第2話 東堂明、鬼退治の巻
オラの実力を見聞…もとい辞退させる腹積もりの大老様の計らいで、城の庭で本城毅一郎誠殿と木剣での勝負だべ。
姫様も見物してる所だし、良い所を見せるんだべさ。
試合は、大老様直々に審判をして下さるとの事、気合が入るべよ。
相手の本城毅一郎誠殿は、鉢巻にたすき掛けをしてやる気満々だべよ…オラみたいな田舎侍にも全力を尽くして下さるなんて…このお方は、きっと誠実な方だべ。
「両者、前に!」
大老様の指示に従い、庭に出て、お互いに向かい合うだべ…緊張するっペ、いや、ワクワクするべよ。
「両者、構え…始め!!」
勝負は一瞬だったぺ!
本城殿は、脇構えからこちらに向けて一閃するも、オラはそれを見切り、上段に構えた所から、一思いに本城殿の肩に打ち込んだ!
「くっ…勝負あり!止め!!勝者、東堂明」
みんな、唖然としてるばい、そんなにオラが勝った事が不思議に思うとか…オラ、どんだけ期待されてなかっただべ。
「おめでとう…東堂明、これで正式にお主も姫様の護衛としての任に就く事になった…」
ぷぷぷ、大老様たっら、意外な結果に顔が真っ青になってるべ、人は見かけによらんとだべさ。
※※※
正式に護衛の任に就いたオラは、同じく護衛の任に就いた本城殿(負けたとはいえ、正式に就いた手前、大老様も解任にはしなかった)と、城の外へ行かないかと、誘った。
すると…
「何故、俺が、貴様みたいな田舎侍と城下町に繰り出したり、せねばならんのだ」
「オッホン!!拙者、この辺の地形に疎くてですな、本城殿みたいな、立派な方だったら、城下町の地理も詳しいんじゃないかと…それに護衛なら詳しくあれば、この先の任務にも役に立つかもしれないし…」
「ふん、馬鹿馬鹿しい、だが…俺から一本取った男の頼みだ! いいだろう、教えてやる」
本城殿は誇りが高い方なんだべな、口が悪いのが意外だったが、結構親切なんだべ。
城下町に行くため、城を降りる途中、カスミ姫様が見えた、相変わらず綺麗な方だが、生気がない……そんなオラは名案を浮かぶ。
だが、今はその時じゃない。
本城殿と城下町へと繰り出して行き、様々な物を見かけた。
綺麗な着物を売っている着物屋、娯楽として様々な絵を飾って売っている浮世絵屋、美人画、歌舞伎、相撲、人形浄瑠璃、様々な物が溢れていた。
「本城殿、城下町というのは、様々な物が溢れてますな」
「貴様は田舎から来たと言っていたが、何処の出身だ?」
「ムツですなぁ、中々、貧乏でしたよ、農民達も食うもん、食えず餓死したりして…」
「そ、それは、過酷な環境に居たのだな、剣術は何処で習った、因みに俺は北流一刀流だ」
「オ、、拙者は、まことに当てると書いて真当流、師匠は塚原卜斎つかはらぼくさいでござる」
「な、何だと、貴様、それは本当か?」
「嘘でねぇ……本当です」
「そうか…それは強い筈だ、まさか知らずに剣聖の弟子とやっていたとは…」
「拙者の師匠ってそんなに有名なのですか?」
「そりゃあ…剣術をするにあたって、知らない者はいないだろう、貴様、自分の師匠を何だと思ってるんだ!」
そった事、しゃべらぃでも…オラだって、しがない田舎侍だべ、そんな村に立ち寄った、ちょーーー厳しい師匠の身元なんて知るわけねぇべよ。
生まれて五才から、あーの鬼より怖い師匠に十三年間、鍛えられたんだべ、んでも、お陰で強くなったんだべさ。
「まあ、鬼より恐ろしい方だったのは、確かだったんです」
「そうか…それだけの御仁に鍛えられたんだ、強いのは、当り前に決まってるな」
本城殿と町を歩いてると、腹がグーーーー!!と鳴る。
「腹が減ったでござる」
「そうだな、俺も腹が減ったな…どれ、そこに蕎麦屋がある、そこで腹を満たそうじゃないか」
お店に入って、かけ蕎麦を二つ注文、待っているとさ、店の外が騒がしいべ…何事だと思い外を伺うとさ、何やら妖怪が暴れてるみたいだっぺ、本城殿にもその旨を伝えると、二人で外に出たっぺ。
「鬼か…それにしてもデカイ…」
「大した事ない…拙者達の刀の錆にしてくれよう」
鬼が暴れてるので、足元の石を投げつけて、こっちさに意識を向けさせるんだべ。
そっしたら、ごっつい鬼がこっちさに、向かって来たべ。
―――――真当流…
八相の構えから…刀に気を纏わせ、相手の呼吸に合わせ、刀にさながらさ、月の光のような輝き、刀の衝撃と気の衝撃を相手にぶつけるんだべ。
鬼は半身が真っ二つになり、そのまま倒しただべ。
「貴様、凄いな…あれだけデカイ鬼を一人で…」
「拙者、妖怪と戦うのは、これが始めてではない故に…要は慣れでござる」
本城殿は驚いていたが、今、言った通りオラにとって、妖怪退治は始めてではなかとね。
しかし…これで、至急、城に戻るよう、本城殿に言われたべ…
オラのかけ蕎麦…
※※※
どうやら、これは…天童なる化け物が、現れる予兆らしいべ。
「今回も定例通り、カスミ姫を献上しなければ、いけないのでしょうか…」
御台所様が、上臈御年寄様に言うと、
「先代の姫様…キク姫様も結局、そうせざる得なかったんじゃ、誰も、かの化け物に太刀打ちは出来ないんじゃよ」
絶望的な表情で、言葉を振り絞るように言った。
すると、
「皆、何を暗い顔をしておる、
カスミ姫様が暗くなったこの場を、何とかしようと…ありゃぁ、強がりを言ってるだけだべなぁ…
そして、一週間後、オラはオラなりの名案を決行することにした。
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