第五話 共犯

「で、これから行動を共にするわけだが、これからどうするつもりだ?お前が引き連れてきた騎士以上に、面倒なやつに目をつけられている」


「構わない。あなたの敵は私の敵。私の敵はあなたの敵。その方が効率よく行動できる」


「敵には能力持ちもいる。俺も概ね賛成だ。ただ俺自身も能力を向上させたい」


「乗りかかった船。先輩としてコツを教えようか?」


「あの謎の球体は俺の能力と、毛色が違う。参考になるのか?」


「あなたの能力はまだ粒子状でしょ?」


「まだ?その通りだが……」


 ふと、バケモノ使いにも同じようなことを、言われたことを思い出す。不完全……形態の違いで優位が決まるのだろうか?


「私もそうだった。詳しい変化の条件とか優劣は断言できない……けど、私はある時を境に粒子上から、球状に、そして何かの形に近づきつつある。今は球状でもいずれ、精神に呼応した本来の姿……自分の精神そのものになるんじゃないかって思ってる」


 ……動物とかになるのか?

 

 思い出すのはあの化け物使い。あれは自分の精神が完全に形となって顕現した結果なのだろうか?


「私の能力は天候の操作。あと付随効果としてそれにまつわる事故や事件が、私の裁量で再現できる」


「どういう事だ?」


「例えば砂嵐。風に運ばれた砂塵が視界不良を引き起こし、見通しが悪くなる。当時奴隷として砂漠に行った時に、砂嵐に見舞われて他の奴隷と逸れたことがある。照りつける日光が肌を焼き、水分がそこを尽き、干からびるかもしれないと味わった恐怖。あの日がトラウマになって能力に反映された。要は目標を見失わせたり、対象の認識を誤認させたりできる能力」


 アキは、両手で丸め込むように自分を抱く。その体からは微かな震えが感じられる。確かにトラウマと言って差し支えないほど、当時の経験は恐ろしいものなのだと、感じられる。


「これはあくまで一例。他にも使える能力はある」


「そうか。精神や過去の反映。俺には分かりやすい性質だ」


「あなたの能力は?」


「物体に感情を付与すること。例えば」


 俺は手に持っている乾パンの袋に、赤色の粒子をぶつける。するとそのゴミは灰となるようにボロボロに崩れ落ちて、地面に舞った。


「怒りの感情をこめられた物体は、このように破壊の作用が起こる。付与される感情によって効果は様々だ」


「いい能力だね。あなたは感情という概念に対して何か思い入れがあるみたい」


「そうだな。だからいろんな感情を味わえることこそ、幸せにつながるのではないかと思っている。俺が追い求める幸福へと至るための、武器がおそらくこれなんだろう」


「精神の作用と能力の関連性は、よく理解できてる」

 

「なら俺が次の段階に進むには、どうすればいい?」


「自分の心をよく理解する事。整理したり、向き合ったり……まぁ能力を使い続けることでそれにつながると思う」


 地道に訓練するしかないということか。才能と地道な努力があって、初めて成り立つ能力というわけだ。


「お前も能力を使い続けて、次の段階に至ったのか?」


「球形が次の段階かはわからないけど……能力が発現したその日から、特訓は重ねてきた。それでも段階で言うなら、体感1.5段階目と言ったところ」


「そうか……では取り敢えず粒子状のままでも、強敵と戦えるほど練度を高めることを目標とする」


 幸い手数は豊富な能力だ。応用力と組み合わせによって、その利便性は格段に上がるだろう。


「私も相棒がいて心強い」


「気色の悪いことを……言っておくが俺はまだ、お前を完全に信用したわけじゃない。今でこそ共犯者というスタンスだが、その関係もすぐ崩れるだろう」


「そ、そう……」


 アキは悲しげな表情を浮かべると、自分の目の前に球体を出現させた。


「私はトレーニングしてるから……貴方も好きに使って」


 本人にそう言われた事だし、遠慮なく実験させてもらおう。



 

