第4話 配信しよう


『配信、だと?』


 俺の提案を聞いたアルが聞き返してくる。


「うん、配信。やろっかなって。」


『……そんなこと、何故、我に聞く。勝手にやればいいだろう?』


「いや、アルにも出てもらおうと思って。」


『は?我が出るだと?我が出る必要など無いだろうに。』


「いや、そもそも、俺についてくるなら是が非でも映ることになるぞ?迷宮ダンジョンまでついて来ないんだったら別だけどさ。アルついてくる気満々でしょ?」


『当たり前だろう?……ふむ、そうか。そういうことならば好きにするがいい。』


 アルから配信をすることの許可が取れた。


 世の中には、配信をしながら迷宮ダンジョン攻略をする探索者がいる。そんな探索者は迷宮配信者ダンジョン・ストリーマーと呼ばれており、俺もその迷宮配信者ダンジョン・ストリーマーになろうとしていた。

 

 元々、探索者になる気はあったが、迷宮配信者になる気は無かった。そもそも、俺はそんな柄じゃ無いしね。

 じゃあ何でやる気になったのか、それはひとえに、アルの存在が関係している。アルと出会わなければ、探索者になっていても、配信者にやっていなかっただろう。

まぁそれで、配信者になる理由は、アルの姿を、カッコ良さを、美しさを、世に見せたかったからだ。

 

 別に、俺凄いだろ?なんてことをしたいわけじゃ無い。そもそも、凄いのはアルの方だし。凄さを広めるんだとしたらアルの方だね。

まぁ、そんなことから俺は配信を始めようと思った。


◇◆◇◆


 俺とアルは、とあるE級迷宮ダンジョンへ訪れていた。ここは人気が無く、俺たちの他に人はいなかった。だからここを選んだんだけど。


『その球が、配信するのか。中々興味深いものだな。』


 アルは空中に浮かんでいる球に興味があるみたいだった。その球は魔道具であり、撮影し、映像を配信する為のものだ。


「じゃあ、アル。そろそろ始めるよ。」


『そうか。好きに始めるがいい。』


 アルに始めると、合図をかけ、好きにしろと言われたので、始めるとする。


「あ、あ、聞こえてる?見えてる?」


コメント

・きたー!!

・見えてる

・聞こえてる

・大丈夫だよ

・龍と共に配信するって、ま?


「あー大丈夫そうだね。ならよかった。」


 空中に浮かんで球の隣で、半透明に表示されているコメントを見て、大丈夫なことを確認する。

 あらかじめ、掲示板で配信するって書き込んだいたから数十人ではあるが、人がもう集まってした。おおよそ、龍と共に配信するって書き込んだから来てくれたんだろうけど。


「ああ、龍と一緒に配信するのは本当だよ。」


コメント

・まじなんだ

・肝心の龍は何処?

・どうせ嘘だろ


「アル。ちょっとこっち来て。視聴者のみんなが姿を見たいって。」


『我は見せ物ではないんだがな。まぁ、いいだろう。』


コメント

・え

・は

・はあ!?

・…………


 アルが姿を見せるとコメント欄には驚きの反応しか映ってなかった。まぁ、そうだよねって感じ。予想していた通りの反応だった。


コメント

・かっけぇ……

・なんか神秘的だな

・シャベッタァァ!?

・嘘じゃ無かったのか……

・まじかよ!?

・かっこよ

・デカくね?


『そんなに驚くことなのか?』


コメント

・シャベッタァァ

・え、喋れるの?

・えっ、かわいいな

・主さんテイマーなの?

・龍なんて何処で捕まえたよ?


「まぁ、みんな龍が本当に出てくるなんて思ってなかっただろうしね。」


『それなのに人が見にくるのか?不思議なものだな。』


コメント

・本物の龍がいると聞いて

・ほんとじゃん

・初見

・何で龍なんて存在がいるんですかねぇ?

・名前は?


「あー質問はいっぺんに出さないでくれ。ちゃんと答えるから。」


 コメント欄には沢山の質問が。それも同じようなのも沢山。


「あーそうだな。俺はテイマーじゃないよ。名前?俺は、白神龍樹。で、こいつはアルビオン。俺はアルって呼んでる。」


コメント

・アルビオンかぁ

・龍樹くんテイマーじゃないのになんでいるの?

・白神?

・アルちゃんか

・龍樹、スキル何持ってるの?

・白神って、あの白神?

・ちゃんねるの名前ってそこからから来てんのか


「別に、捕まえたんじゃないよ。アルが家の庭で死にかけてたのを助けたら、なんか一緒にいるって言ったから一緒にいるだけ。」


コメント

・ちょっ……何で魔物がダンジョンの外に出てきてるんだよ

・初見

・助けたから懐かれた的な感じか

・なんで、魔物なのに助けたん?

・龍がいると聞いて

・そもそも、龍が死にかけるって何があったんだよ

・↑たしかに。龍を殺せる存在がいるってことじゃん


「なんでアルが迷宮ダンジョン外にいたのかは知らない。で、なんでアルが死にかけていたのかも分からない。アルも覚えてないってさ。……助けた理由は──」


『一目惚れだそうだ。』


「ちょっとアル!?」


 助けた理由について話そうとしたらアルが横から遮って、理由を話してしまった。それ言う気無かったんだけどな。


コメント

・草

・一目惚れは草

・龍樹……お前、特殊性癖の持ち主だったのか……

・えぇ……

・いや、まぁ分からなくはないけどさ

・一目惚れwwww


「別に特殊性癖なんて持ってないから!!」


『龍樹……お前、そういう目で我のことを?』


「アルさん!?」


コメント

・アルちゃん笑笑

・アルさんノリ良すぎて

・うーんこれはwwwww

・草

・龍とは思えないノリのよさ笑

・なんか見に来たら凄い事になってて笑笑


「いや、違うからね!?ってかアル!?違うってわかってるでしょ!?」


『クハハハ!!面白い反応を見れたな!!』


「アル!?笑ってないで、誤解を解いて!?このままだと、俺、特殊性癖持ちの変人になるから!?」


『少なくとも、変人である事には変わりないだろうに。』


コメント

・確かに笑笑

・一目惚れの時点で充分変人では?

・アルさんの言う通りだろ

・草

・【悲報】龍樹くん、龍に正論を言われてしまう

・もう、これは変人確定


 変人じゃないんだが。

俺はただの一般人だぞ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る