【11】この気持ち、解は無し。(裕貴) 読みながら感想


【11】この気持ち、解は無し。(裕貴)

https://kakuyomu.jp/works/16817139556720267126



台風すごかったですねえ。皆さん大丈夫でしたか?

強制祝日になって、のんびり寝てた梶野です。

頭もすっきりしたところで、じっくり感想再開したいと思います。


十一回目は、裕貴さんの作品、「この気持ち、解は無し。」。

裕貴さんは、前回も参加されてますね。

前回は高校生でしたが、もう卒業されてるはず。

どれくらい成長されてるか、楽しみではあります。


作品は前回と同じ、ラブコメ路線ですね。

前作は文章はかなり無茶苦茶ですが、いかにも高校生らしい乗りの恋愛もので、突っ込みどころは多かったものの、独特のノリと面白さは感じられましたっけ。


文字数は11,074文字。若干オーバー気味。


裕貴さん、実は一番に企画参加されてるんですが。その時点では作品が完結していなくて、終わり次第登録という形だったんです。

その際、一万字を超えていたので、出来るだけ文字数を減らすよう、課題としてお願いしたんですが……ダイエットが足りなかったようでw 

まあよいですが。大事なのは中身ですから。


おっと、アンケート回答を見ておきましょう。



・特に意見が聞きたい部分。

全然ないです!お任せします!


・「梶野ならこう書く」アドバイスは必要か否か。

できたら欲しいです!



──ふむ。普通ですね。

果たして今回はオブラートを切らさずに済むものか。

あと、文字数をこれ以上減らせなかったかもチェックしておきますか。


それではじっくり感想、始めたいと思います。



⬜️読みながら感想

二読後の感想を、読みながら書きます。



>第1話


>横にいる君に手を伸ばして掴みたい。

>そうしないとどこかに行ってしまいそう。

>何故かそう感じる哀しい横顔で、そうつぶやいた。


三行とも主語がなく、不安定な文章。

前二行を自分が主語と仮定して読んでいくと、三行目の「そうつぶやいた」は主語が自分ではなく「君」なので混乱します。悪文です。

内容的にも、何処かふわふわして、主張がよくわかりません。


「何故かそう感じる哀しい横顔で、君がつぶやいた。」


>「分かるよ!私の事好きになるの。可愛い、優しい、悪い所なし。うん、優良物件すぎる。

>あー、罪な女だよ。

>でも、私はみんなのアイドルだからね!」


話が唐突過ぎて、この話が元からギャグなのか、意図してギャグっぽく振舞っているキャラなのか、判別がつきません。

故に、1ページ使ってるのに、キャラ紹介になっていません。

わざわざ文字数を割くなら、キャラ紹介の目的を考えましょう。


>そう言って、ウインクをしている君は夕日に照らされて本当に綺麗だった。


ウインクは瞬間なので、現在進行形は変です。

「ウインクをする君は」



>第2話


>ただ、それだけだった。

説明不足で、何がそれだけなのかわかりません。

「最初の印象は」などの追加が必要です。


>それなのに、、、

別に文法ルールを完全に守れとまでは言いませんが、「、、、」はやめましょう。小学生ぽいです。

多分これ、去年も指摘したはずですw


>「まさぶです。」

>「間違えた!ごめんねー」

どういうルールかわかりませんが、片方だけ句点(。)を抜いてるのは謎。つけるかつけないかどっちかです。


>クラス替えの後の座席は出席番号順だ。

>だから、出席番号が1番の彼女と7番の僕は隣になる。


すでに「隣の席に座る。」と書いてあるので、この説明はいりません。


>一ノ瀬さんに学校の事、色々教えなさい。」

「教えてあげなさい」の方が自然かなあ。


>そうして、僕は彼女に色々教える羽目になった訳だ。

そのまま繰り返すのは芸がありません。

「そうして、僕は彼女の案内人になったのだ。」


>始業式、実力テストを終えて、通常授業の日々がやってきた。


あれっ、案内する話になるかと思ったら、けっこう過ぎてる!?


