第九話 足りないもの
ハルは両側から出現した壁に手を押し付け、赤い粒子を放つ事で間一髪難を逃れる。
身を捻り地面に着地すると、すかさず奴に粒子を放った。
「無駄だよ」
奴は自身の目の前に壁を出現させ、ハルの粒子を防ぐ。粒子は岩の破片に衝突し次々と消失していった。
「相性最悪……と言うより粒子が当たらなきゃ効果を発揮しないのは、能力者との戦いにおいて不利だな」
ハンプソン戦でも感じだが格上との戦いでは、粒子が能力で生み出された爆破や物体に当たるとその余波で周囲の別の粒子も影響されて消失してしまう。能力同士の効果が干渉し合う欠点だ。
「今確信した。お前じゃあ俺を倒せない」
「バカにする。ヘドロ風情が」
俺が持つ粒子で直接相手を殺傷できる手段は怒りの粒子だけ。それがこの戦いにまともに機能しなければ別の手段を用いるしかない。
ハルは続々と隆起する土に少しでも、赤い粒子で対抗するも粒子では相殺しきれず打撲が増えてくる。
「クッ!」
「どうしたんだよ。ハンプソンを退けた実力はその程度だったのか?奴隷が俺たちに楯突くなんて面白そうだと思ったのに……存外大した事ない奴」
ハルは挑発には乗らず、対抗用の赤い粒子とは別に褐色の粒子と黄色の粒子を岩にあて、浮遊させる。視線で悟らせない用注意しながら奴の頭上に岩を浮かせる。
奴が油断してかがみこみ地面に手をついた瞬間、ハルは黄色の粒子の能力を解除した。
「その手を使ってくると思ったぜ」
俺はぞくりと肌が粟立つ。奴は気づいていたのだ。
落下してくる岩に奴は手を向ける。掌から岩の塊が生成される。頭上の岩に発射すると奴の岩は砕け散った。
「間抜けが」
俺はつい口から雑言漏れた。煽るわけでもなく単純に感情を吐露してしまったのだ。先ほどの驚愕が真っ白に帰ってしまうほどの。
自信満々に放った岩が砕け散るのを見た奴は驚きの表情に染まっている。あの能力には質量増加と衝撃への耐性が付与されている。
浮遊の能力は知っていたようだが、この事態を予想するまでは出来なかったのか?
「アイツ!別の能力もあるじゃあないか!適当な事言いやがって!」
奴は誰かもわからぬやつに苦言を吐くと今度は地面を泥化させ潜り込んだ。
岩が地面に激突する。砂埃をあげ地面に虚しく穴を開ける。奴はすでにそこにはいない。
「どこに行った」
ハルは、地面を警戒する。この広々とした大地の何処から攻撃してくるか分かったものではない。
「そこかッ」
ハルの地面に薄く散布した粒子に何か触れた感覚があった。奴がそこから出現するかと警戒してそこに赤い粒子をさらに放った。
「ブラフ!?」
地面から浮き出たのは岩だった。その岩は侵食され崩れ落ちる。本体はどこかと警戒していたところ、真下から奴が現れた。
「うらぁ!」
「!?穢らわしい手で俺に触れるな!」
足元の隆起を感じるや否や、バックステップでその場から距離を取り、こちらに泥まみれの手のひらを至近距離で向けていた奴の顔面に蹴りを入れる。
「フブ!チッ!反射神経どうなってんだ!?」
奴は倒れるようにまたもや地面に溶け込んだ。
「洒落臭い!」
俺はその隙を見逃さず手のひらに溜め込んだ粒子を地面に解放した。
「これすら効かんのか……!」
ハルの渾身の一撃のつもりだったが、赤い収束した光は地面に吸収されるように何の反応も示す事なく消えた。そう、かき消されたのではなく吸収された。ただ少し陥没しただけだ。
ハルの能力は、単に地面と大雑把に特定して粒子を放ってもその効果が全体に分散されるせいで効果が薄まる。体積が小さい方が効果が出やすいので、いつも侵食箇所を限定して能力を使っているが、奴の能力はこの辺の地面全土に及ぶ。故に能力同士の干渉によりハルの粒子が飲み込まれてしまったのだ。
ハルは当然そんなこと分かりきっている。対策として粒子ではなく、能力発現から愛用してきた爆撃を使用したのだがそれすらも飲み込まれてしまったのだ。
新人類としての格が低すぎる!
