第六話 形勢
あれからどれくらい経ったか。外の見回りや食料調達もしながら、俺たちは主に自分の能力の修練を続けた。
「そろそろ騎士たちも、私たちが森にいないと分かって出張らってくれると思ったのに……むしろ動きが活発になってる」
「俺たちがどこにいるのか、逐一知ることのできる奴がいる。俺はその能力者にずっとつけられていてな。そいつは空からの監視を主な手段としていたから俺は都合よく、ここに滞在してるわけだ」
「……ここに来る心配は?」
「ある。奴は蝙蝠型の霊獣も顕現できる。超音波で入り口のカモフラージュを突破して、中身が空洞だとバレる危険性がある。そうなればここは、安全地帯から袋小路へと早変わりだ」
奴は深手を負い休養中なのか、はたまた準備期間なのか、あの啖呵を切った後、その姿を見せていない。空も警戒しているが奴の霊獣の姿は目立つ。見かけていない。木の上で眠っている俺を、見つけたのが鉱山の件の一週間後だった。だから暫くは安泰だろうとたかを括っていたがそろそろ、限界かもしれない。
「……先手を打たれる前にこちらから、動くのもありだ」
「そう言ったって……何をするの?」
「あんなに騎士どもを、動員してきたんだ。恐らくその能力者の手下。そろそろ鬱陶しいし、間引きの頃だと思ったのさ。次々失っていく配下たちを餌に奴が準備万端になる前に、俺たちの下へ引っ張り出す」
「勝算は?」
「奴は能力者という立場において、戦闘要因ではない。成長速度も俺たちの方が早いはずだ。それでもここ最近伸び悩んできている。伸び代は感じるんだが……如何せん経験第一の能力。いつまでも、ここに留まっているわけにもいかない」
アキは顎に手を当て目線を右上に上げると、頷いて賛成の意を示す。
「分かった。戦闘もいい経験になる。と言っても私だって戦闘要因じゃないけど……」
「別に今のお前に、期待はしてない。サポート役として後方に、いればいい」
「……ちょっと腹が立つ言い方」
「嫌なら全力で、俺を認めさせてみろよ。俺は逃げ惑っているお前しか見たことがないから、お前への評価は低いんだ」
「先輩の底力舐めないでよ」
その威勢が嘘ではないことを願う。
俺たちは外に出ると、早速騎士の狩りを始めた。
「あそこの拠点を手始めに、襲撃しよう」
ハルが指差す先には奴らの拠点がある。
「いいと思う」
俺は怒りの粒子を木の影に陰に隠れながら、そこら中に散布する。テントを張って拠点から出てきたところを襲撃した形だ。
「な、なんだ!?」
「木が削れていく!?いや地面も!」
「うわぁぁあ!!俺の足が!」
「なんだ!何が起こっている!?」
正に阿鼻叫喚の地獄絵図。能力を知らない者たちにとっては、急に周りが消し飛んでいくようにしか捉えられない。目に見えぬ恐怖に耐えられないと言った騎士たちは森の外へ逃げていく。しかし流石の団結力。負傷した騎士は、無傷な者が背負って運び出している。
「軽傷者多数。重症者少数。死傷者ごく数名……」
思ったより、成果が出ない。それに怒りの粒子が蝕む範囲がいつもより狭い気がする。複数人相手取るとこうなるのか?