>女子と話す機会はたまにしかなかったはずなのに僕はほとんど一ノ瀬さんと喋っていて、新しいクラスで友達を作り損ねた。


悪文ですね。

おそらく、「一年の頃は女子と話す機会がなかった」といいたいんでしょうが、舌足らずすぎてそう読めません。


「それまで女子と無縁だった僕は、一ノ瀬さんとばかり話したせいで、逆に男友達を作り損ねていた。」くらいか。


>でも、去年仲の良かった友達、佐藤翔輝、繁田幸大とは今年も一緒だからぼっちではない。良かった。

>佐藤と繁田は1年の時から仲が良い数少ない僕の友達だ。


同じ説明を、何故繰り返すんです。


>「まさぶ、一ノ瀬さんといい感じ。」


ひらがなで書くと、ありそうでない絶妙な個性ですね。

覚えやすくて、わりといい気がします。


>こーだいにからかわれ、隣の席になりたがるしょうき。


こう書くと、こーだいがしょうきをからかってるようです。


>3日しかなってないからね!」


「経ってない」ですね。

あ、三日なんですね。案外過ぎてなかった。


>そうして、一ノ瀬さんが自分の席に帰ってきて、佐藤、こーだいが帰っていく。


佐藤かしょーきか、呼び方は統一した方がわかりやすいですね。

私なら、覚えやすい意味でしょーき呼びにしますが、それならこーだいは幸大で固定します。

ひらがなばかりだと文章が間延びしてしまうので。


>そうして、僕は登校する前にローソンで買ったおにぎりにかぶりつく。


昼休みの間、何してたんだ。


>「「ぐぬぬー」

」が抜けています。


>「ねー、あたしもこんな喧嘩初めて。面白い。」


あまり面白いやりとりとも思いませんが、高校生らしいといえば、らしいかなあ。


>第3話


>「今度、遊園地に行くぞ。」

この言い方だと、誘ってくれてるのか微妙かも。


>「だろっ。

>だって、有村里帆、河井もな、矢田真冬と行くんだもんな!」


誰ですかい。

いきなり話が見えなくなってきた。


>「言葉はわかってるよ!!!なんで急にって事だよ!」


私は言葉もわかってないですが。誰だよ。


>「有村グループに一ノ瀬さんが入っただろ?それで、みんなで遊びにいこー!

>ってなって、せっかくだしぃ男子も誘ちゃうーってなって。やっぱり男子だったら翔輝くんが良いよねーってなったみたいなんだよー」


ああ、ここでやっと理解。

まあここは、これくらいのテンポでもいいですかね。

女の子の名前、まだ理解してませんが。


>キーンコーンカーンコーンキーンコーンカーンコーン


去年も言ったはずですが、頭悪いと思われるのでやめなさい。


>そう言って、ウインクをしてピースをして自分と席にもどるしょうき。


正直、この時点でも友人二人が同じ顔同じ性格のモブにしか見えてません。

私ならしょーきが女の子に指名されてるのを受けてちょいモテキャラとして扱い、こーだいが「オレはおまけかよ」みたいな感じで違いを印象付ける感じに持っていくと思います。


>「木川くん、日曜日遊園地楽しみだねー!

>転校したてで、こんな早くに友達できるって思わなかったなー」


ここは「遊園地の話、もう聞いた?」から会話に入った方が自然。


>第4話


>遊具のシーン

圧倒的に手抜き感漂うのですが、話のテンポ的には、まあ、そんなに悪くもない気も……まあいいでしょう。

私なら絶対やらないですが。


>「いや、ゴーカートは無いだろ!」

>「恥ずかしー!」

なんでや、ゴーカートおもろいやろ!