「俺を追ってこれるかい?」
意外に使い勝手の悪い能力に、ヤキモキしながらハルは、地面から出現する岩の数々から逃げ出すのだった。
「ゲホッゲホッ!」
アキは地面に飲み込まれた後、謎の空間に到達した。なんだか甘い香りのする空間。
「なんなの?」
「今回の客は君かい?」
「誰?」
地面の中で足を組み、両手を地面についてる余裕綽々とした女だ。
「私?別に名乗るほどのものでもないんだけどねぇ。あの方の食客で彼の付き添いをしているミェラーネよ。よろしくね」
「ここに引き摺り込んだのはあなた?」
「いんや?私じゃなくて上にいる彼の能力さ。今頃君のお友達の相手でもしてるんじゃないかな」
女は悠然と立ち上がると、服についた土を払い落とす。
「で、あなたは私の相手をするわけ?」
「そう。私は戦闘向きの能力じゃあないから所謂、雑魚処理担当」
そう言われてアキは眉を寄せる。それでは自分が雑魚だと言われてるも、同然だったから。
「そう。ならあなたを倒して上に行くまで」
「少し落ち着きなよ。私は争い事が嫌いなのさ。穏便に済むなら君とて大歓迎だろう?」
アキは全く戦意を見せる事なく、ただただ話し合いに興じている女に少し、イラついてきていた。
「なんなの?戦う気がないなら帰して。あなたなんかと話なんかしても時間の無駄」
「まぁまぁ、そう興奮しないで。ご自慢の綺麗な顔にシワが増えちゃ嫌でしょう?」
ピキッとこめかみに青筋が浮かぶ。アキは怒りに任せて、土塊を奴にぶつけようとした。
「あぁ!ダメダメ!こんな所でそんな能力使っちゃ!土が崩れて生き埋めになってもいいのかい?私はともかくあなた自身まで窒息死するのは望まないことでしょう」
アキは奴を睨みつけながらも、出現させた土塊を消失させた。奴に諭されたわけではなく、冷静に状況を鑑みた結果だ。
私をここに態々閉じ込めた理由を探さないと。
部屋を灯す松明の炎が揺れる。それに合わせて壁に映る影も踊る。奴の心の歪みを投影したような不気味な光景であった。
アキは状況の停滞によって生じる焦燥感に負けないように努めて冷静に振る舞い、いつでも奴を攻撃できるように背中に球体を出現させておく。
「あなたの目的は?食客と言っていたけど……」
「上の彼からは何がなんでも倒せって言われててねぇ。でも私は戦いたくないし、傷付いたら嫌じゃん?だならね、今はサボり中なのよ」
「そんなやつがなんで、食客に選ばれたんだか」
「能力者だからよ。新人類と主君は称していたけど、実際はろくでなしの集まりよ。
能力なんて芽生えちゃって最近は皆んな惰性で生きてるみたいなものだからね。手と足と目と鼻と口と……人間自分の甘い精神に屈しないよう、努力が身を結ばれるよう丁度いい身体能力が備わっているっていうのに、そのバランスが壊れちゃったの」
「で、結局そのろくでなしのあなたがここに来た理由は?いや、あなたの仲間がハルを襲うのはなぜ?」
こいつ自身は大した情報源にならないと、上の彼とやらが何故ここに来たかと質問を変更する。
女は真面目に話す気はなさそうに、赤い髪の毛の先端をいじり、欠伸をする。
「さあ?心当たりがありすぎてね。だって君達大罪人じゃない」
「大罪人……ね」
アキは含みを持たせながら反芻する。
「私たちが向く牙がそんなに怖いんだね?奴隷が反抗するなんて思わなかったんでしょ?器量が足りないよ。あなたの主君」
「そんなこと聞かれちゃ打首よ、君?聞かれたのが私でよかったわね」
「そ。もういいよじゃあ」
何も生産性のない会話に、痺れを切らしたアキが奴に周囲への被害が少なくなるよう拳大の土塊の攻撃を喰らわせようとしたところで異変が起きる。
め、目眩!?立てなくなってきた!
