第10回 キャラクターの核
前回に続いて、キャラクターのお話です。
今回はキャラの作り方について。
梶野が小説を書く時、最初に考えるのは
テーマよりもっと幅広い感じ、「どこで楽しんでもらうか」のアイデアですね。
梶野はとりあえずで書き始めるタイプではないので。
核を決めた後は、それをどう料理するかです。
ここが一番重要で、折角の素材を活かしも殺しもします。
私がキャラクターを作るのは、大体このタイミングです。
物語の核を活かすには、どんなキャラが必要か。
核がキャラに依存するなら、どんな個性なら話が面白く転がるのか。
キャラクターは物語のために生み育てるものという認識です。
性格なり外見なりも、語るべき核に沿うか否かをまず考えます。
このアプローチ中心の考え方は、短編でも長編でも概ね同じ。
長編ではキャラの魅力も必要なので緻密にしますが、それだけです。
無駄にキャラを膨らませても、核がぼやけ冗長になりがちなので。
小説全体を俯瞰し、不必要なら剪定するくらいでちょうどいいと思います。
キャラ優先で物語が暴走するという方は、俯瞰と剪定を忘れがちです。
いかにキャラに愛着があっても、優先すべきは物語です。
順番を間違えてはいけません。
物語の核、キャラのアプローチを決めた後、やっと細かな設定の出番です。
気持ちよく小説を読ませるには、矛盾をなくし、納得いく設定が大事です。
その上で興味を惹き、共感できるキャラ作りが理想的です。
ここら辺、色んな考えがあるので正解は一つではありませんが。
一例として、私が昔書いた短編のキャラ作りを書きますか。
タイトルは「チョコレートの魔女」。※
最初のアイデアは「片思いの相手にバレンタインのチョコを渡すため、世界一になってしまう女の子の話」でした。
モノ語りの核=面白さは、一話目のラブコメテンプレから一転する世界規模のサクセスストーリー。
相手そっちのけで最高のチョコを追求する天才ショコラティエの伝記。
「どこまで行くんだよ」と読者が呆れるような展開を話の肝としました。
この時点では、主役の少女の設定は、「片思いする」「内気である」「実は天才」くらいです。
ここからまず、物語に必要な個性を加えます。
チョコ作りに傾倒して許される家庭環境。
親は裕福で、主人公に甘い設定となりました。
(短編なので)話を広げないために孤高の性格。
一方で、チョコ一筋の主人公がビッグになるには協力者の存在が不可欠です。
なので、唯一の理解者である親友を用意しました。
彼女は最後まで主人公と二人三脚します。
チョコ以外に関心を示さない主人公と外界の橋渡しも彼女の役目になりました。
生涯を語る構成上、年齢が上がっても描写を変えずに済む大人びた口調と性格。
揺るぎない信念と情熱をワンフレーズで伝えられる口癖の追加。
親友との不仲で見せる横顔で、天才の苦悩と人間的な一面も与えました。
名前の「雫」も、「継続は岩をも穿つ」という意味を込めて名付けたものです。
その他、大学や会社、製菓業界の人物まで設定。
全て主人公と、話の核を念頭に構成してあります。
おっと、忘れてましたが、チョコの知識は必須でした。
梶野は製菓は未経験だったので、資料集めも大変でした。
チョコ作りはもちろん、製菓業界の話から世界的な職人の情報。
世界で活躍する日本人のショコラティエの話までチェックしましたっけ。
もうかなり忘れてしまいましたが、がんばって調べましたとも。
だからこそ、自信を持って天才キャラが描けたのだと思います。
とまあ、私のキャラ作りはこんな感じ、というお話でした。
とはいえ、実はこれ、前半のお話です。
キャラを作る基本編、と言いましょうか。
これだけでは完成とはなりません。
さらにしっかりとキャラを作り込むには、どうするのか?
次回は、「その先」についてお話しましょう。
続きます。
※「チョコレートの魔女」
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