第13話 カスミ姫、東堂明を癒やすの巻

「土御門殿!」


オラは聖来暗転菩薩と名乗っている坊さんと術で応戦している土御門殿に、加勢すべく龍我毘沙丸を握りしめ、駆け寄った。


「君は…抜いてしまったんだね、それを…」


「そんなことはいいでござる、拙者も加勢するでござる」


すると、土御門殿と術の応酬していた聖来暗転菩薩の方が、術を解き、宙に浮かんだ。


「やれやれ、十界仙の二人も葬った侍に、厄介な術を使う陰陽師を二人を相手なんかしてられないね、この場は撤退といこうじゃないか」


「逃げるのか!!」


オラは叫んだ、この場で倒せるなら、倒しておきたい、龍我毘沙丸の反動で、身体が動かなくなる前に!


「嫌だね〜戦略的撤退ってやつさ、そ・れ・に、君も限界なんじゃないのかね? その刀を行使し続ければ、君、死ぬよ、なあ、陰陽師殿」


「………分かった、帰りなさい、聖来暗転菩薩、君の言う通り、こっちも限界なのでな」


「交渉成立〜、じゃあね陰陽師殿〜、それと、十界仙の剣豪を倒した若侍君〜」


そう言って、奴は消え去っていった。

戦いは、一先ひとまず、終わったようだべ…あれ、身体が動か…な、く、て。




※※※



「東堂!しっかりせぬか!!東堂!」


わたくしは、土御門の隣に立っていた、東堂が膝から崩れるように、倒れたので、本城と一緒に駆け寄る。

意識を無くしてるようだ…それに、額や胴体にも傷がある。

それを手でかざし、念じる。


傷よ治れ、傷よ治れ、傷よ治れ。


すると、傷は塞がった…が、東堂は意識を失くしたままだ。


「姫様、治癒の力でも治せぬものも、あります、東堂はその刀の力に飲み込まれて…いや、取り憑かれているのですから」


土御門が説明してくれた、東堂が使っていた、刀は魔刀、魔剣の類であることを。


「そんな物を…東堂が…」


傍にいた、本城も呆然としている。

あの時の呪術師が東堂に授けた物に、それ程の副作用があるとは…いや、わたくしは、知っていたんだ、あんな、禍々しい現場にいながら…止めれなかった。

この男は…こんなになっても、わたくしを守ってくれたと言うのに…わたくしは、護られてばかりだ。

情けない…姫という立場で何も返す事が出来ない、自分に…。


「姫様ーー!」


あれは、荒木又左衛門…刀を杖代わりにして、トボトボと寄ってくる。


「荒木殿、よく生きて来られた、姫様! 荒木殿にもその治癒の力を使って貰えませんか?」


土御門が私にお願いしている、言われるまでもない。


「勿論じゃ、荒木、お主もよく戦ってくれた、こっちに寄って傷を…」


「いえ、姫様、拙者は大丈夫です…それより、そこの東堂を何とかしなければ! 今回の戦いの最大の功労者ですから!」


荒木又左衛門は、腰に下げている気付けの酒を東堂に飲ませた。


すると…


「グハぁぁ!?」


東堂が目を覚ました! わたくしは、嬉しさの余りに東堂に抱きついた。


「姫様…苦しゅうございます…」


「おお、そうか、それは悪かった! どうじゃ、気分はどこか痛む所はないか? 」


「いえ、ないでござりまする、姫様…傷を治して下さったお陰で、身体はぴんぴんしています!」


強がりおって…この大馬鹿者…死んだら、わたくしは、悲しいぞ。


「東堂…済まない、お主にだけ、それだけの負担をさせて、この本城毅一郎誠、不甲斐なさに、恥じるぞ」


「本城殿がそんなに畏まるなんて…熱でも、あるのでは…」


「お主ときたら…まあいい、生きているだけよい、あまり、姫様を悲しませるなよ」


「おっほん!」


土御門が咳払いをし、東堂に近づいて、


「後で、姫様と一緒に私の部屋に来なさい」


っと、言った。

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