「あら?どうしたの?」
甘い香りにより体が痺れるようで思うように、動かせない。膝をつくとボーとしてきた頭で原因を解明しようとする。
さっきから甘い香りがすると思ってた。アイツの香水の匂いだと思ってたけど……違う。
視界が煙に覆われつつある。鼻につんざく煙。だが灰を吸い込むような不快感のないもの。
アキは、まさかと思い壁に設置されていた松明を見る。
吹き出すように噴出される煙。先ほどまでの挙動と違う。つまり、奴が今の私を見て畳み掛けてきたという事。
閉所で香りを充満させ、暗いところで松明を使う違和感をなくしていた。だから気づかなかった。あれが奴の能力だということに。
「あなた……とんでもない嘘つき」
「嘘なんてついてないわ。私は争うのが……傷つくのが嫌いなの。だから……」
女は一呼吸つくと豹変したように、片膝をつくアキに飛びかかった。
「こうやって相手が弱りきったところで、痛ぶるんだよォ!!」
「イッ……!?」
アキはぼやけてきた視界の中で奴が動き出すのを捉えた。それに反応して防御しようとするも体が言うことを聞かず頬を蹴られる。
「ほらほら!気持ちいいね!新進気鋭の若者を!こうやって痛ぶって無力感を与えるのは!動けるもんなら動いてみなよ!!」
「うぐっ!ゲホッ!」
腹に何度も足で踏みつけられ、胃の中が掻き乱される。吐き出しそうになるほどの衝撃を手で口を抑える事で必死に堪える。
「偉っそうな口聞いてた割に大した事ないねぇ!根性見せなよ!根性!甘ったれてんじゃあないのかい!?」
気を強く。なんとしても耐えないと。ここで気を失ってはダメ。
アキは拳を握り締めようとするも、手に力が入らず半開きの状態のままだ。それでもなんとか土を掴むと奴に投げつけた。
「あーあ。その程度の抵抗しかできないのね。可哀想に」
何度も振り下ろされる足をアキは転がって回避し壁にもたれかかる。
だが、そこに容赦なく迫る足裏。視界いっぱいに収まったと思えば顔面に強い衝撃を覚える。壁と奴の蹴りで挟み込まれ、頭にダメージを負う。
「だから無駄だって言ってんでしょ!」
壁の土を奴に投げかけ続ける。奴は服についた土なんかには目もくれず痛ぶることに集中し続ける。
「もういいわ。あなたもう寝てて」
そう言って頭に最後の衝撃が迫ろうとしたとこでアキは崩れ落ち、奴の蹴りは空振りし壁に衝突する。
「はい……あな……た…の、負け」
「は?何を急に────」
女は気づく。自分の足が壁にめり込んだまま引っ張り出さないことに。
「最後まで……馬鹿な人」
アキは口から血を垂らしながらもなんとか膝に手をつき立ち上がる。ガンガンと頭を襲う衝撃が反響するようで頭痛が止まない。
「あなた!私に何を!?」
「簡単な事……その壁の土は私が元の壁の上から被せたもの。つまり私の能力にあなた自らかかったってわけ」
アキは口元の血を拭うと、薄く笑みを浮かべた。
先ほどまでアキをめったうちにしていたやつは、優越感で慢心し周囲への注意が散漫になっていた。アキしか見えてなかったから気づけなかった。壁が内側へと近づき部屋が狭くなっていることに。
その罠へアキ自身が移動すればアキを痛めつけることに必死な、奴も誘導される。
アキの力では奴を封じ込めはできない。ならあいつの力を利用すればいい。あいつ自ら罠にかかる事でこの危機的状況を脱出することが可能になった。
苦し紛れに土を投げかけつけたのは、ただの無駄な抵抗だと思わせるため。敢えて壁の土を投げつけたのも、ここに異常はないと無意識下に分からせるため。全部思惑通りだったのだ。
「あなた能力に目覚めたのは最近?不用心すぎ。ダメでしょ不用意に近づいちゃ」
目を閉じて精神統一をする。煙を大量に吸い込まないよう深呼吸はせずに。
「雑魚処理用だって自分で言ってて恥ずかしいはずなのに……ただの捨て駒だと気づいてないはもっと惨め」
アキは女とは別の面の壁にもたれかかりながら、土壁を操作する。女は足先から太ももへと土が侵食される自身の姿を見て、悲鳴をあげる。
