【14】この雨がまだ続けばいいのに(白黒灰色) 読みながら感想


【14】この雨がまだ続けばいいのに(白黒灰色)

https://kakuyomu.jp/works/16816927863034710745



十四回目は、「この雨がまだ続けばいいのに」。

白黒灰色さんの作品です。


内容は、百合恋愛もの。

……百合率高い気がする……しなくない?

まあ百合コンテストとかあるくらいですからね。

一ジャンルとして急成長中ってとこなんでしょうか。

好んで読むジャンルではないので、詳しくありませんが。


梶野の認識としては、通常の恋愛ものも同性愛ものも、「伝え難い気持ち」という部分ではそう違いはないという感覚です。


相手が異性愛者なので気持ちを伝えられないというパターンが多いですが、まあ異性愛でも相手にパートナーがいるとか、許されぬ相手ってパターンはシェイクスピアの時代からある定番ですし。異性愛者が同性愛を受け入れられないわけでも必ずしもないわけで、異性愛者を好きになっても絶望的とも感じませんし。特に百合は。何となくですが。


まあ今まで読んで来た数少ない百合ものは、たいてい恋愛の前段階くらいで留まる作品が多くて、がっつりつきあって別れて、というところまで踏み込んだ作品を読めば、意見も変わるかもしれません。やはり一度は読んでおかねばですね……


おっと、長々と語り過ぎました。

アンケートの回答を見ておきましょう。



初めまして。白黒灰色といいます。

『この雨がまだ続けばいいのに』という作品で参加させてください。


最近創作意欲はあるのですが、モチベーションが上がらなくて……何かきっかけが欲しかったんです。

たぶんこの作品と似たような話を書くと思うので、次の作品作りの参考にできればなと。


辛口でも構いません。


・特に意見が欲しい部分。

 主人公2人の心理描写。

 読み辛い表現とかないか。


・「梶野ならこう書く」アドバイスは必要か否か。

 無しでお願いします。


よろしくお願いいたします。



ふむふむ。

辛口OKで「梶野ならこう書く」はなしと。了解です。

モチベが上がらない人に辛口は傷に塩な気もしますが、発奮材料にできるタイプなのかもしれません。何かしら、気付きを得られるといいんですが。


それでは、じっくり感想を始めしょう。



⬜️読みながら感想

二読後の感想を、読みながら書きます。


>前編


>分厚い黒い雲が、空を覆っていた。

>雨や風が迫ってくるような勢いで、教室の窓を叩きつけている。


何だかすっきりしない文章です。


>おまけに雷まで落ちて、私は思わず読んでいた本から顔を上げた。


この小説は一人称なので主人公目線です。

本を読んでいた主人公の目線は当然、本にあるはずなので、雲や雨風が描写されることに違和感を覚えます。


これが主人公が窓の外を見ている場面や、三人称なら問題ないんですが。


>顔を強張らせて、肩を丸めている。

「肩を丸める」には複数の心情表現があるので、使用が間違いではありませんが、森下さんの気持ちが読み取りづらくなっています。「顔を強張らせて」だけの方がよいです。


>「そうだね。天気予報だと雨のピークは2時頃で、それから弱まっていくはずなんだけど……」


台詞が説明的でもっさりしています。

天気の話で時刻の予想は確実ではないので、もっと曖昧な方が「らしい」かと。


>今では、小型の台風でも近付いているのではないかと思える程、成長していた。


雨は「成長する」とは書きません。台風と混同していると思われ。


>口から溜息が漏れる。

溜息が口から出るのは、書かずともわかります。

特段の意味がなければ、省いてよい描写です。


>私が帰れなくなったのは自業自得だから

説明的。もっとテンポよく。


>結局は口を噤んだ。

作風にもよりますが、「噤んだ」はルビをふるべきかも。


>先生に相談すれば傘とか貸してもらえたのかな?


これから借りるなら、「貸してもらえるのかな?」。


>雨が止めば帰ればいいと、楽観的に考えていたせいか、私も単純なことに今更気が付いた。


文章の繋ぎが変です。

単純なこと=「傘を借りればいいこと」だと思いますが、「楽観的に考えていたせい」と「今更気付いた」が繋がりません。「楽観的に考えていたせいか、単純なことに気が付かなかった」が普通です。


>森下さんが提案する。私も窓の外へと目をやった。


森下さんが窓の外を見ていないなら、「私も」はおかしいです。


>真っ暗闇の中、風が生き物の呻き声みたいな音を立てている。


ここは悪くない表現。


>だが、私はこの状況で外に出る気はなかった。

>表情を見る限り、それは森下さんも同じだろう。


ここの説明が謎です。

私が外に出たくない理由の説明は後に譲るとしても、森下さんが外に出たくない理由とは? 傘を借りる提案をしているのに?


「帰る手段は思いついたが、あまり採用したくない」という簡単な話なら、そう伝わるよう、私の理由を説明すべきです。謎の理由を森下さんにも適用されているので、「言えないような理由が二人ともにある」ように読めてしまいます。