 大切なのは自分の本質を知る事。自分にどのような感情があるのかの再確認。また、自分の知らない感情を呼び覚ます事。それは経験によっていずれ掘り起こすことができるとして……


「最近味わったのは……優越感?達成感?」


 この二つの感情を思い出そうとしても、ハッキリと再現できない。あの化け物使いを倒した時の快感が思い出せないのだ。したがって、


「色の変化が起こらない。つまり理解が足りないということか」


 感情を付与することもできなかった。


「奴隷時代の感情は特に強い。人間は辛い思い出の方が心に残りやすいと本で読んだことがある。対義語で言えば……劣等感」


 自分が地獄に呑み込まれる、か弱い蟻だった時のことを思い出す。ハッキリと当時の大人たちに弄ばれる光景が脳裏に浮かんだ。

 下の立場だと思い知らされた劣等感。それを強く思い出すと、褐色の光子が生まれた。


「……」


 ハルは複雑な気分だ。新たな能力の発現は確かに嬉しい。でもそれが過去の悪感情。それも劣等感であるということは、自分が上の立場ではないということを、自分自身に教え込まれているようだった。


「今は……今は許そう」


 許すも何も自分自身の精神なのだが……ハルは少しげんなりした様子で、その光子を石っころに付着させる。

 

 が、何も変化はなかった。割れることも浮くことも、ただそこにあるだけで一切変化がない。


 指先で突いても、感触に違いはない。


「おい。ふざけんなよ」


 ハルは期待を裏切られ失望する。八つ当たりに石を蹴り飛ばそうとすると、


「痛ッ」


 少年は、思わずしゃがみ込み親指を、抑える。


「どうかした?」


 アキが心配そうにこちらを見てくる。


「なんでもない……」


 予期せぬ石の質量が少年の未来予想図を裏切ったことも相まって、足の親指に甚大なダメージを与えていた。


 ハルはその石を、持ち上げようとするもそれは叶わなかった。ずっしりと地面に吸い付くようでとても小石の重量とは思えない。


 詳しく性質を知るため、少年は宙に石を指先で弾きそれに、粒子を付着させる。するとズドーンという音と共に、石は地面にめり込んだ。


「な、何!?」


 アキが肩をビクッと跳ね上げ、こちらを見る。


「なんでもない……」


 ハルは念のためその場を離れていたことが幸いして傷は追わずに済んだ。今後はもっと慎重に、研究しようと心に留めることも忘れない。


 少年はそう返すとこの粒子の性質に、あたりをつけた。


「質量の増加」


 これはまた面白い能力が増えたと、少年は喜色を見せる。


「ここに喜びの感情を、付与させればどうなるのだろう」


 光子を二種類以上付与させた時、効果の重複はするのか?


 少年は褐色と黄色の粒子を、同時に出現させる。地面に黒い粒子で弾力を付与させ安全性も確保した後に、二つの粒子を宙に投げた小石にぶつけた。


「浮いた」


 あとは質量が増加しているか、確認するために黄色の粒子を、ただ払うように弾き飛ばすと、小石は落下する。


 すると地面は突き破れるのではないかと思うほど、深く沈んでいく。音こそないが質量は増加したと確認したハルは、もう一度、黄色の粒子を穴に落とし小石を引き上げた。それに伴い、地面の陥没も綺麗さっぱり元通りになる。褐色の粒子と黄色い粒子を解除すると、小石はカランカランと地面を転がった。


「恐らく重複するか、または上書きしてもその前の粒子は内在する」


 ハルは、他にも自分が経験した感情がないかと、自分の過去の記憶を遡り、色々試行錯誤するのであった。




 

