第3話 スキル獲得

 アルビオンと出会いから、二週間が経過した。


 この二週間は、色々大変だった。

アルが迷宮ダンジョン外で過ごすことが出来るように、色々と奔走していた。あぁ、アルと言うのはアルビオンのこと。単純にそっちの方が呼びやすいから自然とそうなっていた。


 何はともあれ、アルを迷宮ダンジョン外で過ごせるようになった。そして、奔走しているうちに、俺は16歳の誕生日を迎えた。

それにより俺は、迷宮ダンジョンに入り、[スキル]を手にすることが出来るようになった。

そして、迷宮ダンジョンを攻略する探索者と呼ばれる者にもなれるようになった。厳密には、探索者になる為には国が定める試験に受からなければならないが、よほどのことがない限りは受かることが出来る。


 ということで、俺は[スキル]を獲得する為に、迷宮ダンジョンへ行こうとしているんだけど、そこで一つ問題が起こった。


『龍樹、我も連れて行け!!』


 アルが自分も連れて行くようにと、せがんできたのだ。[スキル]獲得の際は本人と、いざという時の為に付き添う職員しか原則立ち入ることは出来ない。あれからだいぶ成長し、1メートルくらいの大きさになったアルを連れて行けばどうなることか分かったものじゃない。だから連れてけない旨をアルに話す。


『じゃあ、我が小さくなればいけるな?』


 アルはそう言うと、身体の大きさを変えた。それもだいぶ小さく、俺がアルと出会った時よりも断然に小さくなっていた。多分、ポケットとかに入れるんじゃない?


『これで文句はないな?』


 アルは得意げに言う。

原理を聞いてみたけど、そういうものだと思えと言われた。はぐらかされたかもしれない。


 という事で、俺の[スキル]獲得にアルも同行することとなった。


◇◆◇◆


 やってきたのは、俺の家からそれなりに離れたE級迷宮ダンジョン。E級というのは迷宮ダンジョンの攻略難易度を階級に表したものであり、E級迷宮ダンジョンは端的に言えば初心者用の迷宮ダンジョン


 そんなところに俺は、小さくなりポケットの中に入っているアルと、付き添いの職員と共に入って行った。


 迷宮ダンジョンの扉を潜るとそこは、別世界だった。補装されている石に囲まれた一本道。少し先にを見れば左右に分かれている。この迷宮ダンジョンの構造は所謂、迷路のようになってる。道を歩き、襲ってくる魔物を倒しながら攻略する。ここはそんな作りになっている迷宮ダンジョンだった。


 一本道を歩く。

するとすぐにそれは現れた。

現れたのは三匹のネズミ。ただ一般なネズミとは違いその体格は大きく。そして、正真正銘の魔物だった。


「……三体ですか。二体殺します。その場から動かないでください。」


 付き添いの職員の男の人は俺にそう言う。

すると次の瞬間。

彼は手に持っていた剣を二回振い、斬撃を放つ。その剣先から放たれた斬撃は二体のネズミに対し、直撃。宣言通り、二体のネズミを殺してみせた。


 それにより、この場に残ってるのはあと一体。俺が殺すように残された魔物だった。


 残された一体のネズミは他の仲間が殺されたというのに逃げださず、俺へと突撃してきた。


 俺はそれを最低限の動作で、難なく回避し、右手に持っていた剣で、一閃。ネズミを切り裂いた。


 俺に切り裂かれたネズミはその場で倒れ込み、塵のように消えていった。


 消えたのと同時に声が聞こえてきた。


《スキル──[龍魔法]を獲得。》


 機械的で、無機質な声がスキルを獲得したことを伝える。

世間では、天の声、或いはアナウンスなんて呼ばれている声であり、スキルを獲得した時や迷宮ダンジョンのボスを倒した時なんかに聞こえる声である。


 龍魔法か。

何とも大層なスキルだな。あれか?アルの影響かこれ。


「獲得できましたか?」


 俺の様子を見ていたであろう職員の人が声をかけてきた。


「はい。獲得できましたよ。」


「そうですか、では戻ります。」


 俺がスキルを獲得したのを確認すると、迷宮ダンジョンの外へと戻る。これ以上、迷宮ダンジョンにとどまることは出来ないし、奥に進むことは出来ない。それがスキル獲得時のルールだった。


 迷宮ダンジョンの外に戻り、近くにある、探索者協会の施設に移る。そこで、獲得したスキルを記録することが義務づけられているのだ。


 これは誰がどんなスキルを獲得したか把握する為の処置だそう。


 スキルの記録が終わり、そしてついでに受けた、探索者になる為の試験も終え、俺は家に帰ってきた。


『はぁ……退屈だったな。もっと見応えのあるものだと思ったが……』


 帰宅するとあの一番にアルが愚痴を言い出した。


「まぁ、あれはそう言うもんだからな。仕方ないだろ。」


『それはそうと龍樹。お前の獲得したスキルの事で話がある。』


「話?」


『ああ。お前の獲得したスキルは[龍魔法]だったな。』


「ん?あぁ、そうだけど。」


 改めて、俺が獲得したスキルについて確認をアルが取ってくる。


『……龍樹、今のお前では使えないぞ。』


「はい?どうゆう事?」


『使えないのは[龍魔法]の方だが、今のお前では、魔力が足らん。発動すら出来ないだろうな。まぁ、仮に無理矢理発動したとしても、身体が耐えきれなくて死ぬだろうが……』


「え、まじ?」


『まじだが。』


「ってことは俺、スキルなしなの?」


『そうなるな。迷宮ダンジョンに潜って成長していけば使えるだろうが、それもだいぶ先のことだろうな。』


 アルから明かされる衝撃の事実。

なんと俺、[龍魔法]使えないらしい。だからスキルが何もない様なものだ。


 いや、まじか……スキル無しだと迷宮ダンジョン攻略はキツくなる。初心者用の迷宮ダンジョンであれば問題ないが、ある程度いくと無しでは厳しくなってくるだろう。だからそれまでに、一つでも[龍魔法]を使えるようにするか、新しくスキルを覚えるか、そうしなければ大変な事になりそう。


◇◆◇◆


 スキルが使えないことが判明して、絶望してから二日が経過し、探索者試験の合否が判明した。


 結果は、合格。


 これで俺も、立派な探索者だ。

実質、スキル無いけど……


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