>最終下校時刻

台詞で使うにはやや固い言葉かと。


>「……まだ最終下校時刻まで時間あるし、私はもう少し教室で粘っていたいかな。どうしようもならなくなったら、仕事帰りのお母さんに車で迎えに来てもらってもいいし」


私か森下さんか、どちらの台詞かわかりません。

両方の口調が似通っていてわかりづらく、どちらが言ったのか明記が必要です。


>それに雷がしてたら、傘が避雷針になっちゃうんじゃあ――」


「雷がしてたら」は意味不明です。

「避雷針」は言いたいことはわかりますが、定義的には微妙です。言い回しを考えましょう。


>「きゃあああ」

文章が安くなるので、台詞にする必要はありません。

強調したいのであれば、「悲鳴を上げた」の地の文で表現すべきです。


>暇な神様だ。

首を傾げる表現なので、不要かと。


>先生に傘を借りることも、少し考えれば直ぐに思い付けただろうし


断言できる話でもないので、論理の組み立てがちょい怪しいです。


>『私が居るから安心して』みたいな言い方はしづらかったのだ。


ここもちょっと疑問。

お姉さんタイプの物言いができないのはわかるとして、ことさらに「自分も怖いふり」をする理由が欠けています。元から怖くないなら、素で話せばいいだけのことですし。


逆にこの言い方が森下さんを落ち着かせるのに効果的だと思ってのことなら、そう書けばいいと思います。効果はともかく、主人公の意図は理解できるので。


>私が森下さんと友達になったきっかけは、1年生の体育の授業だった。


そもそも、現時点で何年生なんでしょう?


>『水島さんをお母さんとお父さんに紹介したいんです』


お父さんが家にいるの?


>これだけあると普段本を読まない私でも、興味が沸いた。


ここは全然共感できません。

本を読まない人は、数があっても興味を惹かれません。逆にうんざりしがちです。

森下さんが積極的に貸してくれるなど、別のアプローチが必要だと思います。


あと、今は教室で本を読むくらいですから、「普段本を読まない私」は、「あの頃は本を読まなかったが」くらいにすべきです。


>――ひとりは好きだが、孤独は嫌い。

ここら辺は共感できます。

仲が良くなると、お互い別のことをしてても気にならなくなりますしね。


>私の不運に巻き込んでしまったことは申し訳なく思うが、この時間が続くのなら、もう少し雨でもいいかな。


普通の雨なら、こういう気持ちになるのもわかるんですが。間近に雷が落ちるような状態なんですよね?

心静かに読書したり、物語の世界に入ったりはかなり無理があるシチュエーションだと思います。


せめて「それきり雷の音は聞こえなくなった」とかにすべき。


>後編

あれ?


二読目でやっと気づきましたが、前半は水島さん視線で、後半は森下さん視線?

キャラの個性がほとんどないので、一読目はまったく気付きませんでした。

逆に言うと、読んでて違和感を感じないくらい特徴のない話ってことです。後述。


>あまり見ていると気まずくなりそうなので、視線を逸らそうとしたが、丁度その時、校内放送が聞こえてきた。


ここも繋ぎが変です。「したが」で繋ぐ意味がありません。

「逸らそうとした」と未遂にする必要もないです。

「視線を逸らした時、校内放送が聞こえてきた。」の方が、簡潔でわかりやすくなります。


>静寂を破る、無粋な音だと思う。

雷鳴ってるのに?


>1時間半前の雨は何だったの?

ここも時間で書いても上手く伝わりません。

大雑把な表現で十分です。

雨の変化や経緯の描写がないので、必要な情報でもないですし。


>諦めていた計画を実行できるかもしれない。

あー、定番の奴ですね。


>「もしかして、何か悩み事とかあるの?」

「悩み事」は飛躍しすぎかと。

「用事とかあるの?」くらいで。


>「その……少し前に読んだ小説にね、主人公が友達と相合傘をして帰るシーンがあって、私そういうのに少し憧れていて、やってみたいなぁって思ったの。それで……私が傘を忘れていたら、水島さんが入れてくれるかな……って思って」


悪くない言い訳。


>「私も今日は水島さんと一緒に居られてよかったと思うよ。雷の時、隣まで来てくれて凄く嬉しかったから。それに安心できたよ」


台詞が平坦で個性がありません。


>結局雷は2発で終わりだったが、

情報提供が遅すぎます。

前半の最後辺りには出しておくべき話です。


>そうせざる得なかったからで

そうせざる「を」


>幼稚園の頃を思い出す。あの頃の私は、母親の傘を抜け出してはしゃいでいた。あの頃から、私は人に合わせることが苦手だったのだと思う。


「頃」が三回も出てくるのはいただけません。


>――でも今は、多少窮屈でも、誰かと一緒に歩いて行きたいと思っている。


ここは前文からうまく繋げていて、いいと思います。


>相合傘って久しぶりだし

好きなら、「誰と?」が気になりませんかね?


>だが、その『好き』がどういう『好き』なのかは判断ができなかった。私と同じ『好き』なのか、単純に友達として『好き』なのか。たぶん、後者なのだろう。


ここら辺の独白は、後編の前半に持って来たほうが効果的です。相合傘の時点でわかりきってる話なので、読者的にはいまさらです。


>『私も水島さんのこと好きだよ。 …………愛してる』


うーん。よくあるやつ。


>その雨音で私の恋心ドキドキを隠してほしい。

別にこういうルビが駄目だとは言いませんが、ここまでの作風から見ると意外で、違和感が先に立ちますかねえ。

 

私は水島さんの袖を引っ張った。


ここは水島から動いたほうが自然です。

聞こえるか聞こえないかの酷白をした側が、即座に自分から接触にいくとは考えにくいので。


もしくは告白をこのシーンの後にするかです。


>その勇気が出るまで――もう少しだけ、この雨が続いてくれればいいのにな。


うーん。

二人の関係が友達程度で、それが近づいたという意味なのはわかるんですが、そもそもこの二人、すでに互いの家に行き来したりしてる関係ですよね? あと席を隣にして座ったりとか。


もう相合傘で近づく先のところにいる気がするんですが。男女で考えてみたらわかりよいですが、互いの部屋に行き来してて、沈黙も気にならない仲ですよ。相合傘なんて今更という感じしません?


ここら辺ちょっと二つのテーマがかち合ってる気がします。後述。

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