「ねぇ、ハル」


「なんだ?」


 実験もひと段落して、騎士の物資であった瓢箪の水を飲んでいた時、珍しくアキから声がかけられる。


「私たちはこれから騎士たちを……ひいてはここの領主にまで、歯向かっていくことになるよね」


「なんだよ。今頃怖気ついたのか?」


 俺がアキに目を向ければ、首を振って否定した。


「そうじゃなくて……まぁ、ちょっと昔話に付き合って」


 その後も口を開くアキの言葉を、俺は黙って聞く。



3年前。まだ私に自我と言える自我がなかった時。私はただ黙々と仕事をこなしていた。鉱山でひたすら鉱石を収集して運んだり、大人たちのストレス発散に付き合わされ殴られたり。

 こんなことは、奴隷になら誰にでもわかる常識。語るほどのことでもない。


 そんなある時、私は砂漠での露天掘りの遠征メンバーに選抜された。なんの名誉もない、ただの運命の奴隷。大人の目についたから選ばれた。使える道具ならなんでもいい。そんな腹づもりだったのだろう。

 炎天下。日差しが照りつけ、地面に反射し上下から熱波が降り注ぐ地獄。視界は陽炎のように揺れ、異常な気温だった。感情と言えるものもない中、あれが不快なものだとは言い表せなかった。


 仕事が始まる。ただただ下へ下へと段差の通りに鉱石を掘り進める。ただいつものように坑内でないのと作業の勝手が違うことから、ミスばっかりしていた。私は何度も叱咤され殴られ飛ばされ暑い地面の上を転がった。ここでも私は自分の境遇に疑いもなく、ただこうなる日だったんだなと思っていた。



 でも仕事中の私が唯一心を開いて、身惚れたものがあった。初めて自分の胸が高鳴った日。生きてることを実感した日。いや、時の凍った自分が溶かされ、時間が刻み始めたんだ。



 砂漠の夜は昼とは正反対に寒かった。本当に自分は同じところにいるのかと、疑うほどに。私は他のみんながこなしたノルマを昼の間に達成できず、一人で坂を登り鉱石の積もった荷台を押していた。だからだろう。体に無理をさせすぎたせいで、倒れてしまった。揺らいだ荷台から鉱石が、地に落ち砕ける。


「ぁ……」


 私は無力感を感じた。皆ができることを私だけがこなせず、あまつさえ鉱石を割ってしまった無能。この悲劇が誰にも共有されず、たった一人で繰り広げられていることに私はもうどうでも良くなっていた。


 自棄になって冷たい壁面に背を預け、俯く。利益の損失しか生み出せない私は生きる価値がない。もう私の人生は終わるんだろうなと、予感していたからだ。


 その時だった。首元に冷たいものが感じられた。ポツポツと、何かが降り注ぎ広がるように。


 気になった私は視線を天に注いだ。ただ機械的にこの場で異常でも起きれば、困ってしまうから。

 私は目を奪われた。その白い結晶に。雪だ。砂漠に雪が降ったのだ。

 奇跡のようだった。夜の月明かりに照らされ光を纏った結晶。物語に出る妖精が夜の空で踊るような幻想的な景色だった。

 自分の目から頬に何かが伝うのがわかる。手でそれを拭うと水で濡れているのがわかる。涙だった。出るはずもないのに。どれだけ大人たちに殴られて、怪我を負おうが痛みを感じようが何の感情も抱かなかったのに。枯れていたはずの涙が、堰き止めることも出来ずにポロポロとこぼれ落ちた。冷たいはずなのに……何かが解かされるようで。




「なんだよ。間に合いやがったのかつまんねぇな」


 次の日。私は前日のノルマは達成した。文字通り死ぬ思いで。死にかけてでも生きたいと思えたんだ。生きるためには、もう一度あの景色を見るためにはやらなきゃ、いけなかった。




