと上がってお茶飲んでいきなよ。あ、二〇三号室ね」
>「あ、なんかすいません。雨なのに来たの私なのに」
別に普通の反応なんですが、この主人公だと不思議に思えます。
自ら火曜日限定と定めて通っていたのは、近づきすぎると飽きてしまうからかもで。
この展開って、どう考えても二人の距離が詰まる方向ですよね?
結果的に部屋に行くのはいいんですが、葛藤がないのが不自然で、気になります。
>きっと一晩中ついているアパートの明かりをくぐって私は二階に上がった。雨音が外の雑音に変わって、私は二〇三号室のドアをすぐに見つけた。ネームプレートのところには何も書いていなかった。私はできる限りゆっくり深呼吸をして、ピンポンを押した。
> チェーンと鍵を外す音がして、待ちかねたようにドアノブが回った。
ここはよく書けていると思います。リズムも文句なしです。
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