第12回 キャラクター設定は駄目?



 前回に続いて、キャラクター作りのお話です。

 このシリーズの目玉と言うか、一番書きたかった部分です。

 二番目は「キャラを転がす」ですが、こちらはやってる方がいそうですし。

「キャラ設定は駄目」という書き手は、私が知る限り、他にいないので。


 先に、前置きしておきます。

 梶野は、ゴリゴリのエンタメ派です。

 面白くなるなら何でもしますが、面白さが減る要素には容赦しません。

「何をもって面白いとするか」は人によって違うので、そこは置くとして。

 ポイントは「作品が面白くなる可能性」の部分だと思ってください。


 さて、改めて。

 梶野が槍玉にあげたいのは、

「プロット段階でゴチゴチに設定を決めてしまう」という手法です。

 作中に出て来ない趣味や好み、癖にいたるまで、あらかじめ決めておく。

 それがキャラクターのリアリティにつながる……みたいな論旨ですね。

 作者の好きな漫画家の創作論でも、同じような話がありました。


 それに倣って、設定からキャラを考えたことが一度だけあります。

 五十くらいある項目を埋めていく形式でした。

 書きながら、これ履歴書にそっくりだな、と思いました。

 会社の顔色を伺いながら、無理やりアピールポイントを捻りだす感じとか。

 履歴書なら現実に即したものですが、こちらは完全にフィクションです。

 何でも書けるので取り留めがなく、まるで魅力的になりませんでした。

 設定もとりあえず埋めた、無駄なものばかり。

 今思えばキャラの方向性、つまり核がなかったのが原因です。


 実際に執筆を始めると、さらに問題が浮上します。

 小説を書いていると、予定から外れたり、膨らんだりしますよね。

 プロットより面白い展開を思いつくことも、しばしばです。

 以前も書きましたが、私はそういう時、常に面白さを優先します。

 もちろんバランスは考慮しますが、作品が良くなるなら変更をいといません。


 それを邪魔するのが、無駄な設定です。

 例えば、「映画は見ない」と設定していたキャラがいたとして。

「同じ映画を見ていて意気投合」という面白い展開を思いつくとか。

 そんな時、エンタメ至上主義の私が取る手段は一つです。

 設定を書き直して、面白い小説に仕上げる。一片の悔いなし。

 以後、設定シートを使うことは、二度とありませんでした。


 その後、設定シートの是非について、色々考えました。

 プロットを絶対に曲げない作家なら使えるのかも? とか。

 そもそもその漫画家も、長編の前後でキャラ違ったりするだろ! とか。

 

 設定がリアリティを生むという理屈はわかるんですよ。

 でも、先に決めた設定は、たいていは無駄な情報です。

 重要なのはそのキャラの根っこ。譲れない方向性。つまり核を定めること。

 それを前提に設定するのが重要で、その為には「転がす」必要がある。

 

 ガチガチの設定は、創作の幅を狭めます。

 アイデアを邪魔するくらいなら、決めない方がましです。

 絶対にブレてはいけないのは、キャラの核だけです。

 それ以外の部分は、むしろ柔軟な方が、作品は面白くなると断言します。

  

 梶野も一応、キャラの設定表を作ってはいます。

 ですが、小説を書いている間はまったくチェックしません。

 何年も後に設定表を見て、あまりの変化に愕然となったりします。

 もちろん、いい意味でです。

 年月と執筆を経て、作者もキャラも成長するんだなあ、と。

 その点でも、事前の設定に縛られるのはよろしくないと思いますね。


 キャラの核を決め、転がして人間らしくする。

 設定は面白さを最優先し、小説に出せることを前提に考える。

 無駄な設定は決めておかない。考えても仮に留めておく。

 つねに面白さを優先し、設定に固執しない。

 動かせないのは核と、すでに小説に書いた事実だけ。

 まあ私は記憶力ゼロなので、長編だとこの辺りが怪しいんですがw


 ともあれ、キャラクターを作るのに重要なのは「愛」です。

 大げさではなく、我が子のように手をかけるのが一番のコツかなと。

 まあ愛が大きくなりすぎても、物語の全体像を見失うので問題ですが。


 以上が、梶野のキャラクター創作術というところになります。

 エピソードの作り方とか脇役の心得とか、細かなネタはまたいずれ。

 今回は、この辺で締めておきましょう。


 たいした話じゃありませんが、創作の一助になれば幸いです。


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