>他の人たちも肯定的だ。


ここは「女性陣」とかの方が。

多分、男は賛成してない。


>「占いなんて信じない。バーナム効果。誰にでも当てはまるような曖昧・一般的な記述を、自分にだけ当てはまると思い込んでしまう心理的現象。別名、フォアラー効果。」


こーだいのキャラが見えて来て面白い。

真面目キャラなんですね。



>第5話


>全部、黒いカーテンで覆われている。

全部って。「壁が全部」くらいで。


>所々、ポツッポツッと小さな豆球があるだけ。


文化祭のセットじゃないんだから、もっとしっかり設定を。


>占い師さんの声が出て聞こえて

誤字。

「占い師さんの声に呼ばれて」くらいが順当。


>うわーこえーって言ってるし、ちょっと緊張してそうだった。


ここのしょーきの反応で「緊張してそう」は変。

主人公の話なら、「ちょっと緊張してきた」が正解。


>中も薄暗く、そこには若い女の人がいた。

もう少し描写を。

主人公が呼ばれて入るシーン、占い師の簡単な外見くらいは欲しいところ。


>そしたら、いきなりだよ!

ふむふむ。ここで今回の冒頭に繋がるわけですね。

なかなか効果的で、面白い見せ方だと思いますよ。

わかりやすいですし、私も真似てみたくなりました。


>「あんた、もし好きな人ができたら不幸になるよ。


えらい曖昧かつ適当な占いですが、せめて何か対策とかないもんですかねえ。この石を買えば運が良くなるとかw


>初めての占いで好きな人ができた不幸になると言われる。


できた「ら」不幸に


>「ギャハハー、まさぶ好きな人できたら不幸か〜!

オモロ過ぎるだろ!」

>「ドンマイ。」


ここら辺、二人の顔が見えてくるようになったのはいい感じ。


>「そうねぇ、このブレスレットを買いなさい。

お、やはりそう来ますかw


>「まあ、良いわ。また、困った時はいつでも来なさい。お金さえ払ってくれればいつでも見てあげるわよ。」


ここの占い師とのやりとりは、三人のキャラと占い師全員の動きが自然で、とてもいいと思います。幸大のポイント高い。


>だけど、占ってもらってからは、わざと明るく振る舞ってる気がする。テストの点がめっちゃ悪かったけど他の人には知られたくなくて普通だったって言ってる感じ。なんでか分からないけどそう感じる。


やや長いですが、わかりやすい気持ちの説明でよし。


>それだけ言って、前の有村さんに声をかける一ノ瀬さん。


ここは説明感出すぎ。

「それだけ言って、有村さんと話し始める。」


前に台詞があるので、ここは主語を省いても大丈夫。

前とかの情報もいりません。大事なのは一ノ瀬が話を切ったことです。


>それと悲しそうな顔も。

ここはいらないかと。

一ノ瀬は気持ちを悟られないよう顔を作ってるところです。

「強張った気がする」だけで十分です。意味は伝わります。


>そして、僕も帰ることにする。

ここもいらないです。台詞で十分。


>だけど、僕はただいつもとは違って元気が無さそうだけど無理にいつも通りを振る舞う彼女を一人で帰したくないと強く思った。


意味はわかりますが、長いです。

「だけど、僕は一ノ瀬さんを放っておけなかった。無理にいつも通りに振る舞う彼女を一人で帰したくないと強く思った。」

と、二行に分けた方がいいですね。


>帰り道、電車は空いてる訳でもなく、混んでも無い中途半端でポツポツと空いてる席があるだけ。こんな夕方前くらいに遊園地から帰る人なんて誰もいないし当然だろう。最寄りから乗るのは二人だけで、立って今日一日の楽しかった事を話す。


ぶっちゃけ、ここの電車の混雑具合は不要です。意味もよくわかりませんし。家族連れとかは、夕方から帰る客の方が多いくらいですし。

最寄り駅というのもよくわかりません。遊園地の?

あまり説明をせず、最低限で済ませた方がいいです。


むしろここで必要な情報は、帰り道で遊園地の話をしている際、どちらも占いのことについては触れないことではないかと。そうでしょう?