「標的が多数だと、集中力がかなり必要だな」
「……下手くそ」
「いいんだよ。奴らも森から追い出せているじゃあないか。異常を感知した奴が来るのも時間の問題。計画通りだろ」
俺は奴らを追いかけて粒子を、散布する。いつも動きを制限されて、窮屈だった分外に出れて自由奔放に奴らを手玉に取れるのは、いいストレス発散になった。
「逃げ惑え。豚ども」
ハルはつい楽しくなっても、警戒は怠ってはいない。
「ハル」
「分かってる」
俺は左手を前方に向けたまま、左足を軸に右に回転すると後方から襲いかかってこようとした騎士どもにも、粒子を飛ばした。
「ぬわぁァァ!」
「この化け物が!!」
随分反骨精神のある奴らだ。粒子の散布も厭わず、こちらに剣を振り翳そうと突貫してくる。
「させない」
アキが砂嵐を発生させると、それは奴らにまとわりつく。するとそれは徐々に固まっていく。奴らは土に巻きつかれ身動きが取れず、勢いのままに転んだ。
「ドム!」
「ジム!」
俺はすっ転んだ奴らに慈悲など見せず、奴らに赤い粒子を放った。
奴らは骨一つ残さず、サラサラと砂となり、風になって消えた。やはりしっかり狙いが定まっていた方が効果が高いことを、確認できる。
「お前もやれば、できるじゃあないか」
「当然」
二人は互いに目を合わせる事なく、意思疎通する。
先程まで勇敢出会った騎士たちも、どれほど無謀で蛮勇だったか、思い知ったようで足を震わせ剣が手から抜け落ち、歯をガタガタと噛み合わせ恐怖する。
「だめだ!お終いだ!」
「撤退だ!近くの騎士に連絡を!」
応援を呼びに行くという体で、我先にと必死に逃げる騎士たちを見て、ハルは気分をよくしていた。
「このまま森の外に出てくなら、都合がいい」
俺たちも、逃げ出す騎士を追いかける。手を休める事なく粒子を次々と放っていく。
同じ隊の騎士たちでさえ、霊獣の存在を知らないようだった。伝えられない、伝えてはいけない、伝えると不利益を被る。どんな思惑があるか定かではないが、このゼクロスが世に広まれば、奴らにとって困ることがあるに違いない。世間に広まれば、それこそ世を恐怖で支配できるだろう。
「いいな。楽しそうで」
「奴隷の反逆劇の狼煙を上げたのは、他でもない俺だ。自由と幸福を奪っていった報いを、俺が受けさせている。これほどの愉悦はそうそうない」
「調子乗って、力を使い切らないでよ」
「誰に言っている馬鹿。そんなもの対策済みだ」
粒子はその濃度に限りがある。当然無尽蔵ではなく、使い切ればしばらくは能力使用が不可能になる。粒子の飽和状態への再充填には、数時間を要する。逆にその数時間は無防備なわけだ。
だが、実験の最中この粒子の充填時間を著しく短縮する術を見つけたのだ。
それが余剰分の回収。本来この粒子は一粒でも対象に衝突すれば効果を発揮する。別々の粒子で能力の重複があっても、同じ粒子同士の重複はない。つまり効果の倍加がないのだ。
したがって最初に粒子を取り込んだ物体は、その後の粒子を受け付けなくなる。正確には効果が起こると、あらかじめ想定される箇所の範囲外ならば同じ物体にも粒子は効果を発揮する。高架範囲が広ければ広いほど、灰になるスピードは緩やかであり、狭ければ狭いほど再生不可能なまでの甚大なダメージを奥底に残すことができる。
昼なので分かりずらいが、目を凝らせば淡く粒子が残留してるのがわかる。
ハルはそれを、粒子を放出していない手のひらで惹きつけるように回収する事で、損耗を減少させていたのだ。
したがって今のハルは右手を放出用。左手を回収用と、使い分けている。
「へー、そんなこともできるんだ」
アキもそのカラクリに気付いたようで、感心するように驚いた。長年研究してきた自分でも、気づかなかった事。それをハルに先に気づかれたのは悔しかったが、それと同時に頼もしさを感じていた。
「見て。前はあんなに森を抜けるのに苦労したのに、もう森の外が見えてきたよ」
「契約期限も、もう終了か。長いようで短かったな」
「え?ほ、本気?」
「冗談だ。強敵を倒すことも、契約内容のうちなんだから」
無表情に冗談を言うハルに、同じくどんな感情が込められているか分からない目で、アキはハルを見つめる。
