【08】猫の母の恩返し(バルバルさん) 読みながら感想


【08】猫の母の恩返し(バルバルさん)

https://kakuyomu.jp/works/1177354055349743213



八回目はバルバルさんの作品、「猫の母の恩返し」。

タイトルからは昔話感を感じます。

ジャンルはえーと、恋愛ですね。ふむ。「鶴の恩返し」的な?


バルバルさんのプロフを拝見しますと、ファンタジーから現代もの、恋愛と軍事、NL,BL何でも書かれるそうで。

梶野も雑食なので、そこら辺は馬が合いそうです。


そんなバルバルさんのアンケート回答はこちら。



初めまして、「猫の母の恩返し」で参加させていただきたく思い。コメントさせていただきます。


・特に意見が欲しい部分。

ラスト付近の是非等について、特に意見をいただきたく思います。


・「梶野ならこう書く」アドバイスは必要か否か。

欲しいです。


この作品は自作の中では最も好きな作品なのですが、それ故に書き直せず、そこが問題でした。なので、梶野カメムシ様の意見がほしいな~とおもい、参加させていただきます。では、よろしくお願いいたします。



ラスト付近と書き直しの際のアドバイス、ですね。


作品に思い入れが過ぎて、問題は感じるが手を入れられない、みたいな感じでしょうか。私もたまにあるんで、まあわかります。お役に立てればいいんですが。


それではさっそく、感想を書いていきましょうか。



⬜️読みながら雑感

二読後の感想を、読みながら書きます。



>屋根から水滴が落ちてくる。

「屋根」は受け取りが広すぎるので、不適切です。

ここは「軒先」だと思います。


>昨晩の雨の残り。それが水たまりに落ちて、ほんの微かな水音が。


雨の中ならともかく、雨の残りの水音なら「ぴちゃん、ぴちゃん、ぴちゃん」は早すぎる気が。私なら「ぴちゃん……ぴちゃん……」くらいにします。


>ほんの少し髭を手入れしていない

手慣れない説明です。

「うっすらと髭が伸びている」とか。


>昨日の昼間に女にこっぴどく振られてしまっていたのだ。


「昨日の昼間」は余計です。

内容的に必要な情報じゃないですし、言い回しも不自然です。


>2か月間の間、

これもさして必要な情報に感じません。

どうしても書くなら「二か月もの間」の方が自然。


>男は一途に愛を注いだつもりだったのだが、

「つもり」は余計です。


後に「しつこかったのだろうか?」とあるくらいですから、量は多かったのでしょう。つもりがつくと、読者は「愛が少ない方向」で受け取るので矛盾を感じます。


>陰鬱な湿った雨雲がうっすらと太陽を隠す。

強調表現を書きながら、すぐに抑制する癖がありますね。

アクセルを踏みながらブレーキをかけるようなものです。

よほど繊細な場面でない限り、単純にした方が効果的です。


この場合は「うっすらと」が不要です。

私なら「湿った雨雲が陰鬱に太陽を隠している。」にします。


>まるで、男の心象が天気にまで影響を与えたのかと錯覚するほどに。


描写が固すぎ、直接すぎです。

「男の気分を映したような、冴えない空模様だ。」


>陰鬱な心象が少し、ほんの少しだけ和らぐ。

「心象」はイメージのことなので、微妙に違和感があります。

普通に「気分」「気持ち」でいいのでは。


>仔猫に牛乳をやって良いのかどうかの知識は男には無かったが、


読者の疑問に先回りして答えてる点はいいですね。


>仔猫へやれそうなものが

仔猫「に」


>そして仔猫は牛乳を味わい終えれば、親猫は仔猫を連れて去って行く。


文章が変です。

「牛乳を飲み終えた仔猫を連れて、親猫は去っていく。」


>その後ろ姿を見て、また来いよ、なんて小さく呟く男。


回復が早すぎてチョロく感じるので、私ならこの一文は削除します。

ここは「少しだけ、太陽が雲の隙間から現れたような気がした。」で十分です。


>やはりというべきか、しばらく一緒だった女が居なくなったという事実は、男の心に影を落とす。


文章がもたついています。

後にわかる「女と同棲していた」という情報は、この時点か、冒頭の「愛が過ぎた~」の際に出しておいた方が、読者もイメージしやすいはず。


>中は仕事へと行き、終われば家へと帰ってご飯を用意し、


