第10話 東堂明、修羅一丈に勝つ為の布石の巻

――――――城内にて


「カスミ姫様、なりません、どうか…堪えて下さい」


「本城、お主は東堂や皆の安否が気にならぬのか!」


「気になりますとも、ですが…相手が相手です、我らは姫様の警護が任務ですので…東堂も同じ思いでしょう、彼奴きやつなら必ず、ここに戻ってくるはずです」


ああ…東堂、皆、許しておくれ、わたくしは、何も出来ないのに…いや、私にも出来る事はある!


「本城毅一郎誠! 私を現場に連れて行きなさい、これは、命令です!」


「姫様の命令でも、受けるわけには参りませぬ」


「ならば、私は勝手に行きます、お主はここに残れ」


私のかなり我儘な命令を本城は、頭を掻き、ハーっと溜息をつき、本城は……


「分かりました、この本城毅一郎誠も参ります、護衛は、拙者だけで行きます、それでよろしいでしょうか?」


「よい、急ぐのじゃ、皆を助けるのじゃ」


私の治癒の力を現場の者達に、奮って行使する…今の私に出来る事は、それだ。


待っておれ、皆、そして…東堂、今、いくからな。




※※※



「何が、英傑だ! 一人の女子おなごを犠牲にして、平和だと! そんなものは拙者が否定してやる」


「ふふ、口ではそう言っても、俺とお前の如何いかんともし難い実力の差は埋まらないぞ、大鬼獏良のようには、俺はいかない」


確かにその通りだ、このままでは、斬られるのは、オラだ、秘薬を使い元々、化け物じみた強さを得た、この男をどう倒せばいいのか…


頭に過ぎるのは、腰に差している龍我毘沙丸の力だべ。

この刀を抜けば…今の修羅一丈にも勝てるだろう。


―――だが、使った反動で、オラの身体はどうなるか…


どうする、どうする、どうする!!


そう言えば、嘗て《かつて》師事していた、塚原卜斎つかはらぼくさい師匠に、言われたこと…


『相手を観察し、徹底的に自分との差を知る事、これ、兵法の極意なり…戦いは事前に相手の戦力を押して図る事が重要だが、それも、叶わないのなら逃げるか、時間をかけて相手を自分の領域にいれる、分かるか、明? 』


自分の領域にいれる事…相手は、あれ程の力を発揮する秘薬を飲んだ…何かしら、副作用があるはず、オラの持っている龍我毘沙丸と同様に! 


ならば!!


「修羅一丈、どうした! 攻撃がこないな、それとも拙者に臆したのかな? 」


「挑発のつもりのようだが…何か、企んでいるな小僧! だが、この圧倒的な力にひれ伏すがいいわ!」


速い打ち込みだ、それこそ、大概の侍ならこれで、斬られるだろう。


だが…


キィーン!!!!


頭上に振り下ろされた、斬撃を何とか受けた!!

鈍い音が周囲に鳴り響く、これだけの一撃は並の刀なら、刀ごと頭から一刀両断されてるだろう、愛刀虎鉄の頑丈さも、頼もしいべ。


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