第7話 東堂明、大鬼獏良と立ち合うの巻

「ふん!」


大鬼獏良が横薙ぎを一閃すると、後ろへ避けると、オラの着物を掠め、ギリギリの所で、避けれたんだ。

追撃しようと、迫る、相手に刀同士がぶつかり、鍔迫り合いになったっぺ。

刀越しに伝わる、相手の膂力に驚愕しつつ、オラもこれまでの修行で培われた肉体を信じ、鍔迫り合いを制する為、一歩、後ろへ下がり、相手の力を流そうとした。


「どうした、小僧、この間のような鬼神如き、力を全く感じないぞ!」


流そうしたが、相手は押切り、左切り上げを繰り出し、オラの、額に鮮血が舞う。

後ろへ下がるのが、もう少し遅かったら、オラの顔は両断されていたっぺ。


「お主、それだけの力量を持ちながら…何故、天童の配下になったのでござるか…その力量を何処かの藩に買われたり、しなかったのでござるか?」


―――大鬼獏良はフッと笑い、オラに言った。


「あったさ、だがな、どいつもこいつも、権威に溺れた者達だったよ、力量を見せても、我を認めようとしなかった…そんな事を繰り返す内、ある時、天童様が現れたのさ」


「天童がお主達に見合う待遇を与えたと?」


「そう、修羅一丈もそうさ、女、十界仙と言う名誉を与え、我らが求めた待遇を揃えて下さった! そんな天童様に歯向かう、腐敗した徳沢幕府こそ、天誅に値する!! カスミ姫をさっさと差し出し、天童様にひれ伏すがいいわ!」


オラは、カスミ姫様を差し出せと言う、大鬼獏良に激しい憤りを覚えた。

オラには…徳沢幕府が腐敗したとか、そんな事はどうでもいい…ただ、カスミ姫様を、そんな人身御供みたいな人生を送らせる天童達を、このまま野放しにしておけない。


「大鬼獏良よ、お主が徳沢幕府に憤りを覚えるのは、分かった…たがな…その為に…あの少女を人身御供に送り出すような鬼畜な所業を見逃すにはいかぬ!!!」


「ならば、我を斬り伏せてみせよ小僧!」


大鬼獏良が斬りかかり、オラ達はギリギリの間合いで剣戟を結ぶ。


キンっ!!


キンっ!!


刀がぶつかり、火花が散る。

塚原卜斎つかはらぼくさい先生に、免許皆伝を認めらたオラとここまで、斬りあうとは…改めて恐るべき相手だと思ったべ。

一心一刀、こんな形で出会わければ、良き剣友として、接したかも知れないと思うと、残念に思うが…あの天童に仕える以上、ここで必ず、屠るべ!

幾度も、打ち合い、そろそろ決着をつける時が来る、今が、その時!


「大鬼獏良よ、お主の力量には感服した…っが、ここでお主を斬る!!」


「おお!!やってみせろ、小僧!」


オラは八相に構え、あの技を繰り出す為、呼吸を相手と合わせる。

真当流…大月王烈衝だいげつおうれっしょうを!


大鬼獏良も察したのか、オラを確実に斬り伏せる、大技を出すかのように、大上段に構え…技の名を言う。


「これで、互いの生の最後かもしれん、小僧、覚えておけ、我のこの技、鬼獄一閃きごくいっせんを!!」


「承知!!ゆくぞ!!」


一歩、一歩、歩むたび、生と死が入り交じる感覚を覚え、そして―――――――――――


大月王烈衝!!


鬼獄一閃!!


間合いに入った所で、互いの技がぶつかり合った。








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