「うわぁぁぁああ!やめて!何をしようっての!」
「貴方を土に呑み込ませ、窒息死させる」
「そ、そんななんで私が!」
「あなただって殺そうとしてたじゃない。それと同じ気持ち。私はさっきやられた分までやり返さないと気が済まない」
土が股を越え胴体にまで侵食し始める。女は短く声にならない悲鳴をあげると、アキに懇願する。
「た、助けて!悪かった!悪かったから!」
「命乞いが早いよ。根性足りない」
先ほどの意趣返しをするも本人は気にした様子ではない。いや、気にする余裕がないほど余裕を失っている。
「謝る……!謝るちゃんと!もうあなた達を狙わないし、ここから脱出できるよう彼に伝えとくから!」
アキは侵食スピードを加速させ首元まで土を覆わせる。
「悪かった?謝る?誠意が足りない。それじゃ無理」
「ごめんなさい!もう二度と襲いません!絶対に約束します!」
アキは土の侵食をピタッと首元で止める。これ以上危害を加えてこないと希望が見え始めた女は、安堵と恐怖を混ぜたものに似た表情を浮かべる。
「で、どうやったら外に出れるの?」
「私が戦闘終了の合図として、能力を解除すれば彼が地面に脱出口を作ってくれるわ」
「ふぅん。じゃあ早くして」
「その前にこの土を解除してもらわないと、しゅ、集中できないから、能力操作の」
そこまで言い切ったところで、アキは小型の土塊を出現させると奴の顔の真隣に放つ。
パラパラと土の表面が崩れ、破片が地面に落ちるのを、女は喉を鳴らし横目に見る。
「もしかして舐めてる?自分がどういう状況にあるか分かってない?今主導権があるのは私。質問するのも命令するのも私。あなたじゃあない」
女が顎をカチカチと鳴らし恐怖を露わにし始めるのを見て、アキはこれ以上ないほど白けた視線を送っていた。
「あなたの能力解除を優先してって言ってるの。難しいこと言ってる?あなたが私をここから出してくれて、二度と襲ってこないって約束すらなら私も能力を解除する」
アキは憮然と落ち着き払って言う。
「わ、分かったわ」
女は目を閉じて念じるように、顔をこわばらせる。
数秒後、松明が消えてないにも関わらず女は目を開け、能力を解除したと宣い始めた。
女はそんな無表情のアキが何を言い出すか悟って、先に口を挟む。
「ま、待って!私の能力は憑依型だから。煙が出るものに効果を付与させるだけで、あの松明自体は実物。ホラ、あの匂いも薄くなってきてるでしょ」
女の言う通り、甘ったるい匂いは消えてきている。
それと同じ頃に地面が、円柱状に穴が斜めに差し込むように空いて光が降り注ぎ始めた。
それを確認したアキは女にかけた能力を解く。
アキが眩い光に思わず顔を顰め脱出を試みたその瞬間。
「敵に背を向けるなんて」
バカねぇと言い切る前に、女は口から吐血した。
「はいはい。大人たちの常套手段ね」
騙し討ちは100%してくると読んでいたアキは、分かっていたと余裕な表情で能力を再び使う。
壁から針のように鋭い土が伸び女の腹を貫いたのだ。
女は自分の腹から吹き出す血に、真っ青な顔をして悲鳴をあげる。
「生かしてあげようと思ったのにな。でも、それはあなたの選択でしょ?後悔はないよね」
アキは、女に声を上げさせるまでもなく、壁の土を女に襲わせると全身を包み込ませた。
「さよなら。永遠にね」
アキは手を伸ばし必死にもがく女に目もくれず、この脱出口から這い出ようと斜面を登り始めた。
「チッ!この役立たず能力が」
ハルは、襲いくる岩に対抗するだけの、ジリ貧状態に次第にストレスが溜まり始める。
「そんなに自分の無力さに僻むのは止めろよォ?俺は必死に逃げ回るお前を見てると、なんだか楽しくなってきたんだからよ」
ハルは奴が土から頭を出した瞬間そこに向けて、粒子を放つも全て操作する岩で防ぎ切られる。
「奴の能力を突破できるほどの威力がないと」
どうすればそんな火力が出る?この能力は粒子一つしか物体は受け付けないがそれでも、効果は一様ではなく差はある。その差の原因を究明できれば威力の増幅の仕方も分かるか?