 遠征最終日までやってきた。


「荷物まとめろ。拠点に戻る」


 奴隷たちは頷きもせず荷物をまとめ、先導する指導者についていく。

 私は彼らのようにボーとしていた。暑さと疲れで、口が渇き喋る気力もなかった。


 ただただ歩いて拠点を目指していた、その時だった。


「な、なんだありゃ!?」


 聞いたこともない大人が、驚いた時に出す裏返った声。


 何事かと思って、驚く大人の視線を追えばモクモクとした茶色い雲のような砂嵐がこっちに凄まじい速度で近づいてきていた。


「チッ!」


 大人達は皆揃って一斉に逃げ出して行った。

 その切羽詰まった大人たちを通じて、ことの深刻さを理解した奴隷も、死んでいたかのようだったのに、息を吹き返して逃げていく。


「ま、待って……」


 出遅れた私は声とも言えない悲鳴を上げながら私は、砂嵐に巻き込まれた。


 思わず目を瞑ってしまう。必死に手を伸ばして奴隷でも大人でもない誰かに助けを求めた。


 やがて砂嵐が通り過ぎる。


「どこ……どこ行ったの?」


 目の前の景色は一様に変わらず、砂ばかり。方角感もわからず帰り方もわからない。だというのに私だけが砂漠に取り残されてしまった。


「は、ハハ。なんなの……?みんなしてどっか行って」


 昨日見た景色に生きる気力を与えられたと思えば……昨日の今日で死を彷徨う事になるなんて思わなかった。


 絶望した。深く。今までない程の落下感。自分を舞い上がらせて、蹴落として……天にまで弄ばれている気がして私は、可笑しくて笑えてきてしまう。


「ふざけないでよ」


 私自身驚いた。心臓が煮えたぎるような感覚。通常の奴隷なら覚える余地もない怒り。


「追い求めなきゃ。あの感動の先を……見たいんだ」


 

 何時間歩いただろうか?私の体力は限界だった。脳が溶けるような錯覚。暑さで私は壊れかけていた。


「あ……れは」


 遠いが目の前に生えた木々が見える。なんで砂漠にと思ったが、すぐ側にある水辺を見て疑問が解けた。


「オアシス……」


 私は足を引き摺り、あの元へ向かう。後二十メートル、十五メートル……十メートル……


 そこで私は倒れた。避け得ない死の予感。ここまできて死ぬのか、と私は目を瞑る。


 脳裏に浮かび上がる昨日の光景。私の心を溶かした雪。


 ドクンと心臓が脈打った。私は目をゆっくり開けると、地を這ってオアシスに向かった。


 両腕が焼けるように熱い。全身防護されたコートを貫通する熱。それでも私はただオアシスだけを見て突き進んだ。


「くうっ!」


 私はなんとかオアシスにまだ辿り着くと、身を投げるように、泉に浸かった。


 心地よかった生き返るように。熱で覆われた体をひんやりとした感覚が上書きしていく。私は両手で水を掬って乱暴に飲んだ。道中で持ってきた飲料水を一滴も残さず飲み干してしまってからだいぶ時間が経っていたゆえだ。


「プハァ!」


 水面から顔を上げたのは、数秒後だった。溺死も厭わないという飲みっぷり。だが、私の意識は完全に自我へと取り留めた。


「ハァハァ……どうやって帰ろう」


 それでも一時を凌いだにすぎない。依然として絶望的な状況のままにあった。


「なんでだろう。悔しいな」


 奴隷というヒエラルキーにおける最底辺の立場。どうしてこんな思いをしないといけないのか。あの感動を当たり前のように、見る権利はないのか。この世の理不尽に目を背け続けてきたのに、今際の際になって憎く思え始めてきた。


「ああ……この感情は間違いなの?希望に縋ってはいけないの?奴隷は……人間じゃないの?」


 丁度自分の感情が、絶望や憎悪、感動を追い求めたい心などが交差したその瞬間だった。


「おかしいな。空は晴れてるのに……あの時の雪が見え始めた」


 私は幻覚か確かめたくて、それに少しでも早く触れようと手を伸ばす。指先に雪の結晶が溶け込んだ。


「本物?……いやこれは雪じゃない。なんなのこれは?」


 少女はそこに、自分の過去を見た。振り返ると納得のいかない毎日ばかり。言われるがまま、為されるがまま。当たり前に享受していたと思っていたけど、本当は心の奥底で否定したい気持ちが眠っていたんだ。


