第11回 キャラクターを転がす
さて、続きです。
前回はキャラクターの核を作る説明。
今回は、その核を元に肉付けする方法を解説します。
もちろん梶野流のやり方ですが、試す価値はあると思います。
先に言っておきますが、この手順は短編だと必要ありません。
短編は物語が主題なので、キャラを深掘りする必要がないからです。
キャラの個性や会話の楽しさを求められる、長編小説。
あるいはキャラの内面がテーマになる、文学作品や恋愛小説。
こういった作品を書く際に、役に立つ手法だと思ってください。
まず、キャラの核というのは背骨です。
ここがしっかりしていなければ、作品ごと歪みが生じます。
(キャラの変化を主題にした小説は例外ですが)
ですが、人間は正論だけで生きてはいません。
感情なり欲望なり、矛盾や矛盾を抱えているのが人間です。
核だけで動かしたキャラは「小説用ロボット」です。
読者の感動も共感も、人間同士だからこそ芽生えるもの。
ロボットを人間に変える方法を、ここから説明しましょう。
やり方は簡単です。道具もお金もいりません。
普段の生活の中で、常にキャラクターのことを想い続ける。
日常で何かあるごとに、「キャラならどうする(思う)」か考える。
これだけです。
例しにやってみましょうか。
絶対乗りたい電車が発車ベルを鳴らしているのを、階段から見つけたら。
そのキャラはどうしますか?
階段を駆け下りる? 飛び下りる? 次の電車を待つ?
大声を張り上げる? その場で絶望する? 階段でコケる?
時刻表を調べなかった自分を呪う? 不運を笑ってしまう?
もしもそのキャラなら、どんな反応をするか。
どう動くのが一番自然で、かつ面白くなるかを、日常ベースで考える。
何なら複数のキャラクターで、順番に思考実験したりする。
私は、これを習慣にしています。
キャラが常に側にいて、肌身離さない感じですね。
慣れれば、そう難しいことでもありません。
「もうやってるよ」という人もいるかもしれませんね。
これに慣れたら、次は自分の行動について、キャラに突っ込ませます。
「あのキャラならなんて言う?」に進むわけですね。
これが自然にできれば、「キャラが勝手にしゃべる」ようになります。
さらに次の段階だと、日常をネタにキャラ同士で会話させたり。
させるというか、勝手に始めるというか。
いわゆる「キャラが勝手に動く」現象は、この延長だと梶野は思っています。
この手法は、そもそも核のないキャラを育てるにも有効です。
例えばなんとなく出した脇役キャラを、作中でクローズアップする時。
設定なんて何も考えてないよ!ってなったこと、ありませんか?
私はありますし、このやり方で取り繕いましたw
毎日脳内で動かすと、思いがけない発見があったりします。
下手にこしらえたキャラより、よほど面白くなることも珍しくありません。
ところで皆さんは、小説のハウトゥー本とか読んだことありますか?
我流の私も、感想とか書き出してから、流石に勉強すべきかと何冊か買いました。
その手の本では、キャラの個性を細かく設定することを勧められます。
なんならそれ専用のシートまでついてる本もあるくらいです。
確かに、キャラを転がしていけば、情報は幾らでも増えます。
小説を書く前に、これを設定として記録すれば問題ないのでしょうか?
私は、はっきり違うと思っています。
というか試した上で、「これは問題あるな」と。
小説本の作者さんには悪いですが、理由も説明がつきます。
皆さんは、どう思われますか?
キャラクターの雑話、もう少し続きます。
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