第15話 カスミ姫の公務の巻
明朝
天童の配下、十界仙を退けた、東堂は父上…将軍、徳沢宗家から直々に褒美を賜わっている。
大広間の御前にて、妾と父上、母上、大老の前でだ。
「此度はご苦労であった、いや、大金星と言ってもいい、東堂明、お主に褒美として五十両、あと他に望むものはあるか? 」
「身に余る光栄であります、将軍様! 望むものは…ありません」
「ほう、意外だな、そちは、無欲なのかな?」
「いえ…そうではありませんが…拙者、欲しいものは…その…頂いたというか…」
東堂は顔を赤らめながら、述べている。
きっと、昨日の夜の事を思い出してるのだろう、
寿命がある限り、
「歯切れが悪いのう、まあ良い、そちがそれ以上、望むものが無いと言うなら、これ以上言うまい」
「はっはー、それでは拙者は来れにて…姫様の護衛の職務に戻らせて貰います」
東堂が
何だか動きがぎこち無い。
もしかして…昨夜の事を引きずっておるのか?
「東堂、何だか、動きがぎこち無いぞ」
「姫様、昨夜の事は、拙者の胸に閉まって置く故に…その、あんな過激な、せっ、接吻など…」
「接吻でそんなに動揺して…もっとして欲しかった?」
東堂は、その言葉にオロオロしながら、「カスミ姫様! 御冗談も程々にしてくださいませ、この東堂、壊れてしまいます!」
あー、楽しい、生きているって感じで…それも、この男がくれたものだ。
※※※
「申し訳ありません! 天童様」
僕に跪いているのは、先のカスミ姫拉致に仕向けた、十界仙の悟空坊こと聖来暗転菩薩だ。
「大鬼獏良、修羅一丈を斬り伏せる侍か…」
「天童様、こやつの処遇はどうするつもりで?」
「そうだね…とりあえず、死んで貰うかな」
「天童様!
聖来暗転菩薩が嘆願するが、僕には関係ない、十界仙という僕が選んだ戦力でもだ。
以前、大鬼獏良や修羅一丈を咎めなかったのは、二人がかりでも、倒せない奴に、僕がけしかけて僕の目論見通りにいかなかったのも、あって、自戒を込めて見逃したが…今回は三人を派遣して、二人は討ち死に、残り一人は逃げ帰って来たと。
一応、二人を倒した侍が妙な刀を使っていたという情報は、手に入ったが、その侍が僕に脅威を感じさせるとは…思えないし、何より、聖来暗転菩薩が今後とも、僕に協力するとは思ってない。
「聖来暗転菩薩、君、僕を裏切っただろう?」
「はっ!―――――そんな事は―――」
言い終わる前に、聖来暗転菩薩の頭が地面に転がる。
「ご苦労、
「別に…あんたの為じゃない」
「ふふ、君は素直じゃないね、まあいい、
「はい、天童様の為ならば…」
さて…こっちは、戦力が減ったが、例の侍も聖来暗転菩薩の情報によれば、もう脅威では無い。
次は誰をカスミ姫に向けて行かすか…
※※※
「東堂!!次はこっちじゃ」
「はい!」
「本城!!これも頼む」
「はい!」
東堂が父上から褒美を受け取った後に、公務の書類に印鑑を押すのじゃが…中々、しんどい、数が膨大じゃ!
護衛取締役の二人にも、手伝わせて、いるが…それでも、終わりが見えない。
結局、昼から初めて終わったのは、夕方になり、クタクタになる。
そんな
「姫様、お疲れでしょう、これをどうぞ」
「おお、済まぬの」
「東堂殿、本城殿の分もありますよ」
「拙者は…結構でござる…」
「うん、そうなのか? お主、その刀の行使で、味覚もやられてるんじゃないか? 」
「……………実は、そうでござる、味覚もそうなのですが、食欲もあまり無くて…」
「そうなのか…東堂…ならば
「まあ、東堂殿たっら///、姫様に食べさせて貰うなんて、まるで恋人のようですわ」
ツバメが茶々をいれるが、この男をこんな風にさせたのは、自分にも原因がある。
おはぎを手で
それを食べる東堂。
「どうじゃ?」
「うん、味覚、感じずとも、このおはぎは美味しいでござる」
「まあ、東堂殿たら、お世辞が上手いのだから」
「いや、東堂の言う通り、このおはぎは美味いぞぉぉ!」
本城の方を見ると、口いっぱいに頬張っていた。
あの堅物の本城が甘い物には、目が無い事に、凄く相違が大きかった。
「本城、お主、甘い物に目が無いのだな」
「モゴモゴ、はい、この城に入る前には、行き付けの団子屋がありまして」
「ほうほう…そうじゃ!明日はその団子屋とやらに、お忍びで参ろうではないか」
「姫様、いいのですか?」
「構わぬ、東堂、本城、道中は頼りにしておる」
天和七十年、七月三日の夕方、
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