>第6話


>ここで降りる人は僕たち以外にいなかった。暗くて汚いホーム。

>無言で2人で歩く。階段をのぼり息が少し上がり、先を歩く彼女から離れていく。彼女は何も言わず僕を待つ。階段を上りきったと思ったら今度は急な登る坂道。


状況説明があるのはよいですが、肝心の「改札」が抜けています。

このままだと、駅の構内に坂道があるように読めます。

駅の外なのか中なのかの説明は絶対に必要です。


>音は風と木の動く音だけ。

「音」が被っています。

あと、木の動く音だと怪談です。


「聞こえるのは風と葉擦れの音だけ。」


>空は赤くなり始める。

この前に西日が目に入って痛いとあるので、この表現はおかしいです。


>その時、視界が澄み渡る。辺り一面の赤い空。やがて、オレンジになり、太陽は最後の力を見せる。まだ、真っ暗にはさせないぞというかのように紫に。そして、黒。

>初めて見た。夕日の空はこんなにも数多の顔をみせてくれるのか。


表現力はまだまだですが、言いたいことは伝わりますし、がんばっているのが感じられます。この調子で挑戦を続けてください。

あえて「私なら」は書きません。


>「私の事を好きになったら、私はみんなの記憶から消えます。

>私の事、好きになっちゃダメだよ。だって、不幸にしちゃうから…」


予想外の方向から弾が飛んできた!

ううん? 

みんなの記憶から消えるの?

つまり、主人公以外の誰でも一ノ瀬を好きになったら、みんな巻き込まれて記憶がなくなると?


>横にいる君に手を伸ばして掴みたい。

ここで物語の冒頭の場面、と。

うん、来るとは思ってましたが、やはり効果的ですね。

発言が衝撃的すぎるのと、主人公の対応がイマイチだったので、効果が薄れましたが、ここを上手いこと直せば、抜群の演出になると思います。


>あー、罪な女だよ。

>でも、私はみんなのアイドルだからね!」


あと、台詞のここの部分は、これまで読んでても「一ノ瀬、こんなキャラだっけ?」ってなります。一ノ瀬たいして話してないしなあ。ぶっちゃけ男友達の方が印象強いです。ここは要修正。


>そう言って、ウインクをしている君は夕日に照らされて本当に綺麗だった。


いやいやいや!

そこをこともなく済ますには、もうちょっとやりとりが必要でしょ。

主人公に突っ込ませ、それを一ノ瀬が笑って流し、それ以上は教えてくれなかった、くらいは描写すべきです。読者も気になる部分でしょうから、主人公にもうちょい頑張らせましょう。


>それから、僕たちは良い友達だった。

>夏休みも体育大会も文化祭もずっと僕たちは良い友達だった。


びゅんびゅん時間過ぎるな!

まあ狙いはわかるし、間違ってもないと思います。

この前の夕日のやりとりを、上手くまとめられていたなら、ですが。


>そして、僕はこの気持ちの答えを知ってしまった。


この引きはいいと思いますよ。

次を読みたくなります。


>第7話


>ピピピッ。毎朝聞く嫌な目覚ましの音。

これくらいの擬音の使い方が上品ですね。


あと、この回からいきなり文頭一マス下げなんですが。

どうせやるなら、最初から全部統一して下げるべきです。


>だけど、最近はこの音も嫌じゃなかった気がする。今までは聞くだけでまた朝か、学校か行きたくないなって思っていたのに。


ううん?

何が言いたいのか、よくわかりません。

今は「嫌な音」。最近は「嫌じゃなかった」。今までは「嫌」。

ああ、今までじゃなくて、「その前は」って言いたいんですかね?


