【13】コックロビンよ、さようなら。(小鹿) 総評
【13】コックロビンよ、さようなら。(小鹿)
https://kakuyomu.jp/works/16817330648772750884
⬜️全体の感想
・タイトルについて
これぞ、と言う他ありませんね。
語り手の片方をロビンと名付け、テーマの一辺を担わせていますし、物語的にも実はストレート。文句なしです。
・文章について
今回も勉強させていただきましたw
前回は凝った言い回しが多すぎ、逆に読みづらかったり没入感を妨げていましたが、今回はそういう問題は一切ありませんでした。
ほぼ詰まらず読めましたし、こうなると文章力に圧倒されるばかりです。テーマの噛み砕きというか、わかりやすく伝える意識も、前作より遥かに高く、エンタメ派の私的にも絶賛もの。やはりわかりやすさあってこそ、テーマが伝わるというものです。
一応、何箇所か気になった部分だけ指摘しましたが、およそ重箱の隅なので、気にならなければスルーしてもらって結構です。
・内容について
百点満点で言ったら、百五十点くらいですね。
一読目は「二百点」だと思ってましたが、細かな指摘部分が出て来たのでちょっと減らしました。
それでも圧倒的に面白いし、テーマも深い。キャラも立っていて文章力も高いと、ほとんどケチのつけようがありません。
一読目なんて「剃刀の入る余地すらないな」とすら思ったくらいですからw
言うまでもなく、大絶賛です。
私は、「祖父が金持ちで両親が貧乏」という、かなり変わった境遇の育ちでして、両方の気持ちがわかる立場です。そういう私には、ロビンとサムという対照的な二人の心境は二倍の意味で刺さりました。
大学時代、奨学金を受けてた後輩に一線を引かれてたのも、そういう心境があったのかもなあ……とかロビンにも同情したり。サムのような体験も何度かしてるんでアレですがw
ここまで完成度が高いとアドバイスもへったくれもなかろうと思えますが、細部で「こうすればもっとよい」は私なりに幾つか見つかったので、簡潔に書いていきます。
>父親について。
これは「ながら感想」に書いた通り。
祖母がユーラシアンなサムですが、父も白人であり、棄てられた境遇であると明記した方がキャラが立つかと思われます。
父親がインディアの可能性もありますが、描写から推測するに多分白人でしょうし。
「二代に渡り英国に捨てられた血筋」とか、そういう演出も可能かと。
>母親について。
これも指摘済みですが、母親を「探す」という違和感の解消です。
>スワロウについて
二話目で聞き手となるアオイですが、ロビンの手紙では一切出てきません。
というか、私は最初、往復書簡だと思い込んでいて「ロビンなのにスワロウ?」とか壮絶な勘違いをしてましたw
ここら辺、アオイについて何であれロビン側で名前を出しておけば、
「ああ、あのキャラへの手紙なのか」と呑み込みやすいのではと。
物語が二視点から立体視され、厚みを増す気もします。
純粋英国人であるロビンから見た、アオイの印象とかも気になりますしね。
>スワロウと仲良くなる経緯が欲しい
ぶっちゃけ、サムの気持ちがロビンよりアオイに行ってる気がしますw
それはそれで全然ありだし理由も明白なんですが、最後の独白相手にアオイを選んだ理由の補強はあった方が納得感が上がるのでは、と。
例えば、アオイにだけは自身の出自を明かしてたとか。
そこまで思いきれずとも、何かにつけ相談に乗ったり、逆に異文化交流に距離を置いたり、二人の距離感について、もうワンエピソードくらいあってもいいかな、と。
あまり書きすぎると、ロビンとサムの話じゃなくなってしまいそうなので、軽く匂わせるくらいのもので十分だと思います。
・アドバイス回答について
>主人公サミュエルとロビン、それぞれのキャラクター設定(生い立ちに基づく価値観、判断など)が、読み手にどのように受け取られるか
これは内容に書きましたが、少なくとも私は満点を出します。
大変興味深い、面白いテーマでした。
ご自身のお仕事が役に立ってるのかもしれませんねw
古い漫画ですが、「ぼくの地球を守って」(日渡早紀)という少女漫画に出て来る、紫音と玉蘭という男二人がこれに近い境遇と関係性でして。読みながらふと、そのことを思い出しました。まああっちはもっとドロドロで、紳士然とした結末ではなかったですがw
>今回の作品も、社会体制や育成環境が個人のアイデンティティーに大きく影響するという前提のもとに書いています
一応、前回よりはライトにしたつもりなのですが(笑)、どうでしょうか
格段に読みやすかったです。
面白さがダイレクトに伝わったのが、今回の高評価に繋がったんだと。
あと、何となくエンタメを意識されてる節も感じました。アオイとか。あのキャラ大好きw
>また、弁明の手紙という特質上、全編を通して、どうしても説明的になってしまうのですが、このあたりも読み苦しくなかったかどうか、ご意見お願いいたします
一部のみ指摘しましたが、それ以外は特に違和感なく読めました。
もちろんリアルな手紙として考えれば、多少なり説明感はあるのですが、まあそれは一人称の宿命というか、不文律かなあという気がします。
それに言葉遣いが独特なのもあり、「このキャラたちならこれくらい言いそう」という補正効果が生じるのは強みかと。現代人の手紙だと、やはりどうしても違和感が強く出てしまいますからねえ。
>「別ベクトルに感受性豊かな二人のキャラクターをどのように書き分けるか」
>に対して、方策やご意見をお聞かせいただけると嬉しいです
いや。十二分に書き分けられてると思いますが、あえて追加するなら、アオイについてですかね。すでに書いた通り。
このキャラは異分子であり二人の橋渡しなので、そこの描写を加えれば、よりキャラの輪郭がはっきりするかと。何より面白くなりそうです。
⬜️総評
・百点満点中、百五十点。
・圧巻の文章力とテーマ取り。
・今回はエンタメ的に見ても文句なし。
いやはや、御見それしました。
内容的にはプロレベルではないかと思います。
一年後くらいに「デビュー決まりました☆」とか、さくっと言われても信じてしまいそうです。
前回は「凄いけど趣味が違う」でしたが、今回は「凄くて面白い」という評価です。脱いだ帽子をコマドリの巣にしたいくらいです。
最上級の賛辞を送ります。素晴らしい短編でした。
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