「ホラホラ!体の動きが鈍ってきたなァ!疲れてきたか!?」
ハルは、思考の海に沈みまるで奴の声は届いていない。どうすればこの状況を打破できるかと、思案にリソースを割き始める。
俺の粒子の効果が減衰するのは、能力の干渉を抜きにして、対象が複数いて絞り込めないとき。操作が粗雑になり始めるとあの時追いかけてきた騎士どもに重症を負わせることはできなかった。逆に単体や数えられるくらいなら消し飛ばすことは可能だった。
ハルは、飛んでくる岩に対しての粒子での防御をミスしてしまい腕に岩が衝突する。
「グァッ!」
「はい一撃!いいのが入ったねぇ!この調子でどんどん行くよ!」
ハルは腫れた左腕を右手で抑え回避に専念し始める。防戦一方。粒子に頼ってしまうと思考を遮ってしまい逆効果だ。
粒子の触れられた位置で狙撃ポイントは割り出せる。避けてしまう方が集中力を割かなくて済むと判断したのだ。
粒子を自分から離れて召喚するほど、効果が下がる。だから、掌に溜めてしまえば短距離射程というデメリットを負担してしまうものの爆破の威力は底上げされる。この怒りの粒子だけは手のひらを介して、唯一粒子で対象に触れるという条件をスキップできるわけだ。
だが、あの時鉱山で初めて能力を使ったとき程の火力をあれ以降出せたことはない。何故だ?今とあの時では今の方が経験値はあるはず。なのにも関わらずできない。
ハルは、何の効果も込められていない粒子を続々と放つ。敵の攻撃の勢いが増してきて、感知しづらくなってきてるからだ。
「クッ!」
「どうだ!苦しくなってきたか!?思考の処理が追いつかねぇだろ!お前の粒子の効果も弱まってきてるぜ!」
そんなこと分かっている!と心の中で愚痴を吐く。的が大量にあり素早く動く。それでは粒子の操作もしどろもどろで先ほどのように向かい打つ形ではなく、待ちの姿勢に変わる。
───待ちの姿勢?
ハルは引っ掛かりを覚える。ここだと、ここにヒントが隠されてると直感的に感じ取ったのだ。
そうだ。迎え打つ時と比べて、粒子を滞在させてるだけでは効果が発揮されにくい。だから俺は粒子を飛ばして効果を付与させている。基本的に人間以外の物体は動かないから、そうせざるを得なかった。だがもし物体が自らの意思で動けば?俺の粒子は今の状況のように効果は半減するのか?
ここで重要なのは、主体と客観。能動と受動。俺の意思と相手の意思……どれも違う。
いくつか対義的な言葉を思い浮かべるも、どれも関連性がないと切り捨てる。
静と動……静動!これか!
これだとハルは、確信めいたものを胸に抱いた。
─────速度。
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