ここは記憶が消されてるヒントになってるので、しっかり意図が伝わるように書く必要があります。

私なら、

「ピピピッ。毎朝聞く嫌な目覚ましの音。だけど、最近はこの音も嫌じゃなかった気がする。学校に行きたくなかった昔に戻ったみたいだ。」


> ただ、胸がずきっと痛んで重い。とくとく鼓動も早い

>。


読点がありえないところに。


>食べる気が湧かないが、齧った食パンを戻す訳にもいかず口に詰め込む。


この前に「牛乳と一緒に流し込む」って書いてあるので矛盾してます。


>朝起きてまず目に入った2枚の遊園地のチケット。確かに昨日買った。だけど、何でこんな物買ったんだろう。


ははあ。好きになったので記憶が消されたと。

「告白したら」かと思ったら、恋心でスイッチ入るんですか。

かなりきっつい条件ですねえ。

ブレスレットも役に立ってないですしw


でも、ここのシリアスの入り具合は、悪くないと思いますよ。

十分、面白く読めています。

ただし、あちこし文頭一マス下げを忘れてるのはマイナス。

全部チェックしてください。


> 胸が重く何か渦巻いてる変な感じを抱えながら登校し、

ここは描写を重ねすぎ。

インパクトを残しながら、シンプルに仕上げましょう。

「重く渦巻く何かを胸に抱えながら登校し」


>いつもの日課のしょーきとこーすけと

こーだい!こーだい!


> 言葉では伝えられないほど悲しそうな顔。


ここは主語が必要。「知らない女の子」でいいので。


あと、ここの表情の解釈は不十分だと思います。

一ノ瀬はこうなることを覚悟していました。

そして周囲を傷つけないよう、感情を隠す子だったはずです。

なので、ここの表情は、遊園地の時の「何かを我慢した笑顔」であるべきで、主人公はその表情を「見たことがある気がするのに、思い出せない」のが正解だと思います。


>1秒2秒と間が開く。時間が不意に止まったかのように感じる。やっとの事で紡いだかのように声が聞こえてくる。努めて明るく言ってるような感じで。


印象付けたいのはわかりますが、やりすぎるとくどくなります。

文字数と効果の見極めを意識しましょう。

私なら、

「時間が止まったような数秒の後、努めて明るく、その子が言った。」


>「えっとねー、転校生なんだけど教室間違えちゃったみたい。ごめんねぇ。」


これは無理がある言い訳。

教室がここで、席も隣りなんだから言い逃れ出来ませんし、主人公が気付かない方が変です。


それとも、描写がないですが、一ノ瀬は教室を出て帰ってしまったんですかね? それならありです。二度と学校に来れませんけど。


まあ、本当にみんなの記憶から消えてるなら、学校生活には支障をきたすでしょうねえ。みんなの範囲にもよりますが。先生とかはどうなるんだ?


もしそうでないなら。

ここは、「私、一ノ瀬一花。よろしくね」と、初対面のように挨拶して済ませるくらいがいいとは思います。

まあ、本当に全員の記憶から消えてるなら、大騒ぎになってる気がしますが。「誰だあいつ?!」って。


>1時間目。2時間目。お昼休みも放課後も。僕は、あの子の事がずっとずっと気になってしまっていた。


これだけだと、隣にいるのかどうかわかりませんね。


> 今は本来秋のはずなのに、夏でもなく秋にもなりきれず中途半端で不快なじめっとした暑さ。自分みたいだなって思う。


背景と心象を重ねるとか、上達の兆しが伺えますね。

ここは明喩でなく暗喩の方がらしくていいと思いますよ。

暗喩はメタファーとも言って、要するにわかりにくい表現で喩えることです。


「自分みたいだなって思う」と直接書くのが明喩。それを書かずに、主人公の気持ちの表現であることをそれとなく伝えるのが暗喩です。試しにやってみましょうか。


「暦では秋のはずなのに、夏でもなく秋でもない中途半端な暑さ。その曖昧な感じが、やけに気に障る。」


……もうちょいうまく書けそうですが、こんな感じが暗喩です。

上手い人だと、完全に背景描写しか書かず、それを悟らせます。

文章は奥深くて、とても面白いのですよ。


>「いつか、まさぶが本当に勝負しないといけない時に動けるような人になって欲しいなぁ。って思って名付けたんだぞー。」


このエピソード、とてもいいですね。

タイミングもここが一番だと思いますが、その後の主人公の行動に決意が感じ取れないのが惜しい。


自分の名前の由来を思い出すことで、主人公は「名前を知らないあの子」のことを思い出そうと強く決意するべきです。

今の描写だと、「なんとなく夕日の場所に流れ着いた」みたいに読めるので、「心に残った手掛かりを辿ろう」と決めて、自分の意思であの場所へ向かったことを明記すべきだと思います。


>髪がボサボサになるまでかく。

「頭をかく」の方が。


>「まさぶくん?どうして・・どうしてここにるの?・・・なんで、私の事忘れたはずじゃ・・・」


ここは一ノ瀬の登場と驚く顔の描写が必須。

ついでに時刻や風景も描写しておきましょう。やはり夕刻ですかね?