自炊してるのはちょっと違和感かも。

ガチ失恋だと、自炊する気力もなくなりますよ。それこそ酒ばっか飲んだり。


無意識に仕事はなんかできちゃうというのはわかりますが、自分のために何かするのはまるで出来なくなるものだと、経験的には思います。


なので私なら「飯はコンビニで買い」とかにしますかね。


>仔猫に牛乳を与えたくらいの思い出しか思い出せない。


「思い出」が被ってます。

「仔猫に牛乳を与えたくらいしか思い出せない。」


>古くなってしまった扉を開ける。

古いことが何度も形容されますが、物語に関与しないなら繰り返す必要はないです。冗長になるだけです。


>足元に仔猫が一匹やって来た。しかも、昨日と同じ仔猫の様だ。


普通は一匹なので、複数でない限り「一匹」は余分です。

「しかも」も不必要です。


>男は踵を返すと、昨日と同じく薄めた牛乳を用意して

帰宅して扉を開けた男が踵を返し(引き返す)たら、行先は外になりますよw


>ふと、視線を少し上げると、親猫が自分のことをじっと見ていた。


「ふと」が多用されているのが気になります。

「視線を少し上げる」もぎこちない表現。

私なら「気がつけば少し後ろから、親猫が自分のことをじっと見ていた。」


>だが魚は今、手持ちが無かった。

舞台が現代で、魚に限る必要はないかと。

「猫が食べそうなもの」とか。


>警戒心も強いのろうと思い

強い「だ」ろう


>避けられたことを気にする事は無かった。

ここら辺は自然でよいですね。


>それに対して男は仕方が無いなと思いつつも、薄めた牛乳をやる。


今思いましたが、「仔猫に牛乳をやる」くらい猫の知識がない主人公が、なぜ牛乳を薄めるんですかね? 普通に牛乳をやりそうなもんですが。


薄い牛乳と何度も書くのも冗長なので、特に理由なければ薄めなくていいかもしれません。


>それから、男の日課に、朝扉の前で待つ、仔猫に薄めた牛乳をやるというものが加わった。


冗長です。

「いつしかそれが、男の日課になった。」で十分伝わります。


>今日も今日とで

今日も今日と「て」


>どうやら、時間が心の傷を癒してくれたのだろう。

そこは「猫のおかげかもしれない」でしょう。


>外は暗くなっているというのに誰だろうかと、扉を開ければ……


ここで場面転換していますが、「女が立っていた」まで書いた方が自然です。

女の外見などの描写は、転換後に回せばいいのです。


>扉の外にいたのは、艶やかな黒髪が美しい、一人の女だった。


何歳くらいかの描写は欲しいところ。

私ならまず年頃を書いて、髪は美しさの説明にまとめます。


>何かを憂いているようなその視線が何かミステリアスな雰囲気を醸し出していて


「何か」が被っています。


>少しの間、その美しさに見惚れてしまったが、ハッとして、女に何用かと問う男。


ぎこちないし、冗長ですね。

体言止めが続いているのも違和感を覚えます。


>まあ、怪しいが子供を抱いているし、悪いことはしないだろうと家にあげて座布団を用意した。


めちゃくちゃ怪しいですが、美人なら仕方ないw


>夫たる存在

使い方は間違ってないんですが、ここでは大仰に思います。「夫に」でいいかと。


>それを聞いた男は、それは災難だったなと言い、


そういやこの小説、台詞に「」が一切使われていませんね。

昔話的と言うか、オマージュなのかも。

雰囲気があって、いいんじゃないでしょうか。


>それを聞き、ふっと笑んだ女はどこか妖しかったが……


ここの意味はよくわかりませんが、引きとしては悪くないかと。


>女の子は無口ながらも元気が良かったが、朝食の時は大人しく牛乳を飲んでいた。


もはや隠す気がないw


>朝食後、仕事へ行くまでの間の時間に、これからどうするのかを聞いた。


ここも冗長。

「仕事に行くまでの間の時間」とか、書かなくてもわかることは省けます。


「朝食後、男は女に、これからどうするのかを聞いた。」


>あの女の代わり……と言うと聞こえが悪いが、

男性心理としては理解できます。


>家の扉の前で、女が頑張って七輪を使い魚を焼いていたのを、


ううん? 現代の話ですよね?

いやまあ、田舎なら普通にやることなのかな?