 ───他人にとっての自分でなく、自分のあるがまま、自分の価値を自分で肯定できる。道具ではなくそんな人間になりたいんだ。


 私にその粒子が降り注ぐと、腕や顔に着いていた切り傷や擦り傷、打撲の跡などが綺麗に消えていく。


「これは……!」


 私は驚きと歓喜が混じる表情を浮かべる。自然と口角が上がるような、一見冷たくも、中身は温かいもの。


「私はまだ生きている……生きているんだ」 


 少女が手を振り翳すと、行くべき道を教えてくれるように雪の標ができる。私は地面の霜を踏みしめながらその道を辿っていった。


 

 私が拠点に帰ってこれたのは、夜を過ぎた時のことだった。 


「ハアハア……!つ、ついた……」


 何食わぬ顔で拠点に戻ったのはいいものの、誰も気づいてくれる様子はないし、私を見ても興味はなさそう。それは奴隷だけでなく大人たちだってそうだ。眼中にない。そんな態度。


「あれのせいで……私は」


 あいつらが、私の人生を奪った。平気な顔で人を踏み躙って!


「許せない」

 

 今まででは考えられない憤怒の表情で、私は先ほどの力を行使しようとする。


「あ、あれ」


 さっきは使えたのに……どうして?


 先ほどの吹雪を奴らにけしかけるつもりで、放とうとしたのだが、何も起こらない。


 拍子抜けした私は、自分の下に布だけ引いた簡素すぎる寝床に戻って行った。




「やっぱり使えない。なんで?」


 次の朝。目覚めてすぐ私は昨日のことを確かめる。私は何度もあの時の感動を脳裏に浮かべながら、先ほどの力を使おうとするも使えない。

 そのかわり、


「あ!」


 純白ではない。黄砂のような黄土色の粒子が現れる。


「ひっ」

 

 少女はあの時の恐怖を思い出す。あの砂嵐が完全にトラウマと化しているのが分かった。


「こんなんじゃ太刀打ちできないよ……」


 私は悲観する。この誰も知り得ない私だけの特別な力。でもたかがこんなことにビビっていたら……


「……克服するするしかない」




 そうして私は今までの3年間、この能力……感動の象徴と恐怖の象徴二種の能力と、とことん付き合っていくことになった。




「砂漠で彷徨って生死を彷徨った時に、あの時の感動を思い出して能力が発現した……か。ロマンチックじゃあないか」


「でしょ?まだ砂嵐がトラウマで、窮地に追い込まれた時にしか踏ん切りがつかなくなるけど、いずれは使いこなしてみせるんだ」


 アキの胸に抱いた決心に俺は、素直にすごい奴と称賛した。


「そうか。お前ほどのやつならそう遠くない話だろ」

 

「馬鹿みたいだとは思わない?」

 

「さあ?馬鹿かどうかはこれからお前が、証明しな。それでなぜ俺にその話をした?」


「あなたが私のことを、信用してくれないみたいだったから……信頼の証として過去を明かした」


「……そんなものが必要なのか?」


「能力者同士で連携するんだから、心を通わせないと足並み揃わないでしょ」

 

 それに、とアキは続けた。


「あなたは強いだろうけど、私は弱い。だから弱さを捨てたかったの。トラウマがずっと足枷になって、あなたの足まで引っ張りたくなかったから。要は気持ちの整理」


「よくわからんやつだな。なぜ俺を気にする?」


「……分かんない。これも私のあり方なんだよ」


「……本当に理解できない……だったら俺もお前のために言うが、今後は意味不明なことは言わないでくれ。いつ俺が暴れるか分からんからな」


「どういう事?」


「俺の在り方だよ。文句ある?」


「あなたこそ変わってる」


「お前に言われたくはない」


 何が面白いのか、アキは楽しそうに笑っている。


「後もう一つ理由があった」


 まだあるのかと、俺は頭に疑問符を浮かべる。


「あなたと私、似てるから」

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