「変な冗談言わないでよ」
指揮者のように、人差し指をクルクルと振るうハルをなじるように言う。
「おかしいな」
ハルは自分の粒子の振る舞いに違和感を、覚える。まるで何か壁に遮られてるように、一定のラインを突破できなかった。
「何事?」
隣のハルから異変を感じとったアキも、能力で土塊を生成し勢いよく、前方に飛ばすも障害物でも当たったかのように、土塊は弾け飛んだ。
「見えない壁がある?」
粒子による突破は不可能だと判断したハルは、その場に足踏みする。
見えない壁。十中八九能力者の仕業だ。迂闊に触れるわけにもいかないと悩んでいると、空からハル達の頭上に影が落ちた。
「来た」
ハルは、来るだろうと予想していた存在に驚いた様子を見せる事なかった。見上げる事なく後方に飛ぶと、何かが砂埃を巻き上げて落下してきた。
「よう。久しぶりだな」
砂埃が晴れていく。ハルにゆっくり近づいてくるやつの顔が顕になった。
「本当に宣言通りトドメを、刺されに来るなんてな」
「バカを言うな。あの日、舐めさせらなれた苦杯。今日こそ返してやるぜ」
怪物使いの姿がそこにあった。吹き飛んだ腕も完治してるし、本当に腕をも生やす能力者もいるらしい。後ろには鷹もどきもいる。今回は鼻っから、険しい顔でこちらを睨みつけている。
「隣にいるのは、同じく能力者の奴隷か。なるほど。奴隷同士徒党を、組んだわけだな」
「それはお前の言えたことか。その不可視の壁。お前の能力じゃないだろ?」
「どうしてそう言い切れる?」
「その能力さえ防ぐ壁が使えるんだったら、前の戦いで使ってたはずだ」
図星をつかれたのか、奴は何も言い返さない。代わりにニヤっと邪悪な笑みを浮かべると、見たことのない怪物を召喚した。
「お前のためにわざわざ拵えてきたぜ。面倒な代償もあったが……お前を倒すためならなんて事ない」
ハルは代償と言う単語に、少々引っ掛かりを覚えたがすぐに思考を切り替え目の前の、怪物を観察する。
ベースは烏。全身が黒く不気味な姿は現在。その上体に対し前方に三本、後ろに一本生えた趾はそのため先まで真っ黒。何より目を引くのが、その足が三つ生えてる事だった。
「また奇妙なものを」
俺の言葉に気を留めた様子も見せず、奴は腕をあげる。
何かの合図だと俺は、警戒して直ぐに赤い粒子をバリアのように張り出す。
「突撃」
奴が合図した瞬間、烏は目にも止まらぬ速さでこちらに突進してきた。ハルは何が起こったかもわからず吹っ飛ばされる。
「ハル!」
俺は地面を何度も転がり現場から、数メートル離れた所で漸く静止した。
「痛ぇな」
俺はゆっくり体を起こす。打撲により節々が痛むも、俺はそんなことよりあの烏に対する警戒度を一気に引き上げた。
赤い粒子で防御してこの威力……まともに食らったら───
死の予感がこんなに間近にあることに身震いする。ハルは腕や服についた土を払うと、続いて発射されたその存在を、今度は受け止めるのではなく、躱した。
風を切る音と僅かに視界に映った黒い影に気づけた。奴隷自体培ってきた動体視力、反射神経、運動能力があって漸く躱せた特攻。
その烏は後ろの木に衝突すると、爆音を轟かせながら木っ端微塵に自爆した。ハルはそれを肌と耳だけで感じ取っていたが、後ろの景色は惨憺たるものになっているのは、想像に難くなかった。
「なんだよ。急に強くなりやがって」
ハルは悪態をつきながらも、走って戻りながら粒子を直線上にいる奴にぶつけにかかる。
するとそれは、また謎の不可視の壁によって遮られた。
「……対策バッチリじゃあないか」
ハルは、手のひらに赤い粒子を吸収させて、集うと奴に向ける。
「二度も同じ手を喰らうものか!」
奴は凝りもせず、烏を繰り出す。俺はそれをやつに向けていた掌を地面に下ろして発射する事で得られた爆風による風力で、浮き上がり意表をつく。
「消えろ!」
左手に同じく貯めていた赤い粒子を奴に、放出するつもりで掌を向けるが、
「お前の侵入は許可されていない!」
ガンと見えない壁に阻まれる。能力だけでなく、物理的にも干渉ができなくなっているようだ。
俺は構わず収束させた赤い粒子を放出した、赤い光が差し込み大爆発が起こるも、その爆発の威力が奴にまで及ぶことはなかった。
