姫様はオラの事が好きなのか? 何!?違う?それなら、惚れさせてみせるっぺ
人生真っ逆さま
第1話 東堂明、護衛の任に就任の巻
世界の極東にあるヒノモト国は、ここ七十年、一見すると安寧の時を過ごす事が出来ているように見えた。
ここ、国の中心にして
見た目は品の良い公家ような
――――しかし、話しの内容が将軍の逆鱗に触れ、将軍は自ら、手元に置いた刀で天童をお手打ちにしたが、手打ちにした筈の天童は、何事もなく生きており、自分の要求が呑まれなかったら、きっと全国に天変地異の災害が起こるだろうと、将軍に言った。
その話しは虚言ではなく、本当に起こり、全国津々浦々、農民達の悲鳴、嗚咽、やり場のない怒りが募り、一揆など、幕府への抗議が成された。
……天童の要求とは、それは将軍の娘を天童へ差し出せと…つまり生贄という事だった。
将軍は、口惜しかった。
愛する愛娘をどこの馬の骨とも知らない、神などと名乗る男に差し出さなければいけない事実に嗚咽が止まらなかった。
農民達の事もあって、苦渋の決断を迫られた将軍は、アセビ姫に
最初は、断れたが…城中の家臣が全国の天変地異の対策に衰弱しているのを、見かねて…遂には、天童への生贄になるのを了承したのである。
そして…城に将軍の前に天童が現れた。
アセビ姫を差し出すと、満足げにアセビ姫を連れて城の外へ、空中に浮かびながら、攫っていった。
そして…天変地異は本当に止まったのである。
最初のアセビ姫から、ツバキ姫、キキョウ姫、スミレ姫、ツツジ姫、ユリ姫、ラン姫、ボタン姫、キク姫、と代々、献上してきた。このおぞましき儀式をやらねばと、思うと、将軍家は狂っていった。
代々、平穏な時も農民から年貢を絞れるだけ、取るようになり、民を虐めるようになっていた、基本は農民が五割藩主に納め、残りの五割を農民たちの手元に残るように「五公五民」制度にした。
七百年に九名の姫が、犠牲になり、そして…今度は、カスミ姫へと順番が回って来た。
当然、当代、将軍、
代々、将軍家は、様々な藩から軍を選りすぐり、討伐を試みたが無駄な抵抗だった。
ならば全国津々浦々、陰陽師、呪術師等を集め、天童を滅却、呪い殺す、試みたが、当の天童は、平気でこの七十年目にして、将軍の前に姿を現して、まるで自分をどうすることも出来ない、存在だと誇示をしてるようだった。
「ワシは情けない…いや、将軍家そのものが、情けない! あんな化け物一匹に国をどうにかされるなんて、恥の極みじゃないか」
「はい、必ずや、かの化け物を討伐出来る者がいるでしょう」
「本当だな、我が娘をあんな化け物に渡さずに済むんだな!」
御台所と御小姓のツバメは分かって言った。
いくら、無理だと思っていても、将軍宗家の精神安定には、こう言うしかないと。
だが、この時…宗家以外、誰もが、無理だと思っていた、天童を討伐出来る者が現れる事を誰も予想だにしてなかった。
ある日、姫直属の護衛の任に就く、武士の就任式が行われた。
一人目は、
二人目は、
※※※
オラは東堂明!
何と!何と!姫直属の護衛の任に就いたぞ。
やっぱり、徳沢様の城だけあって、立派な城だっぺさ、万年、下級武士のオラだが、立派に務めてみせるだべさ。
大老様、老中様、様々な重鎮がいる中、オラは、正座をし、待っていった。
「カスミ姫様の御成ーーーり!!」
大広間の奥から、
姫様が座って、対面にオラ達が、座ってる形だが、イマイチ、何か、辛気くさい。
最初に、本城毅一郎誠殿から、姫様に挨拶してますな。
「姫様の為、本城毅一郎誠!この身が朽ちるまでお使えします」
正座から頭を下げる所作も凛々しく、澄んだ声だべ…いい所の武家さんなんだろうなんだべさ。
…感心してる場合じゃなか、次は、オラの番だべ。
「オ…拙者、東堂明、姫様の為なら粉骨砕身、お仕えする所存であります」
あぶねーあぶねー、普段の喋りで決意表明をする所だったぺ、この場に合う、言葉遣いしなけりゃならねぇさ、息が詰まるべ。
「お二人とも…
何とも…言えない、声までまるで自分で言ってるようじゃなかね。
天童って化け物に、七十年に一度、将軍家から生贄と献上するって話…今の姫様…有り様からして本当に違いないだべさ。
「東堂明!!」
「はい!」
大老様から名を呼ばれ緊張する、オラに大老様が言った。
「お主、本来ならこの任に就くべき人選ない事は承知しておるな」
「ハッハー、承知の上でございます」
「うむ、こちらの人選違いとはいえ、ある程度の実力を見せて欲しいのだ、そこの本城毅一郎誠と木剣での勝負でな」
大老様の仰ってる事にオラも察したぞ、人違いとはいえ、今更、変える事は出来ない、ならば、実力を見せ、実力不足なら辞退にする腹積もりなんだべさ。
しかし、こんな大任、オラの十八年間の人生、いや今後、任される事はないはずだべ。
大老様がオラを疎ましく思ってる事は、薄々勘づいたべ。
よーし、田舎侍とは言え、師匠に鍛えられた剣の腕、見せてやるべよ。
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