第2話 一目惚れ
──龍。
曰く、それは最強の生命種。
曰く、それは厄災の具現。
こと、最強魔物談義において、真っ先に名が上がる存在。
そんな存在がこんな所で、しかも
「あーひとまず、龍なのは分かった。で、お願いなんだけど、
『……それに答える前に、一つ問おう。』
龍の発する圧が高まる。
本能的に、ヤバいと、脳が警鐘を鳴らす。
だが、逃げ出すことも、目を離すことも、俺には出来なかった。
『何故だ。何故、お前は
魔物とは、
だからこそ、俺が自分を助けた意味が分からない。そう、あいつは思っているのだろう。
そして、あいつが言っていることは紛れもなく正論だ。あいつは魔物で俺は人間。俺が魔物を助けるなんて意味はなくて、後々敵になると分かっている存在を助ける意義など存在しない。
ああ、だけど俺はそれを分かっていながら助けてしまった。
「そうだな……改めて何故?って問われると難しいけどさ。まぁ、そうだね……生きてて欲しかったんだよ。お前に……死んで欲しく無かった。だから俺は助けた。ただそれだけのことだ。あー……こうやって言うのは恥ずかしいけどさ、お前を一目見た時、カッコいいと思った。美しいと思った。まぁ、端的に言えば一目惚れってやつ?」
はっきり言って、自分がおかしな事を言っていることはわかってる。でも、それは本当のことなのだ。あいつの姿を見て、俺はカッコいいと、美しいと思った。もっと見ていたかったし、動いてるところを見たかった。だから、助けた。ただそれだけ。……納得してくれるかは分からないけどね。
『────』
話し終わり、龍の姿をみる。
絶句していた。固まっていた。まぁ、分かっていた反応ではあるけど。普通、あんなこと言うとは思わないよな。
『──そんな理由でか……そんな理由で我を助けたと……まったく……我には理解できん。
だが……面白い。たかが、ひと時の感情で、己が種族の敵対者を助け、自分の未来すら賭けるとは!!実に人間らしいなお前は!!』
なんか急にテンションが上がった。
目の前の龍は唐突に浮遊すると、俺の頭の上に乗ってきた。いや、ちょっと頭の上乗んないで……こう、なんかムズムズする。
「おーい。何で上に乗ったんだ。と言うかさっきの質問の答えを聞いてないんだけど。」
『え、嫌だが。』
嫌って……
「嫌って……」
『お前が、一目惚れしたなんて言うからだぞ。龍樹、お前に興味が出た。故に、我はお前と共にゆく。異論は認めんぞ。』
あー……もしかして俺のせいか?これ。
俺が一目惚れしたなんて言っちゃったからか?
はぁ……まぁ、仕方ないか。惚れた弱みってやつ?他の人に危害を加えないならいいか。俺もあいつと一緒にいられるのは嬉しいからな。
「分かった。
『……龍樹。』
唐突に、俺の名を呼んできた。
「どうした。改めて。」
『我に名をくれ。』
「はい?」
『これからお前と過ごす事になるだろう?その時、名前がないと不便では無いか。あと、単純にお前呼びは嫌だ。』
「お、おう……そうか。」
『だから何か考えるがいい。我に相応しい名をな。』
急に、名前をくれと頼まれた。まぁ、確かにお前呼びは不便だわな。……それにしても嫌だってなんか可愛いな。
『龍樹、今変なことを考えただろ。』
「いや、なんのことかな?知らないなぁー」
おっと……バレてた。
それにしても名前かー。うーん、龍だし威厳のありそうなのが良いよなぁ。あと呼びやすいの。うーん……………………………………
あ………………いいの思いついたかも。
──よし、決めた。
「アルビオン。アルビオンはどうだ?」
アルビオン。それは白を意味する名。こいつの真っ白な身体から連想したんだけど。カッコいいし、我ながらいいネーミングセンスしてるんじゃない?
『アルビオン……アルビオンか。良い名だ!!気に入った!!』
アルビオンはそう嬉しいそうに言うと、何度もその名を反芻する。うん。気に入ってくれたみたいで良かった。
……なんと言うか、何度も、噛み締めるように自分の名を反芻するのなんか可愛いな。
「気に入ってくれたみたいで何より。アルビオン、これからよろしくな。」
『我こそな。龍樹、お前のこれからの物語を楽しみにしている。』
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