バック宙で俺は奴から離れた場所に降り立つ。
「無駄だと言ってるだろ!」
そう言った奴は、俺に向けて烏が発射される寸前の状態。
俺は急いで赤い粒子を、用意しようとするが、そこでアキが割り込んできた。
「私もいるよ!」
砂嵐が巻き起こり、俺たちの前で直方体の土の壁となり現れる。烏はそれに激突し自爆する。
その壁を何重にも仕込む事で俺たちは、自爆特攻を逃れた。
心臓に響く振動を感じる。
俺はどうするべきか奴の行動を分析する。
「奴は烏しか召喚してこないな」
戦闘中に、複数体出すことは前の戦いで確認している。それに多少なりともあの遠距離攻撃に苦戦したというのに、今回はめっぽう使ってこない。
「あれしか召喚できないのか?」
代償という言葉もあった。何か訳があるはずだ。この短期間で全く別物の能力を手に入れることは、困難を極めることは身をもって体験している。
ならば今回の隙はそこか。
「ハル。どうする?」
「あいつもあいつで、試行錯誤してきたはずだ。だが俺たちとの戦闘にあたり、無理な帳尻合わせがあるような気がする……」
俺はなるべく思考の時間を増やしたい。それと観察と分析を。何か他に違和感があるんだ。
「お前は土塊で奴に牽制しろ。鴉特攻の妨害を続けてればいい。俺も必ず奴の弱点を探し出す」
「了解」
「あと、土塊は多少は消せずに残しておけ。奴の動きを制限できる」
「もうやってる」
アキも攻撃手段があると知ったハルは、アキに戦線交代を言い渡す。
ハルとアキは攻撃担当を入れ替える。アキが前方に。ハルが後方に陣取る。
「俺のことをあまり気にかけるな。烏は喰らわず逃げに徹しろ」
アキは土塊を懸命に、作り上げながら頷く。
「なんのつもりだ?」
「さあ?死んだら教えてやるよ」
アキの土塊とカラスが衝突しあちこちで大爆発が起きている。改めて見るとものすごい速度だ。シャープな体も相まって空気抵抗も受けづらく、正面からだと見える面積が狭い。
アキもよく持ち堪えてくれているものだ。
ハルは前方のみならず、後方や側面、上下から粒子を襲わせるも、全て弾かれていた。
「完全防備。誰の能力だよ。面倒くさいな」
ハルは不思議そうに、不可視の壁があると思しき箇所を見やる。
「いっそのこと赤い粒子で見えない壁を覆い尽くせば、あいつの間近で自爆するんじゃあないか?」
途切れる事なく召喚されては、自爆を繰り返す烏。それも次弾発射までの後隙が少なくスパンが短い。
ハルは、タイミングを見極めて一気に粒子を放出すると、奴の壁を覆い尽くした。
流石のやつも面食らった顔をしている。
だが、かなりの高回転率といえどもあれだけ見計らったのだ。奴が今かと腕を振り下ろし発射する寸前。今更キャンセルできない。
意識と命令のずれ。脳の情報伝達が間に合わない紙一重のタイミングだ。
「目論見通りほぼゼロ距離で自爆した」
弾ける音と共に自爆。さしもの奴も巻き込まれたかと、前方をじっと見つめる。
土煙が晴れる。ただそれは時間経過による拡散ではなく、カラスが横切ることによって。
「馬鹿者め!そんな事無駄だと知れ!」
鴉が召喚されたのは、奴のテリトリーの外からであった。不意をつかれた俺は咄嗟に周囲に残った数少ない粒子をフル稼働させ、遮る。
自爆する。
ハルは吹っ飛ばされるのを覚悟して地面に踏ん張ったが、なんと赤い粒子だけで相殺し切れたのだ。
「召喚距離と威力の反比例」
俺はこの間の実験のことを思い出す。粒子を召喚させる距離を俺の射程から離れれば離れるほど効果が薄まる。
破壊の粒子は灰にする範囲をを狭まるし、黒の粒子に至っては、斥力から弾力へと比重を変えていた。しなやかさが失われるが弾力が残ると表現する。従って従来と違い対象に触れられ沈みっぱなしではなく、ゴムのように物体を跳ね飛ばしたのだ。
奴にもその法則が例外なく適用しているそうだった。それが威力の減衰。
「だがなぜ奴は無傷なんだ?」
煙が晴れた奴の姿は、健全そのもの。思い返せば爆発音が小さかった気がする。ゼロ距離対策はしているみたいだ。
俺はまた別の作戦を考える。
「許可しない……か」
奴が言っていた言葉。裏を返せば許可さえあれば、通り抜けられるということか?