それとも、時代が昭和の辺りだとか。


まあ昔話的なニュアンスで、そこら辺を突っ込む必要まではない気もしますが。


>どこかに気のままに行ってしまったのだろうと思い、今は新しい同居人との生活を日常に組み込もう。そう男は思った。


「思い」「思った」が被っています。


>スキンシップを取って遊び始める。


スキンシップは文字通り「肌と肌のふれあい」なので、人形相手だと違和感があります。


>なので、少し気が大きくなっていたのだろうか。夫婦のような事でもしてみるか。そう言ったのだ。


ここは男への好感度ガタ落ち(特に女性読者は)なので、変えた方がいいです。

結果が同じでも、もう少し自然な展開の方が。後述。


>娘は少ししぶしぶ、だが、男の言うことは聞きたいようで


「少し」は不要です。

「聞きたいようで」も変です。「男の言うことを聞き」でいいかと。


>嬉しいのか仔猫のように

答えを書いちゃてるよ!


>女は偶にこういう大胆なことをしてくるようだ。

とくに大胆な行動とも思いませんが。


もし書くにせよ、「女は偶にこういう大胆なことをしてくるのだった」ですね。


>そしてもうすぐ一年が過ぎ、

前段にも「一年ほど続く。」とあるので、どちらか省くべきです。


>すっかり家前で餌をやっていた仔猫の事も記憶の隅に行ってしまった頃の事。


仔猫の件について、書きすぎです。

隠す気がないのだとは思いますが、繰り返されるとダレてしまいます。


>この地域では、一定の周期で霊媒師がやってきて、身を清めて悪霊から守ってくれるのだ。


まあ都会でないことは伝わるので、この設定もあまり違和感はないです。

ただやはり、現代の田舎なのか昭和なのかくらいは気になりますかね。後述。


>だが札を見た女は、悲鳴を上げて部屋の奥へと走っていく。


妖怪だからだと思いましたが、後から読むと仏様の力で人間になってるんですよね。霊媒師のお札が効くのは鬼とか妖怪のイメージなので、仏様でも効くの?とは思いました。

まあ昔話基準なら、些末な指摘ですが。


>君は、本当は何なんだい?。

「。」が不要。

あと、「何者なんだい?」の方が。


>そして娘を呼ぶと。ぎゅっと抱きしめ、語りだす。


ここはもっと頑なに拒んでもいい気もします。

設定的には、あとしばらく黙ればハッピーエンドなんですし。話しても誰も幸せになりませんしね。


まーでも、昔話ならそういう展開になるかなあ。



>だが、それを哀れに思った仏様が、

ほ、仏様か。


うーん、昔話ならいいとして、一応現代であろう舞台で仏様の登場は、ちょっと違和感を感じますかねえ。死んだ猫が仏さまを語るのも不思議な話だし。


絶対ダメというわけじゃないですが、微妙なところ。


>正体がばれたら、もう人の身は保てない。人になった獣の古くからの掟だという。


理屈自体はなるほどと思えるんですが、今回は猫が化けたのではなく、仏の力で人になったわけですから、いまいち説得力に欠けます。むしろ仏様が余計ですらある。


>自分と娘は亡霊として輪廻の輪に加わるだろと。

「亡霊」は幽霊と同じく、現世に留まっている霊のことなので、輪廻の輪に加わる際に用いるなら「霊」の方が適切かなと。


それに「亡霊」には、悪い方向のイメージが強いですから。


>気がつけば自信の目からも

「自身」


>それが、女の口から出すことのできた、最後の音だった。


ちょっと表現が固いですね。

「それが、女の口から洩れた、最後の声だった。」


最後の場面自体は、よく書けてると思います。



>ぴちゃん、ぴちゃん、ぴちゃん……

冒頭と同じシーンに立ち戻る展開は、なかなかいいのでは。


>外の水瓶に自分の顔を映す。

水瓶??

あーいや、昭和とか田舎なら置いてある……か?


>ふと、視線を下ろせば。

>そこには、黒い仔猫が、弱々しくズボンのすそを噛んで引っ張っていた…………


これが何を意味するのか、テーマ的なところはあまり読めないんですが。

色々と考えさせるという意味では、余韻があっていいオチにも思えます。。

男に救いがある点でも、読後感のよさに繋がっていますし。


私が書くなら、何かしらテーマを絡めそうですが、それが思いつかなければ、このオチでもアリだと考えるでしょう。


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