>聞きたいことはたくさんある。 でも、僕はそれ以上に君と喋れることが嬉しかった。


なんか1マス開いてます。

たどたどしい文章ですが、まあ気持ちはわかります。


>だけど、名前も分からないあなたに会って思ったんです。

>僕はあなたのことが好きだって。」


うーーん。ううーーーん。

気持ちはわからなくもないけど、この展開は無理を感じます。


まず、主人公は彼女に一目惚れじゃないですよね。

好きになった時点で忘れるんですから。

遊園地のチケットを買う直前に自覚したんですから、それまでの積み重ねがあったはず。

彼女を忘れるということは、そこまでの経験値をリセットするということのはず。かすかに覚えているにせよ、気持ちは初対面程度に戻るはずで、いきなり好きとか言い出すのは設定的に矛盾します。


場面的には美味しいだけにもったいないですが、何とか矛盾しないように、この場面を迎えられるよう、やりくりを考えてみたいですね。後述。


>それはね、好きになったら私はこの世界から忘れられます。

世界からかー!

この人、現代社会で生きていけなさそう。

いやまあ、一生誰にも好かれない工夫をすれば……

なかなかの不幸設定ですねこれ。


そう考えると、ちょっと一ノ瀬のキャラは設定に追いついてないかも。

この年までこの設定で生きてたら、もっと警戒しそうなもんです。それこそ男に好かれないよう、キャラや服を徹底してるとか。


>そして、好きになった人は、ずっと私の事を引きずっちゃいます。


なかなかよい設定ですが、どうしようもないのが欠点。

彼女にはどうしようもないし、それこそ祈るしかない。

せいぜいが遠くに引っ越すとかそれくらいでは?

いうて同じ教室にいたら、毎日こうなるわけでしょ?

どうするんですかね、この展開から。


読み手としても書き手視点でも、先が楽しみになってきました。

これを着地させるの、かなり難度高そうですが、期待しちゃいますw



>第8話


>そう言った彼女の目から計り知れない絶望を感じる。


それはさっき見た。

……と思ったら、ここ、完全にコピペか!


いや、こんなに長々とコピペする必要はないです。

「お願い・・・幸せになってね。」までで十分。

いや、はっきりいってコピペは余計です。


>「絶対に嫌だよ。そんなの。そんなの君だけが幸せじゃない。」

これこれ。

この台詞を最初に持ってくるのが正解ですよ。


>「仕方ないよ。小学生の時なんだ。初めて、友達から、好きな人の記憶から私が消えたの。だけど、お父さん、お母さんからは消えないの。

>だから、大丈夫だよ。」


二つの情報が繋がってません。


「大丈夫、慣れてるもの。小学校からだから。

 それにお父さんとお母さんだけは記憶が消えないの。

 だから……大丈夫だよ」


とかでどうでしょ。「大丈夫」をあえて繰り返すのがミソ。


>きっと、彼女はこれまでに何度も何度も消えて絶望してたんだろう。

ここはもうちょっとがんばってほしい。


>どれほど苦しいのだろう。今まで、楽しく喋っていた仲のいい友達から。そして、好きな人から忘れ去られるなんて。


ここを考えるなら、やはり教室のシーンは、学校から帰ったとした方が正解ですね。


>「楽しかったなー。お化け屋敷とかジェットコースターにのってはしゃいだり。メリーゴーランドにみんなで乗ったんだー。だけどね、私がゴーカートに乗りたいって言ったら全員に黙られて、その後、爆笑されて。んー、唯一の心残りは遊園地かな。ゴーカート、みんなで乗りたかったなぁ。」


おお、しっかり遊園地の回を使っていますね。

いいですよ!