「その前提を元に考えるならば、許可されたのは騎士たち。されてないのは俺たち」
いや何か……何かが抜けている?
能力も物理的にも両方対応している許可制のバリア……
そうか、そういうことか。
「……ふん」
少年はそこでハッと、するように気づいた。よくよく考えればすぐに分かった事。割とすぐ気づけた違和感にハルは、満足げに鼻を鳴らす。
「問題はどう仕掛けるか。一発勝負に賭けるには、博打が過ぎる」
ハルは作戦に当たって、一つ確かめなければいけないことがあった。
何気なく。赤い粒子の奔流に黄色い粒子を混ぜる。
「難しいな」
感覚で言うなら、ご飯を食べながら本を読むようなダブルタスク。大量の粒子を一つ一つ操作してぶつけながら、ただ一つの矮小な粒子も気遣わねばならない。
それでもなんとか、敢行する。黄色い粒子は、バリアにぶつかり砕けた土塊に付着した。
少年が浮くように念じると、数センチ浮いた。もちろん誰にもバレてはいない。
「他人の能力と自分の能力は、干渉し合う。仲間同士のどちらか一方が打ち消されることはない」
それが知れて第一フェイズはクリア。まだ問題は残っている。
「奴の身動きが取れては困る。なんとか拘束をしたい」
俺はしばし考え込むと、黄色い粒子を能力により生み出された土に付着させた後、褐色の粒子もそこに混ぜ込む。下方を除いた全面五方位をこれで奴を囲うことで、身動きを封じられる。
俺は前に進み、アキのもとまで向う。
「敢えてお前の前までの射線を開ける。奴が撃ってきた所でいつもの土の壁を作れ。それと同時に横にずれておいたほうがいい」
「何か作戦があるみたいだね。了解」
俺は、その場を離れる。奴の狙いは俺。ジリジリと怪しまれないように徐々に粒子をアキから俺に引きつけると、奴は烏をアキの方に飛ばした。数十発に一発の頻度でアイツはアキも狙っていた。俺の粒子にも劣らない遠距離攻撃。奴からしたら憎悪の対象は俺でも、鬱陶しさで言えばアキも例外ではないのだろう。
「ッ!」
アキも注意深く警戒したいたのが功を奏し、土壁の出現が間に合う。
「そこだ」
俺は事前にアキの側に置いておいた黒い粒子をその壁に飛ばした。
烏は止まることを知らず突っ切る……のだが次第に勢いも減衰する。土壁が見た事ないくらい凹んでいる。相当な威力だったようだ。
俺は黒い粒子を解除すると、土壁は元の形に戻り烏は弾性力によって奴に超高速で向かっていく。
「何!?」
奴には苦い能力の一つだろう。ハルに腕を吹き飛ばされた要因の一助となった現象。
その場を離脱しようとした奴のそばを、質量を増加させた岩を浮遊させ、逃げ場をなくす。
「グオォォォオ!!こんなところでぇぇ!」
奴の叫びも虚しく、烏は透明な壁に阻まれる事なく奴に衝突した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます