【14】この雨がまだ続けばいいのに(白黒灰色) 総評


【14】この雨がまだ続けばいいのに(白黒灰色)

https://kakuyomu.jp/works/16816927863034710745



⬜️全体の感想


・タイトルについて

可もなく不可もなく、やや不可寄りという感じ。

物語のテーマに沿っているのは褒められますが、捻りがなくインパクトに欠けます。タイトルは作品の顔なので、読者に興味を持ってもらうことを考えて、工夫してみては。


・文章について

頭の中の物語を文章に落とし込むことはできていると思います。

それで十分だと思うか、次のステップを目指すかは作者次第ですが、この次に求められるのは表現力の向上と文章リズムかなと。


一人称から文章力を測るのは難しいですが、同じ言葉を繰り返したり、手垢のついた表現をなぞるのではなく、白黒さんならではの視点や感性、それに基づく言葉選びが出来るようになれば、作品の質はぐっと上がるかと。


文章のリズムに気を配るのも大事です。無駄な言葉をダイエットし、きびきびとわかりやすい文章を心掛けてみてください。作者目線を捨て、読者視点に立ち返って何度も読み返す癖をつければ、違和感に気づけるようになると思います。


あとは、キャラクターの台詞が総じて固めなのが気になりました。これは文章力の問題ではないかもなので、内容で後述しましょうか。


・内容について

大きな問題はないが、面白みにも欠ける凡作、という感じです。


先によい点を書いておくと、キャラクターの心理を丁寧に掬ったり(特に森下さん)、印象的に締めくくったりはちゃんと出来ています。


ただ、それ以前の物語の設定やキャラクター、話の展開に魅力がない。どこかで見たような平凡な話の枠内なので、丁寧さや演出力でフォローしきれてないんです。


>キャラクターについて。

水島さんと森下さんは、外見説明もなく(まあ私も今作ではいらないとは思いますが)、口調もほとんど同じ。両方とも本好きで、両片思いの設定なので、主語を省かれると見分けがつきません。


私は一読目、後編の視点変更に気づきませんでした。まあ人名を飛ばし読みしてた私も間抜けですが、キャラを書き分けていれば、すぐに自分の間違いに気づけたはず。キャラが似通っているが為に起きた悲劇とも言えます。


言うまでもなく恋愛小説において、キャラは肝オブ肝です。短編なので文字数は割けませんが、少ないエピソードからそのキャラの個性や人となりを読者に伝えるよう描く必要があります。今作では森下さんはそれが出来ていますが、水島さんは足りない印象です。


何かしら対照的な特徴を与えて、そんな二人の距離が近づいていく(近づいた)展開の方がキャラも立ち、メリハリが生まれるかと。


前後編のキャラ視線の変更は、よくある構成とはいえ狙いは悪くないと思います。

ただこの手法は、同じ場面や関係がキャラ視点で大きく異なるからこそ面白いのであって、似たようなキャラ同士では活かせません。森下さんの気持ちも、前半時点でバレバレすぎて驚きがないですし。


なおサブタイトルは、見てすぐそれとわかるものに直すことをお勧めします。


>テーマについて。

この物語のテーマは百合ものの微妙な距離感についてで、シンボルアイテムとして雨が選ばれています。

一方で、読書というテーマも、二人を繋ぐアイテムとして大きく取り上げられており、これが逆に魅力を半減させているのではないかと。


短編の原則はテーマを一つに絞り、それをいかに昇華するかのこだわりがポイントになります。今作は雨と本という二つを並列に置いてしまったため、どちらにもこだわり切れず、凡作になっていると見ました。


例えば相合傘で二人の距離が近づく後半の山も、前半で森下さんの家を訪れ本を貸す話を見た後では、「相手の部屋に行く(呼ぶ)方が距離は近いんじゃ?」と思えたり。教室で隣に座る話も同じです。相合傘より距離近いよね?と。


どちらかをなくせとは言いませんが、どちらかの要素を減らす。もしくは「雨と本」という感じでパッケージしてしまう。などの改善が考えられます。


>相合傘について。

漫画だと「かぐや様は告らせたい」と「ぼくの心のヤバいヤツ」に、捻りの効いた相合傘エピソードがあります。百合ではありませんが、ご参考までに。


>読書と恋愛について。

互いに気兼ねせず読書できる関係というのは、それはそれで尊いとは思いますが、恋愛が絡むと相容れなくなる気がします。相手と仲良くなりたいなら、本ばかり読むわけにいきませんから。

むしろ相手が気になってを本が読めなくなるとか、逆方向の展開があっても面白いなと思いました。まあこれは本が主題の小説になりそうですが。


・アンケート回答について


>主人公2人の心理描写。

>読み辛い表現とかないか。


まあほぼ、読みながら感想と内容で触れていますね。

心理描写については、書き方については問題はありません。心理自体が平凡で新しさがない点が問題だと思います。



⬜️総評

・文章は可もなく不可もなく。まだこれから。

・内容的には凡作。オリジナリティが課題。

・二つあるテーマを一つに絞るべき。


丁寧に書けていますが、面白みに欠ける作品です。

逆を言えば、面白さを意識しさえすれば、成長は早いとも言えます。まあ、面白さの何たるかとか、私にしても永遠の課題ではありますが……まずはご自身の感じる「面白さ」「魅力」を見つめ直してみてはどうでしょう。


似た要素に「好き」というのもあるんですが、こちらはやりすぎると独善に陥りやすいので、ご注意を。


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