>きっとそうだ。2枚の遊園地のチケット。あれは僕が君を誘おうと思って買ったんだ。ゴーカートに乗るために。


ここも伏線になってるとは思いませんでした。

やるじゃないですか!w


>だけど、だけど、僕にはただの石じゃなかった。

>おにぎりはファミマ。だけど、チキンはローソン。

>普通、おにぎりがローソンでチキンがファミマでしょ。

>お菓子だって、君はたけのこ派じゃなくてきのこ派。

>シチュー派じゃなくてカレー派なんだろう。きっと。

>いつも、僕の好きなものじゃない方が好きで、明るくて、一緒にいると楽しい。

>そうでしょう。一ノ瀬一花さん。2年生で新しくきた転校生で、一緒にいると楽しくて。

>そんな、

>僕の好きな人。


あれ? なんでいきなり記憶が蘇ってるの?


>一ノ瀬さんはまだ夕日とは言えない沈みかけの太陽を眩しそうに見つめる。カラスたちはもう山に帰るのだろうか。カーカーガーガー騒ぐ。


シリアスシーンでギャグ入れるのはやめてくださいw


>「その石のおかげかもしれないよ。それを見た時に思い出したんだ。2400円だったでしょ。」


うーむ、惜しい!!

順番を間違えず書いたら、間違いなく感動的な場面になるはず。

いきなり主人公が思い出してる上に、それを隠して話してる感じで進んだせいで、読者には感動より疑問が先に立ってしまってます。

ここはうまいこと処理すれば、なかなか名作になる気がしますよ。

後述。


>お願いします。今、今、僕に勇気をください。

こここそ、名前エピソードを思い出すべき。


>「不幸なんかじゃない。君といる1分1秒が大切なんだよ。家に帰っても今日こんな話したな。楽しかったなぁ。とか。もっと気の利いたこととか、面白いこと言えたんじゃって後悔したり。かっこつけちゃって家に帰って悶絶したりとかさ。自分のことなのに訳が分からなくなったり。僕なんか、一ノ瀬さんが好きって言ってた恋愛小説を恥ずかしいけど図書館に借りに行ったんだよ。とにかく、忘れちゃっても、今この時をこの瞬間を楽しんでる。だから、記憶がなくなったってこの楽しい時間は無かったことにはならないんだよ。

>それに、必ずいつまでも覚えておくからさ。それじゃ、ダメ、かなぁ?


熱意は伝わりますが、長台詞が過ぎて矛盾してるのが残念。

記憶がなくなって未練だけ残ったら最悪なのは、ここに来るまでに味わってたはずです。記憶が戻ったから、今ハッピーなだけで。


ここで伝えるべきは、最後の「絶対忘れない。覚えておく」だけでいいんですよ。

何なら「絶対忘れないために、遊園地行って、ありったけネックレスを買ってこよう!」とか無茶なこと言ってもいいんです。

どうせ理屈不明なんですから、読者が納得する範囲の理屈と、勢いと愛があればハッピーエンド!で十分です。


>僕も彼女を揶揄う。

うーん、内容的にはここは漢字を開く(ひらがなにする)方が。

「からかう」ですね。

漢字を使えばいいというものでもないんです。雰囲気に合わせましょう。


>「私、そば派だよ。」

>「僕はうどん派。」

>「「あははは。」


ここら辺の「好みが違う」という設定は、記憶を失う前に脱しておいた方が効果的だと思います。


>この後、二度と記憶がなくなるはなかった。

>だから、散々、思い出すから!と言った僕は恥ずかしくて恥ずかしく死にたくなった事は、舞い上がっている僕には知る由もなかった。


このオチはかわいらしくて、とてもいいと思います。

終盤の展開さえ修正すれば、文句なく面白くなりそうだと思いました。いやあ、かなりよかったですよ!


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